自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第851話 シュウゲン 34 美佐子の緑魔法(成長)&摩天楼ダンジョン30階の洞窟 石化された竜の卵

 休憩後、再び摩天楼まてんろうのダンジョン30階で採掘を続けたが、ヒヒイロカネは見付からんかった。
 かなでに、どの階層で発見したか聞いた方がいいかも知れんな。
 再びシルバーに服を引っ張られ安全地帯へ戻ってくると、儂だけ美佐子みさこの家に置いていかれる。
 沙良達のパーティーは、夕食をダンジョンで食べるそうだ。
 ダンジョン攻略中は、朝と昼をテント内で済ませているように見せかけているため、夕食くらい安全地帯で食べないと不審に思われるのだろう。
 妊娠してから皆がダンジョン攻略中の夜は一人で食べていた娘が、儂のために張り切り料理を作ってくれた。

 たいの塩焼き、海老えびフライ、豚の生姜しょうが焼き、法蓮草ほうれんそう胡麻和ごまあえ、茄子なすの煮びたし、豆腐とワカメの味噌汁。
 テーブルに並んだ料理の数々に目をみはり、ダンジョンで夕食を食べる沙良達に申し訳なく思った。
 冒険者の食事は質素だからの……。儂だけ、こんなに美味い物を食べてすまん。
 
「お父さんがいてくれて良かったわ。私だけだと、簡単に済ませちゃうから」

「それはいかん。子供のためにも、栄養のあるものを沢山食べんとな」

「そうね、これからは気をつけるから大丈夫よ」

 急に娘の家で世話になるのを心配しておったが、儂がいることで娘が食事に気を使うようになるなら一緒に住むのも悪くない。
 食事中、美佐子が孫達の就いた職業を教えてくれた。
 賢也けんやは外科医、沙良は経理事務、あかねは刑事、双子の雅人まさと遥斗はるとはシステムエンジニアだそうだ。
 見事にバラバラだが、賢也が外科医なのは頼もしい。
 異世界で出産するのは何があるか分からん。光魔法も使用出来るなら、最悪の事態は起こらんじゃろう。
 そう思いうなずいていると、子供を取り上げるのは尚人なおと君にお願いすると言うではないか!
 
「賢也に見られるのが恥ずかしいのであれば、小夜さよに頼んだ方が良い」

 この世界で出産を経験している妻の方が役に立ちそうだ。

「あら、尚人君も外科医なのよ。心臓が悪かった妹のしずくちゃんのために、賢也と医者になったの」

「なんとっ! そうであったのか、曾孫ひまごも優秀なのだな」

 儂が感心する様子を、美佐子がふふっと笑いながら見ておる。
 まぁ、それならば尚人君で問題なかろう。
 楽しい夕食を過ごしたあとで風呂に入り、娘の前では遠慮していた生ビールを一杯飲んで就寝した。

 翌日、火曜日。
 朝食後、畑仕事をすると言う美佐子が心配で儂も一緒に付いていった。
 まだお腹は大きくなっておらんが、重い物を持ったりして何かあれば取り返しがつかん。
 肉体労働は儂の得意じゃ、任せよ!
 「それじゃあ、くわで畑を耕してね」と笑顔の娘から鍬を渡される。
 趣味で畑をしていると思っておったが、100坪もある広さを見て驚いた。
 沙良から召喚されて授かった能力が緑魔法だったのは、これが理由か?

 儂が指定された場所を耕している間、美佐子は水魔法を使用して水をいていた。
 そして、畑に植えられた野菜の苗に緑魔法の成長を掛ける。
 何の苗かは分からんが、それが見る見る内に育ち収穫可能になる様子をの当たりにして、唖然あぜんとなった。
 艶々つやつやとしたトマトやナスやキュウリが生っておる。
 しかも時期外れに……。

「美佐子、その成長魔法のLvはいくつなんじゃ?」

「今はLv10よ。これ以上、上がらないのかしら?」

 不思議そうな顔で聞かれても、直ぐには答えられんかった。
 娘の魔法を利用すれば、食料問題が解決出来そうだ。
 知られれば、どの国も欲しがる人材となろう。
 ホーム内で使用するのは構わんが、異世界ではその魔法を禁止せねばなるまい。
 冒険者として復帰するのはまだ先だろうから、そこまで気にする必要はないか?
 やれやれ、家族の能力が特殊過ぎてひびき君が頭を痛めておりそうじゃな。

「魔法Lvは、基本Lvが50を超えると20まで上げられるようになる」

「それなら、沙良にLv上げを頼んでみようかしら?」

 いやいや、妊婦が何を言っておる。
 ダンジョンへ魔物を倒しに行くのは承知せんぞ!

「危険な真似はするな。出産するまで、大人しくしておれ」

「大丈夫よ、ドレインで昏倒させれば簡単に倒せるから」

 ドレインが、どんな魔法か知らんが駄目だ。
 儂が腕を組み首を横に振ると、苦笑した美佐子が肩をすくめて見せる。

「お父さんは心配性ね。一度、沙良がするLv上げを見てから判断してちょうだい」
  
「……分かった」

 あまり反対しては強硬になるかも知れん。ここは一旦いったん譲り、了解しておこう。
 かなり量がある収穫を2人で済ませ、自宅に戻った。

 お昼を食べに沙良達が戻ってくると、美佐子は今日採れた野菜を沙良と結花さんに渡しておる。
 2人はアイテムBOXの能力があるから、沢山あっても保管に困らんのだな。
 お昼はミートパスタ・コーンスープ・トマトサラダで、ミートパスタの上には焼きナスがある。
 トマトは記憶にあるより甘く、青臭くないので食べやすかった。

 食後は摩天楼のダンジョン地下30階で採掘作業だ。
 奏にヒヒイロカネの発見場所を聞いたら宝箱だった。
 あれは完全に運だから、儂が当てるのは難しいな。
 採掘の様子が見たいと言う沙良と奏が洞窟まで付いてくる。
 シルバーの首に下げてあるのは、昨日沙良が作ったポシェットかの?
 非常に珍しい、兎のような耳をした太ったねずみの魔物の絵が刺繍されておる。
 色んなダンジョンを攻略した儂でも、見た事がない不気味な魔物だ。
 この刺繍をした沙良の趣味は、正直良く理解出来ん。 
 昨日は洞窟内で待機していたシルバーが、積極的に魔物を狩っていく。
 こりゃ楽でいいな! 沙良のために、周囲の安全を確保しているんだろう。
 500m程進んだ場所で立ち止まる。

「この辺で探そうかの」

 そう言って、勘が示す先にツルハシを振り下ろした。
 キーンと甲高い音が洞窟内に響き渡る。

「おっ、これは当たりじゃな!」

 手応えを感じた儂は、次にハンマーで周囲の壁を崩していった。
 すると緑色の鉱物がポロリと落ちる。
 孫が見ている手前、失敗するわけにもいかんので、ちゃんと発見出来た事に胸を撫で降ろす。

「シュウゲンさん。どうやって鉱物のある場所を見付けるんですか?」

「あぁ、それはじゃな!」

 沙良に質問されて採掘方法を答えたが、

「勘って……」

 儂の返事は期待していたものではなかったらしく、興味を失ったように奏の方へ行ってしまった。
 いや、それ以外に答えようがないんじゃよ。
 儂は、なんとなく鉱物がある場所が分かるのだからな。
 奏の採掘方法が気になり視線を向けると、音を聞きながら壁をピックで慎重に叩いておった。
 ふむ、地味な作業で効率が悪そうだ。
 沙良は奏と言葉を交わした後、少し考え込んだ様子で壁を凝視している。
 儂のように勘を働かせておるのかの?
 
 3時間経過後。沙良が、発見した3つの鉱物を鑑定してほしいと持ってきた。
 はて? 採掘道具もないのに、どうやって見つけたのだ?
 
「3つ共、武器の材料にはならんが、宝石として高く売れるぞ」

「ちょっと待て、沙良ちゃんは何もしてなかっただろう? この鉱物は、どこから出したんだ?」

 儂と同じ疑問を奏が尋ねる。

「マッピングで壁を透視して見つけました。そのままアイテムBOXに入れたので、道具は必要ないんですよ」

「そりゃ、採掘じゃないね」

 奏は苦笑していたが、儂はその能力の高さを知り驚愕きょうがくした。
 壁の中を透視出来るだとっ!? マッピングは移転するだけじゃなかったのか!
 そして手も触れず、アイテムBOXに収納可能とは……。
 う~む。アシュカナ帝国の王は沙良の利用価値を知り、狙っておるのではないかと勘繰ってしまう。
 もしや、それでガーグ老達が厳重な警護態勢を敷いているのかも知れんな。
 休憩後、再び洞窟内で採掘作業を始めると、沙良が大きな卵を持ってきた。
 これは……鑑定するまでもなく竜の卵だと確信する。

「こりゃ、竜の卵が石化された物じゃな。儂も初めて見る」

 何故なぜ、これ程までに胸が痛むのか……。
 儂には関係のない竜の卵が気になって仕方ない。
 じっと見ていると、何かの記憶が揺さぶられる感じがする。

「両親に魔力をもらえなかったのか……」

 そうぽつりと呟く奏の言葉で、我に返った。
 どうしてか、奏は愛おしそうに石化された竜の卵に触れておる。
 その様子を見て、大事な者を失ったかのような感情を覚えた。
 儂と小夜の子供達は、皆健在であるというのに……。

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