自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第859話 シュウゲン 42 ダンジョンマスターの正体

 30分後、沙良達がテント内に帰ってきた。
 
「沙良ちゃん。突然消えたら心配するだろう! 何処どこへ行ってきたんだ?」

 沙良を見るなり、かなでが声を上げる。

「ごめんなさい。ちょっと、ダンジョンマスターに話しをつけに行ったの。でも、そこで予想外の人物と再会したんだよね~。誰だったかは、全員がそろってから話すよ!」

 にこにこと笑顔で返事をする沙良は、余程その相手と再会したのが嬉しいらしい。
 言い終わった瞬間、儂だけホーム内に移転させられていた。
 そして10分後、響君達と一緒に迷宮都市のダンジョンを攻略していたメンバーを連れてくる。
 
「あっ、シュウゲンさん。驚かないで下さいね! 摩天楼まてんろうのダンジョンマスターは、妹のあかねでした!」

 いや、驚くじゃろう!! ダンジョンマスターは、儂の孫だったのか!?
 茜は、儂が亡くなったあとに生まれた孫だ。
 美佐子みさこに写真を見せられたが、ひびき君似の女の子・・・だったな……。

「そうか! して、茜はどこにおるのじゃ?」

「実家に連れてきたから、今直ぐ会えますよ~」

 ダンジョンから行方を暗ましていた間に、ホームへ連れてきたようだ。
 全員で美佐子の家に入ると、2人がお茶を飲みながら談笑していた。
 うむ。写真は髪が短かったが、今は伸ばしているのかポニーテールに結んでいる姿を見れば女性だと分かる。
 彼女が孫の茜だろう。
 大人数の来客に、茜が目を白黒させておる。

「お父さん! 娘の茜よ!」

 儂の姿を見て、美佐子が孫を紹介してくれた。
 儂が異世界に転生している事を事前に話していたのか、茜は席から立ち上がり挨拶してきた。

「初めまして、孫の茜です」

 そう言って一礼すると、握手を求められる。

「儂の名はシュウゲンだ。孫に会えて嬉しい」

 その手を取った途端とたん、引き寄せられ耳打ちされた。

「あとで是非ぜひ、手合わせを……」

 成程……、確かに儂の血を受け継いでおるな。
 
「了解した」

 祖父として、受けないわけにはいくまい。これは楽しみじゃ。
 それから茜は、異世界で別人になっている奏、結花ゆかさん、しずくちゃんの姿を確かめて若くなっている事を知り、うらやましそうにしている。
 ただ、

「娘と母親が同じ年だとややこしいな」
 
 その関係性の変化の感想を述べた。
 最後に初対面のセイと名乗りを交わす。
 その際、目付きが鋭くなったのは、セイの強さを感じ取ったからだろう。
 皆との遣り取りを終えたあと、

「沙良姉さんが生きていて嬉しい。どんな姿でも構わない、ずっと会いたかったんだ……」

 日本で亡くなった沙良を抱き締め涙をこぼす。

「ダンジョンマスターなんて大変だったわね。今日は茜の食べたい物を作るから、楽しみにしてて」

「あぁ、食事をするのも久し振りだから胃が驚かないか心配だ」

 沙良の体を離すと今度は賢也に向き直り、言葉を掛ける。

「兄貴、行方不明になって心配してた。自分が異世界へ転移したから、もしかしたらと思っていたが、姉さんに召喚されてるとは思わなかったよ。しかも皆、若返ってるし……。もしかして私が一番年上になったんじゃないか?」

「茜は今54歳だろ? 両親は42歳になってるから、見た目じゃ一番老けてるかも知れん」

 賢也は笑いながら茜の体を抱き締めた。
 儂を除けば、見た目からすると茜が一番年上に見えるのは難点じゃな。
 
「独りでよく頑張ったな」

 賢也に背中をでられ、少し恥ずかしそうな様子を見せる。
 これから夕食の支度したくをする沙良と美佐子が席を外し、儂達はこれまでの経緯を語り始めた。
 ある程度、美佐子が事情を話しておるだろうが、茜は皆の話に真剣に耳を傾けている。
 特に、自分と同じダンジョンマスターだった尚人なおと君に興味があるのか、突っ込んだ話を聞く。
 ダンジョンに召喚した魔物の話題になると、

「俺は、メタルスライム、ハイオーガ、オリハルコンゴーレムだよ!」

 尚人君が得意げに答える。
 メタルスライムとは、聞いた事がない魔物だな。
 オリハルコンゴーレムは、ダンジョンの深層近くに出現するが……。
 確か、尚人君がいたダンジョンは地下10階までしかなかったはずじゃ。
 大型ダンジョンでもない浅い階層で、オリハルコンゴーレムが現れたら冒険者は不思議がるだろう。
 冒険者ギルドマスターは、もうかってウハウハかもしれんがの。
 ダンジョンマスターだった尚人君がいない現在、そのダンジョンに召喚した魔物は出現するんじゃろうか?

 他にも、異世界の文明の程度や貨幣価値等を聞いておった。
 沙良が公爵令嬢である事や、奏が伯爵で結花さんがその娘だと知った時は目を見開き驚く。
 儂も、家族に貴族出身の者が3人いるとは思わんかった。 
 名ばかりのドワーフ王とは違い、貴族は完全に世襲制だしの。 
 儂の種族がドワーフで鍛冶が出来ると話してやると、目を輝かせて身を乗り出し「剣を鍛えてほしい」と言う。
 ドワーフの鍛冶魔法じゃ鍛える作業は不要だが、勿論もちろん作ってやろう。
 セイの次くらいには強そうな感じだしな。
 そうなると、宝箱にヒヒイロカネが入っておらんかったのが悔やまれる。
 茜がダンジョンマスターだったなら、宝箱の中身は操作出来なかったのかも知れん。
 本人が入れたなら、踊り子の衣装や鬼のパンツは選ぶまい。
 
 夕食には、だし巻き卵、焼き鮭、唐揚げ、エビフライに味噌汁とご飯が並ぶ。
 おかずばかりで野菜が足りないようだが、味噌汁には里芋と大根とネギが入っていた。
 茜は久し振りの和食に感動しながら、ご飯をお代わりする。
 結花さんの料理を食べずに済んだ、いつき君、尚人君、雫ちゃんも嬉しそうだな。
 おおっ、エブフライがぷりぷりで旨いのう。2本しかないのか……。
 
「茜は、何年くらいダンジョンマスターをしていたの?」
 
 食事中、沙良が茜に質問する。

「カレンダーがある訳じゃないからおおよそになるが、13年くらい前だと思う」

「13年!?」

 これには、皆が驚きの声を上げた。
 茜が日本で亡くなった話は聞いていない。
 美佐子が沙良に召喚されて3ヶ月くらいなのに、茜が異世界で13年もいるのは時間軸が違うからか?
 儂も、小夜と同じ時期に異世界に転生していない事を考えれば納得だが……。

「まぁ、摩天楼のダンジョンは階層が多いから、攻略のし甲斐がいがあって楽しかったよ」

 ダンジョンマスターとして召喚されても、茜はダンジョンの攻略を楽しんでいたようだ。

「儂の孫の中で一番Lvが高そうじゃが、幾つになっておる」

 それならと、気になっていたLvを尋ねてみた。

「200だな。それ以上は、このダンジョンの魔物では上がらないみたいだ」

「200……って」

 聞いた皆が絶句し、口をぽかんと開けておる。
 高Lvだと思ってはいたが、そこまでとは……。

「儂より高いとは感心するわい。こりゃ負けておれんな、明日から本格的にダンジョン攻略をしようかの」

 儂は孫に対抗意識を燃やし、Lv上げを決意した。
 奏は姪に負け落ち込んでいるようだが、同じ摩天楼のダンジョンを攻略すれば追い付くじゃろう。
 唯一、雫ちゃんだけは茜を尊敬の眼差しで見つめている。
 親である美佐子と響君、兄の賢也は、さもありなんとばかりに苦笑しておった。

 その後、沙良が賢也と尚人君の結婚を発表した。
 安心せい、それは偽装じゃ。
 儂は初めて聞かされた時、かなり驚いたがな!
 孫と曾孫、しかも同性が結婚するなどありえんわ!!
 しかし話を聞くと、茜は突然笑い出し机をバンバンと叩き始めた。
 更にはニヤリと笑みを浮かべ、

「旭、良かったじゃないか初恋・・が実って!」

 2人を祝福するかのような言葉を述べる。
 むむっ、それはどういう意味じゃ? 場合によっては看過かんか出来んぞ!

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