自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
590 / 781
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第713話 旭 樹 再召喚 7 ガーグ老との再会 2

 工房から出て皆の所に戻り、

「あ~、俺を姫様と勘違いしたそうだ。違うと分かってもらったから大丈夫!」

 少々オーバーに胸を叩いた。
 勘違いした理由は話さず、そう言い切っておく。
 沙良ちゃんが不思議そうな表情をしているけど、ここは無言で乗り切ろう。

「ガーグ老、2人を紹介しますね」

 娘が俺を結花のだと紹介する。

いつきです。これからよろしく!」

 これで今直ぐ元の姿に戻れないと、都合よく思ってもらえるだろう。

女子おなごが好きであったのか……」

 ガーグ老は前世の夫であるひびきに視線を向け、なんとも言えない顔をする。
 夫婦だった俺達が、お互い再婚していると知り複雑なのか……。
 まぁ、王女の俺が女性と結婚した方に驚いているのかもな。
 次に娘が義祖父を紹介すると、ガーグ老が態度を豹変ひょうへんさせた。

「シュウゲン! ここで会ったが300年目! エロじじいが! 儂が成敗してくれる!」

 あ~武器を注文した時、隠形おんぎょうしていたから特別な約束をした件も見られてたわ。
 ガーグ老には義祖父が、大切な王女に破廉恥はれんちな真似をさせるエロ爺だと思われても仕方ない。
 義祖父は、初対面のガーグ老から怒りをき出しにされ怪訝けげんそうにしている。

「何を言っておるのか分からんが……。孫の結婚相手なら、お相手しよう!」

 その喧嘩を買ったようだ。

「ふん、ドワーフ相手には本気を出さねばならんな。姫様の槍を持ってまいれ!」

 ガーグ老も引かず、これから仕合が始まるらしい。
 前影衆当主のガーグ老は『修羅しゅら』と渾名あだなされた強者だ。
 数百年、影衆当主の座を譲らず誰も勝てなかった相手に稽古を付けてもらった俺は、その実力を嫌という程知っている。
 今更、確認する必要もない。
 部下の1人が槍を持ってきた。

「お主! それは儂がヒルダちゃんに鍛えた槍ではないか!? 何故なぜ、持っておる! ヒルダちゃんは、どこだ!」

 忘れてくれたら良かったのに、しっかりとヒルダを覚えているのか……。

「エロ爺に会わせる訳がなかろう。槍を構えなされい!」

 そして2人が唐突とうとつに仕合を始める。

「エロ爺相手に秘技を見せるのはしゃくさわるが、負ける訳にはいかん!」

 素人相手に本気を出すなよ? 娘の祖父だから手加減してくれ。
 まぁ、ティーナの前で血を流すような真似はしないだろう。
 じいが、その実力を発揮すれば一瞬で片は付く。
 前影衆当主の名は伊達だてじゃない。

「ガーグ老は、まだまだ現役だなぁ。頼もしい限りだ」

 2人の仕合を見ながら、腕が鈍っていないと安心した。
 心配するような事態も起こらず、相手に合わせ手加減もしてくれているみたいだし。

「あっ、私の結婚相手はガーグ老ですよ~」

 感心しながらうなずいていると、娘から偽装結婚の相手だと聞かされる。

「えっ!? 結婚相手はじいなの!? 年齢差どれだけあると思ってるんだ……」

 てっきり、相手は息子の方だと思っていたのに……。
 実力を確かめる気でいたが不要になったな。
 しかし、何を考えてガーグ老が婿むこ役になったんだ?
 その後30分経っても勝敗は着かず、俺はポチとタマに仲裁ちゅうさいを頼んだ。
 従魔の権限を譲渡しても、2匹は俺の言葉を理解し2人の間に割って入る。

「ぬう、シュウゲン。今回は引き分けだ!」

「お主、意外とやりおるな。本当に人間か? まぁ、孫の相手には不足ないじゃろう」

 王族を護衛する影衆と遣り合うとは、義祖父も相当強いらしい。
 
「樹おじさんは、ガーグ老と仕合するんじゃないの?」

「本職には勝てね~よ。化け物みたいに強いんだぞ? やるだけ無駄だ」

 娘に聞かれ負ける姿を見せたくない俺は、そう言って仕合を回避した。
 やっぱり親として格好良い姿を見せたいじゃないか。
 これは、どちらかというと父親の心境だけどな。
 
「それにしても相手がガーグ老なんてなぁ。俺は、またとんでもない相手と結婚式を挙げるのか……」
 
 一度目は親友の響で、二度目はガーグ老とは……。
 異世界での相手が悪すぎる。
 例え偽装結婚だとしても綺麗な女性が良かったよ。
 そんな風に思っていると、

「ひ……イツキ殿。この槍を受け取って下され」

 ガーグ老が持っていた槍を差し出してきた。
 あぁ、これは注文した俺専用の武器!

「ありがとう。これでLv上げがはかどるな!」

 勿論もちろん、ありがたく頂こう。

「お主、儂の前でヒルダちゃんの槍を渡すとはいい度胸だな……」

 あっ、俺がそのヒルダです。
 言えないけど……。

「金は払っておる、文句を言うな。それよりドワーフの貴様がサラ……ちゃんの祖父とは、おかしいだろう」

「お主は知らぬ事情があるだけの事よ」

 義祖父に前世の記憶があるとは、分からないだろうなぁ。

「ふむ……。まぁ詮索せんさくはせん」

「サラ……ちゃん。待たせて悪かったの。さぁ、稽古を始めよう!」

「ガーグ老。姫様の形見の槍を、渡してしまっても良かったんですか?」

 娘が俺に槍を渡したのを見て疑問に思ったのか、ガーグ老へ尋ねていた。

「あぁ、本人・・も納得していなさるだろう」

 爺はちらりと俺の方を見て、そう返事をする。
 これは俺の武器だから貰っても問題ない。
 ただ、娘は理由が分からず困惑こんわくしているみたいだった。

 武術稽古が始まったので、俺は娘の相手をしよう。
 しずくは響が教えているようだから、1人で大丈夫だろう。
 尚人なおとの方は、何であんなに大人数なんだ?
 母親として何も出来なかったから、せめてこの時間くらいは一緒にいたい。
 ガーグ老と2人で、まだまだ技量の足りない娘の稽古を付ける。
 真剣な表情で、「えいっ」と言いながら槍を突き出す仕草しぐさが微笑ましい。
 あぁ、俺の娘が可愛いなぁ。

 2時間後、稽古は終了。
 娘が今から昼食を作ると聞き、現状を把握するため響と一緒にガーグ老と工房内へ入る。

「姫様。儂が御子を見付けたのが1年半程前。直ぐに【存在を秘匿ひとくされた御方】だと気付き、『万象ばんしょう』達を呼びよせ護衛させておる。だが、御子達はダンジョンを攻略する冒険者をしておられるでの。従魔達に騎乗し、移動されると護衛するのが難しい。本国には騎獣の申請を出したが、まだ到着しておらんのだ。いやはや、こんなに大変な王族警護は初めてですぞ? 息子達には良い訓練になっていそうだがの」

「娘が冒険者をしているのは、私も驚きました。王が探し出し、再婚相手の奥様と育ててくれたと聞き感謝しています。ところでガーグ老、Lvは今幾つあるのかしら?」

 1,000歳を超えて生きているのが、ずっと気になっていたから尋ねてみた。

「Lvは500ですぞ! 消えた御子を探すまで死ぬ訳にはいかんと、部下達と一緒に鍛えたでな」

 返事を聞き吹き出しそうになる。
 Lv500!? そりゃ寿命も相当延びるはずだ。
 隣で響も絶句ぜっくし、口が開きっぱなしになっている。
 それなら従魔であるポチとタマも同じLvだよな?
 ふむ、アシュカナ帝国に乗り込むには都合がいいか。

「それはすごいですね。ですが、娘を9番目の妻にしようとアシュカナ帝国の王が狙っていると聞き心を痛めております。そんなふざけた事を言う王には消えてもらいたいわ。ガーグ老、その時がきたら協力してくれるかしら?」

「姫様……。もしや、お一人で帝国へ乗り込むと言われるのか?」

「ええ、ちょっとお話をしに行こうと思ってます」

「それは少し危険が過ぎますぞ。本国におられる王や王妃も心配なされる。一度、兄君達に相談された方が良いと思うがの」

「お兄様達に? じゃあ、少し考えてみますね」

 俺の生存は直ぐに家族へ報告がいくか……。
 娘を溺愛できあいしていた父親が知れば反対されるだろう。
 ここは、秘密裡ひみつりに動く必要がありそうだ。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇