自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
472 / 781
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第595話 迷宮都市 犯人の動向 2

 儂が与えた指示は、少女の支援している子供達をさらい身代金目的の誘拐犯に成りすます事だ。
 その際、実行犯とは直接やり取りせず、足が付かないよう他領の人間を使えと命令する。
 迷宮都市の現状を知っている人間は、子供達の誘拐に尻込みするだろう。
 冒険者達が支援しているからの。
 金の受け渡しは第三者に任せ、王都へ配送依頼を出すよう伝える。
 そして金は受け取らず、主犯が誰であるか辿たどり着かぬようにした。

 実行犯へは情報を隠し、馬車を2台用意し潜伏場所も準備しておく。
 後は、ある事さえやってもらえば良い。
 治癒術師が使用する魔法がヒールなのかハイ・・ヒールなのか、それで分かるであろう。
 浄化の魔法については、機会を待ち確認するとしよう。
 子飼いの者へ、くれぐれも慎重に行動せよと注意し儂はその日を待った。

 当日。
 金の受け渡し場所に少女ではなく、子供達の保護者である冒険者が現れたらしい。
 ダンジョンを攻略中だと思い失念しておった。
 毎週子供達へ炊き出しをするため帰還する少女とは違い、基本的に冒険者たちは3ヶ月~半年は地上へ戻らないからだ。
 しかも様子を見る心算つもりだった子供達は、少女の従魔が発見し既に助け出したという。
 
 更に誤算であったのは、その保護者である冒険者がリザルト公爵令嬢だった件だ。
 儂は公爵の娘が冒険者をしているとは知らず、庶民の誘拐に衛兵や冒険者ギルドが動くのを想定しておらんかった。
 それにしても……。
 リザルト公爵に娘などいたであろうか?

 実行犯は翌日、迷宮都市へ移送され冒険者ギルドマスターが斬首刑にしよった。
 他領であれば、これ程まで重い刑にならず精々せいぜい鉱山送りであったものを……。
 主犯が儂であると分かれば、教会の司教といえど罪をまぬがれるのは難しくなりそうじゃ。
 容易に辿り着かんよう何人も無関係の者を介しておるが、念には念をと子飼いの者へ迷宮都市から移動するよう命令を出す。
 今回の件で分かったのは、子供達に手を出すのはまずいという事だけで何の収穫もありはせん。 
 迷宮都市から半日以上離れた場所へ用意した隠れ家が、直ぐに見付かってしまうとはの……。
 治癒術師の能力も、犯人達が躊躇ためらったのか子供全員が無傷の状態では知りようがない。
 流石さすがに、エクストラ・・・・・ヒールで治療済みではないだろう。

 金の移送先である王都の宿屋から受取人が移動した直後、連絡が入っておったのか捕まったようだ。
 儂の予想以上に動きが早く冷や冷やしたが、この者は荷物を受け取りにいっただけである。
 いくら尋問された所で、何も答えられんであろう。
 安心していたその夜、再びアシュカナ帝国の使者が屋敷に訪れた。
 
「ヘインズ司教。勝手な真似をされては困りますね。貴方が下手な行動をしたため、こうして私がくる羽目はめになった」

 使者の第一声に肝を潰す。
 あれ程まで用意周到に策を練ったというに、どこでバレたのだ!?

「……申し訳ありません。早計な判断でした」

 儂は自分の過ちを素直に認め、使者に対して頭を下げた。
 
「ええ、本当にそうですよ。その罪は、ご自身の命であがなって頂きます」

「なっ、何ですと!」

 信じられない言葉に急いで顔を上げると、無表情の使者が何かを口へ入れる。
 思わず吐き出そうとしたが、口を塞がれてしまう。
 その内、意識が朦朧もうろうとし立っていられず床へ倒れこんだ。

「あぁ、そのまま眠って下さい。二度と目覚めないでしょうけど」

 儂を見下ろす使者の言葉を最後に、意識が途絶えた――。


 動かなくなったヘインズ司教の死亡を確認したアシュカナ帝国の使者は、屋敷から出ると姿替えの魔道具を起動させ宵闇よいやみまぎれ姿を消した。
 その後、薬師ギルドに入っていく。

「やれやれ、我らの巫女姫の手をわずらわせるとは教会の人間は厄介やっかいだの。やはり、早々に潰しておくべきか……」

「ゼリア様、お手数をおかけしました」

「いや、今回はそなた達で犯人を見付けるのは無理であったろう。指示を出した者を捕まえてくれたお陰で匂いを辿る事が出来た。まさか教会の司教だとは思わんかったが……。うちの次代が、はよう巫女姫のそばに付いてくれると良いがな」

「世界樹の精霊王に記憶を封印されておりますから、直ぐにとはいかないのでしょう。今は獅子王の次代がおそばにおられるようですし、そのうち巫女姫のもとへ全員がつどうと思います」

「それもまた、難儀なんぎな事であるわ。転生先で、どのような人生を送っているのかの……」

「さて、それは私共では知るよしもありません。巫女姫の身近にいた可能性が高いですがね」

白頭鷲はくとうわしの、引き続き巫女姫の周辺を警戒しておくれ。アレに気付かれないような」

「承知しております」

 ゼリアと言葉を交わしていた男性は、薬師ギルドを出ると大きな白頭鷲の姿に変態し空高く飛び去っていった。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇