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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第812話 迷宮都市 ベヒモスの情報&魔王との契約 3
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ルシファーは樹おじさんへの指輪をガーグ老に盗られて唖然とし、続いた言葉を聞き顔面蒼白になった。
きっと来週から課せられる訓練を想像したんだろう。
「ここまで見事に気配を消すとは……」
そうぽつりと呟く茜だけは、別の事に感心している。
「ガっガーグ老、どうしてここにいるんだ? 突然現れたらビックリするだろう!」
樹おじさんは驚いたのか、ガーグ老に向かって声を上げた。
「何、嫌な予感がしましてな。案の定、悪い虫が動きよった」
ガーグ老は、ルシファーの行動を見抜いていたらしい。
午前中に私達がダンジョン攻略している間、ルシファーが予想出来るような態度を見せたようだ。
まぁ樹おじさんに魅惑魔法を掛けられたままの彼は、非常に分かり易いからね。
どうせ指輪を見つけ、大騒ぎでもしたんだろうなぁ。
ブルブルと震え涙目になっているルシファーを眺めつつ、魔族なら知っているかもと思い質問してみた。
「ルシファー。魔界にベヒモスはいる?」
「S級ダンジョンのボスだな」
おおっ、いるじゃん!
異世界の何処にいるか分からず、ダンジョンを虱潰しで当たるより効率がいい。
「私達が魔界に行く方法は、あるかしら?」
「あ~それは、ちょっと難しいと思う」
ないのではなく難しいと言うなら、方法はありそうだ。
ルシファーの言葉を聞いた樹おじさんが、にっこり笑って続きを促した。
「どうして難しいのかしら?」
「……異世人が魔界へ行くには、魔王と結婚する必要があるからです」
魔王と結婚!? その条件は、かなり厳しいな……。
移転陣を知っているメンバーで未婚なのは、私とシュウゲンさんとセイさんだけだし、知っている魔王は男性だ。
他にいる3人の魔王が既婚者なのかどうかも分からない。
せっかくベヒモスの手掛かりを見つけたと思ったのに、方法がそれしかないなら諦めよう……。
「ふむ。では、お主の父親を呼んで参れ」
私が残念に思っていると、ガーグ老がルシファーに父親を呼び出せと言っている。
「えっ? 話を聞いていましたか?」
「儂を耳の遠い老人扱いするでない。早く連れて来ぬか!」
ガーグ老に叱責されたルシファーは、首を傾げつつ異界へと姿を消した。
「ガーグ老、何をお考えで?」
父は魔王を呼び出す理由が分からないのか問い正す。
それは私も知りたい。
「こういったものには、大抵抜け道があるものだ。条件が結婚というなら特にな」
そう言ったあと、ガーグ老はポチを呼びゼンさんを連れて来るよう指示している。
5分程でガルムに騎乗したゼンさんが、家の塀を越え庭に降り立った。
「父上、参りました」
「ゼンよ、サラ……ちゃんがベヒモスを所望しておる。お前が独身で良かったわ、こんな所で役に立てるとは光栄だの」
「はっ! ベヒモスを探せば、よろしいのですか?」
親子なのに、上司と部下のような会話をしている。
ゼンさんはガーグ老が独身で良かったと言った部分を、完全にスルーしているみたいだけど……。
ここまでくれば、なんとなく考えている事が分かるような……。
同じように予想した樹おじさんと父が顔を引き攣らせていた。
それから10分後、また派手に召喚陣を光らせてルシファーと父親が現れる。
「姫、私に何か頼み事ですか?」
今回はルシファーも事前に用件を伝えなかったのか、魔王が呼ばれた理由を聞いてきた。
樹おじさんが、困った顔でガーグ老に視線を向ける。
「魔界に行く用事が出来たのでな、息子と結婚してくれぬか?」
「はっ?」
「えっ!?」
ガーグ老の言葉に、魔王とゼンさんが同時に声を上げた。
「こほん、ええっと娘がベヒモスを狩りたいそうなのよ。魔界へ行くには、貴方と結婚する必要があるとルシファーから聞いて……」
言葉足らずのガーグ老に、樹おじさんが追加の説明をする。
「あぁ、なるほど……そういう事でしたか。一時的に契約を結びたいのですね。それなら姫の方が……」
ルシファーが最後まで言わせず、父親の足を思いっきり踏んで睨み付けた。
「契約なら、誰でもいいだろ!」
「心の狭い息子だな。綺麗な女性の方が、いいに決まっているだろう」
「駄目だ! 姫は俺と、けっ結婚するんだ!」
いや、しないと思いますけど……。
「姫様のお相手は別におる。今回は、儂の息子でよかろう」
ガーグ老が言い合いを始めた2人の間に入り、ゼンさんを全面に出す。
「その……、どうか私と結婚して下さい」
蚊の鳴くような声で言うゼンさんは、死んだ魚の目をしていた。
父親から呼び出された理由が、魔王との結婚だと知っても断れないのか……。
話の内容から、本当に結婚する訳じゃないと分かるだろうけど少し可哀想。
「仕方ないですね。伴侶の指輪が必要なので、お待ち下さい」
理由を知った魔王は、契約という形で結婚するのに抵抗はないのか、意外とあっさり承諾してくれた。
「それは、これかの?」
先程、ルシファーから奪った指輪をガーグ老が見せると、魔王が大きく目を瞠る。
「何故、その指輪が……」
するとルシファーが動揺して、その場から逃げ出そうと召喚陣の方へ駆け出した。
勝手に魔王の私物を持ち出したのね。
亡くなった奥さんの指輪だったのかしら?
召喚陣へ辿り着く前に、セイさんが先回りをしてルシファーを捕らえ引きずってくる。
「親の物を盗むとは……。お前は後で、お説教だ!」
父親にバレたルシファーは、蛇に睨まれた蛙のように動かなくなってしまった。
樹おじさんに指輪を嵌めさせ、魔界に連れ去る心算だったらしい。
魅惑魔法の効果が怖すぎる。
やっぱり、つけちゃいけない指輪だった。
この世界の指輪には要注意だな。
何の効果があるか分かったものじゃない。
「では、契約を結びましょう。ベヒモスを狩りたいのであれば、結婚期間は1ヶ月で足りますね。1ヶ月後、結婚は無効になります。その際、指輪を返してもらえば問題ありません。必要な対価はMP1,000です。指輪を下さい」
ガーグ老が魔王に指輪を渡すと、ゼンさんが嫌々左手を差し出した。
この指輪もサイズが自動で調整されるようで、ゼンさんの薬指にピッタリと嵌る。
「これで貴方は、私の伴侶となりました。指輪をした人物は、魔界に10人連れてくる事が出来ます。魔界に来る際は、加護を授けた黒竜を呼び出せばいいでしょう」
黒い指輪は、黒竜の鱗で作製されたもののようだ。
黒竜を呼び出すのは、夜にした方がいいかしら?
今日は、もう遅いしやめておこう。
「姫、結婚相手が貴女じゃなく残念です。それでは1ヶ月後に、またお会いしましょう」
魔王は私達に爽やかな笑顔を向け、息子の首根っこをしっかり掴み派手な光と共に魔界へと帰っていった。
「サラ……ちゃん。ベヒモスが見つかって良かったの」
お膳立てしてくれたガーグ老はニコニコしているけど、息子のゼンさんは元気がない。
「あのぅ、ゼンさん大丈夫ですか?」
「はい、私がお役に立てれば幸いです」
「迷惑をお掛けして申し訳ありません。お礼に、この飴を受け取って下さい。あっ、舐めるのは1日1個にして下さいね」
契約に必要なMP1,000分の飴を10個渡して頭を下げた。
契約期間は1ヶ月あるのでMPが減る事はないだろう。
「儂らも帰るとしよう」
ゼンさんが乗ってきたガルムに2人乗りし、ガーグ老達が工房へ戻る姿を見送ってから私達もホームに帰った。
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「何、嫌な予感がしましてな。案の定、悪い虫が動きよった」
ガーグ老は、ルシファーの行動を見抜いていたらしい。
午前中に私達がダンジョン攻略している間、ルシファーが予想出来るような態度を見せたようだ。
まぁ樹おじさんに魅惑魔法を掛けられたままの彼は、非常に分かり易いからね。
どうせ指輪を見つけ、大騒ぎでもしたんだろうなぁ。
ブルブルと震え涙目になっているルシファーを眺めつつ、魔族なら知っているかもと思い質問してみた。
「ルシファー。魔界にベヒモスはいる?」
「S級ダンジョンのボスだな」
おおっ、いるじゃん!
異世界の何処にいるか分からず、ダンジョンを虱潰しで当たるより効率がいい。
「私達が魔界に行く方法は、あるかしら?」
「あ~それは、ちょっと難しいと思う」
ないのではなく難しいと言うなら、方法はありそうだ。
ルシファーの言葉を聞いた樹おじさんが、にっこり笑って続きを促した。
「どうして難しいのかしら?」
「……異世人が魔界へ行くには、魔王と結婚する必要があるからです」
魔王と結婚!? その条件は、かなり厳しいな……。
移転陣を知っているメンバーで未婚なのは、私とシュウゲンさんとセイさんだけだし、知っている魔王は男性だ。
他にいる3人の魔王が既婚者なのかどうかも分からない。
せっかくベヒモスの手掛かりを見つけたと思ったのに、方法がそれしかないなら諦めよう……。
「ふむ。では、お主の父親を呼んで参れ」
私が残念に思っていると、ガーグ老がルシファーに父親を呼び出せと言っている。
「えっ? 話を聞いていましたか?」
「儂を耳の遠い老人扱いするでない。早く連れて来ぬか!」
ガーグ老に叱責されたルシファーは、首を傾げつつ異界へと姿を消した。
「ガーグ老、何をお考えで?」
父は魔王を呼び出す理由が分からないのか問い正す。
それは私も知りたい。
「こういったものには、大抵抜け道があるものだ。条件が結婚というなら特にな」
そう言ったあと、ガーグ老はポチを呼びゼンさんを連れて来るよう指示している。
5分程でガルムに騎乗したゼンさんが、家の塀を越え庭に降り立った。
「父上、参りました」
「ゼンよ、サラ……ちゃんがベヒモスを所望しておる。お前が独身で良かったわ、こんな所で役に立てるとは光栄だの」
「はっ! ベヒモスを探せば、よろしいのですか?」
親子なのに、上司と部下のような会話をしている。
ゼンさんはガーグ老が独身で良かったと言った部分を、完全にスルーしているみたいだけど……。
ここまでくれば、なんとなく考えている事が分かるような……。
同じように予想した樹おじさんと父が顔を引き攣らせていた。
それから10分後、また派手に召喚陣を光らせてルシファーと父親が現れる。
「姫、私に何か頼み事ですか?」
今回はルシファーも事前に用件を伝えなかったのか、魔王が呼ばれた理由を聞いてきた。
樹おじさんが、困った顔でガーグ老に視線を向ける。
「魔界に行く用事が出来たのでな、息子と結婚してくれぬか?」
「はっ?」
「えっ!?」
ガーグ老の言葉に、魔王とゼンさんが同時に声を上げた。
「こほん、ええっと娘がベヒモスを狩りたいそうなのよ。魔界へ行くには、貴方と結婚する必要があるとルシファーから聞いて……」
言葉足らずのガーグ老に、樹おじさんが追加の説明をする。
「あぁ、なるほど……そういう事でしたか。一時的に契約を結びたいのですね。それなら姫の方が……」
ルシファーが最後まで言わせず、父親の足を思いっきり踏んで睨み付けた。
「契約なら、誰でもいいだろ!」
「心の狭い息子だな。綺麗な女性の方が、いいに決まっているだろう」
「駄目だ! 姫は俺と、けっ結婚するんだ!」
いや、しないと思いますけど……。
「姫様のお相手は別におる。今回は、儂の息子でよかろう」
ガーグ老が言い合いを始めた2人の間に入り、ゼンさんを全面に出す。
「その……、どうか私と結婚して下さい」
蚊の鳴くような声で言うゼンさんは、死んだ魚の目をしていた。
父親から呼び出された理由が、魔王との結婚だと知っても断れないのか……。
話の内容から、本当に結婚する訳じゃないと分かるだろうけど少し可哀想。
「仕方ないですね。伴侶の指輪が必要なので、お待ち下さい」
理由を知った魔王は、契約という形で結婚するのに抵抗はないのか、意外とあっさり承諾してくれた。
「それは、これかの?」
先程、ルシファーから奪った指輪をガーグ老が見せると、魔王が大きく目を瞠る。
「何故、その指輪が……」
するとルシファーが動揺して、その場から逃げ出そうと召喚陣の方へ駆け出した。
勝手に魔王の私物を持ち出したのね。
亡くなった奥さんの指輪だったのかしら?
召喚陣へ辿り着く前に、セイさんが先回りをしてルシファーを捕らえ引きずってくる。
「親の物を盗むとは……。お前は後で、お説教だ!」
父親にバレたルシファーは、蛇に睨まれた蛙のように動かなくなってしまった。
樹おじさんに指輪を嵌めさせ、魔界に連れ去る心算だったらしい。
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やっぱり、つけちゃいけない指輪だった。
この世界の指輪には要注意だな。
何の効果があるか分かったものじゃない。
「では、契約を結びましょう。ベヒモスを狩りたいのであれば、結婚期間は1ヶ月で足りますね。1ヶ月後、結婚は無効になります。その際、指輪を返してもらえば問題ありません。必要な対価はMP1,000です。指輪を下さい」
ガーグ老が魔王に指輪を渡すと、ゼンさんが嫌々左手を差し出した。
この指輪もサイズが自動で調整されるようで、ゼンさんの薬指にピッタリと嵌る。
「これで貴方は、私の伴侶となりました。指輪をした人物は、魔界に10人連れてくる事が出来ます。魔界に来る際は、加護を授けた黒竜を呼び出せばいいでしょう」
黒い指輪は、黒竜の鱗で作製されたもののようだ。
黒竜を呼び出すのは、夜にした方がいいかしら?
今日は、もう遅いしやめておこう。
「姫、結婚相手が貴女じゃなく残念です。それでは1ヶ月後に、またお会いしましょう」
魔王は私達に爽やかな笑顔を向け、息子の首根っこをしっかり掴み派手な光と共に魔界へと帰っていった。
「サラ……ちゃん。ベヒモスが見つかって良かったの」
お膳立てしてくれたガーグ老はニコニコしているけど、息子のゼンさんは元気がない。
「あのぅ、ゼンさん大丈夫ですか?」
「はい、私がお役に立てれば幸いです」
「迷惑をお掛けして申し訳ありません。お礼に、この飴を受け取って下さい。あっ、舐めるのは1日1個にして下さいね」
契約に必要なMP1,000分の飴を10個渡して頭を下げた。
契約期間は1ヶ月あるのでMPが減る事はないだろう。
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ゼンさんが乗ってきたガルムに2人乗りし、ガーグ老達が工房へ戻る姿を見送ってから私達もホームに帰った。
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