自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第442話 迷宮都市 謎だらけの王族

 『肉うどん店』から出て町を歩いていると、マッピングに再び不審人物が映った。
 またアシュカナ帝国の諜報員ちょうほういんだろうか?

 どうやら私はマークされているらしい。
 これで後を付けられるのは3度目だ。

 いつも行動を起こそうとする前に、倒れてしまうんだけどね。
 今日はどうだろうと様子をみていると、やはり直ぐに地面に倒れてしまう。

 カルドサリ王国内で、誰かがひそかに諜報員を処理しているのか……。
 姿を一切見せない事から、遠距離で敵を倒す手段があるものと思われる。

 吹き矢とか?

 ちょっと忍者みたいだなぁと思いつつ、まぁ私自身に害がないなら問題ない。
 事前に対処してもらえるので、行動しなくて済むしね。

 誰だか分からないけど、優秀な国内の諜報員さん達に心の中でお礼を言っておいた。

 そのまま歩いていると上空に2匹の白ふくろう旋回せんかいしているのが見える。
 きっとまた、ガーグ老に私が行く事を伝えるのだろう。

 いいなぁ~梟便。
 兄には即座に却下されてしまったけれど、いたら便利だと思うんだよね~。

 1回使用する毎に、銀貨1枚(1万円)の魔石が必要になる通信の魔道具より活躍しそうだ。
 購入してみたものの、結局まだ1度しか使用していない。

 兄達は使っているのかしら?
 いつも一緒にいるので、伝えたい事があれば面と向かって言ってるか……。

 家具工房に到着し門を開け中に入っていった。
 ガーグ老の3人の息子さん相手に、旭が三面指しをしている姿がみえる。

 息子さん達は将棋を指すのは初めてなのかしら?
 旭は午前中にしごかれたお返しに、手加減なしで攻めているみたいね。

 表情がニンマリとしているので、やり返す事が出来て満足しているんだろう。
 まぁなんとも可愛らしい仕返しだ。

 兄の方は部下の1人と対局中で、その盤面の動きを全員が真剣な表情で後ろから見ていた。
 私に気付いたシルバーとフォレストが駆け寄ってくる。

 前回フォレストだけを置いていったら1匹で寂しそうだったので、今回は仲間のシルバーも一緒に置いて行く事にしたのだ。

 どうせ今日も、将棋に夢中な2人に構ってもらえずいたに違いない。
 2匹の体をでていると、ガーグ老がそばにきた。

「サラ……ちゃん、お帰り。もう少しで終わるで、待ってくれんかの」

「はい、対局が終了するまで待っていますから大丈夫ですよ」  

「悪いのぉ、皆2人と将棋を指すと主人を思い出して懐かしいのだ」

 もしかしたら身内かもしれない王族の方よね?
 少し探ってみようかしら……。

「ガーグ老に将棋を教えてくれた人物ですが、女性でしたよね。将棋は珍しい遊びですが、その方は他にも何か知っていましたか?」

「うむ。ひ……主人は、何でもよく知っておられたわ。『けん玉』や『竹馬』、『メンコ』・『コマ』等を自作されて一緒に遊んだものだな」

 う~ん、その遊びを知っているのはイギリス人の祖父ではなさそう。
 祖父は日本人の祖母と結婚してから日本に移住したので、父は日本産まれ日本育ちだ。

 祖母と知り合ったのは、お互い友人の紹介だったと聞いた事がある。
 そんな2人が出会い、結婚して父が生まれたのだ。

 当時ハーフの人は日本には少なかったから父に初めて会った時、母は咄嗟とっさに外国人だと思い英語で「ハロー」と挨拶したらしい。
 けれど逆に「初めまして」と流暢りゅうちょうな日本語で返され、絶句したと言って笑っていた。

 父は英語より日本語の方が上手く話せるそうで、家ではいつも日本語で話をしていたんだよね。
 だから私も父がハーフなのに、英語は話せなくて残念だ。
 
 兄は見た目から、外国人によく英語で話しかけられて困っていたし……。
 小さい頃から英語に触れていれば、自然に覚える事が出来たのになぁ~。
 
 両親は母方の祖母のサヨさんの死がきっかけで結婚を早めたらしい。
 母はどうしても生きている内に、サヨさんには見せられなかった花嫁衣裳を父親に見てほしかったのだと言う。
 
 結局、兄と私2人の孫を抱いて笑っている写真が祖父が映っている最後の1枚になったので、早くに結婚をした事は英断だったのかも知れないな。

 3歳だった私の記憶には祖父の思い出が残っておらず、また母も亡くなってしまった両親の事をあまり語りたがらなかった。

 それは多分早くに亡くした両親の死を、未だに受け入れることが難しいんだろうなと思っている。
 
 なので私にとってのお爺ちゃんとお婆ちゃんは、父親の両親だけだった。
 小さな頃から見ているのでイギリス人だというお爺ちゃんの事も、ハーフの父親の事も普通だと思って生活してきた。

 私もクォーターだけど容姿は母に似たので、兄みたいにそこまで外国の血は出なかったんだよね。
 2人とも日本にいた時はまだ元気な様子だったから、きっと王族は祖父ではないだろう。

 年齢的に可能性があるのは父?

 双子達は、『けん玉』や『竹馬』で遊んだ事はあっても、『メンコ』や『コマ』で遊んだ事はないはずだ。

 『メンコ』の作り方を知っているかどうかさえ怪しい。
 あの子達は、完全にゲーム世代で育っているから……。

 もし父なら、女性に代わってしまい驚いているだろうか?
 
 あれ?
 この状態で両親を召喚したら、どうなるんだろう?

 姿は元に戻って、年齢だけが私に合った物になるのかしら?
 そうならば、王族だった父はいなくなってしまう事になるんじゃ?

 ううん……頭がこんがらがってきた。
 これは、兄に丸投げして相談しよう。

 しばらくの間、押し黙ってしまった私をガーグ老が心配そうに見つめていた。
 あぁ、会話の最中に色々考え失礼をしてしまった。

「返事もしないですみません。少し懐かしい遊びを思い出していたんです。『けん玉』は、私も小さい頃によくしましたよ」

「おぉ、そうかの。あれは中々バランスを取るのが難しい遊びでな。主人は器用に次々と玉を移動させておったわ」

 そんな事をガーグ老と話している間に、兄達の対局は終了したようだ。
 私達は、お礼を言って家具工房を出る。

 ホームの自宅に戻り、先程ガーグ老から聞いた話を兄にしてみよう。

 夕食時、私は自分の予想も交えてガーグ老の話を2人に聞かせる。
 話を聞いた兄は、遊びの内容から父の可能性が一番高いんじゃないかと同意見だった。

 旭は逆に、祖父に将棋を教えた人物が気になると予想外の答えを返す。
 イギリス人の祖父が、最初から将棋を指せたはずはないから日本人の誰かが教えているのではと言うのだ。

 おっと、それは盲点かも知れない。
 だとしたら、同じ指し手の第三者の可能性が一気に浮上する。

「お兄ちゃん。お爺ちゃんは、誰に将棋を習ったのか聞いた事はない?」

「最初に教えてくれた師匠とは、もう一緒に指す事が出来ないといっていたから、亡くなってしまったんだと思っていたが……」

「じゃあ誰か分からないんだね。王族の人、お父さんじゃないのかも……」

「旭に言われなければ、俺も気付かなかった。一体、誰なんだろうな?」

「俺にはお手上げだよ。賢也のお爺ちゃんは、他にも教えているかも知れないし」

「そう考えたら、可能性は無限に広がっちゃうね~。女性の人かも?」

 それから私達は、色々意見を交わしたけれど結局答えは出なかった。

 そして旭の衝撃発言により、別人になってしまった人間を召喚したらどうなるかという疑問も吹き飛んでしまったのだった。

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