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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第698話 迷宮都市 犯人の動機&『白雪姫』の演劇 1
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迷宮都市の家から移転し、ホームの実家に戻ってくる。
なんだか消化不良の1日だったなぁ。
実家で夕食を食べようと兄に念話で伝え、セイさんには通信の魔道具で連絡した。
母と食事の準備をしている間、父がダイニングのテーブルで新聞を広げ読んでいたから、ふと気になった件を尋ねてみる。
「お父さん。樹おじさんと、王都では何をしていたの?」
最初から別行動をすると言っていたけど、2人が何をしていたのかは知らない。
「あっ、あぁ。異世界に召喚されて、まだ日が浅いからな。少し情報を仕入れに王都を調べていたんだよ」
2人を召喚して僅か数ヶ月。
その割には、この世界に馴染んでいる気がするけど?
特に驚いた様子も見せないし……。
「それで、何か分かった?」
8年異世界にいる私は、月~金曜日はダンジョン内で過ごし土日も何かと忙しい。
この世界を見て回る時間はなかった。
寝るのはホームの自宅だしね。
「王都の物価が迷宮都市より高いくらいだな」
「どうせなら、一緒に王宮へ来れば良かったのに。貴族の奏伯父さんが一緒じゃないと入れない場所だよ? 王様には会えなかったけど、綺麗な宮廷魔術師の女性達に会えたし、庭園も広くて見応えがあったんだから。歴代の王族の肖像画は滅多に見られないでしょ?」
「そっ、そうだな。王宮へは、また別の機会に行くとしよう」
「あっ、王宮には塀や堀がなくて不思議だった。どうやって敵の侵入を防ぐんだろう?」
「それこそ、宮廷魔術師達の出番だろう。王宮内には結界を発動する魔石が……多分、埋め込まれているんじゃないか? 危機的な状況になれば、王宮をドーム状に張り巡らす結界が発動する……んだと思う」
やけに具体的な予想だな。
「上空からの攻撃にも対応している結界かぁ~。それは空を飛ぶ騎獣による空撃を念頭に入れているからかしら? 他国には竜騎士がいるのかな?」
「いや、少なくともカルドサリ王国がある大陸に竜騎士がいる国はないだろう。竜をテイムするのは難しい。あれは種族的にテイムされるのを嫌う。だから、契約竜として主人を守る……と聞いた。まぁ竜族ではない飛竜に該当する魔物は、その限りじゃないがな」
「飛竜ならワイバーンとか? 私が魔力を与えている竜の卵は、竜族の子供なのかしら?」
「俺も竜の卵を見た事がないから、どちらか分からんな……。樹……いや聖は何と言っていた?」
セイさんに竜の卵を見せた時を思い出す。
「風竜と光竜の番に出来た卵で、子供は雌だと言ってたよ」
「それだと、何とも言えない。俺の鑑定では竜の卵としか表示されないんだ」
「ふ~ん。魔物の竜と竜族の違いがよく分からないけど……」
父は将棋を指しながらガーグ老に色々な話を聞いているらしい。
異世界に長くいる私より、多くの情報を知っているんだよね。
「それにしても、第二王妃の肖像画が見たかったなぁ~。誘拐された屋敷にあったのは全て切り裂かれた状態だったから、まともな物が一枚もなかったの。ちゃんとした状態で私と似ているか確かめたかったのに……」
「少し幼い姿だが、お前はヒルダに良く似ている……と思う」
そう呟いた父は、どこか懐かしそうに私を見る。
第二王妃だった彼女の名前を呼ぶのに違和感を覚え首を傾げた。
ヒルダさんと会った事もないのに、どうしてそう思うのだろう。
疑問を口に出そうとした所で父が急に席を立った。
「夕食まで、まだ時間があるだろう。少し、ボブと泰雅を連れ散歩をしてくる!」
突然、母の従魔と私の従魔を散歩に連れ出すと言う。
家の庭にいるボブは近くにいるけど、泰雅はどこにいるか分からないよ?
テイム魔法を習得したいみたいなので、仕方なく私が泰雅を呼び出してあげた。
泰雅へ、ボブと父と一緒に散歩をしてねとお願し送り出す。
夕食が出来たら泰雅に伝えれば帰ってくるだろう。
1時間後、兄達とセイさんが実家に来た。
泰雅を呼び戻す前に、父も2匹を連れ帰ってくる。
食事時、兄に第二王妃の肖像画が盗まれた件を話すと何かを考え込んでいた。
「何だかタイミングが良すぎやしないか? まるで、お前達に肖像画を見られたくないみたいだ」
その発想はなかったな……。
それだと犯人は、私達が王宮へ第二王妃の肖像画を見に行くのを事前に知っていた事になる。
「確かに偶然にしては、おかしいな……」
兄の言葉に奏伯父さんも首を捻った。
「でも、沙良ちゃん達に見られたくない理由って何? それに、どうやって3人の行動を把握していたの?」
旭が兄へ疑問を投げ掛ける。
「さてな、理由は俺にも分からん。それに、ただの憶測だしな。警備が厳重な王宮で、沙良達が見に行った日に肖像画が消えたのが気になっただけだ」
「う~ん。何だろう? どうにも、こう釈然としない事件だよね。お父さんは、どう思う?」
「そっ、そうだな……。本当に偶々、お前達が王宮へ行った日に犯行があっただけじゃないのか? 3人の行動が、きっかけになっているとは思えない」
「まっ、それもそうか。今日行くって計画していた訳じゃないし。移転したから、王都にいるとは誰も思わないよね」
移動時間を考えたら、私達の行動を把握出来る人間などいない筈。
兄の言葉は気になったけど、考えても分からない事は捨て置こう。
明日は子供達に披露する演劇が待っている。
もう一度、台詞を確認しておいた方が建設的だ。
夕食後、自宅へ戻り旭と一緒に入念な台詞のチェックをし、竜の卵へ魔力を与えたら就寝。
翌日、日曜日。
メンバーを連れ異世界の家へ移転する。
劇を見たいと言う母も連れて来た。
子供達に今日は劇を見せると伝えてあるから、いつもより笑顔一杯で家へやってくる。
母親達と炊き出しの『シチュー』とパンを配っていると、ダンクさんとアマンダさんのパーティーも到着した。
2階の部屋で衣装に着替えて下さいと伝え、私と旭も衣装を着るべく2階へ上がる。
1階には、この日のために舞台を設置。
緞帳はサヨさんが手配し、ガーグ老達が舞台をトレント資材で作製してくれたのだ。
舞台袖の空間も作り、役者が待機出来るよう工夫してある。
白雪姫の衣装を着たら、子供達が食べ終わる前に右側の舞台袖へ向かう。
既にアマンダさんのパーティーが、それぞれの役柄の衣装に着替え待っていた。
小人役の冒険者達は妖精さんに変更。
この世界の妖精さんは、逞しい男性だったので違和感はないだろう。
食事を食べ終えた子供達が、はしゃぎながら家に入ってくる声が聞こえる。
私は覚えた台詞を必死に呟き、幕が上がるのをドキドキして待つ。
5分後、ケンさんのナレーションが始まった。
『王様とお妃様の間には、とても可愛らしい子供が生まれます。雪のように真っ白い肌をしていたので、白雪姫と名付けられました。しかしお妃様は子供の成長をみる事なく、ご病気でお亡くなりになってしまわれたのです。新しく迎えられたお妃様の自慢は、自分の美しさ。魔法の鏡に向かって、お妃様は毎晩尋ねます。』
そこで緞帳が上がり、お妃様役のアマンダさんが登場する。
少し毒々しい衣装を着た、お妃様だ。
白雪姫の衣装より、似合っているのは確かだろう。
「鏡よ、鏡。世界中で一番美しいのは、一体誰だい? 教えておくれ」
「世界中で一番美しいのは、お妃様。あなたでございます」
これは、最も有名な台詞のくだり。
お妃様は鏡の答えを聞き満足そうに笑った。
『それから、何年かが過ぎました。成長するにつれて、白雪姫は、ますます美しくなっていきました。すると……』
「鏡よ、鏡。世界中で一番美しいのは、一体誰だい? 教えておくれ」
「世界中で一番美しいのは、白雪姫様でございます!」
「あぁ、そうであろう。あの子は、私に似て大層美しい娘だ」
「いえ……、お妃様と血の繋がりはありませんが……」
「野暮を言うでない。王様と結婚したからには、娘で合っているだろう。私には子供がいないからね」
はっ!? そんな台詞は、どこにもないんですけど??
この瞬間、私は覚えた台詞が露に消えた事を悟ったのだった。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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「お父さん。樹おじさんと、王都では何をしていたの?」
最初から別行動をすると言っていたけど、2人が何をしていたのかは知らない。
「あっ、あぁ。異世界に召喚されて、まだ日が浅いからな。少し情報を仕入れに王都を調べていたんだよ」
2人を召喚して僅か数ヶ月。
その割には、この世界に馴染んでいる気がするけど?
特に驚いた様子も見せないし……。
「それで、何か分かった?」
8年異世界にいる私は、月~金曜日はダンジョン内で過ごし土日も何かと忙しい。
この世界を見て回る時間はなかった。
寝るのはホームの自宅だしね。
「王都の物価が迷宮都市より高いくらいだな」
「どうせなら、一緒に王宮へ来れば良かったのに。貴族の奏伯父さんが一緒じゃないと入れない場所だよ? 王様には会えなかったけど、綺麗な宮廷魔術師の女性達に会えたし、庭園も広くて見応えがあったんだから。歴代の王族の肖像画は滅多に見られないでしょ?」
「そっ、そうだな。王宮へは、また別の機会に行くとしよう」
「あっ、王宮には塀や堀がなくて不思議だった。どうやって敵の侵入を防ぐんだろう?」
「それこそ、宮廷魔術師達の出番だろう。王宮内には結界を発動する魔石が……多分、埋め込まれているんじゃないか? 危機的な状況になれば、王宮をドーム状に張り巡らす結界が発動する……んだと思う」
やけに具体的な予想だな。
「上空からの攻撃にも対応している結界かぁ~。それは空を飛ぶ騎獣による空撃を念頭に入れているからかしら? 他国には竜騎士がいるのかな?」
「いや、少なくともカルドサリ王国がある大陸に竜騎士がいる国はないだろう。竜をテイムするのは難しい。あれは種族的にテイムされるのを嫌う。だから、契約竜として主人を守る……と聞いた。まぁ竜族ではない飛竜に該当する魔物は、その限りじゃないがな」
「飛竜ならワイバーンとか? 私が魔力を与えている竜の卵は、竜族の子供なのかしら?」
「俺も竜の卵を見た事がないから、どちらか分からんな……。樹……いや聖は何と言っていた?」
セイさんに竜の卵を見せた時を思い出す。
「風竜と光竜の番に出来た卵で、子供は雌だと言ってたよ」
「それだと、何とも言えない。俺の鑑定では竜の卵としか表示されないんだ」
「ふ~ん。魔物の竜と竜族の違いがよく分からないけど……」
父は将棋を指しながらガーグ老に色々な話を聞いているらしい。
異世界に長くいる私より、多くの情報を知っているんだよね。
「それにしても、第二王妃の肖像画が見たかったなぁ~。誘拐された屋敷にあったのは全て切り裂かれた状態だったから、まともな物が一枚もなかったの。ちゃんとした状態で私と似ているか確かめたかったのに……」
「少し幼い姿だが、お前はヒルダに良く似ている……と思う」
そう呟いた父は、どこか懐かしそうに私を見る。
第二王妃だった彼女の名前を呼ぶのに違和感を覚え首を傾げた。
ヒルダさんと会った事もないのに、どうしてそう思うのだろう。
疑問を口に出そうとした所で父が急に席を立った。
「夕食まで、まだ時間があるだろう。少し、ボブと泰雅を連れ散歩をしてくる!」
突然、母の従魔と私の従魔を散歩に連れ出すと言う。
家の庭にいるボブは近くにいるけど、泰雅はどこにいるか分からないよ?
テイム魔法を習得したいみたいなので、仕方なく私が泰雅を呼び出してあげた。
泰雅へ、ボブと父と一緒に散歩をしてねとお願し送り出す。
夕食が出来たら泰雅に伝えれば帰ってくるだろう。
1時間後、兄達とセイさんが実家に来た。
泰雅を呼び戻す前に、父も2匹を連れ帰ってくる。
食事時、兄に第二王妃の肖像画が盗まれた件を話すと何かを考え込んでいた。
「何だかタイミングが良すぎやしないか? まるで、お前達に肖像画を見られたくないみたいだ」
その発想はなかったな……。
それだと犯人は、私達が王宮へ第二王妃の肖像画を見に行くのを事前に知っていた事になる。
「確かに偶然にしては、おかしいな……」
兄の言葉に奏伯父さんも首を捻った。
「でも、沙良ちゃん達に見られたくない理由って何? それに、どうやって3人の行動を把握していたの?」
旭が兄へ疑問を投げ掛ける。
「さてな、理由は俺にも分からん。それに、ただの憶測だしな。警備が厳重な王宮で、沙良達が見に行った日に肖像画が消えたのが気になっただけだ」
「う~ん。何だろう? どうにも、こう釈然としない事件だよね。お父さんは、どう思う?」
「そっ、そうだな……。本当に偶々、お前達が王宮へ行った日に犯行があっただけじゃないのか? 3人の行動が、きっかけになっているとは思えない」
「まっ、それもそうか。今日行くって計画していた訳じゃないし。移転したから、王都にいるとは誰も思わないよね」
移動時間を考えたら、私達の行動を把握出来る人間などいない筈。
兄の言葉は気になったけど、考えても分からない事は捨て置こう。
明日は子供達に披露する演劇が待っている。
もう一度、台詞を確認しておいた方が建設的だ。
夕食後、自宅へ戻り旭と一緒に入念な台詞のチェックをし、竜の卵へ魔力を与えたら就寝。
翌日、日曜日。
メンバーを連れ異世界の家へ移転する。
劇を見たいと言う母も連れて来た。
子供達に今日は劇を見せると伝えてあるから、いつもより笑顔一杯で家へやってくる。
母親達と炊き出しの『シチュー』とパンを配っていると、ダンクさんとアマンダさんのパーティーも到着した。
2階の部屋で衣装に着替えて下さいと伝え、私と旭も衣装を着るべく2階へ上がる。
1階には、この日のために舞台を設置。
緞帳はサヨさんが手配し、ガーグ老達が舞台をトレント資材で作製してくれたのだ。
舞台袖の空間も作り、役者が待機出来るよう工夫してある。
白雪姫の衣装を着たら、子供達が食べ終わる前に右側の舞台袖へ向かう。
既にアマンダさんのパーティーが、それぞれの役柄の衣装に着替え待っていた。
小人役の冒険者達は妖精さんに変更。
この世界の妖精さんは、逞しい男性だったので違和感はないだろう。
食事を食べ終えた子供達が、はしゃぎながら家に入ってくる声が聞こえる。
私は覚えた台詞を必死に呟き、幕が上がるのをドキドキして待つ。
5分後、ケンさんのナレーションが始まった。
『王様とお妃様の間には、とても可愛らしい子供が生まれます。雪のように真っ白い肌をしていたので、白雪姫と名付けられました。しかしお妃様は子供の成長をみる事なく、ご病気でお亡くなりになってしまわれたのです。新しく迎えられたお妃様の自慢は、自分の美しさ。魔法の鏡に向かって、お妃様は毎晩尋ねます。』
そこで緞帳が上がり、お妃様役のアマンダさんが登場する。
少し毒々しい衣装を着た、お妃様だ。
白雪姫の衣装より、似合っているのは確かだろう。
「鏡よ、鏡。世界中で一番美しいのは、一体誰だい? 教えておくれ」
「世界中で一番美しいのは、お妃様。あなたでございます」
これは、最も有名な台詞のくだり。
お妃様は鏡の答えを聞き満足そうに笑った。
『それから、何年かが過ぎました。成長するにつれて、白雪姫は、ますます美しくなっていきました。すると……』
「鏡よ、鏡。世界中で一番美しいのは、一体誰だい? 教えておくれ」
「世界中で一番美しいのは、白雪姫様でございます!」
「あぁ、そうであろう。あの子は、私に似て大層美しい娘だ」
「いえ……、お妃様と血の繋がりはありませんが……」
「野暮を言うでない。王様と結婚したからには、娘で合っているだろう。私には子供がいないからね」
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