自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第542話 椎名 響 20 ダンジョン内の食事&Lv上げの相談

 全てのアメリカンチェリーを採取すると、安全地帯に戻りテントからホームへ帰る。
 どうやら沙良達は、安全地帯のトイレを使用したくないらしい。
 理由は非常によく理解出来るので、これは俺としても助かった。
 日本のトイレは世界一綺麗だからな。
 ウォシュレットなど異世界では到底望めない。

 テントから出ると怪我人が待機していた。
 ダンジョン内で治療をしていると言っていたから、冒険者達がポーション類で治らないような怪我をした場合、沙良達のテントまでくるんだろう。
 見た感じ、確かにエクスポーションでは治りそうにない怪我だった。
 これはエリクサーが必要になりそうだが、数が少ないため貴族しか買えない。
 まさに貴族特権の最たるものだ。

 国王時代、この悪習を何とか出来ないか薬師ギルドに相談したが、エリクサーを作製出来る上級薬師が不足しているため、増産は無理だと断られた苦い思い出がある。
 ヒールでの治療は難しいと判断し、俺は沙良が悲しまないか心配した。
 まぁ異世界で8年も過ごしたのなら、冒険者の死に立ち会う事も何度か経験済みだろうが……。

 助からない怪我人に対し息子達がどう対応するのか見ていると、2人が同時に魔法を使用した。
 賢也けんやが傷口を水で洗い流した後、尚人なおと君がヒール・・・を唱えている。
 すると見る間に大きく切り裂かれていた肩口の傷が、何もない状態に戻った。
 待て待て、いま唱えたのは確かにヒール・・・だったぞ?
 エリクサー相当の怪我を治療するには、ハイ・・ヒールが必要じゃなかったか?

 光魔法を使える結花ゆかさんが、息子の治療に感心した様子をみせる。
 雫ちゃんと2人パーティーだった彼女は、ダンジョン内での治療は一切行わず光魔法を徹底的に隠していたそうだ。
 治癒術師はどのパーティーでも欲しがる人材なので、変な連中から勧誘されたくなかったんだろう。

 しかし今見たヒールの効果は、非常に厄介やっかいな問題をはらんでいる。
 尚人君が治療出来るなら、当然賢也も同じLvの魔法が使えるはずだ。

「今の魔法は本当にヒールなのか?」

 万が一の可能性を考え、尚人君に尋ねてみる。

「ヒールしか覚えてないので、そうだと思います」 
 
 結果は変わらず……。

「……知識の差なのか? お前達は外科医だから人体の構造を知っている分、効果が高いのかもな。あぁ、また心配の種が増えたじゃないか……」 
 
 そこで先程リーダーの男性に言われた話を思い出した。
 やはりまずい気がする。

「後で石化治療した件を詳しく説明してくれ」

 賢也にそう言った後、俺は黙り込み一体どんな治療をしたのか考え込んだ。
 体の一部が石化された状態なら、あそこまで感謝はしないだろう。
 まさかとは思うが、全身石化された状態の治療をした訳じゃないよな?

 夕食は、いつも2パーティーと一緒に食べているらしい。
 今日は『バーベキュー』をするそうだ。
 初めて食べる『バーベキュー』に、しずくちゃんの目が釘付けになっている。
 彼女は病気で遠出が出来ず、川や海や山に行った事がない。

 『バーベキュー』の肉を焼くのは俺の担当だ。
 それにしても、ダンジョン内で『バーベキュー』とは……。
 あぁ、護衛担当の影衆達はつらいだろうな……。
 これだけ匂いが充満すると、食欲に意識を持ってかれそうだ。
 どうにか携帯食料だけで頑張ってくれ!

 焼いた肉を雫ちゃんが美味しそうに食べている姿を見て、本当に元気になったんだと感慨深かんがいぶかく思う。
 いつき、お前の娘は異世界で健康になっているぞ。
 早く会わせてやりたいが……。

 沙良達は本当に、この2パーティーと仲がいいようだ。
 食事中、楽しそうに会話を交わし今日採取した果物も渡している。
 その中で、俺達夫婦の見た目年齢が違ってみえるという話が出た。
 あぁ、こちらの人間は皆背が高いから妻の身長だと若く見えるんだろう。
 沙良が同い年だと言い、驚かれた美佐子みさこが喜んでいた。
 
 食事を終えてテントからホームに戻ると、沙良がLv上げの相談をしたいと言う。
 先に妻を送り俺は沙良の家に寄った。
 紅茶をれると早速さっそく、沙良が話を切り出す。

「お父さん、何か上手い方法を思い付いた?」

 俺は賢也に疑いを持たれずLvを上げる方法が思い付かず、何のひねりもない回答をする。

「単純に早くいつきを召喚したいから、Lv上げを急ぎたいと言うのは?」

「う~ん。それだと、お兄ちゃんは別行動を許可してくれないと思う」

 まぁ両親である俺達を召喚するのに8年掛けているんだから、樹だけ早く召喚するのは納得出来ないか……。

「なら、ホームの設定に必要だと言えばいいんじゃないか?」

 Lvが上がると能力が増えるのを思い出し、思い付いた事を言ってみる。

「ホームかぁ~。Lv10毎に1ヶ所だから、Lv30だと後1ヶ所追加出来るんだよね。病院を設定する予定なんだけど、Lv40に上げるともう1ヶ所追加する必要が出てくるかぁ。旭家を追加すると言ったら、納得してくれるかな? 今はマンション住まいで不便も多いだろうし……」

「自分の家に2人は住みたいと思うぞ? 樹だって、召喚後に何もない状態だったら悲しむだろう。家には大切な物が沢山あるはずだからな」

 自分で提案したが、理由としては中々いいんじゃないか?

「分かった。病院と旭家をホームへ追加するためにLv上げをしたいと言ってみるよ。単独行動は無理だから、お父さんも一緒に攻略してね!」 

 沙良も、この意見には賛成のようだ。
 
「あぁ大丈夫だ。他に話したい件もあるし賢也達を呼んでこよう」

 俺は石化の治療がどうしても気になり、早く聞いておきたかった。
 席を立つと、隣の部屋である賢也の家へいく。
 ホーム内は無人のためか鍵は掛かっておらず、扉を開けて中に入る。
 2人はリビングで仲良くTVを見ている所だった。
 しかし、その体勢が……。

 尚人君、どうしてうちの賢也にもたれているのかな?
 お前達は本当に何もないんだよな?
 俺は信じているぞ!

「あ~くつろいでいる所、悪いんだが沙良から話があるそうだ。これから隣の部屋にきてほしい」 

「父さん? 沙良から改まって話があると言われると、嫌な予感しかしないんだが……。聞かない訳にもいかないな。旭、ほら起きろ」

 そう言いながら賢也が尚人君の肩を叩く。
 彼は眠っていたらしい。
 目を覚ました尚人君は、俺の姿を見て目をぱちくりさせている。
 
「沙良の部屋にいくぞ」

 と賢也から声を掛けられた瞬間、笑顔になり立ち上がった。
 うん、好きなのは娘の方で合っているな。
 いや、それも問題なんだが……。
 いっその事、血のつながりのない賢也の方がまだましかも知れない。

 沙良の部屋に3人で戻ると、神妙な顔をして娘が話し出した。
 話を一通り聞いた賢也が、心配性を発揮する。

「父さんの剣術Lvが高いのは見て分かるが……、沙良と2人で大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ! 先にドレインの魔法で昏倒させれば安全でしょ? それに、お父さんのLv上げは早くした方がいいと思う」

「じゃあ地下16階以降の情報をアマンダさんに聞いてから、充分気を付けて攻略するんだぞ。危ない時は移転で逃げろ。怪我をしたら俺の所に直ぐにくるんだ」
    
 賢也は、いつまで経っても妹が心配らしい。
 父親である俺より過保護かも知れんな。
 異世界で妹を守るために相当苦労したのか……。
 今はヒルダそっくりの容姿をしている沙良に、よこしまな目を向ける連中が多くいたのは想像にかたくない。
 きっと、日本では考えられないような出来事があったんだろう。

 8年間、兄として妹をよく守ってくれた。
 これから、その役目は父親の俺が代わるよ。
 お前はもう肩の荷を下ろしていいから大丈夫だ。

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