自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第848話 シュウゲン 31 子供達の炊き出し&武術稽古&ガルムの群れ

 翌朝。美佐子みさこの作った朝食を食べた後、ひびき君へ異世界の金貨を10枚渡して日本円に換えてもらった。
 100万円×10束を前に金持ちになった気分を味わうが、儂の記憶の1万円札と絵柄が変わっておる。
 その他、電化製品にも違いがあり時の流れを思い知った。
 中でも一番驚いたのはテレビで、今はブラウン管ではなく液晶になり画面のサイズがかなり大きい。
 そしてホーム内では放送しているテレビを見る事が出来た。
 放送局も地上波とBSに分かれ、見られる番組が増えておるとは……。
 リモコンと呼ばれる機械で久し振りにテレビを付けると、朝のニュースが流れる。
 その映像の綺麗さもさる事ながら、アナウンサーの髪型や服装等に違和感を覚えた。
 ふむ、今の日本はこうなっておるのか……。
 昨日、沙良がホーム内で生活しないかと提案してくれたし、儂も色々と覚える必要がありそうじゃ。
 
 7時頃、「今日は子供達の炊き出しをする」と言って沙良が迎えにきた。
 ホームから異世界の沙良の家へ移動して、その塀の高さに唖然あぜんとする。
 異世界で家を建てたそうだが、こんなに高い塀は必要なのか?
 沙良の店で働いている母親達が、炊き出しの準備を手伝いにやって来た。
 他にも怪我をした高齢の冒険者達を雇い、経営している店があるらしい。
 これから来るのは孤児になった子供達で、沙良が毎週日曜日に炊き出しをしているそうだ。
 沙良がスープを作っている間、儂は響君と串に刺された肉を焼く。
 こりゃ子供の人数が多くて大変だの。

 1時間後、子供達が集まってきた。
 炊き出しの準備が出来るまで、子供達は沙良の従魔達の背に乗り遊んでおる。
 ちゃんと順番を待ち、並ぶ姿に行儀が良い子供達だと思う。
 スープ、串焼き、パンを配り始めると、子供達はそれぞれのグループに分かれて食べ始めた。
 沙良から路上生活をしていた子供達に家を与え、今は家族のように過ごしていると聞き「優しい孫じゃな」と頭をでる。
 つい幼児だった孫娘に対するよう接してしまった。
 3歳だった沙良は、もう56歳の大人だというのに……。
 しかし外見が十代前半にしか見えんのだから許してくれ。

 食べ終わった子供達に賢也が大きなバナナを1本ずつ渡しておるが、アレもダンジョンに生っている果物のようだ。
 王都の高級店で売っているような物を与えるとは、孫達は子供達に惜しみない支援をしているのだな。
 バナナを見て儂の子供達へ遠足に行く時、ゆで卵と一緒に持たせてやったのを懐かしく思い出す。
 当時、バナナは高級品で滅多に食べられんかった。
 異世界に転生してから儂も口にした事がない。久し振りに食べてみたいのう。

 子供達を見送った後、儂は沙良の従魔の山吹やまぶきの背に尚人なおと君と乗り、ガーグ老の工房へ向かった。
 それにしても、美佐子と沙良の従魔に付ける名前のセンスがひどいな。
 自分の子供達には、真面まともな名前を付けておるのに何故なぜじゃ!?
 沙良は魔物の名前から安易に付けたものだし、美佐子のボブとか意味が分からんわ!
 まぁ、結花ゆかさんも大概たいがいだが……。

 ガーグ老の工房に入ると、飛んできた2匹の白ふくろういつき君の両肩に乗り、体を揺らす。
 前回も変に思ったが、他人の従魔がここまで懐くなどおかしい。
 
「サラ……ちゃん、よう来たの。シュウゲン、お主までまた来るとは……」

 儂に対し、ガーグ老は招かれざる客を見たかのように嫌な顔をする。
 沙良の祖父だと言っておろうが! 何度でも来る心算つもりだからあきらめるんじゃな。
 かなでがガーグ老に稽古相手を頼むと、彼は困った様子を見せ長男のゼンに勝ったらと断っていた。
 それならばと儂がガーグ老に再戦を申し入れ、相対稽古を始めた。
 やはり、引退した騎士とは思えぬ動きをする。
 家具職人というのは眉唾まゆつばではないか?
 一進一退の攻撃を続けたが、今日も決着はつかんかった。

 武術稽古が終了し沙良が昼食の準備を始める頃、上空に異様な気配を感じて空を見上げる。
 するとそこには魔物の群れが飛んでおった。
 「ピー」という甲高い音と伴に、こちらへ向かってくる魔物を認識したガーグ老が声を上げた。
 
「おおっ、やっと騎獣が届いた!」
 
 あぁ、この魔物達はガーグ老達の騎獣であったのか。
 人が乗った魔物を先頭に、次々と庭へ下りてくるのを沙良が興味深く見ておる。
 ふむ、この赤い毛をした魔物は多分ガルムじゃな。
 何かの話の折に、バールから獣人達が住む中央大陸に生息している魔物だと聞いた覚えがある。
 確か翼がなくとも飛べる珍しい魔物だったはずだ。

「翁、大変お待たせ致しました。ご依頼の騎獣を、先ずは10匹納めさせて頂きます。残りの騎獣は調教が済み次第運びますので、もうしばらくお待ち下さい」

 騎獣から降りた美しい男性が、ガーグ老に対して敬うような態度を見せる。
 エルフの国では、ガーグ老の地位が高いのか?
 単純にヒルダちゃんの護衛をしていただけではなさそうだ。

「騎獣を待っておったのだ、本当に助かるわい。無理を言ってすまんの、遠くまでご苦労だった。今夜は家に泊まるがよい。帰りは、こちらで手配する」

「はっ! ありがとうございます」
  
 二人の遣り取りを注意深く観察しながら関係性を探る。
 まるで、上司と部下のようじゃな。
 少し様子を見るかと思っていたら、その男性が沙良に目を止め驚いた表情になる

「……ヒルダ様? いやあの方は……、それに幼い姿でいらっしゃる……」
 
 儂が勘違いしたように、彼もまた沙良をヒルダちゃんだと思ったらしい。
 しかし、ヒルダちゃんより外見が幼い沙良に気付き困惑こんわくしているようだ。
 それから周囲に視線を向け、白梟を両肩に乗せた樹君を見た瞬間声を上げる。

「姫様!?」 

 またか! 樹君の魔力は、それほどヒルダちゃんと似ておるのか??
 姫様と呼ばれた樹君は、さっと響君の後ろに逃げ隠れたが、男性は回り込んで片膝を突き頭を下げたまま微動だにしない。

「その~何だ……、俺は姫様じゃない。魔力が似ているそうだけど、理由はガーグ老から聞いてくれ」

 ガーグ老達に続き女性と間違われた樹君は、脱力したように言うと男性を立たせて視線をらした。  
 
「何か……あるのですね。分かりました」

 男性は樹君の言葉を信じていないようじゃな。
 果たして、これは偶然の一致と呼べるものなのか……。
 
 沙良が目をキラキラさせて、男性から魔物の名前を聞き出す。
 儂の予想通り、ガルムだと返答があった。
 その後も沙良は色々と質問しておったが、その場にいた従魔達を誰がテイムしたのか逆に聞かれ、自分と結花さんだと自慢げに応えて、それぞれの従魔を紹介した。
 男性が沙良のテイムした従魔の数と、結花さんがテイムした兎の魔物に引きった笑みを浮かべ、

「どれも皆、良く調教されているようですね」

 どうにか口を開くと、褒められたと感じた沙良が従魔達の芸を見せる。
 調教という言葉の意味を、よく理解しておらんようだ。

「いや……あの、そういった意味ではなく……」

 従魔達の芸を見せられた男性は、困ったようにガーグ老へ視線を向ける。
 
「おぉ! サラ……ちゃんの従魔達は皆賢いようだわ!」

 孫の沙良を可愛がっているのか、ガーグ老が上手くフォローしていた。
 そんな中、ガルム達に名前がないと知った沙良が、
 
「名前がないなんて可哀想かわいそう……。ガルちゃんも名前が欲しいよね~」

 そう言った途端とたん、ガルム達が一斉に尻尾を振った。
 よく見ると男性が乗っていたガルムの体が、一回り大きくなっているではないか!
 何だか嫌な予感しかせんが……。
 もしや、この一瞬で沙良がガルムの群れをテイムした可能性はないかの。
 ガーグ老達の騎獣を黙ってテイムしたら、非常にまずい事になりそうじゃ。
 どうにも挙動不審な沙良を見て、そっと溜息を吐いた。
 この件は、あとで響君に伝えておこう。

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