自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第619話 王都 バールの武器屋 2 シュウゲン

「特別なお礼・・をずっと楽しみに待っておったのに、遅いではないか! 幾ら長命なドワーフでも、100年以上も待たせるとは命が尽きてしまうわ! それより約束のお礼・・は、今からしてもらえるんじゃろうか?」

 ヒルダさんと勘違いしているシュウゲンさんは、私に向かってそう言うと両手を30cmくらいに広げ、左右に動かし期待に満ちた目で見つめてきた。
 ええっと、私はヒルダさんじゃないのでお約束した内容を知りませんが……。

「あのぉ、初めまして私はサラと申します」

「うん? ヒルダちゃんではないのかの? そう言えば、少し背が低いような……? それに胸が大きくなっておる?」

 前回、バールさんと初めて会った時も同じ事を言われた気がする。
 そして判断する所は、身長と胸なのか……。

「親父。悪いが呼んだのは薙刀なぎなたの件だ。そこの老婦人が薙刀を探しているそうだぞ」

「いや、それよりお礼・・の方が気になるんじゃが……。薙刀とは、また珍しい物を知っておるな。儂が鍛えた物が1本だけあるが、それは売り物ではない。同じ物で良ければ、見本に持ってこよう」

 シュウゲンさんは、店の奥に取りにいった。
 彼がその場からいなくなると、父が「あのバカ……」と小さな声を漏らす。
 うん? それは誰に向けた言葉なの?
 しばらく待つと、シュゲンさんが薙刀を手に戻ってきた。

「少し調整する必要があるじゃろう。店内では狭いだろうから、裏庭で振ってみてくれんかの」

 シュウゲンさんに店の裏庭へ案内され、薙刀を手渡されたサヨさんが、

「懐かしいわね」

 と言い目を細めている。
 そして、おもむろに構えを取り型稽古を始めた。
 その動きは、槍を持った時とは全く違う。
 父が祖母は薙刀の名手だったと言っていたけど、本当らしい。
 得物えものが相手に合っているかどうか、シュウゲンさんはその姿を真剣に目で追っている。
 途中から何度もうなずき感心した様子を見せていた。
 一通り薙刀を振りまわし、納得したのかサヨさんが満足そうな表情で戻ってきた。

「調整の必要はないようです」

「……これは薙刀をする妻の威勢の良さに惚れた儂が、どうしても作りたかったものだ」

「あら? 私は、おしとやかだったと思うわ。……雅美まさみさん」

「下の名前は呼ばないでほしい……小夜さよ」 

 あれ? もしかして、シュウゲンさんはサヨさんの元旦那さん?
 2人はそう言ったきり黙ったまま、お互いを見つめ合った。
 実に78年振りの再会となる。
 バールさんが息子なら、祖父もまたこの世界で結婚したのだろう。
 
「親父。知り合いだったのか?」

「あぁ、懐かしい人に会えた。どうか、この薙刀は貰って下され」

「……はい、ありがたく頂きますね」

 祖父と祖母の、その短い遣り取りに万感の想いを感じる。
 サヨさんは、薙刀をそっと腕に抱き締めた。
 バールさんの前では、話せない事が沢山あるんだろう。

「あ~、シュウゲンさん。今度、将棋の対局をお願いします。334回目の勝ちは譲りませんよ」

 かなで伯父さんが分かるよう伝えると祖父は顔をほころばせ答える。

「お主が勝つのは当分先だろう」

 これに、父も便乗する。

「出来れば、私と100回目の対局もお願いします。確か最後は私の勝ちでしたね。あぁ、それと妻が妊娠したんです。生まれたら、顔を見にきて下さい」

「なんと、そうであったか! それは是非ぜひ、会いにいかねばならんの」

お父さん・・・・、お兄ちゃんの槍もお願いしよう?」

 私は娘であると強調し、兄の事も同時に伝えた。

「あぁ、シュウゲンさん。俺の槍も注文したい。出来れば、アダマンタイトで」

 兄は、ちゃっかりロマン武器を強請ねだっている。
 空気を読んだのか、旭は注文するのを控えたようだ。 

「そうかそうか、儂が作ってやろう。2人は、どんな得物を持っているのじゃ」

 奏伯父さんと父の武器が気になったのか祖父が尋ねると、2人はそれぞれいたずらっぽい表情をしてみせた。

「既に、シュウゲンさんが鍛えた物を持っております」

 父が姫様の形見の品を見せると、祖父が驚きに目をみはる。

「これは、ヒルダちゃんの親友へあつらえた『飛翔ひしょう』ではないか! 何故なぜ、お主が持っておるのだ?」

「知り合いから譲り受けました」

「私の槍はこれです」

 今度は、奏伯父さんが自慢気に槍を見せる。

「ぐぬっ、これは……。幻の鉱物と言われるヒヒイロカネ・・・・・・ではないか!」

 あるんだ、ヒヒイロカネ……。
 素材を聞き、兄と旭が再び目を輝かせた。

摩天楼まてんろうのダンジョンで見付けた物です。これでも一応SS級冒険者なんですよ」

「そりゃ大出世じゃな。武術を極めただけある」

 父と奏伯父さんの武器を確認し兄の注文だけを受け、シュウゲンさんは最後にぽつりとこぼす。

「ヒルダちゃんでは、なかったのか……」

 そんなに、お礼・・を楽しみにしていたんですか?
 サヨさんの祖父を見る目が少し怖かった……。

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