自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第765話 迷宮都市 偽装結婚の後 3人の行方

 その場からいつきおじさんと父が姿を消し、私はどうしていいか分からず唖然あぜんとしていた。
 するとセイさんから声を掛けられる。

「沙良さん。心配なので私も一緒に行きます。お二人は必ず無事に返しますから、安心してお待ち下さい」

「えっ?」

 セイさんは少し屈伸するような動きをした後、いきなり弾丸のように空へと飛び出した。
 あわてて上空を見上げると、既にその姿はかなり遠く離れている。
 先行したガーグ老達を追い抜き、ポチとタマに近付いていた。
 飛翔魔法をあんなスピードで使用したら、空気抵抗が半端ない気がするんだけど……。

「お兄ちゃん。樹おじさん達はアシュカナ帝国に向かったのかな?」

「話の流れからすれば、そうだろう」

「セイさんもガーグ老達も行っちゃったけど、大丈夫じゃないよね?」

「別大陸にある国だから情報が少なすぎる。俺達は、行かない方がいい」

 後を追いかけようと思っていたのを察した兄に、牽制けんせいされる。

「サラ様。ガーグ老達がいれば問題ありませんよ。勝手な行動はつつしむように、後でよく話し合わないといけませんね」

 笑顔の女官長は安心させるように言うんだけど、目が笑ってない……。
 まぁ全員、分別のある大人だし無茶な行動はしないよね?
 きっと移動距離にうんざりし、途中で帰ってくると思う。
 麒麟きりんが出せる速度は飛行機より遅いだろうし……。

「え~っと、サラちゃん。これで敵の襲撃は、なくなったのかい?」

 アマンダさんに聞かれ、マッピングで周囲を確認し返事をした。
 家の周辺や上空に敵の姿はない。

「はい、あれで最後だと思います」

「じゃあ、私達は冒険者ギルドへ報告に向かうよ。しかし、花嫁役のお母さんが自分からさらわれていくとは驚いた。サラちゃんも心配だろう?」

「そうですね。でも、きっと直ぐ戻ってきますよ」

 実際は実の母ではなくいつきおじさんだから、そこまで心配じゃない。
 父もセイさんも、帰るよう説得してくれるだろう。
 敵対している国に、あんな少人数で乗り込むとは思えないし。
 今回の襲撃でさえ数百人の帝国人がいたのだ。
 アシュカナ帝国は相当な軍事力があると見て間違いない。
 戦争が始まる前に、私が計画している方法なら撃退出来る。
 Lvも100を超えたし、マッピングの移動距離も増えたから大丈夫。

 撤収を始める冒険者達に、もう一度今日のお礼を言って見送った。
 庭に残った血痕が襲撃の跡を生々しく物語っている。
 子供達がおびえないよう、私は庭の隅に大穴を掘り大量の水で洗い流した。
 最後に兄へ浄化を掛けてもらい、亡くなった帝国人の冥福めいふくを祈る。
 
 冒険者ギルドへの報告はアマンダさんがしてくれるから、私達はホームに帰ろう。
 2階の私室で、女官達に花嫁衣裳から普段着へ着替させてもらった。
 額飾りを返そうとしたところ、いつも身に付けてほしいと言われ困ってしまう。
 冒険者活動をしている時は邪魔にしかならない。
 額飾りを手に迷っている様子を見た女官長が、中央にめられていた宝石を取り出し持っていた腕輪に付け替えた。

「サラ様。これなら冒険者活動の邪魔になりませんわ」

 繊細な作りの腕輪を渡され、まぁいいかとうなずいた。
 高価な宝石を貰う理由がないけど、断るのは女官達の圧を感じ出来そうにない。
 よく分からないけど、身に付けて欲しいようだ。
 お世話をしていた姫様そっくりな私へ感情移入しているのかな?
 それに不思議と、この宝石を見ているだけで懐かしい気分になる。
 何かを思い出せそうで思い出せない。
 
 女官長達へお礼を伝え、メンバーとホームへ戻ってきた。
 父がいなくなった件を母に伝えないと……。
 旭のお母さんは、目の前で夫が自分からケスラーの民と消えてしまい、かなり怒っている。
 旭は、ずっと不安そうな顔をしていた。
 実家へ寄り、母に結婚式の経緯を話すと大きな溜息を吐かれた。
 どうやら父は最初から結婚式後、アシュカナ帝国へ行く予定だったらしい。
 母宛ての手紙が書いてあったそうだ。
 
美佐子みさこ
 突然、家を空ける事になって済まない。
 いつきとアシュカナ帝国の王に会ってくる。
 話を付けたら帰るので、あまり心配せず待ってほしい』

 ……。
 父の手紙を読んだけど、全然安心出来ない内容だった。
 どうやって王に会う心算つもりなの?
 いきなり他国の人間が面会を求めても、会えるとは思えない。
 その前に不審者扱いされて捕まりそうだよ!
 2人が何を考えているのか、さっぱり理解出来なかった。
 私が9番目の妻に狙われているのを解決したいんだろうけど、いくら何でも無謀むぼうすぎる。
 
「ふむ。婿むこ殿はアシュカナ帝国へ本当に向かったようだな。まぁガーグ老達や樹君もいるし、それほど心配せんでもいいだろう」

 そう言って、シュウゲンさんは母の肩を優しく叩く。
 兄とあかねは難しい顔をしたまま黙っていた。
 かなで伯父さんは、連絡が取れないのが不安だとこぼす。

「あっ! セイさんに、通信の魔道具を渡してあるから連絡してみるよ!」

 カルドサリ王国内なら通じるはずだ。
 羊皮紙へ、何処どこにいるか連絡してほしいと書き送る。
 南大陸にあるアシュカナ帝国へ向かったのなら、まだ国を出ていないだろう。
 しかし、その日。
 セイさんから返信はなかった……。

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