自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第447話 迷宮都市 楽器の購入&完成した家具のお披露目

 再び馬車でカマラさんと一緒に商業ギルドまで戻り、家の完成引き渡し書にサインをする。
 
 そこで来週、椅子取りゲームの時に演奏をする楽器を購入出来ないか尋ねてみた。
 異世界では何と呼ばれているのか不明なので、『ピアノ』に似た楽器を両手を動かして表現してみせる。
 
 指で押すと音が出る、沢山鍵盤がある楽器だと説明したら理解してもらえたようだ。
 楽器を扱っている店を教えてくれたので、商業ギルドから程近い場所にある楽器店へ歩いていく。

 店内に入ると、『ピアノ』の原型に近い物がいくつか展示されていた。
 他にも弦楽器が綺麗に並べられており、金額を確認すると金貨10枚(1,000万円)~となっている。

 庶民が買える値段ではない。
 音楽は、本当に貴族のたしなみなのか……。

 店内には若い女性がいたので、楽器の試し弾きをしたいと申し出た。
 彼女は私を頭から足のつま先までながめた後で、ぶっきらぼうに「どうぞ」と言う。

 なんか接客態度の悪い店員だなぁ~。
 
 一番手前にある『ピアノ』に似た楽器の前に座り、指慣らしを始めた。
 音階は同じだったので、次に短い楽曲を演奏してみる。

 うん、これなら問題なく弾けるだろう。
 異世界で演奏家として活動する訳じゃないので、鍵盤の数が少なくても問題ないしね。

 そこまで精度を求めず店員に購入したい旨を伝えようと後ろを振り返ると、彼女が両目を見開いて驚いた表情をしている。

「なっ、何、今の演奏!? もしかして……宮廷演奏家の人ですか?」

 この世界にない楽曲を弾いた事で、どうやら彼女に興味を持たれてしまったらしい。

「いえ、ただの冒険者です」

「えぇ~! 冒険者って嘘でしょう!? そんなに上手く弾けるのに、職業間違ってるわよ!」

「楽器を弾くのは趣味なので……。あの、これ購入したいんですけど」

 私はなるべく会話を続ける事を避けるため、書いてあった金額通り金貨10枚(1千万円)を彼女に手渡した。

 そしてお金を払ったからいいだろうと、マジックバッグに収納する。
 まだ何か言いたそうにしている店員の視線から逃れるよう、足早に店を去った。

 私の弾いた『エリーゼのために』は、異世界では先進的すぎたのかしら?
 あの楽器店には二度と行かないようにしよう。

 店を出てから人気のない場所を探して、直ぐに完成した家の庭に移動する。
 ここなら塀が高いので、見られる事なく気軽に移転出来るのが利点よね。

 私は早速さっそく、玄関に下駄箱を作る事にした。
 トレント資材を使用するより、土魔法で簡単に作成した方が早い。

 一度庭に出て、周囲の土を使用するイメージで高さ2mの下駄箱を横幅5mで作り上げる。
 完成した品をアイテムBOXに収納し、玄関に設置したら下駄箱へサイズ別にスリッパを入れていった。

 子供達には家に入る際、必ず靴を脱ぎ足を手拭てぬぐいでくよう教えているから、下にバスマットでも敷いた方が良いかしら?

 渇きが早い珪藻土けいそうどマットを敷き詰めておけば、歩く間にある程度乾くだろう。

 アパートの住人さんの家で使用していた気がするな……。
 アイテムBOX内を確認すると入っていたので、玄関入口から横一列に珪藻土けいそうどマットを置いた。

 1階で今のところ必要なのは、これくらいかな。
 後は、追々おいおい追加すればいいだろう。

 まだ時間があるので、ガーグ老に注文した家具を引き取りにいく事にする。
 門に嵌め込まれた魔石から、カマラさんの登録を解除して家を出た。

 家があるなら、馬車を止めるスペースもあるし購入を検討してみてもいいかも?
 あっ、でも御者をする人がいないと駄目か……。

 私達に馬を扱う技術はないから、誰かを雇う必要が出てくる。
 従魔なら指示通り走ってくれそうだけど、シルバーとフォレストに馬車をかせるのは可哀想かわいそう

 少し考えて、馬車を購入する事は保留にした。

 ガーグ老の工房に到着し門を開くと、今日も顔中ポーションまみれのご老人達が出迎えてくれる。
 一体、何の作業をしたら顔に怪我をするのか不思議で仕方ない。

「サラ……ちゃん。槍の稽古は、明日じゃなかったかの?」

「こんにちは。今日は注文した6部屋分の家具が出来ていたら、引き取りたいと思ってきました」

「おぉ、そうか! うむ、儂らも頑張ったでな。渾身こんしんの作品が完成しておるぞ。店内に入って見てもらうとしよう!」

 私は初めて工房に案内され中に入っていった。
 完成品は場所を取るのでマジックバッグに入れてあるらしく、店内にはひとつも家具が置かれていない状態だ。

 ガーグ老の指示で、部下の方が1つの寝台をマジックバッグから取り出す。
 私はその寝台を見て、茫然ぼうぜんとしてしまった。

 えっ!?
 何この、お姫様が寝るような天蓋てんがい付きベッド……。

 豪華過ぎて逆に眠れなくなりそう。

 4本の柱には、女神もかくやといわれる程に美しい女性の姿が彫り込まれている。
 よく見ると、それぞれ容姿が違っていて彼女達の属性を示す装飾も付いていた。

 1体は水の女神を模しているのか、綺麗な水瓶から水があふれている様子が描かれている。
 他3体は、火の女神・風の女神・土の女神と思われた。

 まるで王族が使用するような、かなり格式高い物じゃないかしら?
 
 ご老人達は武術に精通しているだけじゃなく、家具職人として繊細な技術を習得しているみたいだ。

 そんなにセンスがあるようには見えないんだけど……。

 呆気あっけに取られている私を他所よそに、飾り棚・鏡台・猫足テーブル・椅子・衣装棚・本棚と工房内に次々と家具が並べられていく。

 そのどれもに、かなり凝った文様が描かれていて完全な貴族仕様となっていた。
 確かに文句の付けようがないくらい素晴らしい作品だ。

 ただ庶民の私は、こんな立派な家具がある部屋じゃ落ち着かないけど……。

「気に入ってもらえたかの? あぁそうだ、少し横になって天井を見てほしい」
 
 ガーグ老にうながされ、天蓋付きベッドに横たわるように言われたので仰向けに寝て上を見てみる。

 中央には大きな木のそばたたずむ、髪の長い中性的な1人の男性が描かれていた。
 周囲には羽の生えた小さな妖精達? が飛んでいる。

 わずかに微笑している男性の容姿に、私は既視感きしかんを覚えた。

 この人……。
 一度会ったらきっと忘れないだろうというくらい、とても美しい人だけど……。

 何故なぜ、懐かしいと感じるんだろう?
 何処どこかで見た覚えがあるのかしら?

 でも、そんな記憶はいくら探しても出てこなかった。

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