自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第395話 ガーグ老 12 地下12階でのダンジョン内警護&息子と『万象』50名の到着

 儂は山積みされた魔物を見たのは初めてであった。
 およそ100体の魔石取りを終え御子達は攻略に戻られる。

 御子はユニコーンがお嫌いらしいが、ハーフエルフの御方はリザードマン系の魔物に何か恨みでもあるのだろうか?

 出会い頭に瞬殺していなさる。
 理由は分かりかねるが、何か余程嫌な事でもあったか……。

 7パーティーと夕食時に、御子が『秘伝・・のタレ』を紹介しておられた。

 1壺銀貨3枚(3万円)と少々お高い調味料であるが、人族の国では胡椒こしょうが銀貨10枚(10万円)で売られていると聞く。
 エルフの森には沢山生っておるので、胡椒がそんなに高いと知らず驚いた。

 そう考えると、御子が作られた『秘伝・・のタレ』はどんな味がするのか興味深い。
 1壺購入した冒険者達が小皿にほんの少しタレを入れ、焼いた野菜や肉に付けて食べた後で絶賛しておった。

 塩とは違う茶色い液体をした調味料だ。
 そんなに旨いのか?

 あぁ、この夕食時の護衛は腹が減って仕方ない。
 御子よ、いつか儂らにも『バーベキュー』を食べさせて下され!

 その後も、毎日大量の魔石取りをしながらダンジョン攻略は無事終了された。

 日曜日の炊き出し後、今日は『肉うどん店』・『製麺店』と合同で懇親会こんしんかいをなさるそうだ。
 従業員の慰労いろうも兼ねて、御子が『バーベキュー』をご馳走ちそうされている。

 高級な魔物肉と知られるハイオークやミノタウロスの肉を、従業員や子供達が嬉しそうに食べておった。
 特にハイオークとネギを串に交互に刺して焼いたねぎま・・・は見ているだけで旨そうだ。

 お主ら、御子が優しい経営者である事に感謝するのだぞ?
 ここまで従業員の事を思ってくれる雇用主は中々おるまいて。

 御子達の警護を終え定宿に戻ると、息子から魔道具に連絡が入る。
 今、迷宮都市に到着したそうだ。

 おぉ、これでやっとダンジョン攻略中の警護から解放される!
 息子の宿泊している宿に行き、明日からの打ち合わせをせんとな。

 儂らが老体に鞭打ってお守りした御子だ。
 怪我などさせたら命は無いものと思え。


「父上。遅くなりましたが、『万象ばんしょう』50名無事迷宮都市に到着致しました」
 
 約300年振りに会った息子は既に500歳となり、影衆当主としての貫禄かんろくを身に付けておった。

「全員息災のようで何より。早速さっそく、明日から任務の引継ぎをする」
 
「かしこまりました」 

 お互い再会の挨拶より、王族の警護が何より大切だと理解しているので余計な話はせず御子達の1週間の予定を伝えていった。
 月曜~金曜は冒険者をしている御子達のダンジョン内での警護だと言うと、ほんのわずかに眉を動かす。
 
 そうだろう、エルフの王族である王女様が冒険者をしている等とは思うまい。
 御子のそばにいる御二方おふたかたの事も、高名な治癒術師であり魔法士であるから同じように護衛する必要があると注意しておいた。

 エリクサーは万能ではない。

 御子がもし瀕死ひんしの状態になられても、あの御二方の治癒魔法で命をつなぎ止める事が可能だろう。

 他に御子が2店舗の店を経営している事や、子供達の支援をしている事も話していく。

 そして一番大切な事を言わなければ……。
 
「いいか。食事中の警護は、注意力散漫さんまんになってはいかん。よく念頭に入れておくことだ」

「心得ております」

「ダンジョン内で御子達の姿を決して見失うなよ」

「問題ありません。『万象ばんしょう』50名は精鋭部隊ですから」

「頼もしい事だ。御子をしかと頼んだぞ!」

 それはどうだかな……。
 明日は地下12階で攻略されるが、この先また階層を下がっていかれるだろう。
 
「はい、世界樹の精霊王にかけて誓約致します」

 息子は、エルフにとって一番重い誓約を自身に課した。
 それは誓約が守られなければ、精霊王に命を捧げる事を意味する。

 儂が御子を探し出す時に、精霊王に誓約した事を思い出した。

 その心意気やよし!
 それでこそ影衆の当主だ!

 しかし1週間後の報告が楽しみでならんな。
 息子に対して少々意地の悪い事を考えながら帰路についた。

 翌日の月曜。
 もうあの地獄のような走り込みをしなくて済む事に安堵あんどし、商業ギルドのカマラに会いにいった。

 御子達の警護は引継ぎをしたので、迷宮都市に居ても不自然じゃないように職を紹介してもらう事にする。
 ついでに家を何軒か購入しておく必要があるな。

 息子達も50人居ると、宿の空きを探すのが大変だろう。
 
 カマラから紹介してもらったのは、家具職人の工房だった。
 影衆は風魔法を得意としているので、木材加工の仕事なら大丈夫だろう。

 カマラが書いた紹介状を持ち全員で工房に行くと、トレント資材の加工が出来るか試された。
 何の理由か分からぬが、風魔法で切断出来ればよいのか?

 工房主の指示通りに皆がトレント資材を切断すると、ここの工房を任せると言われてしまった。
 後を継ぐ予定だった息子が、冒険者になって帰ってこないらしい。

 自分の代で終わらせる心算つもりだったが、儂たちに技術を伝授した後は引退するそうだ。
 
 翌日から、儂らは工房で働きだした。
 家に必要な生活用品も調え宿を引き払う。

 そして土曜日。
 息子がやつれた顔で報告にやってきた。

「父上。御子達は化け物ですか!?」

「なんだ? 地下12階まで走る速度に置いていかれたのではないだろうな?」

「いえ、過去にないくらい必死に走りましたとも!」

「ほう、それはよい修行になったではないか」

 儂は話を聞いてニヤリと笑う。

「修行どころではありません。安全地帯に到着した頃には、警護が出来る状態ではなかったです」
  
「ははっ、お主らもまだまだのようだな。精々せいぜいはげめ」 

「くっ、それにあの見た事もない料理は何ですか? コカトリスクイーンの卵を使用するなんて驚きましたよ」

 ふむ、御子はまた新しい料理を披露ひろうされたようだな。

「これからも珍しい料理が出てくるだろうから耐えろ。あぁ、今から『肉うどん店』に食べに行くが一緒にどうだ?」

「ご一緒させて頂きます」

「店に迷惑にならんよう、10人だけ『万象ばんしょう』も連れてくるがいい」

「わかりました」


 初めて食べた『肉うどん』に息子は感激しておった。

 うんうん、そうだろう。
 御子は料理の天才だからな!

 フォークで食べる息子達と違い、儂らは常連であるからはしで食べる。
 見慣れぬ2本の道具を興味深く観察しておった。
 その内、フォークで食べるより箸の方が食べやすい事が分かるだろう。


 そうして御子達の警護は無事、息子率いる50人の『万象ばんしょう』がその任に就く事になったのだった。

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