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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第473話 王都へ 旭の母親との再会
唖然としている私達を置いて、もう1人の少女が更に言葉を言い放つ。
「生きていたのね! 若い姿になっているけど、賢也君と一緒にいるから直ぐに分かったわ!」
おや?
兄の事も知っているという事は……。
「もしかして、お母さんですか?」
尋ねると、少女は漸く私に気付いたようだ。
「ええそうよ。えっと……、貴方はどちら様?」
やっぱり、旭の母親だったらしい。
「姿が変わっているので分からないと思いますが、私は沙良です」
「えっ! 沙良ちゃんなの?」
「沙良お姉ちゃん!?」
2人とも驚いたみたいで、呆気に取られている。
ここで立ち話をするのも具合が悪い。
サリナはリーシャが亡くなっている事に関係しているので、素直に喜べない気持ちもある。
事情を聞く必要がありそうだしね。
「少し場所を移して、ゆっくりお話ししませんか?」
そう提案すると2人が無言で頷いたので、私は事前情報を与えずに問答無用でホームの自宅へ全員移動させた。
兄達の新居ではなく私の家にしたのは、まだ結婚した事を知らないので落ち着くまでは話さない方がいいと思ったからだ。
自宅の玄関に到着するなり、2人が同時に言葉を発する。
「日本に帰れた!」
あ~、ぬか喜びさせてしまったみたい。
「ごめんなさい。日本じゃなくて、ここは私の能力であるホーム内なんです。詳しい事情は後で説明するので、取り敢えず部屋の中に入って下さい」
そこまで広い玄関じゃないため、5人も立ったままでいると流石にすし詰め状態だ。
私から靴を脱いで部屋に入っていくと、その後に全員が続く。
リビングのテーブル席に座ってもらっても、まだ2人は信じられないという顔をしていた。
私は兄と旭に合図をし、手紙を出して彼女達へ渡す。
もう何度も同じ事をしているので、読んでもらった方が説明するより理解が早い事を分かっている。
2人は【詫び状】と日本語で書かれた封筒を目にし、はっとした表情になった。
そして旭の母親から、同じように手紙を渡される。
こちらも封筒には【詫び状】と書かれていた。
お互いの手紙を読み合い、事情を把握していく間に私はコーヒーを淹れようと席を立つ。
どうやら旭の母親はタケルの妹の体に転移したみたいね。
『手紙の人』からの能力は、アイテムBOXと光魔法。
これは、雫ちゃんの病気を治したいと思っていたからかも?
病気は治す事が出来ないけど、怪我を治療する事は可能だ。
あぁ、兄達が食べた善哉の味がしょっぱかった理由に納得する。
タケルは妹が魔法学校へ行ったきり、家に戻ってこないと嘆いていたと聞いていた。
雫ちゃんと再会していたのなら、他人である家族の下には戻らないだろうな。
18歳で亡くなった娘と一緒にいたいと思う筈だもの。
タケルには王子様と結婚出来ないとか、夢のような事を言っていたらしいけど……。
まさか本気だった訳じゃないだろう。
昼食前だったので、全員分のコーヒーと軽いクッキーを出した。
雫ちゃんの分だけは牛乳をたっぷり入れ、カフェオレにしてある。
旭の母親は、久し振りのコーヒーを美味しそうに飲んでいた。
雫ちゃんはクッキーに夢中だ。
異世界には甘味が少ないので、クッキーも食べられなかったんだね。
そうして一息付いた頃、旭の母親が口を開いた。
「大体の事情は理解出来たわ。別人になっている人数が多いから、少しややこしい事になっていそうね」
「いや、母さんが俺より若くなっているのが信じられないよ! それに雫は、どうしてリーシャを虐めていたの?」
旭が妹を窘めるように少し強い口調で詰問する。
それは私も聞きたかった事だ。
あんなに優しかった雫ちゃんが、母親の虐待を止めず更には加担していたなんて、どうしても納得出来ない。
「実は私がサリナとして記憶が戻ったのは日本で亡くなった後、目が覚めてからなの。既にサリナは12歳になっていて、記憶自体はあるんだけど私としての行動じゃないよ。直ぐに、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だって気付いたしね」
「乙女ゲーム?」
そこで初めて私達は、この世界が乙女ゲームの舞台である事を知った。
ゲームの内容を簡単に説明してくれたんだけど、そもそもリーシャは亡くなる設定だったらしい。
悪役令嬢であるサリナ(雫ちゃん)がリーシャの代わりに王子様の婚約者になり、魔法学校で主人公のアリサ(母親)に嫌がらせをして断罪される王道の話だった。
だから、私に公爵邸を追い出された事は非常に感謝していたんだそう。
記憶が戻った後、サリナの母親からリーシャを守ろうとしてくれていたんだって。
雫ちゃんの記憶が戻ったのは、タイミング的に私がリーシャの体に転移して直ぐの事だったようだ。
となると、父親が帰ってきた時に同席していたのは雫ちゃんなのかな?
私が覚えた違和感の正体は、18歳の雫ちゃんの態度が12歳の少女に見えなかった事が原因かも知れない。
雫ちゃんがリーシャを虐めていた訳じゃないと知り安堵した。
旭は突然、妹から乙女ゲームの悪役令嬢で母親が主人公だと言われ混乱しているようだけど……。
私は悪役令嬢物の小説も、しっかり読んでいたので理解が早い。
もうこうなると、ストーリー通りに進む事もないだろうなぁ。
乙女ゲームの件は、そんなに気にする必要はなさそうだ。
私が家から追い出してしまった事で、雫ちゃんが独りになってしまったけど本当の母親と会えたのなら、それも間違いではなかったと思う。
最初からすれ違い続けた私達が、再会するまでに8年。
その長い空白の時間は、これから埋めていけばいい。
雫ちゃんも、今はとても健康な体になり母親と2人で王都のダンジョンを攻略していると言う。
ならば私達と一緒に冒険者をすれば、旭も家族と一緒に過ごせるだろう。
ただ、2人の姿を見慣れるには少し時間が掛かりそうだ。
兄は別人になった私を、毎回複雑な思いで見ていたのかも?
「あの……沙良ちゃん。非常にずうずうしいお願いで悪いんだけど、お風呂に入らせてもらえないかしら?」
旭の母親が恥ずかしそうに言った言葉に、そういえば旭から召喚して直ぐ同じ事をお願いされたと思い出す。
「はい、じゃあ準備してきますね」
「ありがとう! お風呂に入るなんて何年振りかしら。とても嬉しいわ」
「お母さん、一緒に入ろう? 背中、流してあげるね!」
と雫ちゃんも喜んでいる。
このマンションの浴槽は、私のアパートの物よりかなり広いので女性なら2人で入る事も可能だ。
アイテムBOXから、2人のサイズに合う下着と洋服を脱衣場に準備してお湯を入れる。
155cmの私と違い、2人は175cmくらいありそうだ。
日本にいた時は、そんなに背が高くなかった筈なのに……。
同じ異世界人である私の体は、どうして伸びないの?
お風呂に入っている間に昼食を作ろうとリクエストを聞いたら、雫ちゃんからオムライスセットを希望された。
これは双子達が大好きな物だ。
オムライスにハンバークとエビフライが付いた、所謂お子様セット。
家に遊びにきた時、よく作ってあげていたから覚えていたんだろう。
ここには食材も調味料もあるから、母親の手作り料理の方が良いんじゃないかと思ったけど……。
料理が苦手な事を思い出し、賢明にもそう口にするのは思い止まった。
兄は高校3年生だった1年間。
旭の家庭教師を毎日していたので、夕食がとても辛かったと零していたしね。
夜食を作るという旭の母親に、そこまでしてもらうのは悪いから妹にお願いすると言ったそうだ。
アイテムBOXには、作り置きしたハンバーグもエビフライも入っていたのでオムライスを作るだけでいい。
ご飯も炊いた物が沢山あるので、炊く時間も必要ないしね。
でも、久し振りのお風呂に時間がかかるかな?
そんな事を思いながら、私はオムライスを作り始める。
旭の様子をちらりと見てみると、まだ事実を受け入れがたいのか放心状態だ。
大丈夫、姿は変わっても家族だからね。
兄のように、ちゃんと慣れると思うよ。
私の場合、年齢差は同じだけど……。
お風呂から上がった2人の台詞が、
「沙良ちゃん、チート過ぎる!」
だった事には笑ってしまった。
どうやら私が貸した異世界転生・転移物の小説は役に立っていたらしい。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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「生きていたのね! 若い姿になっているけど、賢也君と一緒にいるから直ぐに分かったわ!」
おや?
兄の事も知っているという事は……。
「もしかして、お母さんですか?」
尋ねると、少女は漸く私に気付いたようだ。
「ええそうよ。えっと……、貴方はどちら様?」
やっぱり、旭の母親だったらしい。
「姿が変わっているので分からないと思いますが、私は沙良です」
「えっ! 沙良ちゃんなの?」
「沙良お姉ちゃん!?」
2人とも驚いたみたいで、呆気に取られている。
ここで立ち話をするのも具合が悪い。
サリナはリーシャが亡くなっている事に関係しているので、素直に喜べない気持ちもある。
事情を聞く必要がありそうだしね。
「少し場所を移して、ゆっくりお話ししませんか?」
そう提案すると2人が無言で頷いたので、私は事前情報を与えずに問答無用でホームの自宅へ全員移動させた。
兄達の新居ではなく私の家にしたのは、まだ結婚した事を知らないので落ち着くまでは話さない方がいいと思ったからだ。
自宅の玄関に到着するなり、2人が同時に言葉を発する。
「日本に帰れた!」
あ~、ぬか喜びさせてしまったみたい。
「ごめんなさい。日本じゃなくて、ここは私の能力であるホーム内なんです。詳しい事情は後で説明するので、取り敢えず部屋の中に入って下さい」
そこまで広い玄関じゃないため、5人も立ったままでいると流石にすし詰め状態だ。
私から靴を脱いで部屋に入っていくと、その後に全員が続く。
リビングのテーブル席に座ってもらっても、まだ2人は信じられないという顔をしていた。
私は兄と旭に合図をし、手紙を出して彼女達へ渡す。
もう何度も同じ事をしているので、読んでもらった方が説明するより理解が早い事を分かっている。
2人は【詫び状】と日本語で書かれた封筒を目にし、はっとした表情になった。
そして旭の母親から、同じように手紙を渡される。
こちらも封筒には【詫び状】と書かれていた。
お互いの手紙を読み合い、事情を把握していく間に私はコーヒーを淹れようと席を立つ。
どうやら旭の母親はタケルの妹の体に転移したみたいね。
『手紙の人』からの能力は、アイテムBOXと光魔法。
これは、雫ちゃんの病気を治したいと思っていたからかも?
病気は治す事が出来ないけど、怪我を治療する事は可能だ。
あぁ、兄達が食べた善哉の味がしょっぱかった理由に納得する。
タケルは妹が魔法学校へ行ったきり、家に戻ってこないと嘆いていたと聞いていた。
雫ちゃんと再会していたのなら、他人である家族の下には戻らないだろうな。
18歳で亡くなった娘と一緒にいたいと思う筈だもの。
タケルには王子様と結婚出来ないとか、夢のような事を言っていたらしいけど……。
まさか本気だった訳じゃないだろう。
昼食前だったので、全員分のコーヒーと軽いクッキーを出した。
雫ちゃんの分だけは牛乳をたっぷり入れ、カフェオレにしてある。
旭の母親は、久し振りのコーヒーを美味しそうに飲んでいた。
雫ちゃんはクッキーに夢中だ。
異世界には甘味が少ないので、クッキーも食べられなかったんだね。
そうして一息付いた頃、旭の母親が口を開いた。
「大体の事情は理解出来たわ。別人になっている人数が多いから、少しややこしい事になっていそうね」
「いや、母さんが俺より若くなっているのが信じられないよ! それに雫は、どうしてリーシャを虐めていたの?」
旭が妹を窘めるように少し強い口調で詰問する。
それは私も聞きたかった事だ。
あんなに優しかった雫ちゃんが、母親の虐待を止めず更には加担していたなんて、どうしても納得出来ない。
「実は私がサリナとして記憶が戻ったのは日本で亡くなった後、目が覚めてからなの。既にサリナは12歳になっていて、記憶自体はあるんだけど私としての行動じゃないよ。直ぐに、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だって気付いたしね」
「乙女ゲーム?」
そこで初めて私達は、この世界が乙女ゲームの舞台である事を知った。
ゲームの内容を簡単に説明してくれたんだけど、そもそもリーシャは亡くなる設定だったらしい。
悪役令嬢であるサリナ(雫ちゃん)がリーシャの代わりに王子様の婚約者になり、魔法学校で主人公のアリサ(母親)に嫌がらせをして断罪される王道の話だった。
だから、私に公爵邸を追い出された事は非常に感謝していたんだそう。
記憶が戻った後、サリナの母親からリーシャを守ろうとしてくれていたんだって。
雫ちゃんの記憶が戻ったのは、タイミング的に私がリーシャの体に転移して直ぐの事だったようだ。
となると、父親が帰ってきた時に同席していたのは雫ちゃんなのかな?
私が覚えた違和感の正体は、18歳の雫ちゃんの態度が12歳の少女に見えなかった事が原因かも知れない。
雫ちゃんがリーシャを虐めていた訳じゃないと知り安堵した。
旭は突然、妹から乙女ゲームの悪役令嬢で母親が主人公だと言われ混乱しているようだけど……。
私は悪役令嬢物の小説も、しっかり読んでいたので理解が早い。
もうこうなると、ストーリー通りに進む事もないだろうなぁ。
乙女ゲームの件は、そんなに気にする必要はなさそうだ。
私が家から追い出してしまった事で、雫ちゃんが独りになってしまったけど本当の母親と会えたのなら、それも間違いではなかったと思う。
最初からすれ違い続けた私達が、再会するまでに8年。
その長い空白の時間は、これから埋めていけばいい。
雫ちゃんも、今はとても健康な体になり母親と2人で王都のダンジョンを攻略していると言う。
ならば私達と一緒に冒険者をすれば、旭も家族と一緒に過ごせるだろう。
ただ、2人の姿を見慣れるには少し時間が掛かりそうだ。
兄は別人になった私を、毎回複雑な思いで見ていたのかも?
「あの……沙良ちゃん。非常にずうずうしいお願いで悪いんだけど、お風呂に入らせてもらえないかしら?」
旭の母親が恥ずかしそうに言った言葉に、そういえば旭から召喚して直ぐ同じ事をお願いされたと思い出す。
「はい、じゃあ準備してきますね」
「ありがとう! お風呂に入るなんて何年振りかしら。とても嬉しいわ」
「お母さん、一緒に入ろう? 背中、流してあげるね!」
と雫ちゃんも喜んでいる。
このマンションの浴槽は、私のアパートの物よりかなり広いので女性なら2人で入る事も可能だ。
アイテムBOXから、2人のサイズに合う下着と洋服を脱衣場に準備してお湯を入れる。
155cmの私と違い、2人は175cmくらいありそうだ。
日本にいた時は、そんなに背が高くなかった筈なのに……。
同じ異世界人である私の体は、どうして伸びないの?
お風呂に入っている間に昼食を作ろうとリクエストを聞いたら、雫ちゃんからオムライスセットを希望された。
これは双子達が大好きな物だ。
オムライスにハンバークとエビフライが付いた、所謂お子様セット。
家に遊びにきた時、よく作ってあげていたから覚えていたんだろう。
ここには食材も調味料もあるから、母親の手作り料理の方が良いんじゃないかと思ったけど……。
料理が苦手な事を思い出し、賢明にもそう口にするのは思い止まった。
兄は高校3年生だった1年間。
旭の家庭教師を毎日していたので、夕食がとても辛かったと零していたしね。
夜食を作るという旭の母親に、そこまでしてもらうのは悪いから妹にお願いすると言ったそうだ。
アイテムBOXには、作り置きしたハンバーグもエビフライも入っていたのでオムライスを作るだけでいい。
ご飯も炊いた物が沢山あるので、炊く時間も必要ないしね。
でも、久し振りのお風呂に時間がかかるかな?
そんな事を思いながら、私はオムライスを作り始める。
旭の様子をちらりと見てみると、まだ事実を受け入れがたいのか放心状態だ。
大丈夫、姿は変わっても家族だからね。
兄のように、ちゃんと慣れると思うよ。
私の場合、年齢差は同じだけど……。
お風呂から上がった2人の台詞が、
「沙良ちゃん、チート過ぎる!」
だった事には笑ってしまった。
どうやら私が貸した異世界転生・転移物の小説は役に立っていたらしい。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
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これからもよろしくお願い致します。
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「君と一緒に行かせてくれ。」
「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」
穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇