自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第701話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(31階) 夕食の『味噌煮込みうどん』&樹おじさんの女性化

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 月曜日、今日から5日間またダンジョン攻略。
 地下11・・階で兄&フォレストと別れ、私達は地下15階まで駆け抜けた。
 安全地帯に着いてマジックテントを設置後、休憩したら攻略開始。
 ハニー達から薬草を回収し、地下16階の果物を採取したら地下10階へ移動し槍のLv上げを行う。
 アウラウネを槍で倒した後、しばらく魔石取りの練習をしていないのに気付き取り出す作業をした。
 そういえば、妹はダンジョンマスター時代に魔石取りをした経験があるんだろうか?

あかね、換金するとき魔石を取り出す必要がある魔物がいるの。昇格試験に備えて、今から練習しておいた方がいいよ」

「そうなのか? 魔物は倒してからアイテムBOXに入れるだけだったから、試しにやってみるよ」

「哺乳類系は、大抵心臓近くに魔石があるから分かりやすいと思う」

 私は次に倒したアラクネを茜に提示する。
 上半身が女性姿をしている蜘蛛くもの魔物だから、私には無理だけど……。
 解体ナイフを渡すと、妹は少し躊躇ちゅうちょした後で心臓付近にナイフを入れた。
 うわぁ~、見ているだけで嫌な気分になる。
 慣れないと駄目だけど中々難しいんだよね~。
 茜は初めての魔石取りに、顔をしかめながら体内へ手を入れ魔石を取り出した。
 まぁ、でもこれが普通の反応だろう。
 父やいつきおじさんは、魔石取りの作業に嫌悪感がなかったみたいだけど……。

 今日もりずにターンラカネリの槍を取り出し、投擲とうてきの練習をしておいた。
 父が竜騎士はこの大陸にいないと教えてくれたけど、それなら私が第一号になればいい。
 毎日魔力を与えている竜の卵が孵化ふかしたら、その背に乗り華麗かれいに槍を投げてみせよう!
 今の所、魔物にかすりもしないけどね~。
 3時間後、地下15階の安全地帯に戻りテントからホームの実家へ移転。
 母の作った昼食を食べ、シュウゲンさんを連れ摩天楼まてんろうのダンジョン31階へ移動し、私と茜はテント内で待機する。
 
 いよいよ今週日曜日は結婚式だ。
 アシュカナ帝国が、どれだけの人数をそろえ襲撃してくるか予想も付かない。
 でもこちらは武装したガーグ老達や、ダンクさんとアマンダさんのクランが総出で迎え撃つ心算つもりでいる。
 人数比は私達の方が多いはず
 異世界の家には結界の魔石が付いているため、敵は10mの塀を超える必要がある。
 やはり空を飛ぶ騎獣に乗って来るんだろうか?

 結婚式当日は、かなり早く集合時間を設定した。
 式を挙げる時間は、お昼だけど敵が襲ってきたら悠長ゆうちょうに食事している場合じゃない。
 襲撃前に、ご馳走ちそうを食べてもらう予定にしている。
 妹がテント内で漫画を読んでいる間、私はマッピングで索敵した魔物を倒しアイテムBOXへ収納していった。
 Lvが105になっているから31階の魔物をいくら倒しても、これ以上は上がらないだろうけど……。
 少しでも経験値になればいい。

 兄は、いつまで31階層を攻略するのかな?
 今までは私の安全のため、3ヶ月毎に攻略階層を上げていた。
 私がテント内から出ず魔物を倒せると知り、1ヶ月程で次の階層に移動してくれるだろうか?
 早く、冒険者がいない51階に行きたいなぁ。
 2回の攻略を終え、ポチを肩に乗せた父達が帰ってくる。
 シュウゲンさんをホームの実家へ送り、迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯に戻ると怪我人がテント前で待機していた。

 おや? やけに人数が多いな……。
 それに怪我もハイポーションで治るような軽傷ばかりに見える。
 しずくちゃんのお母さんが治療に当たっているけど、旭を見た男性冒険者達が彼の前に列をなす。
 旭は疑問に思わないのか、自分の所へ来た冒険者達の怪我を治していた。
 治療後、冒険者達が手を握りお礼を伝えているんだけど……。

 これはあれかしら?
 旭の人魚姫姿を聞いた男性冒険者達が、お近付きになりたいとか?
 でも、もう兄と結婚してるよ?
 やたら手を握られお礼を言われる事に、旭は不思議そうな顔をしていた。
 それに気付いた雫ちゃんが、兄へ下心を見せる冒険者達を笑顔で牽制けんせいする。 
 立場が逆だけど、見た目は旭の方が可愛らしいからなぁ。
 悪役令嬢の彼女はキツイ顔立ちなのだ。

 治療を終えホームで休憩後は、夕食をダンクさんとアマンダさんのパーティーと一緒に食べる。
 先週、味噌みそを解禁したので今日は『味噌煮込みうどん』を2パーティーに振る舞う予定。
 具材はねぎ・卵・マジックキノコ・コカトリス肉で、蒲鉾かまぼこと揚げがないのが残念。
 リリーさんとケンさんが、材料を刻んでくれるので私は1人鍋の用意をする。
 本当は硬い『うどん』にしたかったけど、この世界の人は食べ慣れていないだろうから柔らかい方にした。
 砂糖と味醂みりんで甘く味付けをした味噌を溶き、『うどん』と具材を入れて煮込めば完成。

「こりゃ、この間のスープの色と同じだな。中に入っているのは『うどん』か……、おぉ! 『肉うどん』とは全然違う味だが、これもいいな!」

 『味噌煮込みうどん』を食べたダンクさんが、はしを器用に使用し食べた感想を言う。
 
「これは、体が温まるよ。中に入っている材料も味が染みて美味しい!」

 アマンダさんも、『味噌煮込みうどん』の味が気に入ったようだ。
 一応、火傷しないよう取り皿を渡したけど鍋から直接食べている。

「辛い物が苦手じゃなければ、これを少し掛けてみて下さい」

 そう言って小さな陶器壺に入れ替えた『七味』を取り出す。
 調理担当のリリーさんとケンさんが早速さっそく試したようだ。

「あぁ、これはよく合いますね」

 リリーさんが、追加で『七味』を掛けている。
 彼女は辛い物が平気らしい。
 ケンさんは苦手のようで、

「私は、ちょっと……」

 と言っている。
 異世界には辛い食べ物がないから、刺激が強すぎたのかも知れない。
 食事をしながら、話題は間近に迫った結婚式の件になった。 

「サラちゃん、安心おし。私達が絶対守ってみせるよ!」

 アマンダさんの男前な発言に、ダンクさんパーティーもやる気満々で手を挙げる。

「俺らが蹴散けちらしてやるからな! もう準備万端で、親父も金曜日には帰還すると手紙を寄越よこしてきたよ」

「皆さん、ありがとうございます。結婚相手の方は、かなり強いので心配はいらないと思いますが協力に感謝しますね。その分、朝食は期待して下さい!」

「ご馳走ちそうが食べられるのか? そりゃ食べた分は働かないとな!」

 ダンクさんがニヤリと笑って、その場を締めくくった。
 迷宮都市では、これほど親身になってくれる冒険者達がいる。
 私は幸せだなぁ。

 その後5日間。
 何事もなく攻略を終え、冒険者ギルドで換金を済ませホームに帰った。
 いつきおじさんは、明日女性化して実家へ来るそうだ。
 どんな姿になるのか怖いもの見たさで興味がある。
 雫ちゃんのお母さんだけは溜息を吐いていた。
 あぁ、あれから夫婦の行為はされていないらしい。
  
 翌日、土曜日。
 樹おじさんの姿を見ようと、兄達と一緒に早朝から実家へ向かう。
 少し早く来すぎたようで、まだおじさんは家にいなかった。
 父達が朝食を食べ終わる頃、チャイムが鳴る。
 私が玄関まで行き扉を開けると、そこにはリーシャにそっくりな顔をした女性がいた。
 えっ、誰!?
 
「沙良ちゃん、おはよう。この姿なら、ちゃんと代役が出来るだろう?」

「……もしかして樹おじさん?」

「あぁ、女性化の魔法は自分の思った通り・・・・・の姿になれるらしい」

 私はてっきり、顔はそのままで体だけが女性化すると思っていたので驚いた。
 ただ幼いリーシャの姿より、女性化した樹おじさんは大人の女性って感じがする。
 それに瞳の色が私と違い紫色だ。
 まるで切り裂かれていた第二王妃の肖像画みたいに……。

 父親が来た事に気付いた旭が一目見ようと走ってきて、その姿を目にし絶句ぜっくしている。
 本人から言われなければ、リーシャの母親だと思うだろう。
 そんな息子の様子に苦笑し、樹おじさんは家へ上がってきた。
 リビングで待っていた家族が樹おじさんの姿を見て立ち上がる。
 一番に口を開いたのは、シュウゲンさんだった。

「ヒルダちゃんではないか! 儂に、お礼をしに来てくれたのかの?」

 シュウゲンさんは少し混乱しているのか、ホーム内だというのを忘れてしまっているようだ。
 
「いえ、……樹です」

 その言葉を聞いたかなで伯父さんが絶叫する。

「嘘だろ!? 完全に別人じゃないか!」

「あぁ、沙良の代役が務まるな」
 
 父だけは驚いた様子を見せず、落ち着いた声でそう言ったのだった。

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