自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第746話 旭 樹 再召喚 40 武術稽古&Lv105になった娘

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 土曜日は、午後からホーム内で娘が出した魔物を倒しLv上げを行う。
 妻と同じLv50になったと報告したら恩恵を聞かれた。
 転移した人間は、Lv50になると新しい魔法が増えるらしい。
 当然Lv70ある俺に恩恵はなく、何も覚えられなかったと伝えたが……。
 Lv100になったら、俺にも新しい魔法が増えるんだろうか?

 日曜日。
 子供達の炊き出しを終え、ガーグ老の工房へ。
 ポチとタマが飛んでくるなり両肩に止まる。
 娘は、駆け寄ってきた10匹のガルム達の頭を1匹ずつでていた。

「おはようございます。皆さん、今日もよろしくお願いしますね」

「サラ……ちゃん、よう来たな。どれ、今日は久し振りに儂が相手をしようかの」

 ガーグ老が稽古相手を務めるようだ。
 俺は、少し離れた場所で剣の型稽古をしながら2人の様子をうかがった。
 最初は普通に槍を繰り出していた娘が、何度もガーグ老にかわされ不満なのか槍を投げつけ始める。
 おいおい、どれだけ槍を持っているんだ?
 100本を超え地面が槍だらけになっている。

「サラ……ちゃんは、負けず嫌いだのぉ。姫様とそっくりだわ」

「あの、聞いて良いか分かりませんが……。護衛していた姫様は生きてらっしゃるんですか?」

 そんな娘の行動を、俺にそっくりだとガーグ老が言う。
 しかし娘に確信をついた質問をされ、視線を彷徨さまよわせたじいがちらりとこちらを向いた。
 
「姫様は……、生きておられる。今も元気に剣の練習をしていなさるよ」

 そんな事を言ったらバレるじゃないか!
 演技は期待してないが、もっと上手く誤魔化ごまかしてくれ!
 ドキドキして娘の反応を見ると、何も言わずに黙ったままだった。
 よく分からないが、背を向けているガーグ老は娘が納得するような仕草しぐさでもしたんだろうか?
 稽古が終了し、ひびきとガーグ老の3人で工房内に入る。
 先程の件を聞こうと思ったら、ガーグ老の方から話を切り出された。

「姫様。御子のLvが随分ずいぶん上がっているようですぞ。内緒で階層を移動されてはおらんかの?」

 なんだって?

摩天楼まてんろうのダンジョン31階から移動はしてないと思うが……」

 響が怪訝けげんそうに言う。
 今は安全地帯のテントから出ず、魔物を倒しているはずじゃ?
 あぁ待てよ、一緒にいるのはあかねちゃんか……。
 彼女はLv上げに貪欲どんよくだから、娘が内緒で階層を移動するのに賛成しそうだな。

「ええっと、どれくらい上がったように感じるのかしら?」

「儂の体感では倍くらいかの」

 倍って何!? 娘のLvは55じゃなかったか?
 一体どんな魔物を倒したら、そんな急にLvが上がるんだ!

「後で沙良に確認しておこう。テント内で大人しくすると思ってたが、以前も内緒でLv上げをしていたからな。また一番上の階層から攻略している可能性がある」

 魔物がいる一番上の階層なら99階だ。
 いくらなんでも『万象ばんしょう』達が追いつけないだろう。
 護衛がいない状態なのはまずい。

「困った子ね。移転の能力は便利だけど、本当に厄介やっかいだわ」

「お前に似たんだろう」
 
 そう言いながら、響が俺を見て大きな溜息を吐く。
 俺は否定するように顔をぶんぶん横に振ったが、隣でガーグ老は何度もうなずいていた。
 娘のLvが上がった件を聞き、すっかり先程の話を聞くのを忘れてしまう。
 工房から出ると、今日も三男役が料理を配膳していた。

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『サーモンのムニエル』・『シチュー』・『ロールパン』です。それでは頂きましょう」

「頂きます!」

 沙良ちゃんの合図で皆が一斉にはしを付ける。
 
「おぉ! 揚げた物もいいが、これも中々旨いの~」

 食べたガーグ老が感想を言い、満足そうに笑っていた。
 妻は妖精のお供え用にホットケーキを作っていたから、木から落ちる心配はしなくてもいいな。
 
「そろそろ結婚式の準備を始めた方がいいと思うが、サラ……ちゃんの衣装は決まっておるのか?」

「ガーグ老、実は……」

 結婚式の衣装を聞かれた娘が、言いづらそうに代役を立てる話をする。
 まぁ、その代役は女性化した俺なんだが。

「なんと! 相手はサラ……ちゃんではないのか!? それなら、儂も正装せねばなるまい。イツキ殿の着飾った姿を見られるとは……。長生きはするもんだわ」

 ヒルダの姿に戻り、偽花嫁になると知ったガーグ老が張り切り出す。
 俺は3度目の結婚式の相手が爺だと思うと憂鬱ゆううつな気分になった。
 衣装は、なるべくシンプルな物にしよう。
 いかにも花嫁衣裳だというフリフリのドレスは着たくない。

 娘達が工房を出てから響に話を聞くと、やはり99階の魔物を倒していたみたいだ。
 しかもベヒモスって……、普通は2人で倒そうとする魔物じゃないよな?
 俺だって、そんな無謀むぼうな真似はしない。
 娘のLvは105になっていたらしい。
 俺より上じゃないか!

 基礎値が高い分まだステータス値は勝っているが、その内逆転されそうだ。
 俺もLv上げの方法を考えておこう。
 2週間後の結婚式には間に合わないだろうが、今後を考えると100までは上げておきたい。
 恩恵も何があるか楽しみだ。

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