自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第822話 シュウゲン 5 精霊との契約 2

「少し話をしよう」

 逃げ出そうとするサラマンダーを腕の中へ抱き寄せ、子供をあやすようにぽんぽんと背中を叩く。
 
「きゃ~、嫌~!」

 尚も落ち着かない様子でバタバタと暴れるサラマンダーの姿に、嫌がる娘を無理やり手籠てごめにする悪代官のような気分になる。
 これほど嫌がられるとは思わなんだ。
 儂の何が不満だと言うのじゃ。 

「違う精霊と契約しろと言われても、お主以外の精霊がおらんではないか」

「あっ、僕が他の精霊を呼び出します!」

 いい事を思いついたとでもいうように、サラマンダーは急に大人しくなり召喚陣に向かって何かを唱え出した。
 儂の知らない言語で、言っている意味が分からぬが……。
 まぁ別に、このサラマンダーじゃなくても契約が出来れば、どんな火の精霊であろうと支障はない。
 次の精霊が現れるのを待つとしよう。
 やたら長い呪文が終り、召喚陣から筋骨隆々としたイフリートが炎を全身にまとって出現した。
 おおっ、サラマンダーより上位の精霊ではないか!
 契約を断られ困っておったが、これは逆にラッキーだったかも知れん。

「じゃあ、僕は失礼させて頂きますね~」

 イフリートの登場で、お役御免ごめんとばかりにサラマンダーは姿を消した。
 残された儂とイフリートの視線がからみ合う。
 
「げっ! まじかっ!」

 儂の姿を視認した瞬間、イフリートは1歩後退あとずさり顔を大きく引きらせる。
 何だ、その態度は!
 今の儂は12歳のいたいけな少年姿であるのに、まるで閻魔えんまでも見たかのようだな。

「さあ、契約を済ませよう」

 これ以上時間の無駄は避けようと、イフリートに近付いていく。
 ほれ、さっさと承諾せぬか!

「あ~、悪いが俺では契約出来ない」

「馬鹿を言うでない! 契約出来ぬ理由は何だ!?」

 2度も契約を断られ頭にきた儂は、思わず大声を上げる。
 そもそも召喚陣で呼び出された精霊が、相手が嫌だからと断るなど言語道断じゃ!
 殴り付け言う事を聞かせてやろうか? 実力行使に及ぼうとした途端とたん、イフリートが両手を上げて降参のポーズをする。

「そう殺気立ってくれるな、精霊にも相性があるんだ。精霊王様に、おうかがいを立てるから少し待ってほしい」

 その言葉に嘘はないと判断し、イフリートが知らぬ言語で唱え出すのを再び待つ。
 先程より更に長い詠唱が終ると、召喚陣から絶世の美女が現れた。
 ふおっ、人型の高位精霊が見られるとは役得じゃわい。

「精霊王様、突然お呼び出しして申し訳ありません。ドワーフとの契約の儀が、俺では手に負えず……。あとは、よろしくお願い致します」

 イフリートは精霊王に深く一礼し、き消えた。
 火の精霊王と言われた美女が、儂を見て呆気あっけに取られたような表情をする。

「私は見ない振りをした方が良いのでしょうか? 何を思って、このような酔狂な真似を……。もしや巫女姫が、お生まれに? だとしたら時代が……」

 何の話かさっぱり分からぬ事を呟いたあと、美女がはっと表情を変える。

「ええっと、火の精霊との契約でしたわね。残念ながら、風属性の強い御方様では火の精霊と契約は出来ません。その代わりと言ってはなんですが、私の加護を受け取って下さい。これで、火魔法が使えるようになるでしょう。ただし鍛冶に必要な温度までは精霊と契約しない限り難しいので、私の知り合いに話しておきます。今日、この場で会った事は忘れますから、御方様が目的を果たされるよう願っておりますわ」
 
 そう一息に話して、火の精霊王は微笑みながら空に溶けるよう姿を消した。
 結局、儂は火の精霊と契約は無理だという事かの……。
 風属性が強いと言われたが、ステータスには何も表記されておらん。
 だが、加護をくれたようなので確認してみるか。

【シュウゲン 12歳】

★加護(火の精霊王)
 レベル 25
 HP 412
 MP 312
 槍術 Lv10
 剣術 Lv10
 体術 Lv10
 投擲術 Lv10
 魔法 特殊魔法(鑑定)
 魔法 火魔法(ファイアーボールLv0、ファイアーアローLv0、ファイアーウォールLv0)

 ふむ、確かに加護が精霊王に変わり、火魔法が使えるようになっておる。
 しかし魔法を行使する時は契約した精霊に、願うのじゃなかったか?
 儂の魔力だけで使えるのかの?
 試しにファイアーボールと唱えると、ピンポン玉サイズの火の玉が現れた。
 これはLv0の状態で、Lvが上がれば大きくなるんだろうか……。
 ファイアーアローを唱えると、任意の場所に火の矢が走る。
 最後のファイアーウォールは、半径1mの儂の周囲に高さ30cmの炎の壁が出来た。
 自分で唱えた火魔法は熱さを感じないらしく、火傷の心配は要らなそうじゃな。

 火魔法が使用出来るようになったのはいいが、鍛冶師に必要な熱はどうしたらいいのだ?
 精霊王は知り合いに話をすると言っただけで、帰ってしまった……。
 突然現れた美女にほうけている場合ではなかったのぅ。
 てっきり儂と契約を結んでくれるものだと思い、浮かれておった。
 何も聞き出せず、話の内容も分からぬままで狐につままれたようじゃわい。
 小夜さよ、これは浮気ではないぞ? 儂は、お主一筋じゃから安心せい。
 少しも、惜しかったなどと思っておらんからな。

 結局、精霊との契約は失敗に終わり、意気消沈してダンジョンから帰還する。
 冒険者ギルドで1週間の換金を済ませ、とぼとぼと家に帰った。
 火の精霊と契約出来なかったと両親に話すのはしんどいの。
 肩を落とし家に辿たどり着くと、玄関前に片膝を突いた男がいた。
 はて、この不審人物は誰じゃ?  

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