自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第613話 王都の現状 3 犯人の確保

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 私は確認しようと、念話の魔道具を起動させた。
 兄から直ぐに応答がある。

『沙良。何か動きがあったのか?』

『うん。従者の1人が離れて別行動を取り出したみたい。誰かと接触するのを待った方がいいかな?』

『そうだな。今回の経過報告を知らせるために仲間と接触する可能性がある。もう少し、行方を追ってくれ』

『了解!』

 従魔登録も済ませたので、ランドルさんへお礼を言い会議室から出ようとした所、

「これを、お守り代わりに持っていなされ。何かあった時は吹いてみるとよい」

 ひもが付いた小さな笛のような物を渡された。
 何だろう?
 犬笛みたいな物かしら?
 吹くと、ランドルさんと同じ種族の獣人が駆けつけてくれるとか?

「ありがとうございます。大切にしますね」

 もらった笛を首から下げ、お礼を伝え冒険者ギルドを後にした。
 知り合いらしいかなで伯父さんへ早速さっそく尋ねてみる。

「ギルドマスターのランドルさんは、何の種族なの?」

「俺もはっきり知らないが、多分鳥系じゃないかと思う」

「あ~彼は特徴的な目と髪の色をしているから、白頭鷲はくとうわしの一族じゃないかと思う」

 横から父が推測を述べる。
 髪の色は分かるけど特徴的な目?
 私は特に変わった所もなく普通に見えたけどなぁ。

「確かギルマスは空を飛べると自慢していたわね」

「俺にもそう自慢していたな」

 雫ちゃんのお母さんと奏伯父さんが同じ事を言う。
 じゃあ、これは犬笛じゃなく鳥笛か……。

「お守りにって渡されたけど、どんな効果があるんだろう?」

「多分、吹くと白頭鷲の一族に聞こえるようになっているんだろう。簡単に吹くような代物じゃない。いい物を貰ったな。大切にするんだぞ」

 父からそう言われ、私は失くさないようアイテムBOXへ収納した。
 そんな重要な物を会ったばかりの私にくれた理由が、さっぱり分からないけど……。

「あっ、従者の1人が誰かと接触してる!」

 会話しながらも、ずっとマッピングで見ていた従者が冒険者と合流していた。
 呪具をダンジョンに設置した実行犯かも知れない。

「お兄ちゃん。全員確保する?」

「少し様子を探りたいな。相手から見えない場所へ移転出来るか?」

「うん、大丈夫」

 私は言った瞬間、パーティー全員を犯人達から見えない場所へ移転させた。
 少し離れた先には、6人組の冒険者と司教の従者がいる。
 しばらく様子をうかがっていると、7人が移動を開始した。
 これから王都を離れる心算つもりだろうか?
 門には普段より多い衛兵が検問を行っている。
 特に出ていく人間を警戒しているから、簡単に出られないとは思うけど……。

 兄に捕捉のハンドサインを送った。
 兄から指を2本立てた了解の合図が送られる。
 逃げられる前にアイテムBOXへ収納しようとした所、突然犯人達が地面に倒れた。
 兄から即座に中止の合図がくる。

 私達の目の前で、犯人達は猿轡さるぐつわをされ簀巻すまきの状態になった。 
 けれど、それを実行している人間が見えない。
 これは……もしや、妖精さんの仕業しわざだろうか?
 7人が同じ状態になると、空中からひらりと羊皮紙が犯人の体に落ちる。
 身動き出来ない状態にされているから、危険はないだろうと近付き羊皮紙を取り上げた。

 『アシュカナ帝国の諜報員です。自決しようとしたので、毒消しポーションを飲ませてあります。6人は呪具を設置した実行犯。1人は教会への連絡係でしょう。』

 羊皮紙には、そう書かれてあった。

「先に妖精が動いてくれたみたいだな」

 納得したように父がうんうんうなずいている。

「妖精って……。ガーグ老の庭にいる?」

「まぁ! 来週は沢山お供え物を作らないといけないわね!」

 奏伯父さんは唖然あぜんとしていたけど、子供達を助けてくれた件を知っている雫ちゃんのお母さんは、お礼の品を考えているようだ。

「えっと、この人達は衛兵所へ連れていった方がいいの? それとも冒険者ギルドの方?」

「事件が起こったのはダンジョン内だから、今回は冒険者ギルドの方だろうな。従魔達に引っ張ってもらおう」

 父が前回、誘拐犯を連行した時と同じように、簀巻き状態の犯人を従魔達とつないでいく。
 源五郎げんごろうに繋がれたのは、司教の従者をしていた人物だった。
 フォレストラビットでの移動はバウンドして大変そうだけど、敵に情けをかける必要はないか。
 私達はそのまま従魔に騎乗し、再び冒険者ギルドまで戻った。
 受付嬢へ犯人を捕まえた事を伝え、ギルド職員に引き渡す。
 
 司教の従者と犯人の接触が判明したので、司教は尋問されるだろう。
 教会とアシュカナ帝国が、実際どんな関係なのかは分からない。
 少なくとも今回表沙汰おもてざたになったお陰で、世間からは何らかの関与を疑われる。
 教会と言えども客商売には違いない。
 評判が下がるのは本意ではないはずだ。
 これから相手国との関係を見直す必要が出てくるだろう。
 本当に利用されているのは、どちらなのか……。

 そんな事を思いながら迷宮都市に移転し、ホームの自宅へ戻ってきた。
 帰りを心配していた雫ちゃんが、全員の無事な姿を見るなり安堵あんどし旭に抱き着いている。

「ただいま、雫」

 旭が雫ちゃんの背中をポンポンとあやしている姿が、兄と重なった。
 2人は案外、似た者同士かも知れないなぁ。

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