自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第441話 迷宮都市 きらきら星&カエルの歌の演奏

 昼食を食べ終えると、ガーグ老達が先週のリベンジをしたいと将棋を取り出してきた。

 ここには兄達を置いていくか……。

 私は『肉うどん店』に寄って母子達に『善哉ぜんざい』を、振る舞う心算つもりだ。
 店の子供達は炊き出しに並ばないので、まだ食べていない。

 母親達も炊き出し時に子供達が食べていたのを知っているので、興味があるだろう。
 私はガーグ老に、後で兄達を迎えにきますと伝えて家具工房を後にした。
 
 店の中に入ると、先週プレゼントした木琴で子供達が『きらきら星』を歌いながら演奏している姿があった。
 初めて音の鳴る楽器を手にして、余程嬉しかったのか毎日練習していたようだ。

 音も間違っていないし、リズムも正確に鳴らされている。
 子供用に単音で教えた事もあり、メロディーも単純なので5歳でも覚える事が出来たみたいね。

「こんにちは~」

「オーナー! いらっしゃいませ。見て下さい、子供達が毎日歌いながら演奏しているんですよ~。私達も、すっかり歌を覚えちゃいました」

 母親の1人がそう言って笑う。
 演奏を楽しんでいる子供を見て嬉しそうな表情をしていた。

 普段、店の営業中は子供に構ってあげられないので、こうして成長を見られる機会を喜んでいるんだろうな。

 子供達がこんなに早く『きらきら星』をマスターするとは思っていなかったから、少し驚いている。
 それだけ娯楽が少ないという事でもあるんだけど……。

 異世界にはTVやゲーム等がないし、5歳なら通っている幼稚園や保育園に行く事もない。
 自由時間がある割に、遊べる物が少ないと思う。

「皆、沢山たくさん練習したんだね~。今度は、お母さんと一緒に演奏しようか!」

「あっ、お姉ちゃんだ! 僕、木琴一杯練習したよ~」

「私も、『きらきら星』歌えるもん!」

 私に気付いた子供達が口々に笑みを浮かべて報告してくれる。

「そっか、頑張ったね! じゃあ、お母さん達もこちらにきて下さい」

 母親達を呼び、木琴を叩く2本の棒を手渡した。
 私は歌いながら左手の動きを教えていく。

 子供達の練習を見ていた母親達は、ドレミの位置を覚えていたので割とすんなり木琴を叩きだす。
 これは子供達だけじゃなく、母親達も音の鳴る楽器を楽しんでいたのかも知れないな。

 ある程度リズムが整ったら、子供達の隣に並んで演奏開始。
 私のゆっくりとした手拍子に合わせて、母子が木琴を鳴らす。

 なかなか様になっているみたい。
 子供達は母親と一緒に鳴らす事が嬉しいらしく、楽しそうに演奏していた。

 クリスマス会での発表は間に合いそうだけど、これ1曲だと少し寂しいなぁ。

 『カエルの歌』輪唱りんしょうバージョンも教えるか……。
 この曲も単純なので、すぐに覚える事が出来るだろう。

 私は母子に2曲目を披露した。
 また新しい歌を子供達が興味津々で聞いている。

 歌った後、異世界で『カエル』はいるのか非常に気になった。
 もしかしたら、ダンジョンに魔物としていたりして……。

 歌の歌詞を聞いても母子は特に反応を示さなかったので、多分いるんだろうな。

 ワンコーラスずつ区切って、繰り返し教えていくと30分程で覚えてしまう。
 それを更に輪唱するため、ずらして演奏していくんだよと伝えると子供達が順番を決め出した。

 最初の子供が演奏を始めると、次の子供がちゃんと出番を待ってから演奏を始める。
 5人繰り返したところで終了だ。

 全員が同じ音を弾く演奏とは違い、こちらは音に釣られないようにするのが少し難しい。
 最初は失敗してしまったけど、何度も演奏するうちに段々音が正確になっていった。

 5歳で、これだけ出来るなら将来音楽家の道も開けるかしら?
 
 子供達の演奏を聞いていた母親達が、少しそわそわしている。
 一緒に演奏をしたいのかな?

 私は先程と同じように左手の動きを母親達に教え、子供達と一緒に『木琴』を叩いてもらった。
 母親と一緒に演奏が出来て、子供達も満足そうにしている。

 最後の子供の歌が終了した後で、

「お姉ちゃん。『カエル』って何?」

 爆弾発言を投下されてしまう。

 えっ?
 知らないで歌っていたの!?

 私は何と答えるべきか悩んでしまった……。
 異世界にそもそも『カエル』がいるかどうか、それが一番の問題だ。

 でも子供達が私に尋ねるという事は、きっと母親達も知らない生き物の可能性が高い。
 嘘はなるべくなら付きたくないけど……。

「『カエル』は、ダンジョンにいる魔物だよ! まだ、お姉ちゃんも見た事ないんだけどね~」

 ここはもう魔物で押し通そう。

「へぇ~、僕初めて聞いた~。じゃあ、『カエル』の魔物は歌うんだね!」

 あぁ、純粋な子供達をだましてしまった。

「どっ、どうかな~? お姉ちゃんが『カエル』の魔物を見付けたら、確認しておくよ!」

「うん、楽しみだね~」

 そうニコニコと言われて私の良心がうずく。
 どうか『カエル』の魔物が、ダンジョンにいますように……。
 そして、セイレーンのように鳴き声が魅了系の魔法であってほしい。

 これ、クリスマス会で演奏したら駄目かも?
 ダンクさんとアマンダさんに事前に確認しておこう。

 これ以上『カエル』について聞かれると困るので、甘い物で気をらすか。

「今日のおやつは『善哉ぜんざい』だよ。席に着いて待っててね!」

「は~い! 今日も新しいおやつだぁ~」

「なんだろう? 楽しみ~」

 母親達に紅茶を淹れてもらい、私は作り置きしてある『善哉』を鍋に移して温め直す。
 アイテムBOXに入っているので冷めている事はないんだけど、一応フリ・・をしておかないと。
 
 スープ用の皿に『善哉』を入れ、スプーンを付けて全員分をテーブルに置いた。
 
「熱いから火傷しないように注意してね」

「いただきます!」

 小さな紫色の粒をスプーンに入れて、子供達がふ~ふ~と息を掛けながら一口食べる。

「わぁ~、何これ? 甘くて美味しい! この粒は野菜なの?」

「『小豆あずき』というのよ」   

「オーナー。『小豆』は、どこで購入したんですか?」

 『善哉』を食べた母親が興味を持ったのか聞いてきた。 

「薬師ギルドに売っているけど、『小豆』とハニービーの蜂蜜は福利厚生で店に置いておきます。後で作り方を教えるから、子供達に作ってあげて下さい」

「本当ですか? ありがとうございます! 冬の間は体が温まるから子供達も喜びます」

 甘味が少ない異世界では、母親達も嬉しいだろう。

 薬師ギルドで購入した『小豆』と、ダンジョンで狩ってきたハニービーの蜂蜜を店の常備品に追加しておく。

 その後、『善哉』の作り方を教えて店を出た。
 今度『製麺店』の従業員達にも忘れないよう食べさせてあげよう。

 今日も旭はご老人達を負かしているだろうか? と苦笑しながら、兄達を迎えに家具工房まで歩く。
 負けず嫌いらしいガーグ老達が、兄達に勝つ日は何時いつになるのかな……。

 それまでに、私の槍術がステータス表記されているといいなぁと思うのだった。  

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