自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第780話 迷宮都市 早崎さんの召喚 4 ガーグ老との手合わせ&引っ越し

 結界魔法の検証をしてダンジョンから冒険者ギルドへ戻った。
 受付嬢から早崎さんのC級冒険者カードを受け取り、ガーグ老の工房へ向かう。
 引退した近衛騎士に武術稽古を受けている話をすると、早崎さんは目を輝かせていた。
 異世界の武術に興味があるんだろう。
 工房へ到着すると、ガルちゃん達が嬉しそうに駆け寄り尻尾を振っている。
 昨日、会ったばかりだけど、この子達は毎日一緒にいられないので私が来るのが嬉しいみたい。

「こんにちは~。新しいメンバーの紹介をしますね」

「サラ……ちゃん、今日は遅かったの。またメンバーが増えたのか?」

「はい。妹の旦那さんです」

「初めまして、あかねの夫で順一じゅんいちと申します」

 非常に体格の良いガーグ老を前に、早崎さんは緊張した面持おももちで一礼した。

「儂はガーグだ。お主の得物えものは棒か……、珍しいな。棒はあまり得意ではないが、どれひとつんでやろう」
  
「はっ、よろしくお願い致します」

 なんだろう……。
 自己紹介と同時に手合わせが始まるのは、武闘派に必要なくだりなんだろうか?

「ふむ、棒なぞあったかの? ゼン、トレントを持って参れ」

 ガーグ老はゼンさんへトレント資材を要求し、その場で切り出して棒状にする。
 作製した棒をトントンと地面に叩き、具合を確認して棒を構えた。
 相変わらず、風魔法の操作が上手いなぁ。

「全力で掛かってきなされ!」

 ガーグ老の言葉に反応した早崎さんが、先制攻撃をかける。
 相手の技量を見て取ったのか、最初からHP上昇魔法を使用しているようだ。
 Lvが20に上がった彼のHP値は1,176。
 その2倍なら2,352で、基礎値が10である異世界人の234Lvに相当する。
 これなら結構いい勝負になるんじゃないかと見ていたら、ガーグ老は余裕で応戦していた。
 棒は得意じゃないらしいけど……、使用する武器は関係ないんだろう。
 2人の素早い攻撃が目で追いつけなくなる頃、唐突に仕合は終了した。

「ご指導、ありがとうございます」

 早崎さんは、深く一礼し息を切らせ戻ってきた。

「あの御方は強いですね。久々に勝てない相手だと実感しました」

「異世界は面白いだろ?」

 茜が、夫に向かって不敵な笑みを浮かべる。

「ええ、確かに。ここには、強い人物が沢山いそうですね」

 そう言いながら、ゼンさん、シュゲンさん、かなで伯父さん、セイさんに視線を送っていた。
 ガーグ老へ早崎さんをガルちゃんに乗せてほしいとお願いし、飛翔魔法も無事習得。
 茜の従魔達でも良かったと気付いたけど、どのみち顔合わせが必要だから問題ない。
 その後、ガーグ老が家族を紹介。
 息子達とお嫁さん2人を見た早崎さんの目が点になっている。
 ええ、見た目年齢と性別がおかしいですよね~。
 ガーグ老に稽古のお礼を伝え、ショートブレッドを渡してメンバーとホーム内へ戻った。

「あの、お義姉さん。茜さんは、家を引き払うそうなんですが……」

 あぁ先日、妹が必要な荷物を全てアイテムBOXへ収納していたからね。
 昨夜、旦那さんに私の家で同居すると話したんだろう。
 夫婦なのに別居とか……、両親が知ったらなげきそうだ。

我儘わがままな妹でごめんなさいね」

「いえ、それは別に構わないんですけど。私だけ距離が離れているのは面倒だと思うので、お義姉さんのマンションへ引っ越してもいいですか?」
 
 確かに、毎日送り迎えをするのは手間が掛かる。
 ダンジョン攻略中も、私達は自分の家で泊まるし……。

「空き部屋が沢山あるからいいわよ」

 そうと決まったら早速さっそく、引っ越しの準備だ。
 茜を連れ早崎さんと住んでいるマンションに向かう。
 部屋の荷物は茜が全て回収し、再び兄のマンションへ帰る。
 最上階にある残り1部屋を早崎さんの部屋に決めた。
 室内は以前、私が回収したので何もない状態になっている。
 茜が家具を何処どこに置くか確認しながら設置。
 アイテムBOXがあると、本当に引っ越しは楽だな。
 夕食は蕎麦を食べに行こう。

「私の部屋は隣だから、片付けが終ったら来て下さいね」

 家具以外の日用品を整理する必要があるだろうと、私と茜は部屋へ戻った。
 兄達は病院へ行き勉強をするため不在にしている。
 セイさんの姿もなかった。
 夕食の時間になれば戻ってくるだろうから、私は茜とティータイムをしよう。
 コーヒーをれて、アイテムBOXから桃のタルトを取り出す。
 妹は甘い物が好きじゃないので、作り置きしたサンドイッチを食べていた。
 
「昨日、早崎さんと何を話していたの?」

「13年間ダンジョンマスターだったのと、冒険者活動の事だよ。あいつは、ステータスが見られるのが嬉しいらしい。私のLvを聞き、やる気になってた。迷宮都市のダンジョンを攻略するのが楽しみだと言っていたな」

「異世界に召喚されたのは、怒ってない?」

「そんな素振りはなかったから心配しなくていい」

 そう聞いて安心した。
 人生を変えてしまったのには、やはり罪悪感がある。
 地球に帰せと言われても出来ないのだ。
 桃のタルトを食べ終わる頃、セイさんがベランダから入ってきた。
 空を飛んでいたのかしら? 飛翔魔法を習得したあと、セイさんはよく空を飛んでいる。 
 飛ぶのが好きみたい。

「セイさん、お帰りなさい。話があるので、少し時間をもらってもいいですか?」

「はい、大丈夫ですよ」

 セイさんにコーヒーと苺タルトを渡して、話を切り出した。

「実は、摩天楼ダンジョン99階で隠し部屋を見付けたの。別大陸に行ける魔法陣があるから、調べようと思って。ガーグ老達が護衛してくれるけど、セイさんもついて来てくれないかな? 調査するのは休日の土曜日よ」

 するとセイさんは軽く目をみはり、次いで真剣な表情になる。

「移転陣を発見したんですか? 別大陸へ行くなら、用心した方がいいですね。私は特に休日する事がないので、一緒に行きます。沙良さん、この話はひびきさんといつきさんも知っていますか?」

「ええ勿論もちろん、話してあるわ。他に知っているのは、シュウゲンさんだけよ」

「あぁ、賢也けんやさんと尚人なおとさんには内緒なんですね。それはまた、バレたら怒られそうな気がしますけど……」
 
「お兄ちゃん達へ、隠し部屋が99階にあると言えないんだよね~。何とか怒られないよう話せるまで秘密にして下さい」

「分かりました。既に転移先が分かっているのは、どの大陸ですか?」

 セイさんは苦笑して話を続ける。

「今のところ、北大陸と中央大陸と南大陸よ」

「南大陸……」

 アシュカナ帝国がある大陸名を聞いたセイさんは、眉間にしわを寄せ黙り込んでしまった。

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