自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
300 / 781
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第426話 迷宮都市 武術稽古と『焼きそば』&『将棋』の対局

 日曜日。

 子供達がシルバーとフォレストと遊ぶために、今日も予定の30分程早くそろっている。
 兄と旭は、2匹の背中に子供達を5人乗せてゆっくりと走らせているようだ。

 うちの従魔が子供達に大人気すぎる!
 大型の魔物を近くで見る事がないので、珍しさもあるのかな?

 あぁ動物園がないんだった。
 私も、異世界で魔物以外の動物を見た覚えがない。

 基本的に魔物は自分達を襲ってくる生き物だから、テイムされた状態で触れる事が出来ないんだろう。

 9時になり、子供達に具沢山スープとパンを2個配り始める。
 その際、「今日は甘いおやつがあるから楽しみにしてね!」と言うと子供達から歓声が上がった。

 普段甘味と言えばドライフルーツと週に一度、兄が渡すみかんくらいしか口にする機会がないので嬉しいみたいだ。

 子供達が食べ終わるのを待ち、アイテムBOXから業務用寸胴鍋を出す。
 スープを食べ終えた器を回収し、湯を張ったおけで軽く洗い『善哉ぜんざい』を注いでいく。

 甘い匂いだけで、子供達が期待に満ちた表情になった。
 順番に渡してあげると、年長者達が小さな子供達に火傷しないよう注意しながら食べさせてあげている。

 皆、小さなお父さんとお母さんだね。

「お姉ちゃん、これ甘くて美味しい~」

「僕、いい子にしてて良かった~」

 『善哉』をスプーンに口一杯頬張ほおばる子供達は、見ているだけで可愛い。

「お姉ちゃん、『善哉』また作ってね!」

「ええ、皆がちゃんと【約束事】を守っていたら、ご褒美に作ってあげるよ」

「分かった~! 僕頑張るよ~!」

 そう言って小さな子供達は兄や姉が冒険者活動で不在にしている間、家を綺麗に掃除するねとファイトポーズをしていた。

 兄が大きなみかんを配り子供達を見送る。

 今日は2匹を連れて、ガーグ老の家具工房へ2回目の武術稽古にいく。
 教会から職人街を歩いている間、上空に白ふくろうが旋回しているのが見えた。

 あれは『ポチ』か『タマ』のどちらかだろう。
 私達がこれから向かう事を、ガーグ老に知らせてあげるのかしら?

 家具工房に到着し門を開くと、全員総出で迎えてくれた。
 稽古で会う時は、顔に怪我をしていないみたいね。

「こんにちは。今日も、よろしくお願いします」

「本日も、お世話になります」

「あのぉ、今日はお手柔らかにして下さい」

 私に続いて兄と旭が挨拶をする。

「サラ……ちゃん、こんにちは。おおっ、2匹の従魔もよろしくな」

 私の左右にシルバーとフォレストが陣取っているのを見て、ガーグ老は少しだけ目を細めた。

「シルバー、フォレスト、皆さんに挨拶してね」

 私がそうお願すると2匹が元気よく吠えた。 
 
「ウォン!」

「ガルルッ!」

「うむ、よく調教されておるようだな。高位の従魔だから、1人の時は連れて歩くがよい。その身を守ってくれるだろうて。儂の従魔も紹介せんとな、『ポチ』、『タマ』!」

 ガーグ老が名を呼ぶと、2匹の白梟が高速で空から滑空かっくうしてくる。
 絶対、梟の速さじゃないと思います……。

 Lvは幾つなんだろう?

 『ポチ』と『タマ』がガーグ老の両肩に止まり、シルバーとフォレストに向かって大きく頭を下げた。
 これは挨拶をしているのだろう。

 2匹もそれに応えて、顔を上下しうなずいている。
 従魔同士、主人が違っていても意思の疎通そつうは出来るのか……。

「さて、稽古を始めるとするかの」

 ガーグ老の一声で、部下9人が一斉に動き出す。
 私は今日も、ガーグ老から指導してもらえるみたいだ。
 
「サラ……ちゃん、今日は槍での防御術を教えよう」

 1回目とは違い、今回は攻撃ではなく防御する術を教えてくれるらしい。

 ガーグ老が見本で見せる動きを、真似しながら槍を動かしていく。
 盾術とはまた違う動作だけど、これは相手が武器を持っている事を想定しているので得物によっても変わりそうだ。

 結構難しい。
 1時間程したら、ガーグ老が敵役になっての相対稽古に変わる。

 初心者の私相手に、ゆっくりと槍で攻撃してくれたのでなんとか防御態勢を作る事が出来た。
 2時間後、本日の稽古は終了。

 旭の方を見ると、なんと今日は3人のご老人を相手に剣戟けんげきを交わしていた。
 かなり本格的な稽古になっていそうだけど、大丈夫かしら?

 兄の方は、ご老人1人と一緒に攻撃の型をさらっている。
 初回よりは見れるようになってきたかなぁ。

 ガーグ老から合図が出た事で、兄と旭の稽古も終了となった。
 旭は相当疲れたのか、地面に倒れ込んでしまっている。
 まぁ、3人が相手じゃ運動量は相当なものだったはずだ。

 この後に予定している将棋での対局は2人に任せ、私は昼食を作る事にする。
 ガーグ老達の実力の程は不明だけど、1人で5人相手にするならそれなりの時間が掛かるだろう。

 今日のメニューは何にしよう。
 『バーベキュー』・『ピザ』・『ビーフシチュー』を出したので、次は麺類?

 『肉うどん』も『ミートパスタ』もお店で食べているみたいだし、ここは『焼きそば』にしても問題ないかしら?
 後は『唐揚げ』を大量に揚げれば、お肉大好きな兄達も満足すると思う。
  
 キャベツと人参を沢山切って、ハイオーク肉は薄切りにする。
 コカトリスキングの肉を一口大に切った後、醤油・すりおろしたニンニク・味醂みりんで下味を付けよくみ込んでおいた。

 20分程寝かせた肉の水分をき取り、片栗粉をまぶして最初は低温の油で揚げていく。
 13人分だからかなりの量がある。
 1度油から取り出して、次は『焼きそば』だ。
  
 『バーベキュー台』に鉄板を置いて料理開始。
 熱した鉄板の上にラードをひいて、全ての具材を塩・胡椒して炒める。
 焼きそばの麺を20玉使用して作るのは初めてだ。

 流石さすがに一度では出来そうにないので、2回に分けて作る事にした。
 最初の分を作っている間、フライパンでは目玉焼きを焼く。

 『焼きそば』には目玉焼きが必要でしょ!
 半熟状態の黄身が麺に絡むと美味しいのよね~。

 6人分を皿に盛ると、すかさず部下の1人が取りに来てくれる。
 冷めてしまう前に食べて下さいねと声を掛けたけど、首を横に振られてしまった。

 新しい鉄板を出し急いで2回目の『焼きそば』を作り、1度揚げた『唐揚げ』を高温の油で再び揚げる。
 出来れば熱い状態のまま食べてほしいんだけどなぁ~。

 大量の『唐揚げ』も作り終え用意された席に座る。
 
「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『焼きそば』と『唐揚げ』です。それではいただきましょう」

「いただきます!」

 ガーグ老達の力強い挨拶と共に、大皿に盛った『唐揚げ』の争奪戦が始まった。
 今回は、旭も遅れてはならじと最初に取り皿に取ったようだ。

 あぁ、レモンを掛けたいなぁ。

「こりゃまた、食欲をそそる匂いだわ。サラ……ちゃん、この料理はフォークで食べんのかの?」

 『焼きそば』を前に、ガーグ老が首をかしげる。
 『ミートパスタ』はフォークで食べる物だったので、不思議に感じたのかも知れない。

「はい『焼きそば』は、お箸で食べて下さいね」

「そうか、どれ……。おおっ、また変わった味がするわ。でも、旨い! 『唐揚げ』は酒とよく合いそうだが、まだ対局中だから我慢するしかあるまいな」

 お酒を飲んでいないのは、この後も将棋をする心算つもりだからか……。
 酔ってしまい、頭が回らなくなった状態で負けるのが嫌なのかしら?

「お兄ちゃん、ガーグ老達の腕はどうだった?」

 好奇心から、ご老人達の腕前をこっそり聞いてみると兄と旭が何故なぜか奇妙な顔付きになる。

「いや、どことなく知り合いの指し方に似ている気がするんだが……」

「賢也の方も? 俺も、何だか棋譜きふの状態に見覚えがあるんだよね~」
 
 2人の感想を聞いて、私は首をひねってしまった。
 将棋はした事がないから、今一言っている意味が分からない。

 指し方に個人で特徴があるという事かしら?
 それが知り合いと似ていると思っていいの?

 でも将棋や囲碁って研究されつくしているから、有名人を真似ている事もあるんじゃないかなぁ。

「まぁ、そこそこ強い感じだ」

 兄が強いと言うのなら、ガーグ老達はかなりの腕を持っているんだろう。
 今回は製麺店の従業員を相手にした時とは違い、1対1で対局にのぞんでいたからね。

「お二人は強いのぉ、今のところ誰も勝てずにおるわ」

 ガーグ老の言葉に、少し悔しさがにじむ。
 どうやら負けず嫌いらしい。

 これは長引きそうだ。
 全員一局では終わらないかも知れない……。

 えぇっと、私は午後からサヨさんと衣装を作りたいので兄達を置いていきますね!

 --------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 --------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇