自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
583 / 758
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第718話 旭 樹 再召喚 12 アマンダ嬢 2&苗木の移植

しおりを挟む
 俺が気付いたくらいだ当然、娘の護衛をする影衆達も知っているだろう。
 何の報告もないのは害がないと判断したからか?
 俺はひびきが持っている念話の魔道具を借り、ガーグ老へ連絡をした。

『ガーグ老。アマンダ嬢のパーティーメンバーは、冒険者ではないようですね。調べていますか?』

『姫様、気付きなさったか。彼女はリザルト公爵令嬢を名乗っておるが、現在の公爵に娘はいないようでの。前公爵は息子以外、全員亡くなっている記録がある。まぁ、その息子も現在行方不明で消息は分からぬが……。数百年前の公爵夫人が他国から嫁いだ第三王女という縁があり、リザルト公爵を頼ってカルドサリ王国に来たようですな。護衛と一緒なのは王族の可能性が高いとみておる。御子が迷宮都市で冒険者をする10年以上前からダンジョン攻略をしている事から、問題ないと報告せんかった』

『そうですか……。最近、迷宮都市に来た冒険者ではないのですね』

『アマンダ嬢なら心配いりませんぞ? 御子にも好意的で、何かと気に掛けておられるようだしの』

『分かりました。念のため連絡が取れるよう、私にも念話の魔道具を用意して下さい』

 ダンジョン攻略中は響と別行動になる。
 ガーグ老達は常に護衛しているだろうが、姿の見えない相手へ独り言を話していれば妻が不審に思うだろう。
 口に出さずとも会話が可能な魔道具で話した方がいい。

『明日、お渡し致そう』

 アマンダ嬢がどういった理由でカルドサリ王国へ来たのかは分からないが、10年以上前から迷宮都市で冒険者をしてるなら娘とは無関係だろう。
 前公爵が家族と一緒に亡くなっているのは、少し気になるが……。
 それに行方が分からない息子とは……、何があったんだ?
 出来れば、娘と仲の良い冒険者を疑う事はしたくないな。
 響に念話の魔道具を返し、俺達は沙良ちゃんの移転で自宅へ戻った。
 精霊王から貰った世界樹の苗木を庭に植えておこう。
 美佐子みさこさんに成長の魔法を掛けてもらえば、少しは大きくなるだろうか?
 現在20cmくらいの小さな世界樹から【エルフの秘伝薬】も作りたいしな。

 今夜も三人目を欲しがる意欲的な妻を眠りに就かせ、寝不足気味の朝を迎える。
 その後は金曜日までダンジョン攻略をし、午前中は果物採取をする妻と娘に代わり迷宮モンキーを倒しまくった。
 3時間毎に安全地帯へ戻る際、怪我人の治療をする妻へ冒険者のお礼の話を響から聞いた俺はだと触れ回る。
 こんな可愛らしい少女姿の妻へ、お礼と称し不埒ふらちな真似するのは許さない!
 夫の俺だって、まだ手を出してないんだぞ!
 20歳の妻が心配で仕方ないな。
 もういっそ3人目を作り、家で留守番してもらう方がいいか?

 ダンジョンから地上に戻り、娘の経営している3店舗の従業員へ挨拶をした。
 雇っているのは路上生活者だったと聞き、継続した支援を行っていると知る。

「優秀な娘だなぁ~」

 きっと、美佐子さんの育て方が良かったんだろう。
 娘を大切に育ててくれたのは感謝しかない。
 夕食は『製麺店』の従業員と食べるみたいだ。
 元冒険者の彼らは腕や足を失っている。
 それでも働けるようにと職を与え、住み込みで雇っていた。
 年齢層が高いのは、冒険者として活動出来ない高齢者を優先的に選んだのだと思う。
 沙良ちゃんが料理をしている間、男性陣は囲碁の相手をする。
 漢字が読めない異世界人には囲碁の方が覚えやすい。
 これは義父が一番強かった。

 夕食の『ミートパスタ』と具沢山の『シチュー』を食べながら、新しくメンバーになるセイという人物の話題が出る。
 ティーナの契約竜か……。
 本人に記憶はないようだが竜族に会うのは初めてだ。
 どんな姿をしているのか興味が湧く。
 本体が竜なら人間に変態した時は、かなり大きいんじゃないだろうか?
 あぁ、でも今は日本人姿のままだから見た目じゃ分からないかもな。

 翌日、土曜日。
 妻は沙良ちゃんと一緒に薬師ギルドへ出掛けた。
 俺も薬師ギルドに行きたい用があるんだが……。
 精霊王にしるしてもらった、ポーションを作ってほしい。
 異世界へ行くには娘の移転が必要なので、武術稽古の後が絶好の機会だ。
 
 妻が不在の間、美佐子さんに世界樹の苗木へ成長の魔法を掛けてもらおう。
 お願いすると快諾かいだくしてくれ、彼女が苗木に手をかざす。
 すると一瞬で1m程の高さに成長し、一斉に白い花を咲かせる。
 世界樹に花が咲くとは知らなかった。
 葉とは違う効能があるんだろうか?
 
「この植物……。どこかで見覚えがあるような気がするんだけど、名前が思い出せないわ。何だったかしら?」

「俺も知らないんだ。先週、ガーグ老から貰った苗木だからね」

 と言う事にしておこう。
 美佐子さんは前世で世界樹を見たのかも知れないな。
 お礼を言うと家に帰っていった。
 薬師ギルドで仕事を終えた妻達が戻ってくる。
 やけに結花ゆかの機嫌がいい。
 薬師ギルドの仕事は割がいいのか?

「おじさん。Lvは上がった?」

「おう! 30になったぞ! ダンジョンの魔物は強いなぁ」

 娘から今のLvを聞かれ、早くLv70になっておきたい俺は30と答えた。

「貴方、本当にLv30になったの? 私と一緒なんておかしいわよ!」

 おっと、そりゃまずい。

「……あれ? ステータスの見方を間違えたのかな? あぁ、Lv20の間違いだった!」 

 妻のLvを聞きあわてて訂正する。
 
「Lv20で間違いないですか? じゃあ、MPは1,638ですよね」

「Lv20で合ってるよ」

 MPの計算が面倒くさいな……。

「じゃあ、このポシェットに空間魔法をお願いします。魔力が0になると昏倒してしまうので、ステータスを確認しながら魔力回復用のハイエーテルを飲んで下さいね」

「よし、マジックバッグを作ろう」

 娘から10個のポシェットとハイエーテルを渡される。
 Lv20だと8個しか作れないから、残りはハイエーテルを飲む必要があるんだな。
 俺は数を間違えないよう慎重に空間魔法を掛けていく。
 全てのポシェットをマジックバッグにしたら、娘からお昼をご馳走ちそうすると言われ、俺だけ外食するのはしずくに悪いと思い手料理を希望した。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,587

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。