自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第685話 迷宮都市 サヨさんとメンバーのLv上げ&武術稽古

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 午後からはメンバーのLv上げをする予定にしている。
 他領から冒険者が迷宮都市へ集まっている話を聞き不安になり、やはりサヨさんもLv50まで上げた方がいいと判断。
 ダンジョン内で冒険者を襲うような連中がいるのなら、都市の治安も悪くなるかも知れないからだ。
 『肉うどん店』は、客のほとんどが冒険者達なので心配ない。
 『製麺店』は、従業員自身が元冒険者である。
 『お菓子の店』は、護衛のリュートさんが子供達を守ってくれるだろう。

 華蘭からんへ寄り、サヨさんにLv上げをしたいと伝えると二つ返事で了解してくれた。
 若返りの効果を期待してか、どことなく嬉しそう。
 あかねにサヨさんを祖母だと紹介すると、かなり驚いていた。
 サヨさんは妹を見て背が高いのねと目をまん丸にする。
 それから、そっと抱き締めていた。

 サヨさんをホームの実家へ送り、しずくちゃんのお母さんと別れた後で自宅に帰ってきた。
 昼食は簡単な物でいいかな?
 アイテムBOXに収納してある、おかずを何品か出そう。
 後は、ご飯が炊きあがるまでに兄達が好きな豚汁を作ればいい。
 リビングでくつろいでいた兄達に声を掛け昼食を食べる。
 Lv上げをしている間、私は飛翔魔法の練習をすると話しておく。
 どうせ1人では飛ばせてもらえないしね。

 食後は実家へ集まり、メンバー達と一緒に広いグラウンドへ移動。
 サヨさんには、ぴったりとシュウゲンさんが付き見守っている。
 母の後ろには父が、雫ちゃんとお母さんといつきおじさんのそばにはかなで伯父さんが待機していた。
 私は地下31階で収納した魔物を出した後、4人に付き添われ飛翔魔法を発動させる。
 マッピングで様子を見ながら、魔物を追加すればいいだろう。
 飛翔というより浮遊の高さで兄と旭に両手をしっかりつかまれ、前後をセイさんと茜に付き添われている状態でスピードを出すのは難しい。
 これで飛翔魔法の練習になっているのか大いに疑問だ。

 もっと早く飛びたいと口にすると、兄はにっこり笑い「しっかり掴まってろよ」と言い私を片手で抱き寄せた。
 そのまま空高く浮上し、先程の倍のスピードで飛び始める。
 いや、そうじゃなくて……。
 私自身が飛ばないと練習の意味がないんですけど?
 兄に抱き締められたまま、空の散歩を楽しんだだけで終わってしまった。
 飛翔魔法のLvが上がる気がしない。
 地上に降りると心配したシルバー達がすり寄ってくる。
 大型魔物5匹にまとわりつかれ、体勢がかたむきそうになった所を茜がしっかりと支えてくれた。

 5時間後、ステータスの確認をお願いする。
 皆がLv45になった報告を受け、本日のLv上げは終了。
 サヨさんは、また少し容姿が若返っていた。
 渡した手鏡をのぞき、にこにこ笑顔になっている。
 シュウゲンさんも心なしか嬉しそう。
 サヨさんを華蘭からんへ送り届け、夕食は旭家も一緒に実家で食べた。
 シュウゲンさんが寂しそうにしていたけど、サヨさんは人妻だから仕方ない。
 そうそう家を空けられないのだ。
 
 樹おじさんのために、迷宮ウナギの蒲焼と肝焼きを出してあげる。
 が、何故なぜはしを付けようとはしなかった。
 効果を知っているはずはないのに、おかしいな……。
 代わりに旭がバクバク食べていたんだけど、夜は大丈夫かしら?

 翌日、日曜日。
 子供達の炊き出しを終え、ガーグ老の工房へ向かう。
 茜は私の偽装結婚の相手がいると知り、見極める心算つもりらしい。
 ガーグ老の工房へ到着すると、今日も全員が整列し出迎えてくれた。
 ポチとタマは樹おじさんの両肩に乗り、ガルちゃん達は私を目掛け走ってくる。
 
「こんにちは~。今日も、よろしくお願いします。メンバーが1人増えたので紹介しますね。妹の茜です」

「サラちゃん、ようきたの。妹さんは美佐子みさこ殿の子供のようじゃな」

 兄と茜を見比べてガーグ老が変な事を言う。
 母以外、誰の子供だと思うんだろう?

「茜です。姉の結婚相手だと聞きました。少し、その腕を確認したい。ご老人、お相手願えるか?」

 ガーグ老が自己紹介をする前に、やる気満々な妹が仕合を申し込んでしまった。

「ほうっ、では儂が相手になって進ぜよう」

 武闘派は、毎回このくだりが必要らしい。
 メンバーで一番高Lvの茜は、ガーグ老とも良い勝負になるだろう。
 長男のゼンさんの合図で仕合開始。
 お互い槍を構えしばらくは動かない。
 茜は速攻で相手に向かっていくと思っていたのに予想外だ。
 最初に動いたのはガーグ老の方だった。
 鋭い突きが繰り出され、茜はそれをかわすと同時にぎ払う。
 それをガーグ老が槍で受け、武器同士が交わる重く鈍い音が周囲に響いた。

 仕合が長引きそうだと静観していたら、2人がおもむろに槍を降ろしてしまう。
 茜はガーグ老へ深々と一礼し、「姉をよろしく頼む」と言い戻ってきた。
 たった一合交わしただけで、相手の技量を把握したの?
 私には到底及びもつかない境地だ。

「儂はガーグだ。良い腕をしておるな。勧誘したいくらいだが……」

 うん? 茜は家具職人にならないと思いますよ?
 それからガーグ老が息子達と、そのお嫁さん2人を紹介する。
 茜は見た目がおかしい兄弟に口紅を付けただけの男性としか思えないお嫁さんを見て、何とも言えない表情になった後ぼそりと小声で呟く。

「姉さん、考え直した方がいい」

 まぁ、5人の子持ちになって義理の娘がアレじゃね。
 茜の心配する気持ちも分かるけど、もう変更は利かない。
 私の結婚式まで日がないのだ。
 
「大丈夫よ。アシュカナ帝国の王があきらめれば、それでいいんだから」
 
 小さな声で返事をして、妹の背中をポンポンと叩く。
 茜は嘆息たんそくし、これから家族になる相手を見て首を横に振っているのだった。

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