自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第664話 迷宮都市 ポーションの変化&石化を解除された竜の卵

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 ヒールを掛けたポーションをじっと見つめていると、瓶の中の液体がみるみる内に減っていき最後には紫の丸い玉に変化した。
 おおっ、液体から個体になるとは驚きだ!
 瓶を振ったらカラカラと音が鳴る。
 取り出そうと瓶を傾けると、入り口の径より玉が大きく出てこない。
 まるでラムネの中に入っているビーダマみたいね。

 ここはウィンドボールの出番だろう。
 トレントが切れるならガラス瓶も大丈夫だと思い、丸い玉が出るようポーション瓶を半分に切断し玉を取り出した。
 指でつまむと硬い感触がする。
 紫色なので、癒し草の花と同じようだ。

 次にハイポーション・エクスポーション・『MAXポーション』へヒールを掛ける。
 結果はポーション同様、紫の丸い玉への変化だった。
 ただ、その色味が段々と濃くなっている。
 一体、何の玉になったんだろう?
 ついでにエーテルとハイエーテルも試してみよう。
 予想通り赤の丸い玉に変化した。
 こちらもエーテルとハイエーテルでは、玉の色に差が出ている。

 エリクサーは持っていないため、どうなるか分からず残念。
 かなで伯父さんは伯爵だからエリクサーを持っているかしら?
 でも貴重な品を私の実験用には渡してくれないか……。
 エリクサーは金貨1枚(100万円)だからなぁ~。
 丸い玉に変化した物は後で父に鑑定してもらおう。
 私は実家へ戻り、サヨさんが起こした型紙を母と一緒に裁断していった。

 夕方セイさんを連れ、異世界の家へ移転して工房へ兄達を迎えにいく。
 ガーグ老にお礼のショートブレッドを渡し、皆でホームへ戻った。
 しずくちゃんとお母さんも呼び夕食は実家で食べる事にする。
 シュウゲンさんはサヨさんの姿を見て、嬉しそうにしていた。
 父がセイさんは会社の後輩で、奏伯父さんとパーティーを組んでいた冒険者だと話すと、身内以外に異世界へ転移していた日本人がいると知り、サヨさんが驚いていた。
 私はパーティーを組んでいるので、これからホーム内で一緒に生活する事を伝える。
 セイさんは私達の関係を知っているから、

「お孫さんが増えて嬉しいですね」

 とサヨさんとシュウゲンさんを見ながら微笑んでいた。
 異世界に家族のいない彼を思ってか、サヨさんがセイさんの両手を握り優しく声をかける。

「これから仲良くしていきましょうね」

「はい。よろしくお願いします」  

 セイさんの紹介が済んだ所で、料理をサヨさんと母と一緒に作り出した。
 テーブルには3人がそれぞれ作った料理が並ぶ。
 夕食のメニューは、帆立ほたての刺身・帆立ほたてのバター焼き・帆立ほたてフライ・帆立ほたてグラタンと帆立ほたて尽くし。
 ダンジョンの地下28階で帆立の魔物を全滅させたから、大きな貝柱を取り出し使用したのだ。 

 他にもいつきおじさん用に迷宮ウナギの蒲焼や、祖父の好きな肉じゃがとカレイの煮付けをサヨさんが作っている。
 食事をしながらセイさんに雫ちゃん達が住んでいた部屋が空いているので、兄のマンションに引っ越ししませんかと聞いてみたら意外な答えが返ってきた。
 なんとそのまま、兄達と一緒に住むと言う。
 最上階の部屋は広いから3人でも住めると思うけど、2人は新婚さんだよ?
 まぁ付き合いが長い分、新婚と言っても今までの延長と変わらないか……。
 しかし、それはどうなんだろう。

 兄も旭も知っていたのか特に反対しなかった。
 3人で事前に相談済みだったのかしら?
 兄達が良いなら、セイさんと一緒に住んでもらおう。
 夜がとても気になったけど……、音とか大丈夫?
 
 食後に竜の卵の石化が解除された報告をし、アイテムBOXから取り出して皆へ披露ひろうした。
 サヨさんは初めて見る竜の卵に驚きつつ、石化が解除され綺麗な状態になった卵の表面へ優しく触れる。

「この子は混ざり竜ね。光竜と風竜とは、また珍しいわ。母親が光竜みたいだから、父親の属性で生まれた風竜に魔力を与えられなかったのよ。可哀想かわいそうに……」

 そう呟くと涙をこぼす。
 サヨさんは竜の生態に詳しいの? あまり一般的な知識じゃないと思うんだけど……。

「石化を解除しても、この子は育たないわ。魔力を与えられる親がいないのでは、どうしようもない」

「あっ、私が出来るみたいです」

「えっ!?」

 兄と旭にセイさん以外が全員口をそろえて私を注目する。

「方法は分かりませんが、手を触れると勝手に魔力を吸収しますよ?」

「ちなみに俺達も触れたが、魔力は吸収されなかった」

 兄が自分達は出来ないと伝えていた。
 シュウゲンさんと奏伯父さんが卵と私を交互に見遣みやり、「まさか……」と声を出す。
 いやいや、私が産んだ卵じゃありませんよ! 1mもある卵を産める訳ないじゃん!
 そもそも私は人間だし、変な勘違いをしないでほしい。
 
「沙良ちゃんは、どうなってるんだ?」

 癒し草に花を咲かせたのを知っている奏伯父さんが、父を見て疑問を投げる。
 父は無言で首を横に振り、代わりに樹おじさんが口を開く。

「ふっ、不思議だな~。娘の能力は特殊だから、『手紙の人』が何か特別なものを与えてるかも知れないよ!」

 私だけ、ホーム・マッピング・召喚と規格外の能力を持っているのは確かだ。
 考えても答えは分からないため、竜の卵に魔力を与えられるだけで良しとしよう。

「沙良お姉ちゃんが魔力を与えられるなら、この竜の卵はかえるんだよね?」

 雫ちゃんに聞かれ返事をする。

「多分、大丈夫だと思うよ」

 何故なぜかセイさんが太鼓判たいこばんを押してくれたし。

「それじゃあ、竜の赤ちゃんが生まれるの楽しみだね!」

 ニコニコと笑って言う雫ちゃんに、その場がなごんだ。
 卵を再びアイテムBOXに収納し、サヨさんを奏伯父さんと一緒に華蘭からんまで送り届ける。
 ホームへ戻ってから、父に鑑定をお願いしよう。
 さて、ポーションが変化した丸い玉は何かしら?

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