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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第529話 椎名 響 7 姑の襲来&地獄のLv上げ
朝から特大の爆弾を投げ込まれた気分になった。
樹の母親といえばエルフ国の王妃だ。
大方、今回の件について問い詰めにきたのだろう。
娘が妊娠した途端、毒見役の女官が倒れたと聞けば母親として黙ってはいられない。
俺は平手打ちを覚悟した方がよさそうだ……。
他国の王妃を待たせる訳にもいかず、急いで身支度を整え第二王妃の宮へと向かう。
女官長に樹の部屋へと案内されながら、俺は必死で言い訳を考えていた。
部屋に入ると中央の椅子に、これまた美しい女性が座っている。
この人が母親だろう。
顔は、樹に似ているだろうか?
ただその王族としての迫力が全然違う。
見ただけで、圧倒的な存在感に呑まれそうになる。
初対面の俺は、他国の王妃に対し礼儀を欠かぬよう注意しながら挨拶を述べた。
「王妃様。お初にお目に掛かります、カルドサリ国王のロッセル・カーランドと申します。この度は急な来訪にて、お迎えの準備も整わず申し訳ありません」
国賓扱いで迎える事も出来ず、宿泊する宮の手配も済んでいない。
俺の言葉に、樹の母親は思いもよらない返答を返した。
「突然きたのは私の方だから非礼に値しないわ。それより、貴方Lvが50とか舐めてるの? 人族は寿命が短いのでしょう? それじゃ、娘と釣り合わないじゃない」
「……はい?」
俺の方をじっと見つめていたのは、婿の顔を確認するばかりではなかったようだ。
この方は、どうやら人物鑑定の能力があるらしい。
通常、身分の低い者が上位者に人物鑑定の魔法を使用するのは不敬とされるが、この場合は問題にならない。
相手は他国の王妃で更にいうと便宜上、妻の母親だからだ。
咎める事も出来ず押し黙る。
一応、鑑定魔法を妨害する魔道具を身に着けていたんだが……。
俺は現在Lv50だという事を誰にも伝えていない。
それこそ、王妃の一族が警戒する要因を与えたくなかったからだ。
仕事のない王子時代、お忍びで冒険者をしながら必死に上げたLvを言い当てられ非常に困ってしまう。
「あぁそれと、また娘が危険に晒されると困るから、国内の不穏分子は排除させてもらったわ」
次に何でもないように言われた言葉を聞き、思わず身構えた。
「それは一体、どういう事でしょうか?」
「忘れた訳じゃないでしょ? うちの息子達が交換条件に出したエルフが、この国にいる事を……」
やられたっ!
樹の母親は、娘の事を心配してきたのではなかったのか!?
既に手を回しているというなら、移住許可を出したエルフ達の仕業だろう。
それは内政干渉に当たる。
反論しようと口を開きかけた時、王妃に有無を言わさぬ口調で遮られた。
「ガーグ老」
「はい、王妃様ここに」
一瞬で、以前見かけた影衆のご老人が部屋に現れた。
「これから、カーランド国王をLv100まで上げてきて頂戴。王宮も大分風通しが良くなっただろうから、暫く国王不在でも問題ない筈よ」
「はっ、畏まりました!」
「それは、幾ら何でも無理です!」
王妃の提案にぎょっとし、慌てて取り下げてもらおうと口を開く。
「娘の命を危険に晒した事を、これで不問にすると言ってるのよ。精々、頑張って早くLvを上げる事ね。私は貴方がLv100になるまで残ります。自己申告に意味がない事は理解出来るでしょう? 国政に関しては何も心配いらないわ」
無表情で言われた言葉が胸に突き刺さった。
樹を囮にした事は、本当に悪かったと後悔している。
この分じゃ、その件も知られているに違いない。
俺はそれ以上何も言えず、ガーグ老と呼ばれた老人の後を付いていった。
部屋を出る際、樹に目をやると何故か羨ましそうに見送られたんだが?
母親から庇ってくれとは言わないが、せめて同情ぐらいしてほしかったよ……。
その日から俺は、ガーグ老率いる影衆10人に摩天楼のダンジョンへ放り込まれた。
こんな理由で憧れのドラゴンに乗る事になるとは……。
緑色の鱗を持つ『風太』の名付けは、樹がしたのだろう。
ガーグ老は王妃の指示に従い俺をLv100に上げる事を宣言し、初日から20階まで移動させられた。
しかも、彼らは姿を隠しているから実質1人でのダンジョン攻略だ。
おい、それは無茶が過ぎる!
摩天楼のダンジョンは、A級冒険者以上が攻略する場所だぞ?
出現する魔物も桁違いに強い筈だ。
俺は強制的に1人でダンジョン攻略をする事になり、何度も危険な目に遭った。
漸く地下20階の安全地帯に辿り着く頃には、体力の限界を迎えマジックテントを設置する事すら出来ない状態だ。
どこで調達したのか、質の良い鎧を着せられたお陰で命があったようなものである。
朝から何も食べず、王妃と会ったあと直ぐにダンジョン攻略をした所為で非常にお腹が空いていた。
やっと食事にありつけると思った俺に提供されたのは、ガーグ老達が護衛中に食べているらしい、くそ不味い携帯食料だった……。
えっ!
もしかして、3食ずっと同じじゃないよな?
俺の懸念は当たり、翌日の朝出てきたのは同じ物だった!
栄養だけは取れるという、その携帯食料をダンジョンにいる間ずっと食べさせられる羽目になる。
いくら異世界の食事に不満があっても、ここまで酷いとは……。
同じ物を食べている彼らに文句を言う事は出来ず、泣く泣く食事に関しては諦めた。
あぁ、美佐子の手料理が食べたい。
「王よ! 姫様が寂しがるでしょうから、早くLvを上げて会いにいきますぞ!」
ガーグ老達はやる気満々で、次々に階層を上げていく。
確かに、魔物を1人で倒した方がLvは上がり易い。
これは、なんとなく経験から感じていた。
パーティーで倒すと、魔物から得られる経験値が分散される可能性がある。
だからといって1人でダンジョン攻略させるのは、どうかと思うが……。
摩天楼のダンジョンに潜り、3ヶ月。
俺のLvは50から70に上がっていた。
現在の攻略階層は30階だ。
本当に危ない時以外、ガーグ老達は手助けせず殆どの魔物を俺1人で倒している。
国がどうなっているかも心配だし、そろそろ一度地上に帰還したいと言うと了承してくれたのでダンジョンを出た。
ガーグ老が竜笛を吹くと、行きに乗せてくれた『風太』が程なく上空に姿を現す。
この竜は風竜なので、かなりの速度で飛ぶ事が出来るらしい。
エルフの国から別大陸にあるカルドサリ王国へ翌日到着するくらいだから、相当な速さなんだろう。
騎乗出来る従魔の中では最速である事に間違いない。
再び『風太』の背に乗り数時間後、王宮に戻ってきた。
王が不在の状態で本当に問題がなかったのか、一番に宰相を訪ね確認する。
俺がいない間に、第一王妃の実家で押収した書類に記載されていた貴族達は全員死亡。
一時的に前王が玉座に座り、国賓の対応をしていたそうだ。
勿論、第一王妃とその一族は処刑済み。
3歳だった王子は廃嫡となる。
もう色々な事が全て終わり、事後処理も完璧。
国政に関して問題は何ひとつ見当たらなかった。
それをしたのが、他国の王妃でなければ……。
樹は王宮から姿を消し、王都近くの森に移ったらしい。
俺は腹の子に会いにガーグ老達と森へ行った。
6ケ月になる樹のお腹は大きくなっており、その姿を見て順調に育っている事を知り安心する。
お腹に手を当てて「お父さんだよ」と声を掛けると、樹が「ケッ」と舌打ちした。
おい!
気に入らないのは分かるが、子供に聞こえるじゃないか!
その後も、Lv上げの合間を縫い度々樹の下を訪れた。
見る度に大きくなるお腹を抱えて、樹が不安そうにしている。
マタニティブルーだろうか?
俺は心配になり、Lv上げの速度を速める事にした。
国が乗っ取られる前に、エルフ国の王妃には早く帰国してもらいたいしな。
産み月が近くなる頃、やっとLv100に達する。
王妃は俺のステータスを確認すると、樹にお腹の子は女の子だと教え帰国していった。
本当は出産に立ち会いたかったようだが、長く国を空けすぎたらしい。
情緒不安定な樹の下に俺はなるべく顔を出す事にする。
喧嘩出来るくらい元気なら大丈夫、そう思って……。
そしてついに、樹が出産の日を迎えた。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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樹の母親といえばエルフ国の王妃だ。
大方、今回の件について問い詰めにきたのだろう。
娘が妊娠した途端、毒見役の女官が倒れたと聞けば母親として黙ってはいられない。
俺は平手打ちを覚悟した方がよさそうだ……。
他国の王妃を待たせる訳にもいかず、急いで身支度を整え第二王妃の宮へと向かう。
女官長に樹の部屋へと案内されながら、俺は必死で言い訳を考えていた。
部屋に入ると中央の椅子に、これまた美しい女性が座っている。
この人が母親だろう。
顔は、樹に似ているだろうか?
ただその王族としての迫力が全然違う。
見ただけで、圧倒的な存在感に呑まれそうになる。
初対面の俺は、他国の王妃に対し礼儀を欠かぬよう注意しながら挨拶を述べた。
「王妃様。お初にお目に掛かります、カルドサリ国王のロッセル・カーランドと申します。この度は急な来訪にて、お迎えの準備も整わず申し訳ありません」
国賓扱いで迎える事も出来ず、宿泊する宮の手配も済んでいない。
俺の言葉に、樹の母親は思いもよらない返答を返した。
「突然きたのは私の方だから非礼に値しないわ。それより、貴方Lvが50とか舐めてるの? 人族は寿命が短いのでしょう? それじゃ、娘と釣り合わないじゃない」
「……はい?」
俺の方をじっと見つめていたのは、婿の顔を確認するばかりではなかったようだ。
この方は、どうやら人物鑑定の能力があるらしい。
通常、身分の低い者が上位者に人物鑑定の魔法を使用するのは不敬とされるが、この場合は問題にならない。
相手は他国の王妃で更にいうと便宜上、妻の母親だからだ。
咎める事も出来ず押し黙る。
一応、鑑定魔法を妨害する魔道具を身に着けていたんだが……。
俺は現在Lv50だという事を誰にも伝えていない。
それこそ、王妃の一族が警戒する要因を与えたくなかったからだ。
仕事のない王子時代、お忍びで冒険者をしながら必死に上げたLvを言い当てられ非常に困ってしまう。
「あぁそれと、また娘が危険に晒されると困るから、国内の不穏分子は排除させてもらったわ」
次に何でもないように言われた言葉を聞き、思わず身構えた。
「それは一体、どういう事でしょうか?」
「忘れた訳じゃないでしょ? うちの息子達が交換条件に出したエルフが、この国にいる事を……」
やられたっ!
樹の母親は、娘の事を心配してきたのではなかったのか!?
既に手を回しているというなら、移住許可を出したエルフ達の仕業だろう。
それは内政干渉に当たる。
反論しようと口を開きかけた時、王妃に有無を言わさぬ口調で遮られた。
「ガーグ老」
「はい、王妃様ここに」
一瞬で、以前見かけた影衆のご老人が部屋に現れた。
「これから、カーランド国王をLv100まで上げてきて頂戴。王宮も大分風通しが良くなっただろうから、暫く国王不在でも問題ない筈よ」
「はっ、畏まりました!」
「それは、幾ら何でも無理です!」
王妃の提案にぎょっとし、慌てて取り下げてもらおうと口を開く。
「娘の命を危険に晒した事を、これで不問にすると言ってるのよ。精々、頑張って早くLvを上げる事ね。私は貴方がLv100になるまで残ります。自己申告に意味がない事は理解出来るでしょう? 国政に関しては何も心配いらないわ」
無表情で言われた言葉が胸に突き刺さった。
樹を囮にした事は、本当に悪かったと後悔している。
この分じゃ、その件も知られているに違いない。
俺はそれ以上何も言えず、ガーグ老と呼ばれた老人の後を付いていった。
部屋を出る際、樹に目をやると何故か羨ましそうに見送られたんだが?
母親から庇ってくれとは言わないが、せめて同情ぐらいしてほしかったよ……。
その日から俺は、ガーグ老率いる影衆10人に摩天楼のダンジョンへ放り込まれた。
こんな理由で憧れのドラゴンに乗る事になるとは……。
緑色の鱗を持つ『風太』の名付けは、樹がしたのだろう。
ガーグ老は王妃の指示に従い俺をLv100に上げる事を宣言し、初日から20階まで移動させられた。
しかも、彼らは姿を隠しているから実質1人でのダンジョン攻略だ。
おい、それは無茶が過ぎる!
摩天楼のダンジョンは、A級冒険者以上が攻略する場所だぞ?
出現する魔物も桁違いに強い筈だ。
俺は強制的に1人でダンジョン攻略をする事になり、何度も危険な目に遭った。
漸く地下20階の安全地帯に辿り着く頃には、体力の限界を迎えマジックテントを設置する事すら出来ない状態だ。
どこで調達したのか、質の良い鎧を着せられたお陰で命があったようなものである。
朝から何も食べず、王妃と会ったあと直ぐにダンジョン攻略をした所為で非常にお腹が空いていた。
やっと食事にありつけると思った俺に提供されたのは、ガーグ老達が護衛中に食べているらしい、くそ不味い携帯食料だった……。
えっ!
もしかして、3食ずっと同じじゃないよな?
俺の懸念は当たり、翌日の朝出てきたのは同じ物だった!
栄養だけは取れるという、その携帯食料をダンジョンにいる間ずっと食べさせられる羽目になる。
いくら異世界の食事に不満があっても、ここまで酷いとは……。
同じ物を食べている彼らに文句を言う事は出来ず、泣く泣く食事に関しては諦めた。
あぁ、美佐子の手料理が食べたい。
「王よ! 姫様が寂しがるでしょうから、早くLvを上げて会いにいきますぞ!」
ガーグ老達はやる気満々で、次々に階層を上げていく。
確かに、魔物を1人で倒した方がLvは上がり易い。
これは、なんとなく経験から感じていた。
パーティーで倒すと、魔物から得られる経験値が分散される可能性がある。
だからといって1人でダンジョン攻略させるのは、どうかと思うが……。
摩天楼のダンジョンに潜り、3ヶ月。
俺のLvは50から70に上がっていた。
現在の攻略階層は30階だ。
本当に危ない時以外、ガーグ老達は手助けせず殆どの魔物を俺1人で倒している。
国がどうなっているかも心配だし、そろそろ一度地上に帰還したいと言うと了承してくれたのでダンジョンを出た。
ガーグ老が竜笛を吹くと、行きに乗せてくれた『風太』が程なく上空に姿を現す。
この竜は風竜なので、かなりの速度で飛ぶ事が出来るらしい。
エルフの国から別大陸にあるカルドサリ王国へ翌日到着するくらいだから、相当な速さなんだろう。
騎乗出来る従魔の中では最速である事に間違いない。
再び『風太』の背に乗り数時間後、王宮に戻ってきた。
王が不在の状態で本当に問題がなかったのか、一番に宰相を訪ね確認する。
俺がいない間に、第一王妃の実家で押収した書類に記載されていた貴族達は全員死亡。
一時的に前王が玉座に座り、国賓の対応をしていたそうだ。
勿論、第一王妃とその一族は処刑済み。
3歳だった王子は廃嫡となる。
もう色々な事が全て終わり、事後処理も完璧。
国政に関して問題は何ひとつ見当たらなかった。
それをしたのが、他国の王妃でなければ……。
樹は王宮から姿を消し、王都近くの森に移ったらしい。
俺は腹の子に会いにガーグ老達と森へ行った。
6ケ月になる樹のお腹は大きくなっており、その姿を見て順調に育っている事を知り安心する。
お腹に手を当てて「お父さんだよ」と声を掛けると、樹が「ケッ」と舌打ちした。
おい!
気に入らないのは分かるが、子供に聞こえるじゃないか!
その後も、Lv上げの合間を縫い度々樹の下を訪れた。
見る度に大きくなるお腹を抱えて、樹が不安そうにしている。
マタニティブルーだろうか?
俺は心配になり、Lv上げの速度を速める事にした。
国が乗っ取られる前に、エルフ国の王妃には早く帰国してもらいたいしな。
産み月が近くなる頃、やっとLv100に達する。
王妃は俺のステータスを確認すると、樹にお腹の子は女の子だと教え帰国していった。
本当は出産に立ち会いたかったようだが、長く国を空けすぎたらしい。
情緒不安定な樹の下に俺はなるべく顔を出す事にする。
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇