自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第400話 迷宮都市 家具職人 ガーグ老との出会い 1

 ★第16回ファンタジー小説大賞。5/3207位で『特別賞』を受賞しました!!
 投票や応援して下さった読者の皆様のお陰です。
 読んで頂き本当にありがとうございます。
 これからも応援よろしくお願い致します。

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 商業ギルドで、カマラさんが詳細な住宅地図を見せながら教えてくれた職人街は、ここから歩いて20分程の距離だそうだ。

 歩いていると一瞬頭上に影が出来る。
 ふと立ち止まって上空を見上げると、そこには白い大きなふくろう旋回せんかいしていた。

 異世界で梟を見るのは初めてだ。
 それも珍しい白梟。

 某有名なファンタジー映画を思い出す。
 梟便とかあるのだろうか。

 うちのハニーは体長が3mもある魔物だから、蜜蜂便としては使えなさそうだ。
 それより鳥系の魔物を素直にテイムした方が良い。

 速く飛べるのはハヤブサかな?
 異世界に居るか分からないけど……。

 いや、やっぱりここはドラゴン一択だろう!
 何と言ってもファンタジー世界だ。

 ドラゴンの背に乗れば、私も竜騎士と同じよね~。
 早くシルバーが、ドラゴンに進化しないかな~。
 
 しばらく見ていると、白梟は職人街の方へと飛んでいった。
 もしかして誰かのペットかも知れない。

 職人街に入ると、周囲から様々な音が聞こえてくる。
 騒音対策のために区画が分けられているのだろう。

 目的の家具工房を発見。
 門を開けて中に入ってみると結構敷地が広い事が分かる。

 100坪くらいあるかしら?

 声を掛けようと口を開いた瞬間に、店舗から非常に体格のよい老人達が10人程現れ総出で迎えてくれた。

 えっ!?
 家具職人って、皆こんなに体格がよい人ばかりなの?

 知らなければ全員武人に見えるんですけど!
 そして何故なぜ、顔がポーションまみれになっているんだろう?
 
 最近串カツ作りで串を指に刺したばかりの私は、覚えのあるポーションの匂いをぎ取り不思議に思った。

 家具作りで怪我をしたにしては場所が不自然な気がするけど……、まっ、いいか。
 私の知らないような作業で怪我をする事もあるしね。

「こんにちは。初めまして、沙良と申します。商業ギルドのカマラさんから、紹介状を持ってきました」

 すると中でも一際ひときわ大きな体格をしたご老人が、突然目に涙を浮かべ言葉を詰まらせたように何も言わず私の事を見つめてくる。

 初対面のご老人に泣かれて、私はとてもあせってしまった。

「えっと、大丈夫ですか? どこかお加減が悪いのでしょうか? 都合が悪いようでしたら、日を改めさせて頂きますけど……」

「いや、そうではない。失礼した。余りに亡くなった孫に似ていたものだから、思い出して涙腺がゆるんでしまったのだ」
 
「まぁ、お孫さんが……。それは、ご愁傷しゅうしょう様です……」

「もう何年も前の事であるから、気に病む必要はない。驚かせて済まんかったの、儂はガーグだ。カマラからの紹介状を見せてくれんか?」

「はい、こちらになります」

 私はマジックバッグからカマラさんが書いてくれた紹介状を取り出し渡した。

 彼がこの工房主であるガーグ老か……。
 なんか想像と全然違って、頑固職人というより騎士団長でもしていそうな威厳いげんを感じる。

 紹介状を読んでもらっている間、他の職人さん達を見てみると全員が直立不動で待機していた。
 それは、まるで指示を待っているようにも見え違和感が増す。

 この人達は家具職人ではなさそうだ。
 
 人は立ち姿ひとつ取ってみても癖が出る。
 私は現代舞踊を習っていたから、重心が普通の人より低い。

 同じように武にけた人も重心が低く、足を閉じる事が無いため初動が早い。
 どう考えても何らかの武術の心得こころえがあるだろう。

 ただの家具職人が一体何故なぜ
 私は警戒を一段階強める事にした。

 先程、亡くなった孫に似ていると言った言葉に嘘はないようだったけれど……。
 確かに、私を見る目に懐かしさがもっていた。

 紹介状を読み終わったガーグ老が口を開く。

「丸椅子作りに必要な脚を切り出してほしいとあるが……。あ~、サラ……ちゃん。丸椅子は、自分で組み立てるのかの?」

「はい、脚の部分と補強材を注文したいんです。木材のトレントは提供しますので、お願い出来ますか?」

「あぁ難しい作業でもないし、これから皆でやれば直ぐ終わるだろう」

 50脚もあるので当然時間が掛かると思っていた私は、今から作業を始めると言われて驚いた。
 確かに10人で作業をするなら、そんなに時間はかからないと思う。

 この工房は暇なのかしら?

「ありがとうございます。では、トレントを取り出しますね」

 地面に大きな布を広げて、その上に枝を切り落としたトレントを必要な量出していく。
 前回座面を作った時に、部屋に入らなかったので1mの幅で切っておいた物だ。

「脚の1辺を5cmにして、高さは30cmになるようにお願いします」

「ふむ、角度を決めんといかんだろ。座面は用意があるかの?」 

「はい、どうぞ」

 事前に切り出した66枚の内の1枚を、アイテムBOXから取り出して渡した後、丸座面の表面がのこぎりで切られた物じゃない事に気付いてあっとなる。

 でもガーグ老は、つるつるの表面も見ても何も言わず、脚となる角材を風魔法を使用して切っていった。
 
 えっ?
 5cmに測ってないのに、何で長さがそろっているの?
 
 そして風魔法で切断するとは思わなかった。
 異世界の職人さんは、のこぎりなんて使用しないのか……。

 まさか、魔法で家具を作るとは思いもしなかったよ!

 あっでも流石さすがに、組み立ての時はトンカチを使って釘打ちするだろう。

「高さが30cmという事は、この丸椅子は子供用だな? 大人用のはよいのか?」

 聞かれて、家に招待する冒険者達を忘れていた事に気付いた。
 食事会をする時の椅子やテーブルも必要になってくるだろう。

 うっかりしてた!

「すみません。追加注文しても良いですか? 子供達用は160脚、大人達用は高さ45cmで20脚お願いします」

「うん? 大人用は高さ45cm……」

 そう言った後で、ガーグ老は私の背を見て口をつぐむ。

 背が低いのは分かってますよ!
 この世界の人は皆平均身長が高いから、それに合わせると私の足が床に着かなくなるんです!

「そうだの、45cmよいだろう。皆の者、注文のサイズと数は聞いたな? 角度45度で仕事にかかれ!」

「はっ!」

 直立不動だった職人さん達が、きびきびと動き出す。
 この物慣れた集団の動きは、やはり職人ではない気がする。

 いくら上下関係の厳しい職人の間でも、こうはならないだろう。
 不審に思いながら表面に出す事はせず、私は不足分の丸座面を作るためにトレントを追加で出した。 

 皆が風魔法を使用しているなら、私が使っても大丈夫だろう。
 ただし、私はサイズを測らないと無理だけどね~。

 目測だけで、同じ幅で魔法を使用するなんて出来ないよ!
 これが職人技なのか……。

 家具職人かどうか、非常に疑わしい人達だけど……。

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