自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第829話 シュウゲン 12 ワイバーンの鱗 1

 王都の上空を飛行する黒曜こくようの背に乗りながら、後ろにいるバールへ話しかける。

「この地図にあるパジャン王国へ行った事はあるか?」

「いえ、私はその国に降り立った事がありません」

「ドワーフの国から5つも国をまたいでおるが、お前が知らぬなら距離も不明か……」

 もしかしたらと思い尋ねてみたが、バールも行った事がないらしい。
 それなら黒曜にも聞いてみよう。

「黒曜。パジャン王国を知っておるかの?」

『ご主人様、申し訳ありません。他国に向かう場合、大抵ワイバーンを騎獣に選ばれるので……』

「それもそうか。素朴な疑問なんじゃが竜馬とワイバーンでは、どちらが速く飛べるのだ?」

『空を飛ぶというのであれば竜馬は飛竜に勝てませんが、私はご主人様と契約を結んでいるので恩恵を受ける事が出来ます。当然、ワイバーンより速く飛べます!』

 契約を結んだ覚えはないが……?
 黒曜の言葉が気になり、鍛冶魔法のLvが上がらないため、ずっと確認していなかったステータスを3年振りに開く。

【シュウゲン 16歳】

★加護(火の精霊王)
 レベル 125
 HP 1,612
 MP 1,512
 槍術 Lv50
 剣術 Lv50
 体術 Lv50
 投擲術 Lv50
 言語習得 Lv10
 魔法 特殊魔法(鑑定)
 魔法 特殊魔法(鍛冶Lv0)
 魔法 火魔法(ファイアーボールLv50、ファイアーアローLv50、ファイアーウォールLv50)
 契約従魔(契約者の能力を借り行使する事が可能)
 ●竜馬(めす)【黒曜】 Lv125  使用魔法(サンダーレインLv50)

 知らぬ間に言語習得を覚え、黒曜が契約従魔になっておった。
 言語習得はドワーフの古語を学んだ際、自然と覚えたのであろう。
 しかし、どうやって黒曜が契約従魔になったのかの?
 理由が分からず首をひねっていると、バールが口を開き話し出した。

「シュウゲン様が、竜馬に名を与えたからです。その時に、きっと喜び契約を結んだのでしょう」

 はて? そんな事があるのか?
 それよりテイム魔法との違いはなんじゃ?

「テイムされた従魔と契約従魔では、異なりそうだな……」

「そうですね。契約従魔の場合は、主の能力を引き継げるのが大きな違いでしょうか? 黒曜はシュウゲン様が本来持っている……能力の恩恵を受けられるので、ワイバーンより速く飛べるのではないかと……」

 儂は火魔法しか持っとりゃせんが? 飛行速度が変わるとは思えんがの。 
 しかし黒曜が雌とは知らなんだ。
 少々、いさましい名前を付けてしまい申し訳ない事をしたな。

 しばらくして国境を越えたので、方角が合っているか一度下りてみる事にした。
 地図の通りなら北に隣接したヘルツ王国のはず
 門兵に声を掛け、ここはヘルツ王国か質問すると変な顔をされる。
 フェザー王国だと言われ頭を抱えた。
 あのクソボケじじいめ! 間違った地図を渡すとは、どういう心算つもりだ!

 教えてくれた門兵に礼を言い、再び黒曜が空へと上昇する。
 方角だけは合っていると信じ次の国境に向かい、国名を確認した。
 今度はヘルツ王国だと答えられ、胸をほっとでおろす。
 どうやら渡された地図には、全ての国名が記載されていないようだ。
 国境を超える度に国名を調べながら1週間後。
 やっと、目的のパジャン王国に辿たどり着いた。

 この1週間は野宿ばかりしていたから今日は宿屋で泊まろうと、入国者のチェックをする門兵に冒険者ギルドカードを見せる。
 すると門兵が怪訝けげんそうな顔で、「他国のC級冒険者は入国出来ないのを知らないのか?」と言ってきた。
 そんなもん初耳だわ! あの師匠は、どうも必要な説明を省く癖があるようだな。
 儂が憤慨ふんがいしている様子を見て、本当に知らないようだと思った門兵が、

「あ~S級冒険者になるか、他のA級ギルドカードがあれば……」

 少し困ったように続ける。
 それを早く言ってくれ! 冒険者以外にA級ギルドカードを持っておるぞ!
 ここまで来て、とんぼ返りする羽目はめにならず良かったわ。
 意気揚々と取り出した鍛冶師ギルドカードを見せ、無事に入国する事が叶った。
 国によって、入国審査に必要な身分証が違うんだろう。
 冒険者資格と他のギルド資格に差があるのは、習得する難易度に違いがありそうだ。

 パジャン王国内に入ると、冒険者や商人の姿が多く通りを歩いている。
 冒険者は分かるが、商人がここまで多くいるとは驚いたな。
 この国には、商人が買い付けにやってくるような交易品があるんじゃろう。
 手頃な価格の空いている宿屋を見付け、黒曜を預けに騎獣屋へ向かう。
 騎獣屋でワイバーンが何頭もつながれた姿を見て、呆気あっけに取られた。
 ドワーフの神殿で会った火竜よりかなり小さいが、それでも体長は20m以上ある。
 この国の騎獣はワイバーンが主流なのか?
 騎獣屋の主人に金を渡し黒曜を預かってもらったあと、宿へ引き返し夕食を簡単に済ませ久し振りにベッドで横になった。

 他国の料理を期待したが、翌日の朝食に出てきた代わり映えしないパンと塩味のスープにがっかりし、異世界では食に期待出来ぬと知る。
 黒曜を騎獣屋へ引き取りに行き、パジャン王国内についている印の方角へ進む。 
 2時間程で険しい山脈が続く場所に到着し、山のふもとに降り立つ。

「ここが、ワイバーンの生息地か……静かなものだな。1匹くらい上空を飛んでおらんのか?」

 発見次第、狩ろうと思っていた儂は宛てが外れ肩を落とす。

「シュウゲン様の気配を感じて、上空を飛び回る勇気のある飛竜はいないでしょうね」

 苦笑しながらバールが呟いた。

「人を化け物みたいに言いおって。儂は只のドワーフだ。今は紅顔の美少年でもあるがな!」

 そう言ってから、誤魔化すように呵々かかと笑う。
 80歳を過ぎているのに紅顔の美少年とは、よく言ったものだ。
 小夜さよが聞いたら笑うであろうな。
 山場では黒曜が降り立つ場所が確保出来ぬだろうと、その場に残しバールと共に入山する。
 ワイバーンの姿が一向に見えぬが、とりあえず山頂まで行くか。
 3時間くらい山道を歩く間、魔物は出ず快調に進む。

 そして遂に頂上へ到着した瞬間、連なる山脈からワイバーンが群れをなし一斉に羽ばたいてくる。
 その数、およそ数百匹!!
 流石さすがに、これ程の数を相手取るのは儂でも無理じゃ。
 情報も得ず無計画に突っ込んだのは失敗だったかと、緊張で背中に汗がしたたり落ちた。

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