自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第451話 迷宮都市 王都にいる雫ちゃん、そして名前は……&武術稽古 似てない5兄弟

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 2人がテーブルの席に着いた時点で、私は濃い緑茶を湯呑ゆのみを渡す。
 今夜は、それ程飲んでいないみたいだけど大事な話をするからね。
 少しは酔い覚ましになるだろう。

 2人が緑茶を飲み終わるのを待って、私は口を開いた。

「今日、また雫ちゃんの夢をみたの。はっきり王都にいるって聞こえたから、場所は間違いないと思う。名前も1文字増えて、サ…ナ……って言うみたいだよ!」

 私の話を聞いた2人が顔を見合わせる。

「王都か……。探しに行くのを反対はしないが、出来れば向かいたくない場所だな。ものすごく嫌な予感がする」

「アシュカナ帝国のターゲットになっているダンジョンがあるんだっけ……。2人ともごめん! 俺、雫を探したいからどうしても行きたい!」

「うん、雫ちゃんも待ってると思う。来週、王都に探しに行こう!」

「その前に、呪具が設置された場合を想定して『毒消しポーション』を用意しておこう。沙良、ポーションを出来る限り購入しておいてくれ」

「分かった。量は沢山あった方がいいよね。直接、薬師ギルドに行って買ってくるよ」

 これで、雫ちゃん探しは1歩前進だ。

「それにしても、そのサ…ナ……って名前は、お前が公爵邸から追い出した連れ子にも当てはまる。ないとは思うが、似ているのは嫌な気分だな」

 兄が最後に、とても不吉な事を言う。

「やめてよ~。雫ちゃんは、絶対そんな事しない優しい子だもん」

「妹は子供を虐めるようなひどい事はしないよ」

 すかさず私と旭が兄の意見を否定した。

「知ってる。ただの杞憂きゆうだ」

 兄の言葉に私と旭が押し黙る。

 まさかね……。
 そんな事がある訳ないと自分に言い聞かせながら、嫌な予感がぬぐえなかった。

 そして大抵の場合、悪い事は当たるのだ。
 どうか、サリナだけはない・・事を願おう。

 翌日の日曜日。
 朝7時に教会の炊き出し準備を始め、9時に具沢山スープとパンを配る。

 集まっている子供達に来週の日曜日は予定を空けておいてね、と言うと皆が嬉しそうな顔になった。
 もう何度も色々なもよおしをしているので、また何か楽しい事があると思ったようだ。

 期待に満ちあふれた表情が見れて、クリスマス会をするのは正解だったな。
 娯楽の少ない異世界で、私が提供出来る数少ない内のひとつだ。

 珍しい料理や冬の防寒着も嬉しいと思うけど、子供らしく遊べる時間を過ごす事も必要だからね。

 帰り際、兄が子供達に大きなみかんを配って見送る。
「来週、楽しみに待ってるね~」と、子供達が手を振り帰っていった。

 お兄ちゃんやお姉ちゃんに、小さな子供が手を引かれて歩く姿が微笑ほほえましい。
 大家族で助け合いながら過ごした経験は、大人になってきっと活きるだろう。

 私達は、その後ガーグ老の家具工房へと歩き出す。
 知らない間に増えた息子2人に会うガーグ老は、今頃ドキドキしているかしら?

 旭は、違う意味でドキドキしていそうね~。
 稽古相手が8人に増えるのは、悪夢だと思っているかも。

 家具工房の扉を開けると、いつも通りご老人達が出迎えてくれる。
 昨日とは違い、今日は顔に怪我をしていないようだ。

 日曜日は仕事をしないのかな?

 ガーグ老の隣には、先週会った3人の息子さんが並んでいる。
 そして三男であるキースさんの右側に、初めて会う男性2人がいた。

「こんにちは。今日も、よろしくお願いします。初めまして沙良です」

「よろしくお願いします。沙良の兄の賢也です」

「よろしくお願いします。メンバーの旭です」
  
 新しく会う2人の息子さんへ、自己紹介を済ませる。

「サラ……ちゃん、いらっしゃい。そこにいるのが儂の息子らしい……四男と五男だ。ほれ、自分達で名乗るがいい」

 ガーグ老、息子らしい……って言っちゃってますけど?
 そして四男と五男の2人が、更に老けて見えるのはどうしてですか?

 で、一番気になるのは兄弟だというのに全く似てない事ですよ!
 3兄弟は母親違いで似ていない事も納得出来るけど、四男と五男は両親が同じなんですよね?

 欠片もガーグ老の遺伝子が見当たらない……。
 母親にだまされて、別人の子供を押し付けられてるんじゃ?

「私は四男のフランクと申します」

「私は五男のジルと申します」 

 2人がいきなり私の前に片膝を突き頭を下げたので唖然あぜんとし、思わず後退あとずさってしまう。

 まるで忠誠を誓う騎士のような行動だ。

「これっ! サラ……ちゃんが、驚いているではないか! すまんの、こやつらは姫様の護衛をしていた事もあるでな。つい、同じ行為をしてしまったようだ」

 ガーグ老が2人をたしなめ、その行動の原因を話してくれる。
 カルドサリ王国の姫君を護衛していたらしい。

 うん?
 じゃあ、職場が同じだったのか……。

 知り合いが突然息子だと言われたガーグ老は腰が抜けそうな程、驚愕きょうがくしたかも知れないなぁ。

「はっ! ごと……父上、申し訳ありません」

「気を回せず、申し訳ない事でございます」

 2人は、直ぐに立ち上がると直立不動の姿勢になった。

 いや~、5人の息子さん達はどう考えても部下にしか見えないし、兄弟の順番も間違ってるよ!
 色々思うところはあるけれど、他人の家族に口を挟む野暮やぼな真似はしないでおこう。

 私は、別れた奥さんに騙されているガーグ老が気の毒で仕方なかった。
 異世界には親子鑑定もないから、母親があなたの子供だと言えば夫は信じるしかない。

 子供達は本当の父親を知っているんだろうか?

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