自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第427話 迷宮都市 家具の依頼と演舞の衣装作り&『鰻の蒲焼』

 昼食を食べ終わり、兄達を残して私はサヨさんと衣装作りをしないといけない。

 部下と兄の対局の様子を見ているガーグ老に、予定があるので先に帰る事を告げる。

「今日も稽古ありがとうございました。私はこれから用事があるのでお先に失礼しますね。あっ、家を建てているんですが、6部屋分の家具を注文してもいいですか?」

「お疲れ、サラ……ちゃん。今日も旨い飯をありがとうの。料理のお陰で若返った気分だわ。家具なら幾らでも儂らに頼むがいい。勿論もちろん、お礼は料理でよいぞ!」

「助かります。じゃあ、ちょっとトレントを出しますね」

 私は事前に枝を切り落としておいたトレントを地面に20本置いた。

「これくらいの量があれば足りますか?」

「6部屋分なら問題なかろう。あ~サラ……ちゃん。儂には実は息子達がおってなぁ、作ってくれた料理の話をしたら自分達も食べたいと言い張り困っておる。悪いが、次回の稽古に息子達も参加してよいだろうか? 何、あやつらもそこそこ武術の腕はある。お仲間の相手くらいは出来るだろう」

 ガーグ老には、息子さんが数人いるらしい。
 亡くなったお孫さんは、複数いる息子さんの子供だったのだろうか?

 そしてガーグ老が言う、そこそこの腕は相当の技量があるとみてよい。
 あぁ、旭の相手が3人から4人以上に増えそうね。

「ええ、大丈夫ですよ。息子さん達は何人いるのですか?」

 何故なぜかここでガーグ老は即答せず、一瞬黙り込んでしまった。
 数秒後に口を開く。

「あぁ、3人だったかの。……いや5人は多すぎだわ」

 ??
 自分の息子が何人か、ご高齢だから忘れてしまっているのかしら?
 しゃんとしているので、けてるようには見えないんだけど……。
 
「3人で間違いありませんか?」

「あぁ、すまんの。年を取ると記憶がどうも曖昧あいまいになっていかんな。儂の息子は3人だ」

「分かりました。息子さん達に会えるのを楽しみにしてますね」

 そう言って、私は家具工房の門から出た。

 さて、次は華蘭からんに寄ってサヨさんを迎えに行かなくちゃ。
 少し時間が押していたため、大通りをシルバーの背に乗って移動する。

 フォレストは寂しそうな兄の表情を見て、家具工房に置いていく事にした。
 見送りの心算つもりなのか、『ポチ』と『タマ』が私達の後を付いて上空を飛んでいる。

 昼食時には2匹の背中に乗って楽しそうにしていたので、ガーグ老の従魔とは大分仲良くなったみたいだ。
 念話で会話が出来るのかしらね。

 華蘭からんに到着すると、『ポチ』と『タマ』が旋回しながら家具工房へ帰っていった。
 サヨさんを老紳士に呼んでもらい、ホームの自宅に移転する。

 早速さっそく、先週の続きから作業だ。
 サヨさんが作ってくれた型紙に合わせて、最後の1人分を裁断する。

 サヨさんの方はミシンで縫い合わせる作業をしていた。
 私はミシンを使う事が苦手なので残りは任せ、クリスマス会用の衣装を購入しに行こう。

 サヨさんに外出する事を断ってから、サンタの衣装はどこで買えるのか考える。
 コスプレ衣装が売っているお店となると、百貨店にはないだろう。
 
 ここはやっぱり〇ンキかな?
 幸いマッピングで行ける範囲にあったので、移動し店内に入る。

 衣装コーナーをのぞくと、サンタの衣装がそろっていた。
 私は若くなり、一度着てみたかった衣装を手に取る。

 やっぱり可愛いなぁ~。
 異世界基準ではスカートが短すぎるかも知れないけど、膝丈だし下に黒いスパッツを穿けば問題ないだろう。

 要は肌が露出していなければいいのだ。
 リリーさんとアマンダさんも、同じ衣装に決めよう。
 サイズはSとLでいいかな?

 赤いワンピースとボレロのセットを各1セット。
 それに、男性用のサンタの衣装はM・L・3Lを各1セット購入。

 自宅のアイテムBOXに追加登録し×365をすれば、人数分買う必要はないからお得な気分だ。
 クリスマスの概念がない異世界人には、ツリーも必要ないか……。

 あぁそうだ、室内は土足厳禁だからスリッパを購入しておこう。
 これは100均の方が安いな。

 100均に移動して、男性用M・L・2L、女性用M・L、子供用S・M・Lを各1組購入。
 同様に自宅のアイテムBOXに登録し×365をしておいた。

 家が完成したら、下駄箱を作らないといけないな。

 ホームの自宅に戻ると、3時を過ぎていたので一度休憩を入れる。
 サヨさんにコーヒーのお伴に何を食べたいか確認すると、今日の気分はチョコレートケーキらしい。
 私はブルーベリータルトにした。

 コーヒーを飲みながら、サヨさんが以前購入した本のお礼を言ってくれる。

「お店の営業中に、2階の自宅で読んでいるのよ。もう楽しくて、本当に嬉しいわ。日本語も懐かしいわよね。私は姿が変わっているでしょう? 娘に信じてもらえないかも知れないと思って、手紙を書こうと思うの。筆跡が同じなら、内容を読めば分かってくれるのではないかしら?」

「あっ、それはいい方法だと思います。私も別人になっているから、本人だと分かる内容の手紙を書いておいた方がいいですね!」

 2人で、ふふっと笑いながら母が驚く姿を想像する。
 忘れない内に、レターセットをサヨさんに渡しておこう。

 何度も書き直す事になるかも知れないので、ボールペンではなく鉛筆がいいと言われ、私は消しゴムと一緒に渡してあげた。

 サヨさんが娘に書く手紙の内容は、どんなものになるのかな? 
 私は、子供の頃の他愛無いエピソードを書こう。
 母が忘れていなければ、本人だと分かるだろう。

 その後、サヨさんが残りの衣装を縫い上げて7人分が完成した。
 仕事が早い!

 毎週、旦那さんを独りにさせられないからと今日は家に帰るそうだ。
 サヨさんを華蘭からんまで送り届け、家具工房へ兄達を迎えにいく。

 まだ対局中らしい。
 兄とガーグ老、旭と部下の1人が将棋を指していた。
 
 盤面を見ると、兄と旭の方が優勢だ。
 私は対局が終わるまで待っていよう。

 お留守番をさせたフォレストを呼んで、「いい子にしてた?」と聞くと尻尾を体に巻き付けて甘えてくる。
 対局中の兄に、放っておかれたのかしら?

 皆が将棋盤を見つめる中、そろそろお腹も空いている頃だろうと私は夕食の準備を始める。
 今日はまだお酒を飲んでいないだろうから、おつまみ的なものが良いかしら?

 香織かおりちゃんが食べたがっていた『鰻の蒲焼』を、大量に作っておこうと決めた。
 ご老人達にも効果はあるのかな?

 迷宮ウナギを食べやすい大きさに切って、バーベキュー台を出し網焼きする。
 まだタレに浸けていない時点で、魚が焼ける香ばしい匂いがしてきた。

 すると、ご老人達の視線がちらちらとこちらの方に向く。
 対局の邪魔をしているわけじゃないんだけど……。
 結構、匂いが充満するから仕方ない。

 そして一度素焼きした鰻をタレに浸けて再び焼くと、今度は暴力的なまでの匂いが辺りにただよい始める。
 対局中の4人もそわそわしている感じだ。

 鰻が焼ける前にどうやら決着がついたらしく、ガーグ老が「テーブルの準備をせよ! 酒も持って参れ!」と指示を出していて笑ってしまった。
   
 焼きあがった鰻を部下の1人が取りにくる。
 兄達は肝焼きも食べたいだろうと、串に刺した物を焼いていく。
 全員分焼きあがった所で私も席に着いた。

「おぉ、サラ……ちゃん。今日は夕食まで悪いのぉ、これが夢にまで見た迷宮ウナギの蒲焼だな!」

 まだ料理名を言っていないけど……。
 お孫さんか、主人だった王族の方に聞いた事があるのかしら?

「えぇ、夕食は『鰻の蒲焼』です。この料理は私も大好きなんですよ~。肝焼きも美味しいので是非ぜひ食べてみて下さいね。それでは皆さん、頂きましょう!」

「頂きます!」

 例によって、ご老人達が待ってましたとばかりにかぶりつく。
 お酒は後回しのようだ。

 余程、匂いにやられたのだろう。

「あ~、これは最高に旨い! 息子達にも食べさせたかったわ! 今日はおらんで残念だったの」

 ガーグ老の息子さん達なら、丁度ウナギの効能が発揮される年齢かもね。
 兄は旭に、日本酒を出すよう言っている。

 製麺店での夕食時にお酒を陶器の壺に入れ替えていたので、今回はそのまま出す事はしなかった。
 既に入れ替え済みの壺にしたらしい。

 兄と旭が、おちょこを出してご老人達に日本酒を振る舞っていた。
 度数の強いお酒を飲んだガーグ老が、「かぁ~、これは体にみるわい」と言いながら杯を重ねている。

 肝焼きも好評で、お酒に合うと皆さんすごい勢いで食べていく。
 その後は、今日の対局について感想を言い合っていた。

「儂は、ひ……主人に一度も勝てんかったな。あの方は、いつも勝負をいどまれて勝つとよく王宮を抜け出されておったわ。最後に、一度くらい勝ちたかったが……」 
 
 ガーグ老が、以前仕えていた王族の話をする。
 引退したので、もう王宮には出入り出来なくなってしまったのかな? 

 遠い目になりながら懐かしそうに語る。
 兄がそれを聞いて興味を持ったのか質問していた。

「ガーグ老に将棋を教えた方は、男性でしたか?」
 
「いや、女子おなごであったよ。少々、男勝おとこまさりな所もあったがの。お主らの指し方は、儂の主人によく似ておる」

 それを聞いて、兄と旭は顔を見合わせたのだった。

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