自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第457話 迷宮都市 兄のマンションをホームに設定 1

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 土曜日。

 2匹の間に挟まり寝てしまった私は、昨夜兄達を迎えに行っていない事に気付き飛び起きた。
 あぁ、でもこんな時のために車と一緒に店へ送り届けているので、昨日はどこかのホテルに泊まり既に帰宅済みだろうか?

 兄達の部屋をマッピングでのぞいてみると、2人の姿はない。
 昨日送った店からの帰路を上空から俯瞰ふかんすると、店から程近い距離を走行している車が見えた。

 あぁ良かった。
 ちゃんと家に戻ってきているようだ。
 
 私は少しでも怒られないように朝食の準備を始める事にしよう。
 地下28階で獲れたあわびを使用して、昨日飲んでいる兄達のために中華粥を作る。

 蟹身と貝柱の焼売シューマイも作っておこう。
 朝から帆立のバター焼きは、飲んだ次の日には重いかも知れないしね。

 後は搾菜ザーサイをピリ辛に炒めて箸休めにすれば大丈夫かな?

 1時間後、2人が帰ってきた。
 私は速攻で忘れていた事を謝り、早く機嫌を直してもらおうとテーブル席にうながす。

 前回とは違い歩きではなく車で帰ってこれたので、兄に心配している程不機嫌な様子はない。
 まぁ今日は念願のマンションをホームに設定出来るとあって、店に置き去りにされた事はそこまで気にしてないのかも?

 旭は何とも思っていないらしく、朝から鮑入りの中華粥をお代わりしていたよ。
 兄も蟹焼売を美味しそうに食べてくれていた。
 
 上にちょこんと乗っているだけの、なんちゃって蟹焼売ではなく100%蟹身を使用した贅沢な焼売だ。
 貝柱の方も同様に作ったので、こっちも美味しいよ?

 こういう時、料理家電を使用出来るのは本当に助かる。
 しんじょを作るのは意外と手間が掛かるからね。
 昔の人は、すり鉢を使用してたんだろうなぁ。

「沙良ちゃん、焼売が絶品だね~。こんな料理を毎日食べる事が出来て、幸せだなぁ~」

 旭は本当に美味しそうに食べてくれるので、料理人としては非常に嬉しい。
 ただ兄は料理が出来ないから、今後作るのは本人になるだろうけど……。

 結婚したら、生活は別にした方が良いかしら?
 私も兄のマンションに引っ越す心算つもりだけどね。

 拠点が2か所あると、いちいち送り届けるのが面倒だし……。
 本音は、私も高級マンションで生活してみたいのよ。

 部屋数は沢山あるから、一番広い(値段の高い)部屋に住むのだ!
 大抵、上階の方が部屋数が少なくなっているはず
 その分、室内も広いだろう。

 本日の予定を確認し、先に私だけ奏屋かなでやにいき果物を卸す。
 兄達を連れ薬師ギルドで『毒消しポーション』を納品した後、いよいよ兄のマンションへ移動。

 ちらりと兄の横顔を盗み見ると、期待を隠せないのか口角が上がっている。

 待ちに待った瞬間だ。
 異世界に私が召喚してから約8年近くが過ぎている。

 兄もこんなに長くかかるとは思ってなかったに違いない。
 ようやく自分のマンションに戻れるとあって、今は早く自室の状態を確認したくてたまらないだろう。

 お父さん、お母さん、信じてるよ!
 行方不明になった兄の生存をあきらめたりしてないよね?
 さっさと死亡届を出して、家を売却していない事を願います。

「お兄ちゃん。心の準備は出来た?」

「あぁ、いつでもいいぞ」

 両親に失踪届を出されているかも知れない事は、きっと考えもしないんだろうな。
 自分の家が残っていると信じているようだ。

「じゃあするね。ホームに設定!」

 すると目前にある高層マンションの外壁が劇的に変わる。
 築何年かは不明だけど、原状回復が行われたのだろう。

 今まで入れなかったマンションの敷地内に兄が足を踏み入れる。
 そして、真っ先に駐車場へと駆け出していった。
 その後を旭が追い駆けていく。

 もし兄の車が駐車場にあれば、間違いなくマンションも無事だろう。
 旭の方は葬式も済んでいるから、可能性としてはかなり低い。

 私は、ゆっくり歩いて駐車場へ向かった。
 そして、愛車にすがりついている兄の姿を見付ける。

 どうやら両親は、まだマンションを売却していなかったらしい。
 これで召喚しても親子喧嘩が勃発する事態は避けられた。

 再会した途端、兄の恨み節が炸裂するかと思い心配だったので一安心だ。
 所で、いつまで車に抱き着いているのかしら?

 仕方がないので、兄が満足するまで待ってあげよう。
 その間に、しょんぼりと肩を落とした旭が帰ってきた。

 うん、車はなかったのね。
 可哀想かわいそうに……。
 肩をポンポンと叩きなぐさめてあげる。

「沙良ちゃん。俺の車が、どっかいっちゃった~」

 そう言って半泣きの旭が抱き着いてきた。
 それを見た兄が、すかさず旭を引きがす。
 妹に嫉妬するなんて心が狭いわ……。

「じゃあ、部屋に行こうか!」

 兄のマンションが無事な事が分かったので、私はさっさと確認した後で引っ越しの準備がしたい。
 マンションの入り口には、住人が入るためのセキュリティーがあるけど私のホームに設定したからか何事もなく通過出来た。

 日本にいた時は部屋番号を押して、兄が解除しなければ自動ドアは開かなかったんだけどね。

 そしてこのマンションには、入り口にフロントの人がいた。
 当然ながら、今は誰もいない。

 兄が住んでいる階層毎に分けられているエレベーターに乗り最上階へ。
 そして室内に入ると、私が覚えている状態そのままだった。
 
 異世界に転移してから兄を召喚するまで数か月の間に、買い替えた物はなかったようだ。
 旭は、同じ階層にある自分の部屋を見にいくと言って出ていく。

 最上階は3部屋なので、残り1部屋を私の家にしようかな。
 私も、どんな家か気になるので見に行ってこよう!

 わくわくしながら人様の住んでいた部屋に入ると……、住人は女性だったのだろうか?
 室内の雰囲気を見て、なんとなくそう感じる。
 玄関にある靴も女性物だし。
   
 とても趣味の良いインテリアで統一された空間だった。
 どれもお高そうな家具や家電に、少し尻込みしてしまう。

 取りえず、高級食材がないか調べてみよう。
 冷蔵庫を開けると、なんともいえない気分になった。

 お金持ちの人は料理をしないのか……。
 冷蔵庫には、ミネラルウォーターとワインしかなかったよ!

 素敵な内装だけど、私の趣味には合わないのでアイテムBOXに全て収納しておいた。
 ホームに設定すると時間が経過してしまうので、1階の部屋から順に次々とアイテムBOXに収納する事を繰り返していく。

 後で何があるか見てみるのも楽しいだろう。

 最後に、うっかり隣の部屋で悄然しょうぜん項垂うなだれている旭の事まで収納しそうになりあわてた。

 時間停止しているから本人に記憶はないだろうけど……。

 兄の部屋に戻ると、何故なぜかPCの前で床に両手を突いている姿が見える。
 マンションが無事だったのに、ショックを受けている様子が理解出来ない。

 旭が戻ってきて兄の傍にひざまずき、何やら小声で会話を交わしていた。
 兄はPCを指し、顔を横に振っている。

 あぁ!
 分かった!
 PCのDATAが無くなっていたんだろう。

 家電は全部、新品の状態に原状回復されちゃうからね。
 私の家にあった物も、出荷時の初期化された状態になっていた。 
 
 PCのDATAが、そんなに重要だったのかしら?
 お宝的な秘蔵コレクションでもあったみたい。
 
 今度は兄が、旭に肩を叩かれ慰められていたのだった。

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