異世界おねむり代行!

石釜真岸

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眠の章

やらねばならぬこと

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ここへ来てやりたいこと、それを為すためには人手が欲しい。
一番手っ取り早い、且つ優秀な人材をこちらから一方的に選べる手段としては…

「奴隷、だよニャ!」

まあ、ロマンだよねぇ。
・・・
王都の中心には城がある。そして、その向かいに冒険者ギルドが建っている。
んで城とギルドを挟んで様々な商業施設、特に冒険者御用達のギルド運営の店が並んでて、その中に奴隷商館がある。
話の流れでわかると思うが一応…奴隷商館は奴隷を売っている館の事だ。
ここの奴隷商館の(外観の)第一印象は普通の家って感じだった。
入ってみると受付があり、その脇に奥に続いているであろうドア、入って右手には談話室だろうか?小さな部屋があり、中には机を挟んで椅子が二つあった。

ニャー……と俺が見渡していると

「ミャー…何か用ですかミャ?」

いつの間にか受付に人がいた。

「言っておきミャすが、これは獣人族がみんなこんな口調ではなく」
「癖ですニャね?俺もですニャ!」
「おお…まさか同士がこんな…」
「ニャア。俺もいるとは思わんかったニャ」

・・・
「で?今日はどんなご用件ですかミャ?」

少し老いた店主が聞く。

「ニャー。実は店を開きたくてニャ。それで人手が欲しくて…」
「ミャア!そうでしたかミャ。ならまずはギルドカードの提示をお願いしますミャ。」
「ニャ?ギルドカード?」
「そうですミャ?あれ?もしかしてお客さん…この街初めてかミャ?」

聞くと、この街での買い物にはギルドカードが必要らしい。ギルド運営の店だからってのもあるが、どんなに軽くても罪を犯したとき自動的に記載される機能があるため万引き防止の為にも店でのギルドカード提示は義務になるらしい。

「何よりギルドカードで買い物をするとポイントがたまって月に一度のくじ引きが出来るのが一番の目玉ミャ」
「それは登録せざるを得ないニャ!」

くじ引きって言葉に弱いんだよな~俺。
・・・
ところ変わりまして、ここはギルド。
その受付。
異世界モノなら普通はここで綺麗なお姉さんとか可愛い女の子の受付嬢だが……
生憎、俺の担当になったのは俺と同い年か、少し年下くらいの少年だった。
まぁこういう顔の子がラノベだったら主人公なんだろうなって感じには綺麗な顔立ちだな。

「今日はどの様なご用件でしょう?」
「ギルドカードの製作を頼むのニャ!」
「でしたら向かって右側にお進みになるとギルドカード発行手続きが出来ます」
「そうかニャ。ありがとニャ」 

えっと…向かって右側だから…
人がいっぱいいる方だな。
ちなみにこのギルドはアルファベットのUの形をしている真ん中に受付があり、その左右に別れている、更に三つの出入口があるようだ。

「ここ…ニャ…ね…?」

その人数に圧倒される。
凄いなーこんなにいっぱいギルドカードもらう人いるんだー。

「ギルドカードに登録する為の名前の記入をお願いします」
「ああ、ハイですニャ」

声を掛けられ言われるがままに名前を記入。

「それではあちらへ並んでください」

ギルドの出口には人が並んでいた。
妙に筋骨隆々な男どもが多いが気のせいだろう。

「?ボウズ。ヒョロッヒョロじゃないか。そんなんでギルドカード手に入れられるのか?」

筋骨隆々の男が喋りかける。こいつを便宜上筋骨隆々1とする。

「お前みたいな奴貰えやしないだろ!はっはっは!」

筋骨隆々2はあれだ、典型的な馬鹿だ。育ちが悪いタイプの筋骨隆々だ。

「いや、世の中どうとも言えんだろう。頭脳でも戦える奴だっているし、スキルだって様々だ」
「ニャ!」

おお!筋骨隆々3は聡明な筋骨隆々だった!
そうだとも!値切るには頭脳だって必要じゃないか!きっとスキルだって役に立つもんな!

「次の人どうぞ」
「俺の番ニャね?」
「そうか。頑張れよボウズ!」
「ニャー!」

・・・
おかしい…

「ギルドカードを手に入れるにあたり、試験をしてもらいます」

何かがおかしい…

「最初はオークとの戦いです!それではどうぞ!」
「戦い!?」

なんで戦わなきゃいけないんだよ!
あーそっか。自分の身は自分で守らなくちゃいけないもんなー。
いや無理があるっつーの!
まあ薄々おかしいな~とは思ってたけどさ!
なんでオーク!?
オークのサイズ知ってる!?3メートルだよ!?
3メートル!
なんで!?だって俺言われた通り向かって右に進んだよ⁉
…ここで俺は思い出した。
あの受付と俺の年の差が小さいことに。
ああそっか、素人だったのか。
それでミスったのね。いいよ、俺そんなんで責めないし。

「まぁ…名前書いちゃったし。やるしかニャいかニャ。やるからにはそれなりに…」

オークはこちらを見ている。俺もじっとオークを見つめる。
オークの手には棍棒。サイズ的には1.5メートルと言った所か。

先に動いたのはオーク。その棍棒を振り上げたのを見て、振り下ろされる前に真上に跳躍する。
オークが棍棒を振り下ろし屈んだ状態になった所を頭めがけて蹴る。
頭を蹴って気絶させるつもりだったのだが…

「あらニャ…」
「え…」
「うっそだろ…」

頭が落ちてコロコロ転がっていった。

「ニャ…ニャハハハハ…」

・・・
「はい、こちらがギルドカードとなっております」
「ニャハハ…申し訳ニャい…」
「いやいや!良いんですよ!こちらの手違いだったので!」

あの後、受付の少年が俺を冒険者のギルドカード発行試験の方へ案内したことに気付き試験官に報告したらしい。
だけど、もう既に時遅し。ちょうどオークを俺がを倒してしまったのだ。
まあだがギルド側で融通を効かせたらしく、いまこうやって普通のギルドカードを手に入れることができた。

「いや~それにしても凄かったですね!あの戦い!」

受付の少年が興奮気味に言う。

「そんなでもないニャ。きっともっとすごい人がいるだろうニャ!それに冒険者になるわけでもニャいのだからそんなに意味はないしニャ」
「そうですか…冒険者になってくれればギルドこちらとしても嬉しかったのですが…」
「ま、もっといい人がくるはずニャ!だから肩を落とすニャよ。えっと…」
「イスルです」
「いい名ニャね」
「よく言われます」
・・・
いろいろあったがまあ当初の目的を達成できたし。後は宿を探すか…とギルドを出ていくその時だった。 

「スロウさーん!」

イスル声を掛けてきた。

「明日空いてますか?」
「午後からなら空いてるニャ?それがどうしたかニャ?」
「迷惑掛けちゃったんで…その…お食事をと思いまして…」
「う~む」

これは断るべきか否か…
ま、相手の気持ちも尊重しようかな。

「お願いするニャ。初めて王都に来たからニャ、美味しいお店を教えてくれると嬉しいニャ!」

するとイスルは目を輝かせて

「はい!期待しておいてくださいね!待ち合わせ場所はギルドの入り口で!」

と言った。
んじゃあ、

「期待しておくかニャ」
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