自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第578話 世界樹の精霊王との邂逅 フェンリル女王の長男 2

 精霊の森へ5匹の兄妹達が妹の様子を見にいくようになり、世界樹の精霊王が結界の通行許可をくれた。
 勿論もちろん、私達は母上から言われた通り森の中には入らない。
 妹へ姿を見せないと約束しているからね。
 代わりに遠見魔法で、精霊の森の様子をのぞき見る。

 今日は、知らない獅子しし族のおすがいた。
 他の兄妹達からも聞いていたが、最近頻繁ひんぱんに現れるらしい。
 巫女姫は妹へ魔力を与え昏倒しているようだ。
 獅子族の雄は地面に寝そべり、巫女姫と2匹の子竜と妹をお腹に載せ寝かしつけている。
 長い尻尾の先端を、妹が口にくわえていた。

 その仕草しぐさは、私達兄妹にも眠りながらよくしていたなと思い出す。
 成長の遅い末っ子は、その意味を理解していなかったようだけど……。
 それはフェンリルの求愛行動である。
 同じ母親から生まれた兄妹にするのが可笑おかしく、私達は笑っていた。
 獣人である獅子族の求愛行動とは違うため、勘違いはされないだろう。
 それにしても、随分ずいぶんなついているんだな。

 獅子族の雄も尻尾を振り払ったりせず、好きにさせている。
 結構鋭敏えいびんな部分であるのに、甘噛みを許しているなら可愛がられているのか……。
 同胞の気配を感じ視線を移すと、森からかなり離れた場所で父上の姿を見付けた。
 あぁ、娘の様子が心配で私達のようにきていたんだな。

 父上は母上を守るため普段はそばにいるから、母に内緒で行動するのは珍しい。
 寡黙かもくな性格からは、託した末っ子をどう考えているか推し量れなかった。
 こうした姿を見ると両親が苦渋くじゅうの決断をしたのがよく分かる。
 妹は家族全員にちゃんと愛されていた。
 一緒に育つのは叶わなかったけれど、皆がその成長を見守っているよ。

 それから100年が過ぎた。
 巫女姫から毎日魔力をもらった妹の器官は修復し、兄妹の中でも一番の魔力量を誇るようになり女王の次代となる事が決定する。
 許嫁いいなずけには立派な体格を持つ雄を見付け、妹のつがいとして一生守ると誓わせた。
 私達が厳選した許嫁を、妹は気に入ってくれるだろうか?

 心配していた初顔合わせに、どうやらハルクがやらかしたらしい。
 妹の機嫌を損ね、相手にされなかったようだ。
 母上から話を聞き、その残念な挨拶の内容に兄妹達から溜息がれた。
 体長30cmしかない妹へ、何を言うんだ!
 母上から面会するのは月に1度だけだと厳命されたハルクがしょんぼりしていた所、怒った長女が牙をく。

 無骨ぶこつなハルクはめすに対する接し方が分からないみたいだ。
 当然、その後も進展は見込めず見守る私達はハラハラする。
 ある事情から、妹の態度が軟化し会話が成り立つようになった。
 やれやれ、ようやく許嫁と認めてもらえたようだ。

 更に100年の時が過ぎ私達は200歳。
 世界樹の精霊王から巫女姫が異世界へ転生する際、妹も付いていくと聞いた私は一緒にいこうと決めた。
 今度こそ兄として妹のそばにいたい、そう思ったからだけど……。
 目の前にいる精霊王の姿を見て、しずくの記憶を封印したい思いで一杯だ。

 何故なぜ、性別が逆なのか……。
 兄となった妹に、私は迷惑ばかりかけていた。
 勉強があまり得意ではなかった兄は、寝る間をしんで猛勉強し私の心臓を治すため医者を目指してくれた。
 それでも雫としての人生は18年で終わってしまったけれど……。

 私が払った代償は妹になる事だったのか?
 もしそうなら、辛い経験をしたのが末っ子じゃなくて良かった。
 体が脆弱ぜいじゃくだと、あんなに大変だとは……。
 だがもう雫としての人生を歩む必要はない。
 そう思い精霊王に伝えてみたものの、それは出来ないと言われてしまう。
 フェンリルに戻るには、まだ数年あるそうだ。
 しかも記憶を再び封印されて……。
 
 いや、ちょっと待ってほしい。
 雫としての初恋相手に問題が……。
 妹が懐いているし、あの面倒見の良い性格からして椎名しいな 賢也けんやは獅子族の男性だろう。
 私がうらやみ、兄としてねたんだ相手だ。

 確かに兄代わりとなり妹の面倒をみてくれた事へ感謝しているけど、それは恋とは全然違う。
 あああぁ~。
 記憶を封印するのだけは勘弁してくれ!
 私の願いもむなしく、精霊王はあっさり再封印をほどこした。

 目を覚ますと、沙良お姉ちゃんが心配そうに見つめている。
 私は何故なぜか、尚人兄なおとにいに会いたくて仕方なかった。
 優しくて大好きなお兄ちゃんを、抱き締めたい。
 ホームへ戻り、ジムから帰ってきた尚人兄なおとにいに飛びついた。

「どうした雫? 熱烈大歓迎だな~」

 私をしっかり受け止め、頭をでてくれるその手が心地よい。
 
尚人兄なおとにい。今日は、お母さんと外食にいこう!」

「もしかして、俺は財布役を期待されているのかな?」

「うん、よろしく~。今日は、家に泊まって一緒に寝ようね!」

 一瞬、お兄ちゃんの動きが止まったけど……。

「雫は、甘えん坊だな~」

 と言い了解してくれた。
 回らないお寿司をお腹一杯食べ、夜はお兄ちゃんと一緒に眠った。
 病院のベッドで添い寝をしてもらった時とは違う感じがする。
 今は年齢差がないからだろうか?
 なんだか、お兄ちゃんの方が可愛く見えるよ。

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