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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第462話 世界樹の精霊王との邂逅 フェンリル女王の次代 リル 1
【リル】
その日、母親であるフェンリルの女王が私に言った。
「貴方は魔力をどれだけ与えても、吸収出来ない体質みたいね。もうこれ以上、私の下では育てる事が出来ないわ。兄妹に必要な魔力が足りなくなってしまうのよ。……これが私から貴方に与える最後の魔力結晶。どうか少しでも長く生きて……」
まだ生まれて間もない私には、お母さんから言われた事が理解出来なかった。
一緒に生まれた兄妹の中でも、体が一番小さくて成長が遅い自覚はある。
私が毎日眠ってばかりいたからかな?
お母さんが、魔力の籠った結晶を口の中に入れてくれる。
すると少しだけ、体から怠さが減った。
でもその後の記憶はない。
次に目が覚めた時、私は全然知らない別の場所にいた。
ここは何処だろう?
首をもたげて視線を彷徨わせると、森の中に大きな木が見える。
お母さん?
兄妹達の姿も見えず不安になった。
まだ眠たくて仕方なかったけど体を起こして立ち上がり、なんとか移動しようと足を動かす。
その時、後ろから声が聞こえた。
振り返ると人の姿をした小さな女の子と、赤竜と聖竜の子供が私の方へ向かって歩いてくる。
「初めまして、私はティーナよ。この子達は、赤竜のセキちゃんと聖竜のセイちゃん。これから一緒に過ごす兄妹だから仲良くしてね」
あぁ、私はお母さんに捨てられたんだ。
成長が遅い私を育てる事は難しかったのか……。
長く生きてと言ってくれたのは、最後の別れの言葉だったんだ。
じゃあ、私はもう長くは生きられないんだろう。
「貴方のお名前は何て言うの?」
家族と離され独りぼっちになってしまったショックで、私は少女から聞かれた事に答えられなかった。
「まだ名前がないのね? じゃあリルちゃん、今日から私がお母さんよ! セキちゃんとセイちゃんは、これからお兄ちゃんになるんだから、妹のリルちゃんを守ってあげてね」
えっ?
勝手に名前が付けられた!?
しかも、お母さんが名付けてくれた真名が変更されちゃってる?
私の真名は大切な人だけに教えるのよと、お母さんに言われていたのに!
ええぇ~!
そんな事があるの?
新しいお母さんとの出会いは衝撃が強すぎて、私はそのまま眠ってしまったらしい。
こうして新しい家族の下で一緒に過ごす事になった私は、ティーナがハイエルフだという事や赤竜と聖竜の子供を卵から育てた事を知っていく。
ここは世界樹の精霊王が治める精霊の森。
私達の他に小さな妖精や動物達が住んでいて、時々他の精霊王がやってくる。
不思議な事に、あれ程毎日眠たかったのが嘘みたいに体がすっきりしていた。
それはティーナが自分の魔力を限界まで私に与えてくれていたからだと知ったのは、随分後の事だった。
魔力欠乏の状態になると本人は眠ってしまうので、私は姿が幼いティーナがお昼寝していると長い間勘違いする事になる。
実際ティーナは100歳を超えていて、幼い少女ではなかったのに……。
この新しいお母さんはとても好奇心旺盛で、ある日森の中で「おっきい猫ちゃんを見付けた!」と嬉しそうにしていた。
精霊の森には森猫が住んでいたけど、そんなに体の大きな種族じゃない。
ティーナの後に兄達と付いていくと、怪我を負い臥せっている獅子の姿があった。
うん、どう見ても猫じゃないよね……。
それに怪我の状態もかなり広範囲に渡っていて、見るからに瀕死の状態だ。
命が尽きかけているようにしか見えなかった。
このままだと、臨終に立ち会う事になる。
私達の優しいお母さんは、泣いてしまうんじゃないかと心配になった。
「あれは獣人族だな、魔力があるから普通の動物じゃない。族長の子供か……」
セキちゃんが、ポツリとそう零す。
獣人!?
獅子に変態出来る種族は初めて見た。
じゃあ、きっと本当の姿は人なのかな?
ティーナは森の中央にある世界樹の葉を手に持ち、怪我をしている獅子姿の獣人へ駆け寄る。
世界樹の葉は、どんな不思議な魔法に依るものか直ぐに液体へと変わり、掌から傷口へと流れ落ちた。
すると劇的な効果が現れる。
左足にあった酷い裂傷部分が、見る間に塞がっていく。
私は世界樹の葉から作られるポーションの効果を知って驚いた。
時々体が痛くなるとティーナが飲ませてくれるから、怪我が治るなんて思いもしなかったのだ。
体内の魔力が増えて体が急に成長するために起こる、成長痛の痛み止めだと思っていた。
聞けば、兄達も飲ませてもらった事があると言う。
そのポーションは、ほんのり甘くてとても美味しい。
私に食事は必要ないけど、その甘みを感じる事は好きだった。
怪我をしていた獅子族は、傷が治療されてとても驚いているみたい。
「俺の名前はルードだ。治療に感謝する」
ルードと名乗る獅子が言葉を話したので、ティーナはビックリしたのか固まってしまった。
「猫ちゃんが喋った!」
「いや、俺は猫じゃない。獅子族の獣人だ。というか、なんで見て分からないんだ?」
ティーナは自分の魔力が桁外れにあるので、どうやら魔力を感じる事が苦手らしい。
魔力のない普通の動物と、魔力持ちの獣人の区別が付かないみたいだもん。
その後、ルードはティーナの下にちょくちょく顔を出すようになった。
魔力欠乏の状態を知り、お昼寝をしていると思っていた私達兄妹は何も出来なくて慌ててしまう。
ルードは、とても危険な状態だから周囲を見張る必要がある事を教えてくれた。
お母さんの事が心配で眠れない私達の傍で、添い寝をし寝かしつけてくれたりもする。
獅子姿のルードは体長が3mもあり、私達はそのお腹に凭れながらティーナと一緒によく眠った。
大人のルードは面倒見が良く、セキちゃんもセイちゃんもお兄ちゃんと言って慕っている。
私の事も可愛がってくれたので、直ぐに大好きなもう1人のお兄ちゃんになった。
精霊の森で家族と一緒の穏やかな時間が100年程過ぎた頃、精霊王からフェンリルの女王が会いにきていると告げられた。
私の事を捨てた、実の母親だ。
もう姿も覚えていない。
だって私のお母さんは、毎日魔力欠乏になるまで魔力を与え育ててくれたティーナだけだもん。
掌サイズだった私の体は成長し、今は森猫と同じくらいの大きさになっている。
フェンリルという種族にしてはかなり小さい個体だけど、まだ100歳だからこれから大きくなる可能性もあると思う。
魔力を蓄えられない欠陥品のこの体で生き永らえたのは、ティーナの献身があっての事だ。
大好きな私のお母さん。
私は精霊王に向かい、今頃産みの母親になんて会いたくないときっぱりと言い切った。
精霊王は、その綺麗な顔で「困ったねぇ」と呟き後ろを振り返る。
すると、そこには雄のフェンリルがいた。
「あ~、母親には会いたくないみたいだから、許嫁だけ紹介するよ」
精霊王に、一瞬何を言われたか理解出来なかった。
許嫁?
雄のフェンリルが、私の事を無遠慮に見つめて鼻を鳴らす。
むっ、感じ悪っ!
「成長したと聞いたが、えらく小さい雌だな。その体で子供が産めるのか?」
なっ、なんて失礼な雄なんだ!
許嫁との初対面は、最悪の印象を残したのだった。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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その日、母親であるフェンリルの女王が私に言った。
「貴方は魔力をどれだけ与えても、吸収出来ない体質みたいね。もうこれ以上、私の下では育てる事が出来ないわ。兄妹に必要な魔力が足りなくなってしまうのよ。……これが私から貴方に与える最後の魔力結晶。どうか少しでも長く生きて……」
まだ生まれて間もない私には、お母さんから言われた事が理解出来なかった。
一緒に生まれた兄妹の中でも、体が一番小さくて成長が遅い自覚はある。
私が毎日眠ってばかりいたからかな?
お母さんが、魔力の籠った結晶を口の中に入れてくれる。
すると少しだけ、体から怠さが減った。
でもその後の記憶はない。
次に目が覚めた時、私は全然知らない別の場所にいた。
ここは何処だろう?
首をもたげて視線を彷徨わせると、森の中に大きな木が見える。
お母さん?
兄妹達の姿も見えず不安になった。
まだ眠たくて仕方なかったけど体を起こして立ち上がり、なんとか移動しようと足を動かす。
その時、後ろから声が聞こえた。
振り返ると人の姿をした小さな女の子と、赤竜と聖竜の子供が私の方へ向かって歩いてくる。
「初めまして、私はティーナよ。この子達は、赤竜のセキちゃんと聖竜のセイちゃん。これから一緒に過ごす兄妹だから仲良くしてね」
あぁ、私はお母さんに捨てられたんだ。
成長が遅い私を育てる事は難しかったのか……。
長く生きてと言ってくれたのは、最後の別れの言葉だったんだ。
じゃあ、私はもう長くは生きられないんだろう。
「貴方のお名前は何て言うの?」
家族と離され独りぼっちになってしまったショックで、私は少女から聞かれた事に答えられなかった。
「まだ名前がないのね? じゃあリルちゃん、今日から私がお母さんよ! セキちゃんとセイちゃんは、これからお兄ちゃんになるんだから、妹のリルちゃんを守ってあげてね」
えっ?
勝手に名前が付けられた!?
しかも、お母さんが名付けてくれた真名が変更されちゃってる?
私の真名は大切な人だけに教えるのよと、お母さんに言われていたのに!
ええぇ~!
そんな事があるの?
新しいお母さんとの出会いは衝撃が強すぎて、私はそのまま眠ってしまったらしい。
こうして新しい家族の下で一緒に過ごす事になった私は、ティーナがハイエルフだという事や赤竜と聖竜の子供を卵から育てた事を知っていく。
ここは世界樹の精霊王が治める精霊の森。
私達の他に小さな妖精や動物達が住んでいて、時々他の精霊王がやってくる。
不思議な事に、あれ程毎日眠たかったのが嘘みたいに体がすっきりしていた。
それはティーナが自分の魔力を限界まで私に与えてくれていたからだと知ったのは、随分後の事だった。
魔力欠乏の状態になると本人は眠ってしまうので、私は姿が幼いティーナがお昼寝していると長い間勘違いする事になる。
実際ティーナは100歳を超えていて、幼い少女ではなかったのに……。
この新しいお母さんはとても好奇心旺盛で、ある日森の中で「おっきい猫ちゃんを見付けた!」と嬉しそうにしていた。
精霊の森には森猫が住んでいたけど、そんなに体の大きな種族じゃない。
ティーナの後に兄達と付いていくと、怪我を負い臥せっている獅子の姿があった。
うん、どう見ても猫じゃないよね……。
それに怪我の状態もかなり広範囲に渡っていて、見るからに瀕死の状態だ。
命が尽きかけているようにしか見えなかった。
このままだと、臨終に立ち会う事になる。
私達の優しいお母さんは、泣いてしまうんじゃないかと心配になった。
「あれは獣人族だな、魔力があるから普通の動物じゃない。族長の子供か……」
セキちゃんが、ポツリとそう零す。
獣人!?
獅子に変態出来る種族は初めて見た。
じゃあ、きっと本当の姿は人なのかな?
ティーナは森の中央にある世界樹の葉を手に持ち、怪我をしている獅子姿の獣人へ駆け寄る。
世界樹の葉は、どんな不思議な魔法に依るものか直ぐに液体へと変わり、掌から傷口へと流れ落ちた。
すると劇的な効果が現れる。
左足にあった酷い裂傷部分が、見る間に塞がっていく。
私は世界樹の葉から作られるポーションの効果を知って驚いた。
時々体が痛くなるとティーナが飲ませてくれるから、怪我が治るなんて思いもしなかったのだ。
体内の魔力が増えて体が急に成長するために起こる、成長痛の痛み止めだと思っていた。
聞けば、兄達も飲ませてもらった事があると言う。
そのポーションは、ほんのり甘くてとても美味しい。
私に食事は必要ないけど、その甘みを感じる事は好きだった。
怪我をしていた獅子族は、傷が治療されてとても驚いているみたい。
「俺の名前はルードだ。治療に感謝する」
ルードと名乗る獅子が言葉を話したので、ティーナはビックリしたのか固まってしまった。
「猫ちゃんが喋った!」
「いや、俺は猫じゃない。獅子族の獣人だ。というか、なんで見て分からないんだ?」
ティーナは自分の魔力が桁外れにあるので、どうやら魔力を感じる事が苦手らしい。
魔力のない普通の動物と、魔力持ちの獣人の区別が付かないみたいだもん。
その後、ルードはティーナの下にちょくちょく顔を出すようになった。
魔力欠乏の状態を知り、お昼寝をしていると思っていた私達兄妹は何も出来なくて慌ててしまう。
ルードは、とても危険な状態だから周囲を見張る必要がある事を教えてくれた。
お母さんの事が心配で眠れない私達の傍で、添い寝をし寝かしつけてくれたりもする。
獅子姿のルードは体長が3mもあり、私達はそのお腹に凭れながらティーナと一緒によく眠った。
大人のルードは面倒見が良く、セキちゃんもセイちゃんもお兄ちゃんと言って慕っている。
私の事も可愛がってくれたので、直ぐに大好きなもう1人のお兄ちゃんになった。
精霊の森で家族と一緒の穏やかな時間が100年程過ぎた頃、精霊王からフェンリルの女王が会いにきていると告げられた。
私の事を捨てた、実の母親だ。
もう姿も覚えていない。
だって私のお母さんは、毎日魔力欠乏になるまで魔力を与え育ててくれたティーナだけだもん。
掌サイズだった私の体は成長し、今は森猫と同じくらいの大きさになっている。
フェンリルという種族にしてはかなり小さい個体だけど、まだ100歳だからこれから大きくなる可能性もあると思う。
魔力を蓄えられない欠陥品のこの体で生き永らえたのは、ティーナの献身があっての事だ。
大好きな私のお母さん。
私は精霊王に向かい、今頃産みの母親になんて会いたくないときっぱりと言い切った。
精霊王は、その綺麗な顔で「困ったねぇ」と呟き後ろを振り返る。
すると、そこには雄のフェンリルがいた。
「あ~、母親には会いたくないみたいだから、許嫁だけ紹介するよ」
精霊王に、一瞬何を言われたか理解出来なかった。
許嫁?
雄のフェンリルが、私の事を無遠慮に見つめて鼻を鳴らす。
むっ、感じ悪っ!
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