自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
531 / 781
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第654話 迷宮都市 セイさんの紹介

 セイさんに突然プロポーズされた2人は、一瞬何を言われたか分からなかったのかきょとんとしていた。
 そこへすかさず父が入り込み、セイさんがつかんでいる手を離させオーバーに驚いてみせる。

「ひ……セイじゃないか! こんな所で会うなんて偶然だな! 元気にしていたか? いや~相変わらず、お前の冗談は分かりにくい! 2人は俺の息子だ」

 そしてバシバシと背中を叩き、久し振りの再会を演出する。
 父の演技にセイさんも設定を思い出したのか、

ひびきさん! お久振りです、ええっと息子さんでしたか……何故なぜまた出遅れてしまったんでしょう……」

 運命の相手が既婚者だった事が残念なのか、2人を名残惜なごりおしそうに見つめていた。
 旭がようやく言われた内容に気付き、目を白黒させている。
 兄は怒り出すかと思ったら、意外にも苦笑していただけだった。
 まぁ一応これで、知り合い同士の再会は印象付けられただろう。

「セイとサラちゃんの親父殿は知り合いでしたか」

 バスクさんは、父とセイさんが知己であると知り驚いていた。
 セイさんは摩天楼まてんろうのダンジョンで20年冒険者をしていたから、迷宮都市にはいない。
 父とどう知り合ったのか聞かれた場合は、生まれ故郷が同じだと答える心算つもりでいる。
 冒険者は見た目年齢がLvによって違うため、多少誤魔化しが利くだろう。
 その後、父がセイさんをメンバーに紹介し、セイさんはジョンさん達が生きていたと連絡をもらい迷宮都市に来た理由を話した。
 昔入っていたクランリーダーへ会いに来るのは自然な流れで、兄達も不思議に感じたりはしないと思う。
 
 バスクさんは、リュートさんを呼びに行くと言い店を出ていった。
 同じパーティーメンバーだったリュートさんも、セイさんに会いたいだろう。
 従業員達は、久し振りの再会を邪魔しないようにと2階へ上がり席を外してくれた。
 セイさんが残したマジックバッグを私が見付けた話をし、お互い転移者であると確認する。
 父も銀行の後輩だと本当の話をして、この偶然の再会を喜んだ。
 
 かなで伯父さんも、冒険者時代に摩天楼のダンジョンでセイさんと一緒にパーティーを組んでいた話をし、お互い日本人だと気付かなかったと言い笑っている。
 また奏伯父さんが父の結婚相手の兄であると聞き、奇遇ですね~と驚くフリをしていた。
 よし! これで日本人のセイさんをホームへ連れていく準備は整った。
 いきなり兄達にプロポーズした時は、どうなる事かと心配だったよ。  
 15分後、バスクさんがリュートさんを連れ店に戻ってきた。
 セイさんは、リュートさんの片腕がない姿を見て知り再び泣き出してしまう。

「リュートさんも、こんな大怪我をして……」

「セイは優しいな。ほら泣くんじゃない」

 リュートさんはセイさんを懐かしそうに見やり、涙をそでぬぐい片腕でぎゅっと抱き寄せた。
 小柄なセイさんがリュートさんの腕にすっぽりとはまってしまう姿は、まさに大人と子供のようである。
 リュートさんが来たので、従業員達も1階に戻ってきた。
 従業員の中には、セイさんと同じクランメンバーが何人かいたから再会を喜んでいる。
 その全員が身体に欠損があるのを見て、セイさんは大泣きしてしまった。

 『泣き虫セイ』
 何故なぜか、そんな台詞せりふを思い出す。
 あれは誰が言った言葉だった? ふと、視線が兄へと向く。
 兄は泣いているセイさんを、あきれるでもなく穏やかに見つめていた。
 なんとなく、この光景に見覚えがあり首をかしげる。
 2人は初対面のはずなのに……、私は既視感を抱いてしまう。

 記憶の齟齬そごが、最近多くなっている気がする。
 リーシャの脳は若いのに大丈夫かしら? やはり兄に検査してもらった方がいいかも?
 セイさんとの再会を『製麺店』の皆と祝い、店の裏庭で『バーベキュー』をした。
 リュートさんがアリサちゃんを連れてきたから、『焼きとうもろこし』を作ってあげよう。

「お姉ちゃん、焼いた『とうもろこし』も美味しいね~」

 アリサちゃんは、両手で持ち満面の笑みを浮かべかじりついていた。
 リュートさんは異世界にない野菜だけど何も言わない。
 やはり記憶を持ったままなのか……。
 セイさんがアリサちゃんの手元をじっと見ていたので食べたいのかと思い、もう1本焼き渡してあげた。
 醤油の焦げる香ばしい匂いが食欲をそそるなぁ~。

 従業員達はお酒を飲んでいるため、事前に男女の仲を赤裸々に歌う事は固く禁止した。
 アリサちゃんはまだ子供だからね。教育上よろしくない。
 それに経験のないしずくちゃんも恥ずかしがるだろう。
 夕食後は、父がセイさんに家に泊まってほしいと言い店を出た。
 セイさんは、フォレストに二人乗りしてもらい家まで戻る。
 要塞のような塀に囲まれた私の家を見て、口を開きっぱなしにしていて笑う。
 門の魔石に血液を登録し庭からホームへ移転。

「わぁ~、日本だぁ~」

 と少々オーバーリアクションをしながら感激しているセイさん。
 演技力は兄よりありそうだ。
 実家に泊まってもらう予定だったけど、セイさんは先輩の家でお世話になるのはと遠慮し兄達の家を希望する。
 先輩の息子の家はいいの? 2人はまだ新婚なんだけど……。

 兄と旭は特に嫌がらず、どうぞ自宅に泊まって下さいとにこやかに答えていた。
 まぁ一緒に住む訳じゃないし、今夜泊めるくらいは問題ないか。
 兄達の家に客用布団を敷き、セイさんに着替えを渡して私は自室へ帰る。
 セイさんのプロポーズは父が冗談にしたので、兄達も本気と思っていないんだろう。
 母とシュウゲンさんには明日紹介しよう。
 今日は、やけに濃い1日だったなぁ。
 明日も予定が沢山あるから、お風呂に入って直ぐ眠りにいた。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇