自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第796話 迷宮都市 魔族との契約 4

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 しずくちゃんは、ルシファーに角を触らせてもらっている。
 その際、尻尾はないのかと残念そうにしていた。
 悪魔みたいな種族だと言ったから、尻尾もあると思ったんだろう。
 旭が剣での勝負をいどみ、あっさり勝つとルシファーは意気消沈しうずくまってしまった。
 童顔で子供だと思った旭に負けたのが、余程悔しかったのか……。
 毎週、ガーグ老の部下達に鍛えられているから兄よりも強いんだけどね。

「儂が鍛えてやろう」

 シュウゲンさんが、庭を100周しろと走らせる。
 150坪ある庭を100週させられたルシファーは、息も絶え絶えだ。
 その後、かなで伯父さんから懸垂けんすい100回を課せられる。
 器具がないため急遽きゅうきょ、私が鉄棒に似た物を作製した。
 それを見た早崎さんが、逆上がり100回を注文。
 仕方なく高さを低くした物を再び作製する。
 これは子供達も遊べるから、そのまま残しておこう。

 いつきおじさんと戻ってきた父が、縄跳び100回を指示。
 不器用なルシファーは、何度も縄に引っ掛かり連続で100回続けるのに苦戦していた。
 可哀想かわいそうに思ったのか樹おじさんは、うさぎ跳び10回を願う。
 しかし続く茜の指示は、ほふく前進を10往復……。
 セイさんの願いは腹筋100回。
 最後に兄がサッカーボールを出し、ゴールキーパーをさせていた。
 勢い良く飛んでくるボールをキャッチするのは、慣れていないと怖いだろう。
 顔面を蒼白にさせながらルシファーが震えている。
 虐めじゃないよね?

 メンバー全員の願いを聞いた彼は満身創痍まんしんそういだったけど、まだガーグ老達もいる。
 早崎さんと旭を残してメンバーをホームへ送り、私は茜と一緒にルシファーをガーグ老の工房へ届け、女官長達に契約を済ませたら異界へ帰すよう伝えた。
 家に帰ると、旭が魔物を出し早崎さんのLv上げをしているところだった。
 私はその間、エーテルとハイエーテルを飴にしておこう。
 茜は早崎さんの動きを見ながら指示を飛ばしている。
 人間とは違い、魔物は種族により特性があるから教えているのかな?
 2時間後、早崎さんがLv30になったのを確認してホームへ戻る。
 夕食はアイテムBOX内のピザで済ませ、竜の卵に魔力を与え就寝。

 翌日、月曜日。
 今週はダンジョン攻略を中止して、ルシファーの爵位を上げよう。
 異世界の家には子供達が来るので、メンバーを連れガーグ老の工房へ向かう。
 門を開けると、顔をポーションまみれにしたガーグ老達と女官長達の姿が見える。
 朝から顔に怪我をするような作業をしていたんだろうか?
 樹おじさんの姿を見付けたポチとタマが飛んでくる。
 2匹は両肩に止まり、顔を頬に寄せていた。
 私に向かってガルちゃん達が駆け寄り、尻尾を振り出迎えてくれる。
 よしよしと可愛い従魔達の頭をでてガーグ老に挨拶した。

「ガーグ老、おはようございます。工房の庭を、お借りしてもいいですか?」

「おはよう、サラ……ちゃん。今日はダンジョンを攻略せんのか?」

「はい。青龍の巫女が気になるから、早くルシファーを強化したくて……」

「そうか、儂達も協力しよう」

「よろしくお願いします」

 ルシファーの姿はないため、昨日異界へ帰ったのだろう。
 召喚陣を庭に描き呪文を唱える。

「魔族召喚!」

 召喚陣の上に出現したルシファーは、辺りを見渡し樹おじさんを探す。
 駆け出そうとした瞬間、ガーグ老に転ばされていた。
 魅惑魔法は、まだ効果が切れないらしい。
 ポチの足に1週間ダンジョン攻略を中止する旨を書いた羊皮紙をくくり付け、アマンダさんのもとへ届けるようお願いする。
 白ふくろうは「ホー」と一声鳴き、飛び立っていった。
 シルバーに頼んでもいいけど、Lv500あるガーグ老の従魔の方が速い。
  
 時間が掛かりそうな武闘派の願い事から先に伝えてもらおう。
 シュウゲンさんから長い棒が欲しいと言われ、トレントを1本出す。
 何をするのか見ていると、斧で枝を切り落とした状態にし地面へ突き刺していた。
 そして、ルシファーに登れと伝える。
 木登りですか? しかし、枝を切り落としているため難しそう……。
 出来るかしらと心配していると、女官長達に工房へ案内される。
 何か話があるのかな? そう思ったのも束の間、着替えさせられた。
 
「サラ様。お似合いですわ」

 淡いピンクのワンピースを着せられ、髪は両サイドを編み込まれている。
 これはエルフの正装ではなく普段着なのだろう。
 何故なぜ、私の体に合う服が用意されているのか謎だ。
 でも、満面な笑みを浮かべた女官長達に聞ける雰囲気ふんいきじゃない。
 姫様の代わりに着せ替えを楽しんでいるのかもね。
 その恰好かっこうで工房を出ると、雫ちゃんが「沙良お姉ちゃん、可愛い!」とめてくれた。
 隣にいた父と樹おじさんが、同意するよううなずく。

 ルシファーはシュウゲンさんの課題を済ませたのか、スクワットをしている最中だった。
 暇なメンバーは、ガーグ老の部下達と稽古している。
 シュウゲンさんはガーグ老と、奏伯父さんはゼンさんと、早崎さんは茜と対戦中だ。
 しばらく筋トレが続きそうなルシファーは放っておき、私はセイさん相手に槍を繰り出した。
 セイさんは大槍ではなく長槍を手にして、私の攻撃をかわす。
 回避してばかりで一向に攻撃しない相手にれ、足を狙うとセイさんはフワリと飛び上がり短槍の上に立つ。
 得物えものを押さえられ、攻撃手段を失った私を見たシルバーが加勢に入った。
 飛び掛かるシルバーを避けるためセイさんが移動した瞬間、自由になった槍を振るう。
 渾身こんしんの一撃が、セイさんの指先で止められ唖然あぜんとなった。
 どれだけ力が強いの!? 私、Lv100超えてるんだけど……。

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