自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第514話 冒険者ギルドマスター オリビア・ハーレイの災難 1 迷宮ウナギの卸先

 サラ様が地下14階に拠点を移されてからの問題は、目下のところ迷宮ウナギの処理だけだ。
 薬師ギルドで精力剤のポーションに必要な分以外を保存するため、商業ギルドに行き冷凍倉庫の契約を済ませる。

 契約料として1ヶ月金貨10枚(1千万円)も掛かり案の定、財務統括にねちねちと小言を言われた。
 高級魔魚である迷宮ウナギを腐らせる訳にはいかないので、必要経費だと突っぱねたが……。

 早く販売先を確保しないと、毎月冷凍倉庫代が上乗せされてしまう。
 迷宮ウナギはギルド換金額が1匹金貨5枚(5百万円)だから、3ケ月900匹分で金貨4,500枚(45億円)。

 倉庫代と利益を考えると、1匹金貨6枚(6百万円)以上で売りたい。
 商業ギルドに行ってみるか……。

 トレントは既にサラ様が卸され買取はしてもらえなかったが、迷宮ウナギは大丈夫だろう。
 残った仕事を投げ出し、商業ギルドへ足早に向かった。

 受付嬢へ食品部門の担当者に会いたい旨を伝えると、応接室へと案内される。
 しばらく待っていると、ノックの音がした後に担当者が入ってきた。

 その姿を一目見て、また貴族担当のカマラだった事にげんなりする。
 きっと先程の受付嬢が、冒険者ギルドマスターの私に対応する人間を呼んだのだろう。

 ここは若い職員の方が有利に商談出来たものを……。
 受付嬢でも、やはり商人の顔を持ち合わせているらしい。
 商業ギルドが損をしないためか……。

「ギルドマスター。最近は、よくお見えになりますね。本日のご用件は、何でございましょう?」

 高級魔魚を全面に出して、高く買ってもらうはずがそうもいかなくなった。 
 きっと出所も直ぐにバレ、大量に在る事も気付かれるだろう。

 下手な駆け引きは無駄に終わる。
 素直に沢山買い取ってもらう方向で話をしよう。

「迷宮ウナギを買い取ってほしい。そちらの希望数は用意出来るだろう」

 もう直球勝負だ。

「あぁ、現在あの方は地下14階を攻略されていましたね。それなら、数も相当あるでしょう」

 ほら、もう見当を付け足元をみようとしている。
 古狸め!
 
 ここで負ける訳にはいかない。
 サラ様の要望に応えなくては。

「お前の知る冒険者は、3ヶ月毎に階層を移動する。迷宮ウナギが換金されるのは、3ヶ月の間だけだ。その事をよく考えてくれ」

「成程……。そういえば確か先日、冷凍倉庫を契約されたとか?」

 何故なぜ、担当者でもないお前が知ってるんだ!

「あぁ、鮮度を保つために必要だったからな」

「ちなみに、薬師ギルドの方へ精力剤のポーションを注文に行かれましたか?」

「それも既に終わっている」

 ああぁ~。
 もう全部バレてるじゃないか……。

 答えを聞いたカマラが少しの間、思案した後で金額を提示した。

「それでは、毎週100匹分を金貨5枚・銀貨50枚で買い取りましょう。いかがですかな?」

 くっ、金貨6枚以上で売りたかったが……。
 毎週100匹分の在庫がはけるなら、それも仕方ない。

 倉庫代も掛かる事だし、私は泣く泣くその金額で手を打つ事にした。
 迷宮ウナギの体内にある魔石は、絶対抜き忘れないよう解体場に指示を出しておかないと。

「その金額で商談成立だ。では、3ヶ月間よろしく頼む」

「こちらこそ、良い取引でございました」

 あぁ、そうだろうよ!
 そのにこやかな笑顔に腹が立つ!

 商談が終わり商業ギルドから出ると、私は肩を落として帰り道を歩く。
 ギルドの利益が減った事で、サラ様が期待している上納金が減ってしまった。

 まぁ取りえず、迷宮ウナギの販売先は確保出来たので良しとしよう。
 冷凍倉庫の契約も3ヶ月で済むだろうし。

 その時の私は、地下15階に迷宮ナマズが出現する事をすっかり忘れていたのだった。

 トレントは父に、迷宮ウナギは薬師ギルドと商業ギルドになんとか販売の算段を付け、やれやれと思っていたところサラ様が癒し草と魔力草を大量に換金されたと情報が入る。

 まぁこれについては、薬師ギルドが大喜びしそうな案件だから問題ない。
 しかし、これ程の量を換金されるとなると、サラ様は1日中ダンジョンで薬草採取をしておられるのでは?

 あの方は、本当に心優しい人なのだな。
 多分ポーションの値段を、もっと下げろと言われているのだろう。
 私が出向き薬師ギルドに交渉しておかなければ。

 迷宮都市では、既にポーションの価格を銀貨3枚(3万円)から銀貨1枚(1万円)に変更している。
 半額の銅貨5枚(5千円)で交渉してみるか……。

 大量に換金された薬草を持参し薬師ギルドに行くと、大歓迎されポーションの価格も了解してくれた。
 薬師ギルドの上級薬師達も、効能を調べる研究が進むと言い喜んでいる。

 これで、希望通り子供達も怪我を直ぐ治せるようになりますよ。
 サラ様の期待に応える事が出来、私はほっと胸をで下ろす。

 きっとカルドサリ王国中、迷宮都市のポーションが一番安いに違いない。
 それは冒険者ギルドマスターとして、かなりの業績になるだろう。

 不安材料が全て解決した事で、私はサラ様が時限爆弾である事を失念していた。

 薬師ギルドから、キングビー専用の『毒消しポーション』が販売される事を知るまで……。

 ああぁ~!
 サラ様が、また特大の爆弾を落としやがっ……落とされたようだ。

 知っていますか?
 キングビーの猛毒は、エリクサーでしか治療出来ないんですよ?

 なんで『毒消しポーション』を製作されるんですか!?
 毒の治療が出来ない冒険者を可哀想かわいそうに思っての事でしょうけど、その優しさは困ります。

 これは早急に、薬師ギルドマスターと打ち合わせをしないと……。
 ここ最近、飲まずに済んでいたポーションをまた飲む必要が出てきた。

 やっぱり私、冒険者ギルドマスターを辞めるべきかも知れない……。
 辞職届は、王都の冒険者ギルド統括本部に提出すればいいのだろうか?

 それともエルフのナージャ王国に?
 もういっその事、引退した父に代わってもらいたいくらいだ。

 今はサラ様達が迷宮都市で冒険者をされているから、父も復職してくれる可能性が高い。
 上手く誘導すれば、いけるのでは?

 私は他国にトレントを売りに行った父が、早く帰ってくるのを切望したのであった。

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