自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第422話 迷宮都市 毒消しポーションの相談

 もしダンジョン内にある物で、毒消しを作製可能なら私が取ってくればいい。
 材料を聞いたら教えてくれるかしら?

「ゼリアさん。薬師ギルドでは、ポーションを作っているんですよね? 毒消しに特化したポーションを作れませんか? 現在地下14階層を攻略しているのですが、キングビーの毒針に刺されるとエリクサーでしか治療出来ません。でもエリクサーは王都でしか販売されていないし、貴族の身分がないと購入出来なくて冒険者達が困ってるんです」

「エリクサーを作製出来るのは上級薬師だけだね。数も少ないから、販売層を限定しているんだよ。毒消しに特化したポーションかい? 浄化の魔法が使えないと、それもまた難しい問題だろう」

 ゼリアさんが、私の質問にそう答えてくれた。
 ここでも浄化の魔法が必要になってくるのか……。

 確か浄化の魔法は教会の司教じゃないと使用出来ないんだっけ?
 旭が治療出来るのは、ヒールとホーリーの両方を掛けてあげているからなのね~。

「例えばですけど浄化の魔法を使える人間なら、毒消しに特化したポーションが作製出来ますか?」

「ポーションを作るには、薬師になって3年は修行が必要になる。もし浄化の魔法が使用出来ても、直ぐには無理だろうね」

 なんと、ポーションが作れるようになるには3年も掛かるらしい。
 作り方を聞くのは、ご法度はっとだろう。

 そう簡単に外部の人間に製法を教えたりは出来ないだろうし、こういった事は秘匿ひとくされている場合が多い。
 所謂いわゆる、企業秘密に近いものだと思っておいたほうがいいと思う。
 
 下手に勘ぐって警戒されないようにしないと……。

「そうですか、毒消しのポーションがあれば助かるなぁと思っていたので残念です。ポーションを作るのは、技術を習得しないと無理なんですね」

 私は、そう言って話を終わらせる事にする。
 
 そして、ゼリアさんの隣で所在しょざいなさげにしている受付嬢へ、割引後の小豆代・銀貨2枚と銅貨7枚(2万7千円)を支払った。

 お礼を言って店を出ようとしたところで、ゼリアさんが受付嬢に何か用事を言い付け彼女は店の奥に入っていった。

 その場に2人きりの状態になってから、ゼリアさんが話し出す。

「浄化の魔法は教会の専売特許みたいなものだけど、もし使える人間がいるのなら完成品のポーションに浄化を掛ければ毒消しの効能が追加されるかもしれないね~。まぁ、試した事がないから可能性があるってだけで確実な事は言えないが……。今日はちょうど午後から空いているようだし、実験してみるのも悪くない。そうさね、1時過ぎに来てくれれば立ち合い出来そうだ」

 おや?
 これはうちのメンバーが浄化の魔法を使える事がバレてる?

 あぁ、リースナーの冒険者ギルドマスターからアンデッドの換金額を聞いている可能性が高いな。
 ダンジョン地下8階で、あれだけ大量のアンデッドの魔石を毎週換金すれば気付くだろうし……。

 私はゼリアさんの提案に感謝して、また来る事を伝えた。

「じゃあ午後1時に、おうかがいします。そのぉ、浄化が出来る事は秘密にしてもらえますか?」

「あぁ、私は教会が嫌いなんだよ。むろん口外はしない。なに、ちょっとした好奇心さね。実験が成功するとよいの」

「はい、そうなれば助かる人が増えますよね!」

 ゼリアさんは笑って「待っているよ」と言ってくれた。
 よし! これは、是非ぜひとも2人に試してほしい案件だ!

 問題は私が勝手に話を付けてしまった事。
 兄の説教回避のために、ここは医者としての使命感を全面的にあおろう。
 
 ホームの自宅に戻ると10時だった。
 用意した朝食は片付けられていたので、2人の居場所をマッピングで探す。

 まだジムには行っていなかったらしい。
 隣の部屋で、2人がTVのニュースを見ながらくつろいでいる姿が見える。

 足元には、シルバーとフォレストもいるようだ。
 私は玄関から出て兄達の部屋に向かう。

「2人とも、おはよう」

「沙良、おかえり。今日は帰りが早いな」

「沙良ちゃん、おはよう~」

 兄の機嫌は問題なさそうね。
 旭は、いつも通りだ。

 これは、フォレストと一緒にいるからかしら?

 それにしても、どうやって家に上げたんだろう。
 呼んでも、私の従魔達には聞こえないはずなんだけど……。
 偶々たまたま、駐車場に居たところを見付けたのかなぁ。

「今日はダンクさんが言ってた通信機を魔道具屋で購入したから、忘れない内に2人に渡そうと思って」

 そう言って、私はアイテムBOXから通信の魔道具を3台取り出した。

「これね、1回使用するのにゴブリンメイジかハイゴブリンの魔石が必要になるんだって。使い方はFAXと同じで、羊皮紙に書いた文字を相手の通信機に表示させる物らしいよ」

 兄と旭にそれぞれ魔道具を手渡す。

 新しい物好きな兄が、早速さっそく羊皮紙を取り出して何か書いた物を旭の魔道具に送ったようだ。    
 旭は表示された内容を見て、ぶはっと吹き出しあわてて画面を消してしまった。
 何が書かれていたのか非常に気になるんですけど?

 あれ?

 でも魔道具屋の主人は、カルドサリ王国内しか使用出来ないって言ってたんだけどなぁ。
 ホーム内は、現在カルドサリ王国との行き来しかしていないから大丈夫なのかしら?

 他国に行った場合は使えなくなるの? 
 むうっ、相変わらずホームは謎仕様だ。

「今日のお昼は私が作るよ。何か食べたい物があれば言ってね」

「あっ、じゃあ俺はオムライスが食べたい!」

 旭が私を裏切って以来、作らなかった料理名を希望する。

「俺もそれでいいぞ」

 兄は恋人の希望を優先してあげるようだ。
 オムライスは兄も好きだから問題ないか。

 私は自室に戻って昼食作りを開始。
 オムライスに豚カツも添えて出せば、兄も満足するだろう。
 他にはポテトサラダとコーンスープも付けよう。

 購入したばかりの通信機を使って、兄に昼食が出来た事を送信する。
 たった数行の文字を送るにも、1万円の魔石が必要になるのは確かに効率が悪いな。
 これは個人で持つ人がいないのも当然だ。

 そもそも通信手段は手紙が当たり前の異世界では、速さを求められていないだろうしね。

 5分後、兄達がやってきた。
 今日は全員オムライスの上にハートマークを描いておいた。

 余程オムライスが食べたかったのか、旭はとても喜んでいるみたい。
 その隣で兄が苦笑している。

「いただきます!」

 大きなオムライスを、2人はすごい速さで食べていく。
 これは忙しい研修医時代に、早食いが身に付いた所為せいだと兄が言っていたな。
  
 のんびり食事をしていたら、途中で呼び出された時に麺が伸びてしまうかららしい。
 食後にコーヒーをれ、ケーキを出して糖分の補給だ。

 兄は苺タルト、旭は和栗のモンブラン、私は桃のショートケーキ。
 2人が食べ終わった頃を見計らって、話を切り出す事にした。

「お兄ちゃん。地下14階って、キングビーの毒針で刺される冒険者が多いよね~」

「あぁ、少し前にも他領から来た冒険者が全員刺された話を聞いたな」

 その話は覚えてなくていいよ! むしろ忘れて下さい……。

「俺も、結構治療してるよ」

「私達が拠点にしている間は助けられるけど、1ヶ月後には攻略も終了するから治療が受けられないと可哀想かわいそうだよね? エリクサーは貴族じゃないと購入出来ないし……」

「そのリスクを負って冒険者をしているんだろうから仕方ない」 
 
「沙良ちゃん。全員を助けるのは無理だよ?」

「薬師ギルドで小豆を購入した時、ギルドマスターのゼリアさんがポーションに浄化の魔法を掛けたら毒消しの効能が付くかもしれないって教えてくれたんだけど……。2人は興味ないかな?」

「沙良、もしかして俺達が浄化の魔法が使える事を言ったのか?」

 ゔぅ、兄の声のトーンが一段と低くなってるよ。

「言わないよ! でもゼリアさん、リースナーの冒険者ギルドマスターのお姉さんらしくて知ってたっぽい?」

 嘘は言ってない。
 本当にゼリアさんは、最初から分かっているみたいで受付嬢を席から外してくれたしね。
 心配しなくてもいいとの台詞は、兄達の事だったのだろう。

「あぁ、お前の事を可愛がってくれたお爺さんか……。アンデッドの換金数で見当は付くかもな」

 兄も予想が付いたのか、私に説教をする雰囲気ふんいきはなかった。
 良かった、また正座しながら1時間こんこんと詰められるのは勘弁かんべんしたい。

「旭、俺はやってみる価値はあると思うがどうだ?」

「いいんじゃない? 毒消しのポーションがあった方が皆も喜ぶよ!」

 単純な旭は、兄の言葉にそううなずいてくれた。
 
「ありがとう! ゼリアさんと午後1時に約束してあるから、よろしくね!」

「お前は、先にそれを言え!」

 そして、結局兄に怒られたのだった。
 好物を作ってあげたのに、おかしい……。

 ゼリアさんの約束が30分後に迫っていたお陰で、今日は短く済んだけどね!

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