自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第824話 シュウゲン 7 鍛冶師ギルド登録 2&火竜へ会いに王都へ

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 閑散かんさんとした鍛冶師ギルド内の受付でしばらく待つと、担当者と共に体格の良い白髪の老人がやってくる。
 儂とバールを見て目を細めた老人が担当者の肩を叩き、席を外すよううながした。

「鍛冶師ギルドマスターのイサクじゃ。不快な思いをさせて済まぬの。冒険者ギルドマスターから連絡はあったが、こんなに早く基本Lvを満たすとは思わず担当の者へ伝え忘れておった。鍛冶師登録は責任を持って私が行おう」

「それは助かる。儂はシュウゲン、隣の者はバールじゃ」

「2人で一緒に登録するのか?」

 バールが精霊には見えぬからか、2名登録すると勘違いしたようだ。

「いや、登録するのは儂だけで、バールは契約精霊の代わりに火魔法を使用する」

「契約している精霊がいない?」

 ギルドマスターは、意味が分からぬと首をかしげ登録用紙に目を通す。
 
「火属性の種族となっておるが……詮索せんさくはせんでおこう。等級を決めるための試験をするから付いて参れ」

 そのまま案内された別室に入ると、色々な鉱物が置かれている。

「金・銅・鉄・ミスリル・オリハルコンの順にける火力が違うので、バール氏が可能な物を選ぶとよい」

 異世界では鉱物を魔法で融かすのか……。
 それで、火の精霊と契約が必要になるのじゃな。
 バールが迷わずオリハルコンの塊を選び手に持った瞬間、どろりと溶けた。
 特に、魔法を行使したようにもみえない。

「はあっ!?」

 老人が思わず声を上げ、ぎょっとしたように目を見開く。

「このような不思議な現象は初めて見ました。貴方様は……、いえ何か事情がおありのようですね。シュウゲン殿の等級はA級とさせていただきます。鍛冶師ギルドカードを発行しますので、少々お待ち下さい」

 本来なら火の精霊に願い自分で鉱物を融かすのだろうが、儂の場合はそれをバールが行う。
 バール自身が強い火魔法を使用出来れば、等級もそれに準じたものになるらしい。
 いきなりA級とは驚いた。
 少しあわてた様子の老人が部屋を出ていく姿を見送ったあと、興味が湧き鉄の塊を取ってみる。
 ファイアーボールを鉄に当てて、融けるのか調べたくなったのだ。
 その結果、鉄の塊は熱を持ち赤くなったが儂の魔法では融解しない事が分かった。
 確かに、これでは鍛冶職に就けぬな。
 実験結果に納得していると、老人が戻ってきた。

「鍛冶師ギルドカードを見せれば、王都の神殿に入れます。我が国の守護をしている火竜が、鍛冶魔法を授けて下さるでしょう」  
 
 渡されたオリハルコン製のギルドカードには、【鍛冶師A級 シュウゲン 13歳】と文字が入っている。
 ふむ、鍛冶職には鍛冶魔法も必要なのか……。
 どうやら、融かした鉱物を鍛造したりはしないらしい。
 武器を作る工程は、全て魔法で行うようじゃな。
 思った内容と違うが、儂は薙刀なぎなたが作れれば良い。
 登録を済ませ鍛冶師ギルドをあとにした儂達は、火竜へ会いに王都へ向かう事にする。

 馬車で1ヶ月の距離と聞き、騎獣屋で8本脚のスレイプニルを借りたが……。
 最初は何故なぜか騎獣がおびえて、乗せようとはせず難儀した。
 儂より遥かに大きい巨体を持つ魔物が逃げ出そうとするので、なだめるのが大変だったわい。
 1週間後に王都の騎獣屋へ返却する際は、今までの礼を伝えようとする間もなく厩舎きゅうしゃに引っ込んでしまった。
 儂は騎獣に嫌われる体質なのか? 少しだけ寂しいと思うのは仕方ないであろう。

 王都に到着して早々、目的の神殿へ足を運び神官へ鍛冶師ギルドカードを見せる。
 すんなり中に通されたところをみると、既に連絡が入っていたかも知れん。
 これから火竜に会えると思い、儂はわくわくしておった。
 神殿はかなり大きな造りになっており、火竜がいるためか天井が高い。
 神官の後に続き大きな扉を開けると、中央に伏したままの竜がいた。
 その姿は蛇のような龍ではなく翼を持った竜の方で、これ程大きな生き物を目にした事がない儂は圧倒される。
 見惚れていると気配に気付いた火竜が目を開き、首をもたげた。
 そして、儂とバールを交互に見つめ困惑したかのようにうなった。

『風の御方様……。そのような姿で遊びにいらしたのですか? 属性違いと一緒とは、珍しい事もあるもの』

 竜と意志の疎通が出来るか心配しておったが、相手が普通に通じる言葉で念話を始めた。

「鍛冶魔法を授かりに来た」

『鍛冶魔法? まさか鍛冶をするお心算つもりで?』

「火魔法なら、この者が使用出来るから問題なかろう」

 バールを指して、大丈夫だと胸を張る。

『武器なら、立派な風槍をお持ちでしょうに……。態々わざわざ、自分で作る必要があるのですか?』

 風槍とな? そんなもん、儂は持っとりゃせんぞ?
 返事をしようと口を開く前に、バールが知らない言語で話し出す。

『こたびは、どうか風竜王様のいいようにしてあげて下さい。何か事情があるようで、ご本人に記憶がないようでございます』

『記憶がない? もしや巫女姫様が誕生されたのでしょうか……。光竜王様との子のために、契約を結ばれた可能性がありますね。分かりました、私も知らない振りをしておきましょう』

 バールと火竜が何を話しているのか理解出来ないまま、終わるのを待つ。

『ええっと、鍛冶魔法を与えます。武器の形を正確に想像しながら唱えれば、いいでしょう』

 バールと話して気が変わったのか、火竜はあっさり鍛冶魔法を授けてくれた。
 ステータスを確認すると、鍛冶魔法の表記が追加されている。

【シュウゲン 13歳】

★加護(火の精霊王)
 レベル 100
 HP 1,312
 MP 1,212
 槍術 Lv50
 剣術 Lv50
 体術 Lv50
 投擲術 Lv50
 魔法 特殊魔法(鑑定)
 魔法 特殊魔法(鍛冶Lv0)
 魔法 火魔法(ファイアーボールLv50、ファイアーアローLv50、ファイアーウォールLv50)

 習得した技能や魔法は、Lv100になってから上限が50に変更されていた。
 鍛冶魔法は鑑定と違いLvがあるので、武器の性能に違いが出そうだな。

『礼を言う。ちなみに、一番上等の素材を教えてくれんかの』

『属性により違いがありますが、硬度で言えば玄武の甲羅でしょうか? 水属性なら、青竜王のうろこですね』

『竜の鱗も素材になるのか……』

『ですが鍛冶Lvは100以上必要です』

『まだ儂には無理だという事だな。遣り甲斐がいがありそうで楽しみだ』

名匠めいしょうと呼ばれるようになったあかつきには、是非ぜひ武器の奉納にいらして下さい』

『おう、ドワーフ王を目指そう!』

『それは、どうかと思いますが……。目的が達成される事を願っております』

 火竜が目をまたたかせ、苦笑したようにみえた。

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