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<外伝> 椎名 賢也
椎名 賢也 73 迷宮都市 地下10階 初めての治療
月曜日。冒険者ギルドで地下10階の地図 (金貨1枚)を購入し、ダンジョンへ向かった。
地下10階の安全地帯まで駆け抜けマジックテントを設置後、常設依頼を確認する。
【ダンジョン地下10階 常設依頼 C級】
アウラウネ1匹 銀貨10枚(魔石)
アラクネ1匹 銀貨10枚(魔石)
ワイルドウルフ1匹 銀貨50枚(魔石・本体必要)
シルバーウルフ1匹 金貨5枚(魔石・本体必要)
ナイトメア(男性体)1体 金貨5枚(魔石)
この階層から、迷宮都市特有の魔物が出現する。
RPGのゲームをした経験から、魔物の名前を見れば大体どんな姿をしているか想像出来るが、ナイトメアだけは今一分からなかった。
ゴースト系にも、浄化魔法のホーリーは効くだろうか?
最初に沙良が索敵したアウラウネは、体長2mある上半身が女性姿の植物の魔物で、沙良が瞬殺した。
次のアラクネは、体長2mある上半身が女性姿の蜘蛛の魔物だ。
植物系のアウラウネより、肉感的なアラクネに旭が頬を染めてウブな反応を見せる。
魔物だから、当然下着は着けていないが……。いくらなんでも、照れてる場合じゃない。
これくらい日本にいた頃、見慣れているだろうに……。
あぁ、こいつはダンジョンマスターだった時が長いからか。
俺はDVDで……、なんて考えている間に沙良がサクッと倒した。
ワイルドウルフは名前の通り、体長2mある狼の姿で俺がライトボールを撃つ。
シルバーウルフは、この階層で換金額が一番高い。
銀色の美しい毛並みを持つ体長3mの魔物を、旭が率先して倒す。
多分この毛皮を無傷で提出すれば、常設依頼の換金額より高く買い取ってもらえるだろう。
最後に会敵したナイトメアは、実体がなく向こう側が透けて見える。
剣で切り付けても貫通しそうだと思い、冒険者達がどうやって倒すのか気になった。
俺が迷わずホーリーを掛けると、アンデッドを倒した時のように魔石だけが地面に落ちる。
これなら問題なさそうだ。
新しい魔物を全て倒して、危険がないと判断した俺は少しだけ肩の力を抜き、沙良のあとに続く。
魔石取りが必要な魔物は俺と旭が対処した。
3時間後。休憩しようと安全地帯に戻る途中で、遂に怪我人を発見した。
近くにシルバーウルフが倒れているから、この魔物にやられたんだろう。
腕に大きな損傷を負った女性が、唇を噛み締め蹲っている。
旭が駆け寄り、助けはいるか確認するも、女性は首を横に振った。
見た感じではエクスポーションじゃ治らないと思うが……。
同じ事を考えたのか、沙良が心配そうにオロオロしている。
ここは俺の出番だな。
怪我をした女性に、
「エリクサー相当の治療が出来るぞ」
声を掛けると、苦しそうに頷いた。
治療の了解をもらい、旭の背中を押してやる。
治癒術師として初の治療だ。沙良の見ている前で失敗するなよ?
旭は真剣な表情で女性の口に棒を噛ませてから、肩を縛り止血し傷口をウォーターボールで洗い流したあとヒールを掛けた。
治療の手順は俺と同じだな。何もせず、いきなりヒールを掛けるのは外科医として許容できない。
ヒールという魔法が、どんな理屈で傷を修復しているのか俺は未だに理解不能だった。
ならば、傷が治る過程をイメージし易いよう処置した方がいい。
魔法を掛ける前に、アレコレされた女性冒険者は戸惑っていたようだが、旭にお礼を言うと一瞬だけ沙良へ視線を向けた。
あぁ、例のお礼をするために旭と沙良が恋人じゃないか気になるんだろう。
意図に気付いた俺と沙良は無言で関係を否定し、旭の対応を見守る事にする。
「治療のお礼がしたいから、安全地帯のテントまで一緒に来てほしい」
治療した女性にそう言われた俺達は、素直に後を付いて行く。
旭だけが、彼女に手を引かれテント内へ連れていかれた。
これから何が起こるか分かっている俺達は、顔を見合わせ苦笑する。
ただ、女性がテントに入る前、何度も沙良の顔色を窺い引き留めてほしそうにしていたのが気になった。
同じパーティーメンバーの男性冒険者達は、彼女が旭とテント内に入った瞬間、天を仰ぐ仕草をしていたし……。
あの特殊なお礼を、快くしたいと思う女性はいないだろうから当然だが……。
どこか、それとは別の意味があったんじゃないかと思った。
数分後、顔を真っ赤にしてプリプリ怒った旭がテントから出てくる。
ついに旭が洗礼を受けた。次は男性冒険者の治療を経験してみるんだな。
お礼を断られた女性は慌てて追いかけてきたが、その表情はどこかほっとしているように感じる。
沙良が不安そうな女性に対して声を掛けた。
「彼にサービスは不要です。お金は受け取りますが治療に感謝して頂けるなら、その気持ち分だけ路上生活の子供達にパンや串焼きをあげて下さい」
言われた内容に目をぱちくりさせながら、女性は胸に拳を当て「必ず支援する!」と約束した。
少しばかり大袈裟な気もするが、余程お礼を回避出来たのが嬉しかったんだろう。
そう納得して、俺達もテントに入りホームへ戻った。
「ちょっと、2人共! さっきのアレは何!? 彼女が突然服を脱ぎ出して、俺は迫られたんだけど!」
部屋に着くなり、開口一番で旭が大声を上げる。
「あぁ、言うのを忘れていた。ダンジョンで治療した場合、特別なサービスをされる事があるんだ。治癒術師の使用する魔力は消費量が多いからな。別に断れば問題ないだろ?」
俺はしれっと、彼の疑問に答えてやった。
「そういう事は事前に教えてよ!! はぁ~、ビックリした~」
相当驚いたのか、旭は玄関でしゃがみ込んでしまう。
悪いな、何でも経験しておくべきだ。
内緒にしていた事を黙ったまま、沙良が旭の肩をポンポンと軽く叩き宥めている。
俺が手を差し出すと、旭は恨めし気な顔でその手を掴み、起き上がった。
「それにしても、ダンジョンでの治療行為は高く付き過ぎるね。そこまでしないと駄目なの?」
「治癒術師だって、同じパーティーメンバーが怪我をした時に魔力がないと困るだろう。優先順位を考えれば、メンバー以外の冒険者を治療するのはリスクが高い。俺達は魔力が多いから困らないが、普通の冒険者は大抵基礎値が冒険者登録をした年齢だからな。そう考えれば、ダンジョンで治療する行為に付加価値を付けるしかないんだろう」
俺が理由を説明すると、旭はう~んと考え込み首を横に振る。
「なんか、その考え方はやだなぁ~。もっと自分の体を大切にしてほしい」
「それには俺も同意見だ」
だが実際、俺達にヒールの能力がなく命の危険に晒された場合は、倫理観がどうこう言えないだろうがな。助けてもらえるなら、俺は妹を守るためその条件を呑むだろう。勿論、他にも提案をしたあとで……金で解決出来るなら幾らでも払う。
休憩後テントから出ると、先程の女性がパーティーメンバーを連れて治療代を払いに来た。
今回はエリクサー(金貨1枚)相当の治療をしたので、地下10階のダンジョン価格は金貨12枚。
沙良が受け取り、マジックバッグに入れる。
「治療してくれてありがとう。私はアマンダだ。このパーティーのリーダーをしている」
名前に聞き覚えがあるな。確かパーティーを募集していたんじゃないか?
男性冒険者が4人いるのに、女性がリーダーのパーティーは珍しい。
「私はサラです。3人パーティーとなります」
名乗りを受けた沙良が自己紹介すると、3人パーティーと聞いたアマンダさんは軽く目を瞠る。
「3人でダンジョン攻略とは恐れいったね。あんた達、武器を持っていないようだけど全員魔法使いなのかい?」
「はい、特に問題ありませんので」
「まあ優秀な治癒術師がいれば、大丈夫なんだろう。うちも前までいたんだが結婚して旦那と王都にいっちまってさ、治癒術師を募集中なんだよ。地下18階の攻略を止めて、今は追加メンバーが入るまでここを拠点にしてるんだ。顔が利くから、何かあったら相談しにきな」
「はい、よろしくお願いします」
年上の女性に対し、にこやかに挨拶する沙良を見て、俺は真似出来そうにないと感想を抱きながら、リーダーは沙良に任せようと決めた。
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お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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地下10階の安全地帯まで駆け抜けマジックテントを設置後、常設依頼を確認する。
【ダンジョン地下10階 常設依頼 C級】
アウラウネ1匹 銀貨10枚(魔石)
アラクネ1匹 銀貨10枚(魔石)
ワイルドウルフ1匹 銀貨50枚(魔石・本体必要)
シルバーウルフ1匹 金貨5枚(魔石・本体必要)
ナイトメア(男性体)1体 金貨5枚(魔石)
この階層から、迷宮都市特有の魔物が出現する。
RPGのゲームをした経験から、魔物の名前を見れば大体どんな姿をしているか想像出来るが、ナイトメアだけは今一分からなかった。
ゴースト系にも、浄化魔法のホーリーは効くだろうか?
最初に沙良が索敵したアウラウネは、体長2mある上半身が女性姿の植物の魔物で、沙良が瞬殺した。
次のアラクネは、体長2mある上半身が女性姿の蜘蛛の魔物だ。
植物系のアウラウネより、肉感的なアラクネに旭が頬を染めてウブな反応を見せる。
魔物だから、当然下着は着けていないが……。いくらなんでも、照れてる場合じゃない。
これくらい日本にいた頃、見慣れているだろうに……。
あぁ、こいつはダンジョンマスターだった時が長いからか。
俺はDVDで……、なんて考えている間に沙良がサクッと倒した。
ワイルドウルフは名前の通り、体長2mある狼の姿で俺がライトボールを撃つ。
シルバーウルフは、この階層で換金額が一番高い。
銀色の美しい毛並みを持つ体長3mの魔物を、旭が率先して倒す。
多分この毛皮を無傷で提出すれば、常設依頼の換金額より高く買い取ってもらえるだろう。
最後に会敵したナイトメアは、実体がなく向こう側が透けて見える。
剣で切り付けても貫通しそうだと思い、冒険者達がどうやって倒すのか気になった。
俺が迷わずホーリーを掛けると、アンデッドを倒した時のように魔石だけが地面に落ちる。
これなら問題なさそうだ。
新しい魔物を全て倒して、危険がないと判断した俺は少しだけ肩の力を抜き、沙良のあとに続く。
魔石取りが必要な魔物は俺と旭が対処した。
3時間後。休憩しようと安全地帯に戻る途中で、遂に怪我人を発見した。
近くにシルバーウルフが倒れているから、この魔物にやられたんだろう。
腕に大きな損傷を負った女性が、唇を噛み締め蹲っている。
旭が駆け寄り、助けはいるか確認するも、女性は首を横に振った。
見た感じではエクスポーションじゃ治らないと思うが……。
同じ事を考えたのか、沙良が心配そうにオロオロしている。
ここは俺の出番だな。
怪我をした女性に、
「エリクサー相当の治療が出来るぞ」
声を掛けると、苦しそうに頷いた。
治療の了解をもらい、旭の背中を押してやる。
治癒術師として初の治療だ。沙良の見ている前で失敗するなよ?
旭は真剣な表情で女性の口に棒を噛ませてから、肩を縛り止血し傷口をウォーターボールで洗い流したあとヒールを掛けた。
治療の手順は俺と同じだな。何もせず、いきなりヒールを掛けるのは外科医として許容できない。
ヒールという魔法が、どんな理屈で傷を修復しているのか俺は未だに理解不能だった。
ならば、傷が治る過程をイメージし易いよう処置した方がいい。
魔法を掛ける前に、アレコレされた女性冒険者は戸惑っていたようだが、旭にお礼を言うと一瞬だけ沙良へ視線を向けた。
あぁ、例のお礼をするために旭と沙良が恋人じゃないか気になるんだろう。
意図に気付いた俺と沙良は無言で関係を否定し、旭の対応を見守る事にする。
「治療のお礼がしたいから、安全地帯のテントまで一緒に来てほしい」
治療した女性にそう言われた俺達は、素直に後を付いて行く。
旭だけが、彼女に手を引かれテント内へ連れていかれた。
これから何が起こるか分かっている俺達は、顔を見合わせ苦笑する。
ただ、女性がテントに入る前、何度も沙良の顔色を窺い引き留めてほしそうにしていたのが気になった。
同じパーティーメンバーの男性冒険者達は、彼女が旭とテント内に入った瞬間、天を仰ぐ仕草をしていたし……。
あの特殊なお礼を、快くしたいと思う女性はいないだろうから当然だが……。
どこか、それとは別の意味があったんじゃないかと思った。
数分後、顔を真っ赤にしてプリプリ怒った旭がテントから出てくる。
ついに旭が洗礼を受けた。次は男性冒険者の治療を経験してみるんだな。
お礼を断られた女性は慌てて追いかけてきたが、その表情はどこかほっとしているように感じる。
沙良が不安そうな女性に対して声を掛けた。
「彼にサービスは不要です。お金は受け取りますが治療に感謝して頂けるなら、その気持ち分だけ路上生活の子供達にパンや串焼きをあげて下さい」
言われた内容に目をぱちくりさせながら、女性は胸に拳を当て「必ず支援する!」と約束した。
少しばかり大袈裟な気もするが、余程お礼を回避出来たのが嬉しかったんだろう。
そう納得して、俺達もテントに入りホームへ戻った。
「ちょっと、2人共! さっきのアレは何!? 彼女が突然服を脱ぎ出して、俺は迫られたんだけど!」
部屋に着くなり、開口一番で旭が大声を上げる。
「あぁ、言うのを忘れていた。ダンジョンで治療した場合、特別なサービスをされる事があるんだ。治癒術師の使用する魔力は消費量が多いからな。別に断れば問題ないだろ?」
俺はしれっと、彼の疑問に答えてやった。
「そういう事は事前に教えてよ!! はぁ~、ビックリした~」
相当驚いたのか、旭は玄関でしゃがみ込んでしまう。
悪いな、何でも経験しておくべきだ。
内緒にしていた事を黙ったまま、沙良が旭の肩をポンポンと軽く叩き宥めている。
俺が手を差し出すと、旭は恨めし気な顔でその手を掴み、起き上がった。
「それにしても、ダンジョンでの治療行為は高く付き過ぎるね。そこまでしないと駄目なの?」
「治癒術師だって、同じパーティーメンバーが怪我をした時に魔力がないと困るだろう。優先順位を考えれば、メンバー以外の冒険者を治療するのはリスクが高い。俺達は魔力が多いから困らないが、普通の冒険者は大抵基礎値が冒険者登録をした年齢だからな。そう考えれば、ダンジョンで治療する行為に付加価値を付けるしかないんだろう」
俺が理由を説明すると、旭はう~んと考え込み首を横に振る。
「なんか、その考え方はやだなぁ~。もっと自分の体を大切にしてほしい」
「それには俺も同意見だ」
だが実際、俺達にヒールの能力がなく命の危険に晒された場合は、倫理観がどうこう言えないだろうがな。助けてもらえるなら、俺は妹を守るためその条件を呑むだろう。勿論、他にも提案をしたあとで……金で解決出来るなら幾らでも払う。
休憩後テントから出ると、先程の女性がパーティーメンバーを連れて治療代を払いに来た。
今回はエリクサー(金貨1枚)相当の治療をしたので、地下10階のダンジョン価格は金貨12枚。
沙良が受け取り、マジックバッグに入れる。
「治療してくれてありがとう。私はアマンダだ。このパーティーのリーダーをしている」
名前に聞き覚えがあるな。確かパーティーを募集していたんじゃないか?
男性冒険者が4人いるのに、女性がリーダーのパーティーは珍しい。
「私はサラです。3人パーティーとなります」
名乗りを受けた沙良が自己紹介すると、3人パーティーと聞いたアマンダさんは軽く目を瞠る。
「3人でダンジョン攻略とは恐れいったね。あんた達、武器を持っていないようだけど全員魔法使いなのかい?」
「はい、特に問題ありませんので」
「まあ優秀な治癒術師がいれば、大丈夫なんだろう。うちも前までいたんだが結婚して旦那と王都にいっちまってさ、治癒術師を募集中なんだよ。地下18階の攻略を止めて、今は追加メンバーが入るまでここを拠点にしてるんだ。顔が利くから、何かあったら相談しにきな」
「はい、よろしくお願いします」
年上の女性に対し、にこやかに挨拶する沙良を見て、俺は真似出来そうにないと感想を抱きながら、リーダーは沙良に任せようと決めた。
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇