異世界おねむり代行!

石釜真岸

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眠の章

いざ往かん!王都へ!

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一念発起から既に8年と半年の時間が経過し…スキルもパワーアップしたぜ! 
…まあ、そこは追々話すとしよう。
んで、リィカの方は半年前に王都に着き、冒険者として上手くやっているらしい。
と、言うのはあくまでリィカの親御さんへ冒険者になり少し経って送られた最後の手紙の話であり、幼馴染みである俺としてはちと心配なところなんだよな…

「まあそれは会えば分かることニャ。気負う必要は無いかニャ」

そう、俺もこのスキルで稼ぐために王都【ミスカル】へと向かうことにしたのだ。
因みに出発は明日で今は荷造りしているところ。
とは言っても、そんな大荷物ではないけどね。

ここからミスカルまでは普通の馬車で3日はかかる…が、そこは魔法とスキルの世界。御者持つスキルで1日半で着くらしい。そういうの良いよね。
荷物をリストアップし、チェックも入れ…よし!準備は万端ばんたんだ!


次の日
出発は早朝のため、いつもよりも早く起き、荷物を持って外へ出る。
すると…

「スロウ!」

村長から声をかけられた。
いや、村長だけではない。
村の皆が、そこにはいた。 

「こんなに早いのに良いのかニャ?」
「なぁに。せっかくの門出だ、このくらいはやらないとな!」

み、みんなぁ……
ちくしょー!泣くまいってって決めてたのに涙腺にクリティカルヒットしちまったじゃねぇか!

「にゃあ!じゃあ、行ってくるニャ!皆!達者でニャ~!」

・・・

王都まで1日半で着く、と言うのは何事も起きなかった場合の話であり…途中、モンスターが出てくる可能性もある。そんな時、客と御者ではどうにも対処できないので用心棒を雇うことが多いそうだ。

「まあだが、俺はこいつとは長い付き合いだからな。雇い主と用心棒って関係じゃないからサービスしてるってワケだ」

と俺に話しているのは用心棒をやっているサルダートさん。
彼のようなタイプは多くないようで…

「御者のこちらとしても嬉しい限りですよ」

とのこと。あ、因みに御者の彼はカバリルさんです。

・・・

村から出て半日が過ぎようとしていた。
夜はモンスターが活発に動く時間帯だ
特に村を襲うゴブリンなんかが…

「ッ!ゴブリンが出ました!」
「お!?了解!」
「ニャンと!?」

小規模ではあるがゴブリンの群れが襲いかかってきた。
その数は僅か10。人間の腰程の身長に、ドブのような体色。そして…血の臭い。
知能は低くはないため狡猾であの手この手で村を襲う、文句無しでラノベとか漫画のゴブリンである。
いや、こいつらゴブリンだったわ。

「ハァ!」

サルダートさんは槍を使いゴブリンを凪ぎ払う。が、ゲームの様に上手く当たることはなくそれをゴブリンは避ける。
…その一瞬、文字通り『瞬き一回』程の(しくはそれ以下の)スピードでゴブリンを串刺しにする。引き抜く時間も惜しいのか、続けて2体目のゴブリンも突く。しかし流石に刺さりきらず腹部に軽い傷をつけた程度だった。

「ちぃッ!無理があったか!」

サルダートさんが愚痴りながら槍を引き抜き、もう一度構え直す。
残りは9体…と思いきや何故かそこにゴブリンは4体しかいなかった。残りは一体どこに…?
その時茂みから音が聞こえた!
多分これは俺が猫獣人だから聞こえたのだろう。
まぁ、どちらにせよそこに居ることは分かったのだ。
対応など簡単だ。

「サルダートさん、俺の後ろの茂みにゴブリ…」

言い切る前に茂みからゴブリン達が襲いかかる!

このゴブリン達は知っていたようだ馬車に乗っている者の中で最も弱いのは客であると…
だが

「相手が悪かったニャア!」

そのまま回し蹴りでブッ飛ばす。
こう見えて冒険者志望の少女と毎日やりあってたんだぜ?
本場の冒険者よりは弱いと思うがそれなりに強いぞ?

「お、おぉー!?」
「いやー。危なかったニャ。って、どうしたのニャ?」
「い、いや~。凄いな…蹴りでゴブリンを倒すなんて。もしかして冒険者志望か?」
「違いますニャ。個人事業ですニャ」

俺がそう返すと、少し残念そうな顔をした。

「そうか…きっと君みたいな奴が冒険者になったらきっと王都でも活躍できるだろうと思ってな…」
「そうですよ!
『獣人冒険者!期待のルーキーあらわる!』
みたいな感じで…」

と盛り上がっているが俺の考えは変わらない。

「それでも冒険者にはならないニャ。それは半年前に出ていった俺の幼馴染みの夢ニャ。いくら俺が強くてもおれの出る幕じゃないニャ」

二人の顔は納得いかないという表情だったが、まあこんな物好きいるんだろう…と諦めたのかそれ以上言うことはなかった。

それから暫く経ち…
前方に城壁が見えてくる。

「見えてきましたよ!あれが王都、ミスカルです!」

あれがミスカル!
俺の新しい人生のメインステージ!

俺は心を踊らせながら王都入りするのであった。

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