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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第476話 旭 樹 1 日本での生活 巫女の宣託
【旭 樹】
俺の生まれた家は女系家族だった。
文字通り3女1男の末っ子の俺は、3人いる姉達に可愛がられて育つ事になる。
子供の頃は夏になると毎年、母親の実家へ当主である曾婆ちゃんに挨拶に行く事が億劫で仕方なかった。
田舎の山奥にある母の実家は、武家屋敷のような作りで大層古く全てが畳の部屋は居心地が悪い。
それに巫女である曾婆ちゃんと、《顔見せ》の儀式は俺には苦痛で堪らないものだ。
年に一度18歳以下の孫を全員呼び次代となり得る子を選ぶらしいその儀式に、男の俺が参加する意味も分からなかった。
子沢山の家系なのか孫の人数は多く、俺が12歳で参加した時は30人程いたんじゃないかと思う。
当時80歳を優に過ぎていた曾婆ちゃんは、貫禄たっぷりで巫女装束を着た姿は威厳に満ち溢れていた。
参加する孫達も、全員禊を済ませた状態で儀式に臨むのだ。
と言っても祝詞を唱えたり、何かをする訳じゃなく俺達はひたすら正座で我慢を強いられる。
物音ひとつ立つ事のない厳粛な雰囲気の中、曾婆ちゃんは俺達一人一人の顔を何かを見極めるようしかと見つめていく。
その視線が毎回俺に向く度に、何故か曾婆ちゃんは首を横に振るのだ。
1時間程で《顔見せ》の儀式が終了すると、いつもなら全員が部屋から退出するのに、この時は名前を呼ばれ引き留められてしまう。
俺はもういい加減、正座で足が限界だった事もあり正直早く部屋から出たかった。
「樹や、これからお前に宣託を下す。心して聞きや」
初めて巫女らしい言葉を言われて、俺は驚いた。
旭家は巫女の家系らしいが、母親に聞いても何の神様を祀っているのか知らないと言う。
それは当主である巫女と、その次代だけが知っていればいいそうだ。
子供心にいくら何でもおかしくないか尋ねると、疑問に思った事さえないと返される。
だから俺は、曾婆ちゃんが巫女なのは眉唾だと信じていなかった。
そんな風に思っていたので宣託という、いかにも巫女らしい単語が出た事に戸惑ってしまう。
「物事の道理が分かる年齢まで待ったが、やはり運命は変えられぬようじゃ。して聞くが、お主が好きなのは異性であるか?」
一瞬、何を聞かれたのか理解出来ず俺は首を傾げる。
「女子が好きか男が好きか聞いておる。早う答えぬか」
答えを急かされ、そんな事が重要なのかと疑問に感じながら返答を返した。
「女の子が好きです」
いくら母親に似て可愛らしい容姿をしていても、俺はれっきとした男である。
クラスの女子が男の子扱いしてくれなくてもな!
曾婆ちゃんは、呆けて性別を忘れてしまったのかと心配になった。
「まぁ、それが普通だわな。しかし依りによってお主が該当するとは何の因果であろう。その魂の所為なのか……。樹、これだけは覚えておくがいい。お主の子供を産んでくれる女子を大切にする事じゃ。出産は命懸けのものでもある。それがたとえ……」
最後まで言わず、言葉を閉ざしてしまった曾婆ちゃんは苦悩の表情を見せる。
そして意を決したのか、再び言葉を続けた。
「やがて運命の相手に出会うが、その者と生涯を共にする事は出来ぬ。お前のお役目は、苦痛を伴う事になるが、まぁ……死ぬ事はなかろう。どうやら、伝える事が出来るのはここまでのようじゃ……」
それだけ言うと、曾婆ちゃんは顔を真っ青にして突然倒れてしまった!
俺は慌てて部屋を飛び出し、母親を呼びにいった。
その後病院へと運ばれたが、曾婆ちゃんはかなり衰弱していたらしく、数時間後に息を引き取り亡くなってしまう。
急な葬儀を済ませ家に戻ってから母親の実家に行く事はなく、あの宣託とも言えない言葉の意味を俺は忘れてしまっていた。
大学生になると俺は囲碁クラブに入った。
将棋も好きだが、囲碁にも興味があったのだ。
そこで知り合った仲間達と一緒に囲碁を楽しみ幸せな日々を送る。
その中で一際目立つ存在だったのは、父親がイギリス人のハーフで見た目が完全に外国人だった男だ。
そいつは何故か一番強く、将棋も出来るというので囲碁クラブなのに俺は将棋を指す機会も増えた。
大学4年間、俺に囲碁や将棋を教えてくれたのはこの男だった。
もう1人だけ趣味のLvを超えていたんで、俺にとっては師匠みたいなものだな。
見た目は外国人にしか見えなかったが、日本語しか話さない所も好感触を持った。
英語を話さないのか、話せないのか聞いた事はなかったが……。
大学を卒業してからは、会う事もなく連絡を取ったりもしないまま疎遠になってしまったけれど……。
20歳の時――。
運命の相手だと思った女性にプロポーズし結婚を承諾してもらい、長男の尚人が産まれた。
結花は料理が下手だったが、俺は傍にいてくれるだけで充分幸せを感じた。
得手不得手は誰にでもある。
いずれ、苦手な事も毎日する事で上手くなるだろう……多分。
正直、期待出来るレベルの腕じゃなかったが……。
尚人が成長し友達を家に連れてきた時は、その子供の顔に見覚えがあり大学の時知り合った男を思い出した。
名前を聞くと、やはり椎名という苗字で偶然にも俺は近所に引っ越してきた椎名 響と再会する。
そして子供達がお互いの家を行き来してからは、椎名家と家族ぐるみの付き合いになっていく。
響もこの偶然に驚いたみたいだ。
結婚したのも子供の年齢も同じという事もあり、元々知り合いだった俺達はよく2人で飲みに出かけるようになる。
結花は毎日料理を作ってくれるが、偶にはまともな食事をしたかったのだ。
響の方は料理上手な奥さんがいたにも拘わらず、ファーストフードが食べたかったらしい。
それはちょっと贅沢な悩みだと思うのは、俺だけか?
俺と飲みに行くと言っては、ファストフード店に連れて行かれた回数が多かった気がする。
まぁ、俺もハンバーガーやフライドポテトにコーラのセットは好きだったけどな。
帰りに酒を購入して、公園で飲むのもなんだか楽しかったし……。
休日には学生時代のように囲碁を打ったり将棋を指す事も増え、その日も響の家で将棋を指していた。
今回も負けるなと思っていると、急に目の前が暗くなり俺は意識を失ってしまったのだった。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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俺の生まれた家は女系家族だった。
文字通り3女1男の末っ子の俺は、3人いる姉達に可愛がられて育つ事になる。
子供の頃は夏になると毎年、母親の実家へ当主である曾婆ちゃんに挨拶に行く事が億劫で仕方なかった。
田舎の山奥にある母の実家は、武家屋敷のような作りで大層古く全てが畳の部屋は居心地が悪い。
それに巫女である曾婆ちゃんと、《顔見せ》の儀式は俺には苦痛で堪らないものだ。
年に一度18歳以下の孫を全員呼び次代となり得る子を選ぶらしいその儀式に、男の俺が参加する意味も分からなかった。
子沢山の家系なのか孫の人数は多く、俺が12歳で参加した時は30人程いたんじゃないかと思う。
当時80歳を優に過ぎていた曾婆ちゃんは、貫禄たっぷりで巫女装束を着た姿は威厳に満ち溢れていた。
参加する孫達も、全員禊を済ませた状態で儀式に臨むのだ。
と言っても祝詞を唱えたり、何かをする訳じゃなく俺達はひたすら正座で我慢を強いられる。
物音ひとつ立つ事のない厳粛な雰囲気の中、曾婆ちゃんは俺達一人一人の顔を何かを見極めるようしかと見つめていく。
その視線が毎回俺に向く度に、何故か曾婆ちゃんは首を横に振るのだ。
1時間程で《顔見せ》の儀式が終了すると、いつもなら全員が部屋から退出するのに、この時は名前を呼ばれ引き留められてしまう。
俺はもういい加減、正座で足が限界だった事もあり正直早く部屋から出たかった。
「樹や、これからお前に宣託を下す。心して聞きや」
初めて巫女らしい言葉を言われて、俺は驚いた。
旭家は巫女の家系らしいが、母親に聞いても何の神様を祀っているのか知らないと言う。
それは当主である巫女と、その次代だけが知っていればいいそうだ。
子供心にいくら何でもおかしくないか尋ねると、疑問に思った事さえないと返される。
だから俺は、曾婆ちゃんが巫女なのは眉唾だと信じていなかった。
そんな風に思っていたので宣託という、いかにも巫女らしい単語が出た事に戸惑ってしまう。
「物事の道理が分かる年齢まで待ったが、やはり運命は変えられぬようじゃ。して聞くが、お主が好きなのは異性であるか?」
一瞬、何を聞かれたのか理解出来ず俺は首を傾げる。
「女子が好きか男が好きか聞いておる。早う答えぬか」
答えを急かされ、そんな事が重要なのかと疑問に感じながら返答を返した。
「女の子が好きです」
いくら母親に似て可愛らしい容姿をしていても、俺はれっきとした男である。
クラスの女子が男の子扱いしてくれなくてもな!
曾婆ちゃんは、呆けて性別を忘れてしまったのかと心配になった。
「まぁ、それが普通だわな。しかし依りによってお主が該当するとは何の因果であろう。その魂の所為なのか……。樹、これだけは覚えておくがいい。お主の子供を産んでくれる女子を大切にする事じゃ。出産は命懸けのものでもある。それがたとえ……」
最後まで言わず、言葉を閉ざしてしまった曾婆ちゃんは苦悩の表情を見せる。
そして意を決したのか、再び言葉を続けた。
「やがて運命の相手に出会うが、その者と生涯を共にする事は出来ぬ。お前のお役目は、苦痛を伴う事になるが、まぁ……死ぬ事はなかろう。どうやら、伝える事が出来るのはここまでのようじゃ……」
それだけ言うと、曾婆ちゃんは顔を真っ青にして突然倒れてしまった!
俺は慌てて部屋を飛び出し、母親を呼びにいった。
その後病院へと運ばれたが、曾婆ちゃんはかなり衰弱していたらしく、数時間後に息を引き取り亡くなってしまう。
急な葬儀を済ませ家に戻ってから母親の実家に行く事はなく、あの宣託とも言えない言葉の意味を俺は忘れてしまっていた。
大学生になると俺は囲碁クラブに入った。
将棋も好きだが、囲碁にも興味があったのだ。
そこで知り合った仲間達と一緒に囲碁を楽しみ幸せな日々を送る。
その中で一際目立つ存在だったのは、父親がイギリス人のハーフで見た目が完全に外国人だった男だ。
そいつは何故か一番強く、将棋も出来るというので囲碁クラブなのに俺は将棋を指す機会も増えた。
大学4年間、俺に囲碁や将棋を教えてくれたのはこの男だった。
もう1人だけ趣味のLvを超えていたんで、俺にとっては師匠みたいなものだな。
見た目は外国人にしか見えなかったが、日本語しか話さない所も好感触を持った。
英語を話さないのか、話せないのか聞いた事はなかったが……。
大学を卒業してからは、会う事もなく連絡を取ったりもしないまま疎遠になってしまったけれど……。
20歳の時――。
運命の相手だと思った女性にプロポーズし結婚を承諾してもらい、長男の尚人が産まれた。
結花は料理が下手だったが、俺は傍にいてくれるだけで充分幸せを感じた。
得手不得手は誰にでもある。
いずれ、苦手な事も毎日する事で上手くなるだろう……多分。
正直、期待出来るレベルの腕じゃなかったが……。
尚人が成長し友達を家に連れてきた時は、その子供の顔に見覚えがあり大学の時知り合った男を思い出した。
名前を聞くと、やはり椎名という苗字で偶然にも俺は近所に引っ越してきた椎名 響と再会する。
そして子供達がお互いの家を行き来してからは、椎名家と家族ぐるみの付き合いになっていく。
響もこの偶然に驚いたみたいだ。
結婚したのも子供の年齢も同じという事もあり、元々知り合いだった俺達はよく2人で飲みに出かけるようになる。
結花は毎日料理を作ってくれるが、偶にはまともな食事をしたかったのだ。
響の方は料理上手な奥さんがいたにも拘わらず、ファーストフードが食べたかったらしい。
それはちょっと贅沢な悩みだと思うのは、俺だけか?
俺と飲みに行くと言っては、ファストフード店に連れて行かれた回数が多かった気がする。
まぁ、俺もハンバーガーやフライドポテトにコーラのセットは好きだったけどな。
帰りに酒を購入して、公園で飲むのもなんだか楽しかったし……。
休日には学生時代のように囲碁を打ったり将棋を指す事も増え、その日も響の家で将棋を指していた。
今回も負けるなと思っていると、急に目の前が暗くなり俺は意識を失ってしまったのだった。
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇