自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第440話 迷宮都市 武術稽古&『すき焼き』&隠し子発覚

 私は今日もガーグ老の指導を受けながら稽古にはげむ。
 
 教えてもらったのは、槍で急所を狙う方法だった。
 魔法を使用する時は兄がいつも眉間を狙うのでそうしていたけど、魔物は私より大きいので短槍では突けない。

 ガーグ老から心臓部分を狙うといいと言われた。
 でも、心臓を突いたら皮に傷が付いちゃうんだよね~。

 跳び上がって首筋を狙うか……。
 槍を投げ付ける?

 しかし武器を手放してしまったら、次の攻撃が出来なくなってしまう。
 その場合は何本も槍をアイテムBOXに入れておけば、問題ないかしら?

 私はなるべく買取金額を高くしたいと思っているので、魔物の体に傷を付けて倒す方法は避けたいのだ。

 一応ガーグ老の指導通り心臓を狙った突きの型を覚える。
 実際、使用する事はなさそうだけどね。

 1時間くらいすると、ガーグ老を相手に相対稽古だ。
 勿論もちろん、私が心臓を狙ってもガーグ老が巧みに攻撃をかわす。
 
 本物の槍を使用しているので、相手に怪我をさせたらどうしようという心配は杞憂きゆうに終わった。

 私の攻撃がガーグ老へ通る事は、万が一にも有り得ないだろう。
 実力の差が激しすぎる!

 相手は老いて引退したとはいえ、王族の警護を任される程の人物だ。
 昨日、今日、稽古を始めたばかりの人間に後れを取る事などない。

 そのため、私は安心して思いっきりガーグ老へ槍を突き出す事が出来た。

 思うんだけど本物の武器を使用した相対稽古は、相手に相応の実力差がないと馴れ合いになり上達しないんじゃないだろうか?
 稽古で怪我をさせてしまうかも知れないと思ったら、手を抜くしかないしね。

 その後1時間。
 一汗かいた所でガーグ老から終了の合図が出た。

 今日は私も沢山たくさん動いたので、少し疲れている。
 兄の方を見ると、肩で息をしている様子。
 少しハードな内容だったらしい。

 旭は……、仰向けになって地面に倒れている。
 そしてピクリとも動かない。
 どうやらしかばねになったようだ……。
 
 ガーグ老の息子さん達も加わって、稽古はかなり厳しいものになったみたい。
 二日酔いがまだ続いている状態で、6人の相手はきつそうね。
 しばらく休ませてあげよう。

 私はガーグ老に稽古のお礼を言って、そばで大人しく見ていたシルバーとフォレストに槍での連携を覚えてくれたか確認をする。

 すると2匹は「ウォン」「ガルッ」と一声鳴き、地面に倒れていた旭が起き上がろうとしている所へ駆け出して、旭の両肩を再び地面に足で押さえ付けた。

 どうやら動けなくしている間に、攻撃しろと言っているらしい。
 いや、それじゃあ意味がないんだけど……。
 
 止めを刺すだけならば今までと変わらない。
 従魔達と槍での連携は、もう少し私に実力が付かないと無理そうだ。

 きっと私が攻撃する前に、心配した従魔達が身動き出来ないようにしてしまうだろうなぁ。

 いきなり2匹に跳び付かれた旭は、じゃれていると思って嬉しそうだった。
 可哀想かわいそうなので、私に止めを刺させようと2匹が押さえ付けている事は内緒にしておこう。

 シルバー、フォレスト、旭は私の仲間だからね?
 対象が兄じゃなかった所が、またなんともいえない……。

 2匹をそのままの状態にしておく訳にはいかず、名前を呼ぶと尻尾を振りながら私の方へ戻ってきた。
 自分達の仕事に満足しているんだろう。
 表情が褒めて褒めてと言っている。

 ちょっと意図した事とは違うけど、私は褒めて伸ばすタイプの主人なので2匹の頭をでておいた。

 さて昼食の準備を始めるか。

 3人分増えたので16人分作る必要がある。
 でも皆よく食べるので、実際は20人以上の量が要るだろう。
 あまり手間が掛かったものは作れないなぁ。

 こういう時は材料を切っただけの鍋が簡単でいい。
 メニューは『すき焼き』に決定だ!

 ネギと白菜とマジックキノコを切ってミノタウロスの薄切り肉をこれでもかと作り、皿の上へ薔薇の花弁はなびらを模して綺麗に盛り付ける。

 後は業務用寸胴鍋で冷凍うどんをでれば準備は終了。

 それをガーグ老の3人の息子達が率先して持っていってくれた。
 私はテーブルの上に4台の魔道調理器を取り出し鉄鍋を置く。

 鍋は皆で食べた方が美味しいからね~。

「おぉ、サラ……ちゃん。今日の昼食は『すき焼き』だな。一度食べてみたいと思っておった! あぁ……生卵は儂もお腹を壊すで、止めておくわ」

 また料理名を先に当てられてしまった。
 そして生卵を使用する事も知っているらしい。
 王族の方か、亡くなったお孫さんに聞いていたのかしら?

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『すき焼き』です。最後に『うどん』を入れるので、お腹を空けておいて下さいね。それではいただきましょう」

「いただきます!」

 兄と旭が、最初にご老人達へ『すき焼き』の作り方を教えている。
 テーブルの上には陶器の壺に入った『すき焼きのタレ』があるので、後は各自で肉や野菜を入れて食べてもらえばいい。

 私は3人の息子さん達の前で説明をしながら『すき焼き』を作っていった。
 熱した鉄鍋にミノタウロスの脂身を入れた後、ネギを香りが立つまで炒める。
 その後『すき焼きのタレ』を加え、沸騰ふっとうしたら肉とその他の野菜を投入。

 肉はあまり長い間火を通すと硬くなってしまうので、赤い部分がなくなったら食べ頃だ。
 最初の分だけは取り分けて渡すと、3人が取り皿を両手で受け取りながら非常に恐縮されてしまった。
 
 あのぅ~、私は一般人なので普通にしてほしいんですけど……。
 そして3人とも、生卵は要らないそうだ。

 この世界では浄化済みの卵なんてないので、仕方ないか。
 考えたら、浄化済みの卵を購入するとしたら金貨10枚(1千万円)以上する。
 そりゃ、高くて買えないだろうな~。

 初めて食べる『すき焼き』のお味はどうかしら?

 長男のゼンさんが、お箸を器用に使用して肉を一枚口一杯に頬張った。
 そして、突然涙をこぼす。

「サラ……さん。この料理は大変美味しい。今まで食べてきた料理の中で最高です! ……勝って良かった」

 と非常に味に感動してくれている。
 最後の「勝って良かった」の言葉の意味が不明だけど……。
 とにかく泣く程、美味しかったみたいだ。

 次男と三男も、一口食べた後は無言で黙々と食べている。
 お肉を沢山用意しておいて正解だったな。
 
 その後は、三男が鍋奉行を代わり兄達に作ってあげていた。
 やはり体育会系は一番年下の人が動くらしい。
 見た目は長男より老けているけどね。

 兄達が戻ってきたので、私も自分達の分を作ろう。
 あぁ、白菜じゃなく春菊を入れたい!
 そして厚揚げと蒲鉾かまぼこにゴボウもあるといいのに~。

 私達は当然、生卵を溶いた物にくぐらせて食べますよ!
 これは浄化した卵じゃなくて日本で普通に売られている物だ。

 兄が途中で鍋奉行を代わってくれたので、私も食べる事に集中する。
 ご老人達の方を見ると、皆が頬を緩ませ食べていた。

「この料理も美味しいのぉ。儂は生きてて良かったわ」
 
 ガーグ老が満足気に言って、再び鍋から肉を取り出す。
 野菜もちゃんと食べて下さいね。

 粗方あらかた材料がなくなった所で、締めの『うどん』を入れる。
 最後の『うどん』を食べていると、次男のアシュレイさんがガーグ老へ話しかけた。

「と……父さん。実は母が別れた後、弟を1人産んだのです」

「父さんっ!?」

 いや、驚くのはそこじゃないですよね?
 今、もっと大事な事を言ってましたけど!

 次男に釣られたのか、三男のキースさんもガーグ老へ言いつのる。

「あの……うちの母も、弟を産んでおります!」

 はっ!?
 何でいきなり隠し子が2人も暴露ばくろされているの?

 そしてやはり母親は3人とも違うようだ。
 長男と全く似てないのは、その所為せいね。

 ガーグ老は3回も結婚されているのか……。 

「……それは全然知らんかった。お主らの母親には悪い事をしてしまったようだ。して、儂の息子は息災かの?」

「はい、弟は元気で暮らしております。是非ぜひ一度、会って頂きたく……」

「私の弟にも会って下さい」

 次男と三男が、ガーグ老へ懇願こんがんする。

「うむ。では次回の稽古に連れて参れ。……誰か分からんが、お主らも大変だろうて」

有難ありがたき幸せにございます」

「ありがとうございます」  
  
 そうして突然、息子が5人に増えたガーグ老は苦笑していた。
 この歳になって、2人も子供が増えるとは思っていなかっただろう。

 別れた奥さんは、何故なぜずっと秘密にしていたのかしら?
 
 旭はまた稽古相手が増える事を予想したのか、1人悲壮ひそうな顔になっていたのだった。

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