自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
480 / 781
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第603話 迷宮都市 『お菓子の店』の護衛人 2&武術稽古 奏伯父さんとガーグ老の手合わせ

 実家で夕食を食べ兄の家へ戻ってきた私は、コーヒーを早速さっそく気になっていた話を切り出した。

「お兄ちゃん。かなで伯父さんの奥さんは、亡くなったアリサちゃんのお母さんかな? 偶然、同じ名前を付けたとは考えられないよね?」

 私の質問に対し、兄と旭は一瞬黙り込む。

「沙良……。俺は相手が逆なんじゃないかと思う」

「逆っ? どういう意味?」

「俺が名乗った後、彼は気付いた様子だった。お前は姿が変わっているから分からなかったんだろう。つまり、相手はリュートさんの可能性が高い」

「えっと、それはアリサちゃんのお父さんが奏伯父さんの元妻だって事?」

「あぁ、多分。本人が俺達に言う心算つもりがあるかは分からない。既に異世界で何十年も生きてるんだ。前世は懐かしい思い出として胸にしまっているかもな。特に、彼の場合は性別が変わっているから……」

 兄の話を聞き、リュートさんが言っていたのを思い出す。
 「だからアリサ・・・だったのか……」この言葉は、もしかしたらアリサちゃんのお母さんが何気なく聞いた事を覚えていて付けた名前なのかも知れない。
 それに奏伯父さんも、この世界で結婚し家庭を築いているから元妻がリュートさんだと知るのは複雑な気分だろう。
 
「まだそうと決まった訳じゃないし、両親と会わせて向こうの反応を見た方がいい。何も言わなければ、俺達は黙っておこう」

「うん、分かった。じゃあ、この件は保留だね!」

 話は済んだから、兄の部屋から出て自分の家に帰った。
 それにしても、知り合いの性別が違うとこんなにギャップを感じるものなのか……。
 奏伯父さんの奥さんは楚々そそとしたタイプの女性だったので、今の姿からは到底想像がつかない。
 本人はどう思っているか分からないし、転生なのか転移なのかそれも不明だ。
 まぁでも、アリサちゃんがお父さんと暮らせるようになったのは良かったよね!

 翌日、日曜日。
 早朝から嫌がるしずくちゃんのお母さんと奏伯父さんを異世界へ送り届け、炊き出しに向かう。
 炊き出しに、アリサちゃんはこなかった。
 リュートさんと暮らす事にしたからだろう。
 炊き出しを終え子供達を見送った後、奏伯父さんと雫ちゃんのお母さんが戻ってきた。
 家族の了解が得られ、冒険者を続けてもいいと言われたそうだ。
 奏伯父さんは娘が冒険者として問題なくやっていけるのを確認するまで、一緒にパーティーを組むと伝えたらしい。

 元々、結婚する前は伯爵家の三男だったので冒険者となり生活していたようだ。
 聞いてないけど、Lvは幾つあるんだろう?
 ガーグ老の工房へいき、新しいメンバーの紹介をする。
 奏伯父さんはガーグ老が偽装結婚の相手と知り、かなり驚いていた。

「申し訳ないが、めいを任せるに足る技量があるか確認したい。ご老人、手合わせ願おう」

 挨拶もそこそこに、奏伯父さんはマジックバッグから槍を取り出す。
 父が感心したようにその槍を見ていたから、鑑定し業物わざものであると確認したのだろう。
 ガーグ老も槍を見るなり、目をみはっている。

「ふむ、良い得物えものを持っておるな。その武器に見合うだけの腕があればいいがの……」

「心配にはおよばん。そちらこそ、期待外れでガッカリさせないでくれよ?」

 そう言って、奏伯父さんは槍を一振りさせると構えを取った。
 王族の警護をしていた元近衛のガーグ老を相手に、大丈夫だろうか?
 ガーグ老の長男であるゼンさんの合図で手合わせが始まる。
 私は心配でハラハラしながら見ていたけど、何故なぜか父と雫ちゃんのお母さんだけは平然としていた。

 10分後。
 奏伯父さんの槍術に私は驚愕きょうがくする。
 あのガーグ老相手に、一歩も引けを取らないとは……。
 しかも腕力が勝るのか、ガーグ老の方が打ち負けているようにも見える。
 その数分後、奏伯父さんがガーグ老の槍を巻き取り喉元へ槍を寸止めした事で決着がつく。
 その結果に兄と旭、雫ちゃんが驚いていた。
 勿論もちろんガーグ老が勝つと思っていた私も、これには開いた口がふさがらない。
 
「技量ではご老人の方が上、腕力と武器の性能で私の勝ちといった所だな」

 手合わせの感想をそう述べると、奏伯父さんが槍をおさめる。

「いやはや……年は取りたくないものだわ。儂が全盛期の頃、お相手したかったの。その方、見事であった」 

「姪の相手として合格だ、ご老人。しっかりと守ってほしい」

 最後に深く一礼し、こちらへ戻ってきた奏伯父さんに思わずLvを確認すると120だと返された。
 SS級冒険者のセイさんでさえ、Lv100なんですけど!?
 武闘派の伯父はステータスがある世界で、かなり鍛えていたらしい。
 目に見える成果があるとLvを上げたくなるのは分かるけど……、貴族なのに上げ過ぎでは?
 ついでに身体強化の魔法が使えると、こっそり教えてくれた。
 それは前世に関係しているのだろうか?

 その後の稽古では、ご老人に代わり雫ちゃんのお母さんの相手を奏伯父さんがしていた。
 彼女がちょっと涙目になっているのは、見なかった振りをしよう。
 思えば、あかねの最初の師匠は奏伯父さんだった。
 男の子の恰好かっこうをし出してから、頻繁ひんぱんに会いにいくようになったんだよね~。
 茜を召喚したら、同じ身体強化の魔法が与えられるかも?

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇