自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第435話 迷宮都市 地下14階 兄の添い寝&夢に出て来た妹 5

 その日の夜、ホームの自宅でお風呂を済ませた私達は安全地帯のテント内で就寝する事にした。
 兄と旭は、毎晩テント内で私の従魔と一緒に寝ている。
 でも、私がダンジョンで夜を過ごすのは初めてだった。
 アマンダさんから全ての呪具は解除済みだと聞いているけど、知らない内に何かが起こってからでは遅い。
 
 最も速く移動出来る私達が、ダンジョン内にいれば対処出来るだろう。
 マジックテントには、侵入者防止の結界が付与されているため1人でいても危険はない。
 周囲には兄と旭、アマンダさんとダンクさん達のマジックテントが張られているから安全だ。

 誰もいないなら自宅のベッドを持ち込んでも構わないだろうと、6畳くらいの広さがあるテント内に設置した。
 これで快適に眠れる。
 でもその前に……。

 地下19階にいるジョンさん達が気になっていたため、兄には内緒で地下19階へ移転した。
 明日の朝には連絡が届くかもしれないけれど、その前に安心しておきたかったのだ。
 安全地帯の様子をマッピングでうかがうと、一つだけテントが張られている。
 3Dの状態に切り替えてテント内を見てみよう。
 
 良かった……。
 6人とも全員無事で怪我を負っている様子もない。
 ダンクさんの母親であるルイスさんは治癒術師だから、既に治療済みの可能性もあるけど、ジョンさんの表情は普段通りに見える。
 やはりアマンダさんの予想通り、地下19階に呪具は設置されていなかったんだろう。
 懸念事項が解決したので、私は再びテント内に戻った。

 月曜日から大騒動だった所為せいで、気分が高ぶっているのか直ぐに眠れそうにない。
 異世界に転移してから、こんな経験はした事がなかった。
 それでも明日に備え目をつぶり横になろうとしたところで、兄がテントの外から声を掛けてくる。

「沙良、まだ起きているか?」

「お兄ちゃん? うん、まだ起きてるよ」

 返事をすると、兄がテント内に入ってきた。
 こんな遅い時間にどうしたんだろう?

「沙良、大変な一日だったな。怖かっただろう、よく頑張った」

 そう言って私をぎゅっと抱き締め、あやすように背中をポンポンと叩く。
 もう、子供じゃないのに……。
 そんな言葉を言う間もなく、私の目から涙がこぼれだす。
 今日一日、知り合いの誰かが亡くなってしまうのを私は恐れていた……。
 兄に心中をおもんぱかられ、必死で耐えてきた気持ちが我慢出来なくなってしまう。  

 広い胸の中で子供のように泣きじゃくる私が疲れ眠るまで、兄はずっと付き添ってくれたのだった。 
 こんな時、私は一生兄に勝てないだろうなぁと思う。
 子供の頃から弟妹の面倒をよくみてきた長男は、些細な変化も見逃さない。
 だから、隠し事が大抵バレてしまうんだけどね~。
 それでも私が秘密にしている件は、絶対最後まで隠し通そう。

 兄に添い寝をしてもらった夜。
 私は再び香織ちゃんの夢を見た。
 今回は、私がまだ子供の頃を見ているようだ。
 怖い夢を見た私が眠れなくなり、兄のベッドに潜り込んでいる。
 今と同じように抱き締められ背中をポンポンと叩かれ、安心して眠りに就いていた。
 夢の中で現実に起こっている事が連動しているのかしら?
 
 次の場面は、兄と冒険者をしている姿だった。
 ミリオネの森で薬草採取にはげんでいるところを見て、あれ? と思う。
 どうして香織ちゃんは、私達が異世界で冒険者になっているのを知っているのかしら?
 もしかして、ずっと私の夢を見続けているの?

 同じ異世界にいるのを知っているのなら、早く会いたいと願っているはずだ。
 夢の中で私達の居場所が分かるのに探しにこないのは、まだ幼いから1人で行動出来ないんだろうか?
 それとも行動を制限されているのか……。
 リースナーの町で旭と再会する場面もあった。

『旭さんがダンジョンマスターだったなんて驚いたよ! でも賢也お兄ちゃんは、すごく嬉しいだろうなぁ~。旭さんが亡くなってから、ジムにも通わず仕事ばかりしていたもんね。沙良お姉ちゃんが召喚したので、ダンジョンから出られるようになったみたい。これからは3人で冒険者をするのかな?』

 その後、迷宮都市のダンジョンで攻略をしている姿も見ているようだ。

『冒険者は楽しそうでいいなぁ~。私も魔法を覚えたい! 大きい魔物はちょっと怖いけど、沙良お姉ちゃんみたいにカーバンクルをテイム出来たら嬉しい!』

 香織ちゃんは、冒険者をしてみたいのか……。
 じゃあ年齢は10歳以上なんだろう。

『あ~、テステス。沙良お姉ちゃん、聞こえる? 時間がないからよく聞いてね! 雫ちゃんはカルドサリ王国の……うとにいるよ! C級冒険者になって、ダンジョンを攻略してるから! 迷宮都市にもいたんだけど……』  
  
 最後のメッセージは、いつものように肝心な所が途切れている。
 香織ちゃん、なんで全部聞こえないの~!
 夢の中で歯痒はがゆい思いをしながら、私はそのまま眠ってしまったみたいだ。

 翌日の朝。
 やけに温かいと思ったら、私は兄に抱き着いていたらしい。
 あ~、やってしまった!
 兄は相当、寝心地が悪かっただろうなぁ。
 まぁ、旭で慣れているから大丈夫よね?

 私が身動きしたので、目覚めた事に気付いたのだろう。
 兄から「おはよう」と挨拶の言葉を掛けられる。
 私は少し恥ずかしく、非常に小さな声で「……おはよう」と返した。
 寝起きの状態で旭を迎えにいくのは避けたい。
 兄と一度ホームの自宅に移動し洗顔を済ませた後で、旭を回収しにいった。

 昨夜見た夢の話をしたいので、朝食は簡単に出来るパン食にした。
 厚切トーストにスクランブルエッグとウインナーを炒めた物、でておいたブロッコリーとミニトマトを皿に盛り付ける。
 インスタントのポタージュとコーヒーをれたら完成だ。

「お兄ちゃん、旭。また雫ちゃんの夢を見たよ!」

 朝食を食べながら私は話を切り出す。

「えっ! 雫が何処どこにいるか分かった!?」
 
 妹の話題に旭が身を乗り出してきた。

「うん、カルドサリ王国でC級冒険者としてダンジョンを攻略しているみたいだよ? どのダンジョンかは、また途中で聞こえない部分があって、ウト・・しか分からなかった……」

「この国の地名が全て分かる訳じゃないからなぁ。ただダンジョンの数は、そんなに多くはないだろう。それが分かっただけで、大分はっきりした。ウト・・が付く地名を探してみよう」

「雫は冒険者になっていたんだ……。じゃあ、転生した体は健康なんだよね?」

 旭が雫ちゃんの体の状態に気付き、瞳をウルウルさせている。
 今にも両目から大粒の涙があふれそう。
 生きている間に間に合わなかった、心臓移植を思い出してしまったのかも知れない。

「冒険者が出来るんだから、雫ちゃんの心臓は丈夫なんだと思うよ! 良かったね、旭。あっ、そうだ。迷宮都市にいた事もあったみたいだよ? 私達がくる前か後かは分からないけど……」

「年齢が分からないんじゃなぁ。俺達の顔を見れば気付くだろうし、たぶん迷宮都市では会わなかったんだろう」

「でも、これで雫ちゃん探しは一歩前進だよね! 他国じゃないと分かったし、冒険者をしているのも結構重要な情報だと思う」

「あぁ、探す範囲がしぼれた。ダンクさんかアマンダさんへ、地名にウト・・と付くダンジョンがないか聞いてみよう」

「うん、それが一番早いかも!」

 私達は雫ちゃんの情報がつかめた事で、朝から浮き立っていたのだった。 

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