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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第840話 シュウゲン 23 摩天楼のダンジョン攻略
久し振りにやる気になり、バールへ武器の素材を探しに行くと伝えて店を出る。
カルドサリ王国内で有名な摩天楼のダンジョンへ、黒曜の背に乗り飛び立った。
マクサルトのダンジョンにある移転陣で繋がった場所だから、目的地を告げれば黒曜が連れて行ってくれるじゃろう。
大抵のダンジョンは地下へ進み攻略するものだが、塔になっている摩天楼のダンジョンは上へと階層を上る仕様になっておるらしい。
ダンジョンを攻略するのも久し振りである。
少しばかり鈍った体を動かすのも、いい機会になろう。
王都から1時間で摩天楼の都市に着き、早速冒険者ギルドへ足を運ぶ。
黒曜をギルド前で待機させて冒険者ギルド内へ入ると、受付には綺麗所が揃っておった。
カルドサリ王国は人間の国だと聞いていたが、彼女達はエルフの血でも引いているのか?
なんにせよ、受付嬢が若く美しい者なら大歓迎じゃ。
空いているカウンターの前に並び順番を待つ。
このダンジョンはA級冒険者の資格がないと入れないらしいので、ギルド内にいる冒険者は中年が多い。
儂も年を取り見た目が50代になっているから、浮くことはないであろう。
5分程で儂の番になり、地図を購入して常設依頼を確認する。
ふむ、特に注意するような魔物はおらんな。
ギルドを出てから、当面必要そうな食材やポーションを買い込みダンジョンへ向かう。
入口で入場料の銀貨3枚を支払い中に入ると、1階はアンデッドが出現するためか臭いがきつい。
この腐敗臭を嗅ぎながら攻略するのはしんどそうじゃのぅ。
そう思っていると、黒曜も嫌そうに顔を顰めておる。
ここは、地図にある階段へ最短距離で移動した方がよさそうだな。
進行方向を黒曜に伝えて、魔物との接触を最低限に抑えようとしたところ、何故か魔物が寄ってこない。
はて、不思議な事もあるものじゃ。
結局、2階へ上がる階段まで進む間、アンデッドと戦わずに済んだ。
その後、切りのいい30階まで黒曜と駆け上がり、安全地帯でマジックテントを設置する。
30階は雪が降る階層のようで、冒険者達は真っ白いマントを羽織っていた。
安全地帯には雪が降らないから、テントの外で休憩している冒険者も多い。
寒さに強い儂は、薄手のマントがあれば充分だろう。
儂のように1人で攻略する冒険者などいないだろうと思っていたら、30代前半に見える男性が1人でいる姿を見掛けた。
6人パーティーを組む冒険者の多いなか、たった1人でダンジョンを攻略する者がいるとはな……。
その男性は質の良い魔法鎧を身に纏い、非常に疲れた顔をしていた。
ちょうど食事時であったのか、携帯食を不味そうに食べている。
料理が出来ないのか? あんな乾燥した固形物だけで、腹は膨れるのかの?
まぁ儂が、お節介を焼くのは筋違いだろうと声は掛けずに放っておく。
自分の食事を作っている間に、周囲の冒険者が大声で話す会話が聞こえた。
何か役立つ話はないか耳を澄ませていると、30階層では宝箱が出現する情報を得た。
出現条件は、同じ階層で30日間攻略を続けるだけらしい。
それなら儂も宝箱の出現を待つ事にしよう。
もしかしたら、貴重な鉱物が手に入るかも知れん。
ヒルダちゃん、期待して待っておれよ!
そうして30日間、30階で魔物を倒しつつ洞窟内で採掘を続けた。
宝箱は何処に出現するか不明だというので、隅々まで探し回る。
真っ白な地面に、ぽつんと青色に光る1mくらいの大きな宝箱を発見した時は、思わず声が出た。
「おおっ、これかっ!」
中身を確かめようと蓋を開け、箱の中を覗いて見る。
「なんじゃこれは……」
中に入っていたのは、黄金色の鎧と腕輪だった。
期待した鉱物でなくがっかりしたが、一応性能を調べるために鑑定する。
黄金色の鎧は着るとダメージを受けたHPが5倍の速度で回復し、腕輪は従魔用アイテムで力が2倍になるようだ。
こんなキラキラした鎧を着るのは趣味でないし、魔物に傷付けられる事も少ない。
どう考えても儂には無用の長物じゃな。
従魔用アイテムは黒曜に着ければいいだろう。
そう思って、黒曜の右足に腕輪を装着する。
しかし宝箱の中身が運とはいえ、今回は大ハズレもいいところだ。
30日間を無駄にしたようで肩を落とす。
一応、洞窟でアダマンタイトを採取出来たから良かったものの、本当はヒヒイロカネが欲しかった……。
更に30日待って出現する宝箱に賭けるのは止めておこうと、ダンジョンから帰還し冒険者ギルドで換金したあと王都へ帰る。
店にいたバールへ戻った事を伝え、1か月振りの風呂で体を癒した。
翌日、注文を受けた剣を鍛冶魔法で作製しようとし、ふとダンジョンを1人で攻略していた男性とバールに聞いたカルドサリ国王の体格が、よく似ていると気付く。
まさか国王が冒険者の真似事などしておらんだろうと失笑し、儂の思い違いだと首を振った。
気を取り直し、バールに協力を願い剣を拵えた。
うむ、なかなか良い出来じゃ。
伊織殿の下で修業したのが役に立っておるな。
しかし、あんなに必死になって覚えたドワーフの古語は使い道がない。
武器に属性を付与するさい必要になると聞いていたが、肝心な方法を教えぬままガンツ師匠が居なくなったからの……。
せっかくだし、この剣に古語を刻んでおこう。
【可愛いヒルダちゃんへ 親友への剣は『飛翔』と命名した またいつでも注文を待っておる シュウゲンより】
よし、こんなところだろう。
剣が出来上がった事を伝えようとしたが、連絡手段を失念していた。
お忍びで店まで来た第二王妃に、どう伝えたらいいのだ?
「バール。ヒルダちゃんへの連絡は、どうすればよいのかの」
「それなら、冒険者ギルドで手紙を送れば問題なく届く」
ほう、身分の高い王族宛てでも冒険者ギルドは配達してくれるのか。
検閲はされるかも知れんが、注文を受けた物が出来上がった内容なら秘密にする事でもあるまい。
手紙を書いて冒険者ギルドに依頼した数日後、ヒルダちゃんから返事が届いた。
現在妊娠中のため、出産後に注文の品を受け取りに行くという内容だった。
その吉報を知りバールに伝えると彼は沈黙したあと、言い淀みながら王宮で何があったか話し出す。
第二王妃の懐妊を知った第一王妃が毒を盛り、ヒルダちゃんとお腹の子を亡き者にしようとたくらんだらしい。
第二王妃は無事であったが毒見役の女官が倒れ、事が露見した第一王妃は一族諸共処刑されたと言う。
なんと愚かな……。
仲睦まじい王と第二王妃を嫉妬せぬかと懸念しておったが、本当に手を下すとは思わなんだ。
他国へ嫁いで味方の少ないヒルダちゃんは、さぞかし怖い思いをしたであろう。
今は王宮を出て、王都から離れた森の中に住んでいるようじゃ。
可哀想に……、震えておるのではないか?
夫の国王も胸を痛めたに違いないが、妻の手綱を握れぬようではいかんな。
そういう事なら、無理に外出せぬ方がいい。
ヒルダちゃんが無事に出産するのを待つとしよう。
けれど半年後――。
剣を受け取りに来たのはヒルダちゃんではなく、厳しい表情をした女官だった。
姫様は事情があり来られないので、代理で受け取りに来たと言う。
産後の容体が悪いのかと思い突っ込んだ事は聞かず、代金を受け取り剣を渡す。
「いつでも良いから、顔を出すように伝えてくれ」
そう告げると女官は顔を伏せ、
「ありがとうございます」
と小さく返事をしただけで帰ってしまった。
ヒルダちゃんに、何かあったのか心配じゃの。
元気な姿で会いに来てくれるだろうか?
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お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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カルドサリ王国内で有名な摩天楼のダンジョンへ、黒曜の背に乗り飛び立った。
マクサルトのダンジョンにある移転陣で繋がった場所だから、目的地を告げれば黒曜が連れて行ってくれるじゃろう。
大抵のダンジョンは地下へ進み攻略するものだが、塔になっている摩天楼のダンジョンは上へと階層を上る仕様になっておるらしい。
ダンジョンを攻略するのも久し振りである。
少しばかり鈍った体を動かすのも、いい機会になろう。
王都から1時間で摩天楼の都市に着き、早速冒険者ギルドへ足を運ぶ。
黒曜をギルド前で待機させて冒険者ギルド内へ入ると、受付には綺麗所が揃っておった。
カルドサリ王国は人間の国だと聞いていたが、彼女達はエルフの血でも引いているのか?
なんにせよ、受付嬢が若く美しい者なら大歓迎じゃ。
空いているカウンターの前に並び順番を待つ。
このダンジョンはA級冒険者の資格がないと入れないらしいので、ギルド内にいる冒険者は中年が多い。
儂も年を取り見た目が50代になっているから、浮くことはないであろう。
5分程で儂の番になり、地図を購入して常設依頼を確認する。
ふむ、特に注意するような魔物はおらんな。
ギルドを出てから、当面必要そうな食材やポーションを買い込みダンジョンへ向かう。
入口で入場料の銀貨3枚を支払い中に入ると、1階はアンデッドが出現するためか臭いがきつい。
この腐敗臭を嗅ぎながら攻略するのはしんどそうじゃのぅ。
そう思っていると、黒曜も嫌そうに顔を顰めておる。
ここは、地図にある階段へ最短距離で移動した方がよさそうだな。
進行方向を黒曜に伝えて、魔物との接触を最低限に抑えようとしたところ、何故か魔物が寄ってこない。
はて、不思議な事もあるものじゃ。
結局、2階へ上がる階段まで進む間、アンデッドと戦わずに済んだ。
その後、切りのいい30階まで黒曜と駆け上がり、安全地帯でマジックテントを設置する。
30階は雪が降る階層のようで、冒険者達は真っ白いマントを羽織っていた。
安全地帯には雪が降らないから、テントの外で休憩している冒険者も多い。
寒さに強い儂は、薄手のマントがあれば充分だろう。
儂のように1人で攻略する冒険者などいないだろうと思っていたら、30代前半に見える男性が1人でいる姿を見掛けた。
6人パーティーを組む冒険者の多いなか、たった1人でダンジョンを攻略する者がいるとはな……。
その男性は質の良い魔法鎧を身に纏い、非常に疲れた顔をしていた。
ちょうど食事時であったのか、携帯食を不味そうに食べている。
料理が出来ないのか? あんな乾燥した固形物だけで、腹は膨れるのかの?
まぁ儂が、お節介を焼くのは筋違いだろうと声は掛けずに放っておく。
自分の食事を作っている間に、周囲の冒険者が大声で話す会話が聞こえた。
何か役立つ話はないか耳を澄ませていると、30階層では宝箱が出現する情報を得た。
出現条件は、同じ階層で30日間攻略を続けるだけらしい。
それなら儂も宝箱の出現を待つ事にしよう。
もしかしたら、貴重な鉱物が手に入るかも知れん。
ヒルダちゃん、期待して待っておれよ!
そうして30日間、30階で魔物を倒しつつ洞窟内で採掘を続けた。
宝箱は何処に出現するか不明だというので、隅々まで探し回る。
真っ白な地面に、ぽつんと青色に光る1mくらいの大きな宝箱を発見した時は、思わず声が出た。
「おおっ、これかっ!」
中身を確かめようと蓋を開け、箱の中を覗いて見る。
「なんじゃこれは……」
中に入っていたのは、黄金色の鎧と腕輪だった。
期待した鉱物でなくがっかりしたが、一応性能を調べるために鑑定する。
黄金色の鎧は着るとダメージを受けたHPが5倍の速度で回復し、腕輪は従魔用アイテムで力が2倍になるようだ。
こんなキラキラした鎧を着るのは趣味でないし、魔物に傷付けられる事も少ない。
どう考えても儂には無用の長物じゃな。
従魔用アイテムは黒曜に着ければいいだろう。
そう思って、黒曜の右足に腕輪を装着する。
しかし宝箱の中身が運とはいえ、今回は大ハズレもいいところだ。
30日間を無駄にしたようで肩を落とす。
一応、洞窟でアダマンタイトを採取出来たから良かったものの、本当はヒヒイロカネが欲しかった……。
更に30日待って出現する宝箱に賭けるのは止めておこうと、ダンジョンから帰還し冒険者ギルドで換金したあと王都へ帰る。
店にいたバールへ戻った事を伝え、1か月振りの風呂で体を癒した。
翌日、注文を受けた剣を鍛冶魔法で作製しようとし、ふとダンジョンを1人で攻略していた男性とバールに聞いたカルドサリ国王の体格が、よく似ていると気付く。
まさか国王が冒険者の真似事などしておらんだろうと失笑し、儂の思い違いだと首を振った。
気を取り直し、バールに協力を願い剣を拵えた。
うむ、なかなか良い出来じゃ。
伊織殿の下で修業したのが役に立っておるな。
しかし、あんなに必死になって覚えたドワーフの古語は使い道がない。
武器に属性を付与するさい必要になると聞いていたが、肝心な方法を教えぬままガンツ師匠が居なくなったからの……。
せっかくだし、この剣に古語を刻んでおこう。
【可愛いヒルダちゃんへ 親友への剣は『飛翔』と命名した またいつでも注文を待っておる シュウゲンより】
よし、こんなところだろう。
剣が出来上がった事を伝えようとしたが、連絡手段を失念していた。
お忍びで店まで来た第二王妃に、どう伝えたらいいのだ?
「バール。ヒルダちゃんへの連絡は、どうすればよいのかの」
「それなら、冒険者ギルドで手紙を送れば問題なく届く」
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現在妊娠中のため、出産後に注文の品を受け取りに行くという内容だった。
その吉報を知りバールに伝えると彼は沈黙したあと、言い淀みながら王宮で何があったか話し出す。
第二王妃の懐妊を知った第一王妃が毒を盛り、ヒルダちゃんとお腹の子を亡き者にしようとたくらんだらしい。
第二王妃は無事であったが毒見役の女官が倒れ、事が露見した第一王妃は一族諸共処刑されたと言う。
なんと愚かな……。
仲睦まじい王と第二王妃を嫉妬せぬかと懸念しておったが、本当に手を下すとは思わなんだ。
他国へ嫁いで味方の少ないヒルダちゃんは、さぞかし怖い思いをしたであろう。
今は王宮を出て、王都から離れた森の中に住んでいるようじゃ。
可哀想に……、震えておるのではないか?
夫の国王も胸を痛めたに違いないが、妻の手綱を握れぬようではいかんな。
そういう事なら、無理に外出せぬ方がいい。
ヒルダちゃんが無事に出産するのを待つとしよう。
けれど半年後――。
剣を受け取りに来たのはヒルダちゃんではなく、厳しい表情をした女官だった。
姫様は事情があり来られないので、代理で受け取りに来たと言う。
産後の容体が悪いのかと思い突っ込んだ事は聞かず、代金を受け取り剣を渡す。
「いつでも良いから、顔を出すように伝えてくれ」
そう告げると女官は顔を伏せ、
「ありがとうございます」
と小さく返事をしただけで帰ってしまった。
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「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」
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世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい――
◇小説家になろうでも同時連載中です◇