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4巻
4-1
第一章 迷宮ダンジョン地下十四階
私、椎名沙良(四十八歳)は異世界召喚されて公爵令嬢のリーシャ(十二歳)になった。
そして、異世界召喚の際に授かった能力――召喚で、兄の賢也と、ダンジョンマスターになっていた幼馴染の旭尚人を召喚して、今は迷宮都市に移り、三人で冒険者活動をしている。
召喚時に三十七歳若返ってしまった兄と旭も、異世界で七年経った今は二十一歳になった。
さらに、シルバーウルフのシルバーとハニービーのハニーを従魔にして、新しい仲間も増えた。
◇ ◇ ◇
月曜日。先週、迷宮都市近くの迷宮ダンジョン地下十三階の攻略が済み、今日からは地下十四階に移動する。
兄と旭はレベルが29になって、私は地下三十階に一人で行って魔物を倒したからレベルが35に上がっていた。
でも一人で地下三十階に行ったことは、絶対兄には内緒だ。
もしバレたら、確実にお説教地獄が待っている。
あの兄が淡々と話す声を聞くだけで、背筋がぞっとするのだ。
旭にバレても、きっと兄には秘密にしておいてくれると思うけど、一応旭にも言ってない。
もしかしたら前世の旭の妹――雫ちゃんが、旭のように、このダンジョンのダンジョンマスターとして転生していないかと思ったけど、それは私の勘違いだった。
旭は妹を、それはもう大切にしていた。
病気になってしまった雫ちゃんのために、熱や鼻血まで出して兄のスパルタ式勉強法に耐えて、医大に合格したんだから。本当によく受かったと思う。
それにしても他人のステータスが見られなくてよかった~。
レベルが35になっているのは私にしかわからない。
鑑定魔法を、兄と旭が持っていなかったことに感謝しよう。
ちなみに私たちの現在のステータスはこうなっている。
【リーシャ・ハンフリー】
・年齢:十九歳 ・性別:女
・レベル35 ・HP:1728 ・MP:1728
・時空魔法:ホーム(レベル35)、アイテムボックス、マッピング(レベル35)、召喚
・火魔法:ファイアーボール(レベル10)、ファイアーアロー(レベル10)
・土魔法:アースボール(レベル10)、アースアロー(レベル1)、アースニードル(レベル1)
・水魔法:ウォーターボール(レベル10)、ウォーターアロー(レベル1)
・風魔法:ウィンドボール(レベル10)、ウィンドアロー(レベル1)
・石化魔法:石化(レベル7)
・氷魔法:アイスボール(レベル1)、アイスニードル(レベル1)
・雷魔法:サンダーボール(レベル1)、サンダーアロー(レベル10)
・闇魔法:ドレイン(レベル7)
・無属性魔法:魅惑(レベル0)、魅了(レベル1)、テイム(レベル3)
・テイム魔法:テイム(レベル3)
【シルバー】
・性別:雄
※術者のMPを130消費
※シルバーウルフからゴールデンウルフに進化中
【ハニー】
・性別:雄
※術者のMPを130消費
※ハニービーからクインビーに進化中
【椎名賢也】
・年齢:二十一歳 ・性別:男
・レベル:29 ・HP:1500 ・MP:1500
・光魔法: ヒール(レベル10)、ホーリー(レベル10)、ライトボール(レベル10)
・火魔法:ファイアーボール(レベル10)、ファイアーアロー(レベル10)
・土魔法:アースボール(レベル10)、アースアロー(レベル4)、アースニードル(レベル4)
・水魔法:ウォーターボール(レベル10)、ウォーターアロー(レベル4)
・風魔法:ウィンドボール(レベル10)、ウィンドアロー(レベル4)
・石化魔法:石化(レベル5)
・氷魔法:アイスボール(レベル4)、アイスニードル(レベル4)
・雷魔法:サンダーボール(レベル4)、サンダーアロー(レベル10)
・闇魔法:ドレイン(レベル1)
・無属性魔法:魅惑(レベル0)
【旭尚人】
・年齢:二十一歳 ・性別:男
・レベル:29 ・HP:1350 ・MP:1350
・時空魔法:アイテムボックス
・光魔法: ヒール(レベル8)、ホーリー(レベル10)、ライトボール(レベル10)
・火魔法:ファイアーボール(レベル10)、ファイアーアロー(レベル10)
・土魔法:アースボール(レベル10)、アースアロー(レベル4)、アースニードル(レベル4)
・水魔法:ウォーターボール(レベル10)、ウォーターアロー(レベル4)
・風魔法:ウィンドボール(レベル10)、ウィンドアロー(レベル1)
・石化魔法:石化(レベル5)
・氷魔法:アイスボール(レベル4)、アイスニードル(レベル4)
・雷魔法:サンダーボール(レベル4)、サンダーアロー(レベル10)
・闇魔法:ドレイン(レベル1)
・無属性魔法:魅惑(レベル0)
ホーム――地球で私が住んでいたアパートとその周辺の街が異空間に創造されており、それを自由に使うことができる能力――は、レベルが上がると、移動できる街の範囲が広がる。
現在は、自宅アパートを中心に半径三十五キロメートルまで移動可能になった。
さらに、ドレインは多用したおかげで、レベル7に上がった。
テイム魔法はレベル3になり、消費MPが130に変化した。
ハニーはクインビーに進化中とある。クイーンということは、性別が雌に変わるのだろうか?
クマノミみたいに、雄から雌に変わる魔物だったのかしら?
兄と旭は魅惑魔法以外を順調に上げている。
冒険者ギルドで迷宮ダンジョンの地下十四階の地図を買い、常設依頼を確認してから、兄と旭と一緒にダンジョンへ向かう。
いつもは兄が地下十一階で果物の収穫をするんだけど、初めて行く階層で初見の魔物がいるからと、単独行動はせずに私たちについてきた。
迷宮ダンジョンで一緒に行動をしている冒険者のアマンダさんから、事前に魔物情報をもらっているので、心配ないと思うんだけどね。
地下十四階で一番換金額が高いのは金貨十枚の迷宮タイガーで、皮が貴族に人気らしい。
ちなみに金貨一枚は日本円で大体百万円くらいの価値だ。
あれかな? 絨毯の代わりに敷くんだろうか……
私の中で虎の毛皮といえば、バンガローの床に敷かれているイメージなんだけど。
あとは蛮族が頭から被っている感じ?
金貨十枚もするのは何か理由がありそう。個体数が少ないのか討伐が難しいのか……
まっ、私たちに狩れない魔物はいないから、どんどん狩る予定でいるけどね。
虎は初めてだな~。ライオンやヒョウもいるのかしら?
個人的にはヒョウ柄が好きだから、どこかの階層にいることを願おう。
地下十四階で最初に会敵したのは体長一メートルのフォレストウサギ。
もうウサギの大きさじゃない!! ミリオネの森にいた角ウサギは普通のウサギサイズだったのに……
ウサギの毛が緑色で目が赤く、角が二本あった。
怖いから突進してくる前にドレイン――敵のHPを奪って自分のものにする魔法で昏倒させて倒す。
あっ、魔法を習得するのを忘れてた!
私たちは魔物から攻撃を受けることで、その魔法を習得することができるのだ。
確か、フォレストウサギはファイアーニードルを使用するはず。
正直、私は使用しないと思うけど、やっぱりコンプリートしたいじゃない。
速攻で倒してしまった私を、兄がやれやれといった表情で見て、旭は苦笑いしていた。
つ、次はちゃんと魔法を受けるからそんな目で見ないでください。
フォレストウサギは血抜きを済ませ、収納しておく。
気を取り直して、マッピングで魔物を探すと、体長一メートルのキラープラントを発見。
植物のような魔物で、情報によると蔓を伸ばして巻きつけてくるらしい。
絞め殺される前にドレインで昏倒させ、心臓に該当する下方にある一番太い部分に兄がライトボールを撃ち、倒した。
体(?)の中央に大きな目がある。素材になるけど、傷つけると価値が下がるみたい。
この階層の左側にはトレントという大きな木の魔物が棲息していて、その魔物が集まって森になっているそうだ。人が近付くと攻撃してくるらしい。
トレントは高級木材になるため、なるべく傷はつけたくない。貴族が購入する家具に使用されるんだとか。
しばらく歩くと、トレントに遭遇した。
ウィンドニードルを飛ばしてきたので、全員が一度受けて魔法を覚えたあと、旭がライトボールを針のように出して、急所を刺した。
それにしても兄と旭はライトボールの扱いが上手いなぁ。一体いつ練習したんだろう?
迷宮タイガーは、なんとトレントの森の奥にいるそうだ。
ということは、襲ってくるトレントを全て倒す必要がある。
どうりで迷宮タイガーの換金額が高いと思った。
これは普通の冒険者には無理かも……
私たちは魔法があるから問題ないけどね。
走りながら、襲ってくるトレントを五十匹ぐらい瞬殺し、アイテムボックスに入れると周囲の見晴らしがよくなる。
すると、体長が三メートルはある、白黒の美しい模様の迷宮タイガーが前方に二匹見えた。
日本では白虎と呼ばれていた虎に似ている。
皮を傷つけないように脳を石化させて倒した。
一匹で金貨十枚とは美味しい魔物だ!
周囲に冒険者がいないことを確認して、もう一匹狩る。
今は二匹しかいないみたい。個体数が少ない魔物みたいで残念。
「沙良。迷宮タイガーは、サンダーニードルを使用するんじゃなかったか?」
「そうだった! ついお金に目が眩んで、攻撃を受ける前に倒しちゃった。ごめんなさい」
「わかっていればいい。次は忘れるなよ」
兄に叱られてしまった。
迷宮タイガー、従魔にしたいなぁ。大きさもシルバーと同じくらいだし。
ハニーはダンジョンで生活しているから、ホーム内で飼っているシルバーと会えない。
私たちがダンジョン攻略中、シルバーはホームでお留守番だから可哀想だと思ってたんだよね。
仲間がいれば一緒に遊べるし、寂しくなくなる。
そして迷宮タイガーは恐らく猫科だ。兄は猫派なので、対応を間違えなければ、従魔にしていいと許可が出る可能性が高い。
どうやって兄を説得したら、従魔にすることを許してくれるだろうか……
さて、次は迷宮ウナギを倒そう。
地下十三階で沢山狩った迷宮サーモンもだけど、食べられる魔物は嬉しい。
森の右側にある川にいるらしいから移動しよう。
川に着くと旭が待ってましたとばかりに、サンダーボールを撃ち込んだ。
迷宮サーモンの時もこの倒し方にハマってたから、こうなることはわかってたけどね!
体長五メートルの迷宮ウナギがプカプカ浮き上がる。
蒲焼きにしたら美味しいかしら?
一緒に行動している冒険者のダンクさんが内緒で教えてくれた情報によると、男性の滋養強壮に効果がある高級食材なんだって。
日本でも確かウナギはスタミナ食材で、有名なパイがある。
あれ、私は結構好きでお土産にいただくと嬉しかった。
ホーム内のお店は、人はいないけど買い物はできるから、今度百貨店に行って探してこようかな?
地下の食料品売り場に、各地の名産品が売っているコーナーがあった気がする。
「旭。迷宮ウナギは、ウォーターニードルを使用するんじゃなかったか?」
「はい、すみません。忘れてました」
「お前までバカになるなっ!」
あら? 旭が叱られてるわ。
攻撃を受けるのを忘れていたのが私だけじゃなくてよかった……
気絶している迷宮ウナギを兄が瞬殺して、私がアイテムボックスに収納する。
それから川沿いを歩いて、追加で迷宮ウナギを五匹狩った。
本日一回目の攻略を済ませ、安全地帯に行くと、ダンクさんとアマンダさんのパーティーがいた。
今日は、朝早く起きて地下一階から地下十四階まで半日以上かけて来たみたい。大変だなぁ。
私たちはマッピングの能力で魔物の位置を確認し、避けながら最短距離を走っているため、早ければ三時間もかからない。
マラソン選手も真っ青なスピードだ。これは多分HPが高いおかげ。
この世界のステータスにはHPとMPしか表示されないけど、前世のゲームによくあった、知力や器用さや体力や素早さなんかも、HPとMPが高くなるにつれて、上がるんだと思う。
ダンクさんとアマンダさんのパーティーに挨拶をしてから、隣にマジックテントを設置してホーム内の自宅で休憩する。
この世界の人にはホームのことを話していないので、こうして一旦マジックテントに入ってから、バレないように移動しているのだ。
休憩を終えてテントから出ると、安全地帯に担架で人が運ばれてきた。
以前、兄が緊急時の搬送方法について、ダンジョン内で講義した内容が周知されているみたいで嬉しい。
運ばれてきたのは知らない顔の冒険者だった。これまでの階層では会ったことがないので、地下十四階を攻略している人だろう。
地下十四階で初の治療だ。
怪我をしている人のパーティーリーダーから状況を聞き、旭が足の具合を確認して瞬時に治療した。
どうやらフォレストウサギに突進され、太股を角で刺されたらしい。
あんなに大きなウサギだけど、素早いみたい。
金貨十六枚を受け取り、怪我人からお礼を言われた旭が戻ってくる。
私たちがまだ見ていないこの階層の魔物はキングビーとクインビー。
この二匹の魔物は地下十三階に出現するキラービーとハニービーの上位種だ。
アマンダさんから、必ず集団戦闘になるので気をつけるようにと注意されている。
クインビーの蜜袋は超高級品で、換金額の内、銀貨四十枚は蜜袋の値段なんだそう。
ちなみに銀貨一枚は、日本円で一万円くらいの価値がある。
これは狩るしかないわ! ハニーには悪いけど。
一個は換金しないで食べてみたい。
安全地帯から出て、キングビーの集団をマッピングで探す。
いたいた、全部で八匹。
ドレインで昏倒させると、地面にボタボタ落ちてくる。
兄と旭が倒して魔石を取っている間、近くにいるクインビーを探した。
少し離れた場所にピンクと黒の縞模様を発見!
昏倒させると落下するので、眉間を槍で突き刺して倒した。
四十万円もする蜂蜜はどんな味がするのかな?
ハニートーストでシンプルに食べてみようかしら。
一通り地下十四階の魔物を狩ってみて問題ないことを確認した兄は、「地下十一階の果物採取に行く」と言って走り去った。
残された私と旭は、いつものように薬草採取と地下十四階の果物探しをする。
さて地下十四階の果物は何かな? ワクワクするなぁ。
旭は川がある森の右側に行ったので、私は左側を探す。
どうせ迷宮ウナギを狩るつもりなんだろう。
迷宮ウナギといえば、水中の魔物は冒険者に人気がないそうだ。
狩るのが難しく、労力がかかるからだとか。
ダンクさんから、迷宮ウナギを倒したら少し分けてほしいとお願いされている。
滋養をつけたいのかしら?
面と向かってそんなことは聞けないから、とりあえず了解しておいたけど……
お相手は多分ダンクさんと同じパーティーで、仲のいいリリーさんだよね~。まだ若いのに大変ねと思ってしまった。
どうせ一匹は換金しない予定でいるし、蒲焼きにしてぜひ食べてみたい!!
ウナギは日本でも高いから、なかなか食べられなかったのよ。
それが体長五メートルもあるんだから、美味しければ大当たりだよね。
旭に沢山狩ってもらおう。
肝も大きかったら、肝焼きが山ほど作れるし楽しみだ。兄たちのお酒のあてにも丁度いい。
マッピングで果物を探していると……
うん? あれかな?
トレントの森付近に、リンゴくらいの大きいキウイフルーツが生っている木があった。
なんか普通の三倍くらいあるし、見た目は俵型ではなく完全に球体だった。
大きいので食べ応えがありそう。
そして一本の木に、グリーンキウイとゴールデンキウイの両方がついている。
なんとも不思議な木だ。百個くらい生っているのを全て収穫しておく。
トレントの森付近にあるところがいやらしい。トレントに近付くと攻撃されるから、のんびり採取なんてできないようになっているんだ。
トレントは目に見えないウィンド系の魔法を使用する。
普通の冒険者であれば、トレントの攻撃で鎌鼬みたいに切り裂かれたりするんだろう。
私たちはMPが高いおかげで魔法耐性があるのか、攻撃を受けても、そよ風くらいにしか感じないんだけど。
目に見えない攻撃は非常に厄介なので、冒険者はあまりトレントを狩りたがらない。
換金額が高いのは、供給が需要に追いついてないからだろう。
次はランダムに生る果物探しだ。
森林になっている各階層には、毎日違う一本の木だけに生る果物があった。だから、きっと地下十四階にもあるはず。
私は癒し草とキウイフルーツを探しつつ、森をくまなく調べていった。
途中でキングビーの集団に襲われた。
蜜袋が欲しいので近くにいるクインビーも探して倒す。
でも、魔石を取るのは遠慮したい。
あとで旭にお願いしよう。なんか体液が出てくるんだよ……
ハニーがいないと魔力草が全然見つからない。癒し草は探せるんだけどなぁ。
明日からはハニーと一緒に攻略しようっと。
大分歩いたけど、まだランダムに生る果物が見つけられない。
もしかしてトレントの森の中にあるのかな? それは非常にハードルが高そうだ。
マッピングは三次元と二次元に視界を切り替えることができるから、一度立ち止まって、トレントの森を上空から俯瞰して見る。
すると森の中央にある一番大きな木に赤い実がついていた。
きっとこれだ! 拡大するとマンゴーだった。
黄色じゃなくて、お高いほうの赤い実だ。
やったね。マンゴープリン大好き!
さて発見したのはいいけど、どうやって採りに行こう。
周りは全てトレントだ。一人じゃ無理かな?
これは勝手に採りに行ったら怒られるやつだ。
兄はしばらく果物の採取から帰らないと思うので、旭に相談してみよう。
旭の位置を確認すると、楽しそうに迷宮ウナギを狩っている様子が見える。
マッピングはそこにある物や人の様子まで見ることができる優れものなのだ。
私は方角を確認しながら旭のもとに向かった。
森の中を歩いていると、知らない冒険者パーティーとすれ違う。
私が一人でいるのに驚いたのか二度見された。
パーティーの男性がこちらに来ようとしてメンバーの女性に止められていた。
心配して声をかけようとしてくれたのかな?
私たちは基本、単独行動が多いからパーティーで行動しないんですよね。
兄は地下十一階から地下十三階の果物を全て採取し終わるまで、地下十四階には戻ってこないだろう。
今日はスタートが遅れたし、レベル上げはできないと思う。
フォレストウサギを狩りながら、旭のいる場所に到着した。
旭は薬草採取が結構好きみたいで、時間があると魔力草ばかり採取している。
私には四つ葉のクローバー並の発見率なんだけど、兄と旭は一体どうやって探しているんだろう?
旭はダンジョンマスター時代に、魔物を十一年間倒し続けたから、狩るのはあまり楽しくないみたいだ。
例外は魔魚をサンダーボールで倒すことだけらしい。
「旭。新しい果物は見つかった?」
魔力草を持った旭に声をかける。
「沙良ちゃん、おかえり。こっち側にはないみたいだよ」
「私はトレントの森付近でキウイフルーツを見つけたよ。それと森の中央にある大きな木に赤いマンゴーが生ってる」
「えっ? それってトレントの森の真ん中にあるってこと?」
「うん。一人で採りに行ったら、お兄ちゃんに怒られそうだから止めて、相談しに戻ってきたの」
「それが正解だよ。ハニーのこと内緒にしてた件で怒られたばかりだし、大人しくしておいたほうがいいと思う」
「だよね~。でもマンゴーが、お高いほうのやつなんだよ! 黄色じゃないの! きっと甘くて美味しいから欲しいなぁ」
「一度、賢也と相談してみよう? 今日は当分帰ってこないと思うけど、そろそろ安全地帯に戻ろうか」
「わかった。今日の分は諦める」
旭に諭されて安全地帯に戻る。
ホームの自宅で昼食を食べよう。
兄にはお弁当を渡したから、どこかの階層の安全地帯でマジックテントを設置して食べるだろう。
果物採取で別行動するようになって、兄は旭からマジックテントを渡されていたから多分大丈夫。
今日は旭の好きなオムライスを作る。
それに作り置きしたポテトサラダとインスタントのコーンスープをつければ十分かな。
玉ねぎ、鶏肉、ピーマンを刻んで、お米とケチャップと炒めてチキンライスを作り、一旦お皿に上げる。
溶き卵をフライパンに入れて、ケチャップ味のチキンライスを包んだら完成。
仕上げに、旭の分だけケチャップで、卵の上に星型を描き、少しだけ手間をかけてみた。
ハートだともう少し簡単に描けるんだけど……
私の分は単なる波線だ。
「旭~、オムライスできたよ~」
リビングでお茶を飲んでいる旭に声をかける。
オムライスという言葉を聞いて、旭がダッシュで席に着く。
「あれ? 沙良ちゃん、今日は星のマークなんだ……」
「それ意外と難しいんだけど、結構上手く描けてるでしょ?」
「俺は簡単なハートでもよかったんだけど……っていうかむしろそっちのほうが……」
旭が何か言っていたけど、声が小さくて聞こえなかった。
「いただきます」
「いただきます!」
旭は好物が目の前にあるのに、少し元気がないみたいだったけど食べ出したら笑顔に変わった。
現金だなぁ。
オムライスを美味しそうに食べる旭を見て、私は日本にいたときの弟の双子たちを思い出した。
あの子たちも大好きだったなぁ。
お子様ランチのように、オムライスにミニハンバーグとエビフライをつけてあげると喜んでいたっけ。
あともう少しで兄と旭がレベル30になる。
私は既にレベル35だけど、地下三十階に行ったことは内緒だから、兄と旭にあわせて、レベル30になったことにするつもりだ。
レベルが30になると、召喚できる人数が二人増える。
どう考えても身内しか選択肢はないんだけど両親を思うと、これ以上兄妹を呼ぶわけにはいかないよね。
子供たちが次々と行方不明になったら、悲嘆に暮れると思う。
先に両親を呼ぶべきだろうか?
次に誰を召喚すればいいか悩んでいると旭が言った。
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