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その女神、悦楽
女神の饗宴(2)
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階段下までまずたどり着いたのはセルゲイだった。腰が抜けて立てなくなっている給仕を助け起こした。そして、階段の中腹にいるアッシュをみた。後姿からははっきりとわかるくらい、感じたことのないような気味の悪い雰囲気が漂っている。彼はアッシュの名を呼んだが彼女の心には届いていないようだった。
ざわつき始める招待客たち。その間からカーライルが現れた。
「あちゃー。ありゃイッちまってるな」
そう呟くと、当たりの警備の戦士たちに手際よく指示を始めた。招待客を避難させる役、他の刺客の警戒役、王族の非難は近衛に。
「さてと、どうすっかなぁ」
うなじの辺りをぼりぼりと掻きながら、階段の上で立ち上がれない刺客の太ももを突き刺しているアッシュを眺める。そして、とりあえずという感じでセルゲイが支えている給仕の首根っこを引っ掴んだ。
「お前、何しようとしたかはわかってるな?いいか?嘘はつくなよ。もし嘘ついたらああなるぞ?」
そういってアッシュの方を見させる。突き刺すのに飽きたアッシュは、傷口を思いっきり踏みつけていた。ヒール部分が孔の開いた肉に食い込んでいく。刺客からは呻きのような低いうなり声が漏れていた。
「アッシュは何をしているのです!」
「またいっちまってんのか?」
「ん」
王族の避難の手伝いから戻ってきた三将軍。アッシュの振る舞いにも驚いたが、この顔触れにも驚いたセルゲイ。未だに状況が読み込めない。
「つまんない」
アッシュが空を見つめ呟いた。瞳には光が宿っていない。まだ生きている足元の刺客は痛みに悶えながらも服の下から笛を取り出し噴いた。甲高い音が響き渡る。すると、開きっぱなしのベランダから数人の刺客が現れた。
「なんだ?標的は国王じゃねぇってか?あぁ?」
カーライルに凄まれて、給仕はぽつりと言った。
自分は脅され、家族を人質にとられている。言われたとおりにすれば家族に危害が加えられないだけでなく、報酬もたんまりと貰えるといわれた、と。
それを聞き、カーライルは給仕を思い切り殴りつけた。殴られた彼の顔は見る間に腫れ上がり、口元からは血が流れていた。近くには彼のものと思われtる歯が転がっていた。
「ちょっと、何をしてるんですか」
クロウが横目に鋭くにらんだ。
「ちょっとイラついただけだよ」
「分かりますがそれではいけないでしょう」
「でも、そうなりゃ狙いはアッシュか?」
刺客達は一直線にアッシュに向かっていく。それを止めるテルミドネ団の団員達。
「止めるな」
決して大きな声ではない。しかし、それは確実に彼らの耳に届いていた。
階段からまるで重力を感じさせないように軽やかにふわりふわりと駆け下りてくる。その速さは加速する。
アールネらはアッシュを止めようとした。しかし、それをいとも簡単にかわしてしまう。まるで踊っているかのようだった。
「セルゲイさん、あなたも手伝いなさい!」
声をかけられようやく我に返ったセルゲイも参戦する。刺客からの攻撃をかわしながらアッシュを捕えようとする。だが、すぐ目の前にいたはずの彼女が突然消えたり。かと思えば隣に立っている。まるで陽炎を捕まえようとしているような気分になる。
「カーライル、てめぇも何とかしろ!」
苛立ちが隠せないトリスタンにどやされるが、彼は手伝わない。ただ、行方を見ているだけだった。
ついに誰の手にもつかまらないまま、刺客に囲まれた。俯いている彼女の方は小刻みに震えている。
「ふふ……ふふふふ……。あはははは!」
高らかに笑うと、きれいな顔を卑しくゆがめ彼女は宣言した。
「さぁ!僕と殺しあおう!」
刺客は四方八方から連携して攻撃をした。幾重にも彼女に切りかかっていく。ひらりひらりと躱し、剣で受け流し、舞う。それでもたくし上げているドレスの裾は切れていく。
一人の刺客の頭をつかんだ。首元を腕で締め上げる。絞められた刺客は持っていあナイフで彼女を突き刺す。だが、わずかに避け自ら急所を外していく。
「もっともっと!もっとちょうだい!」
動きが制限される中、刺客たちは容赦なく襲いかかる。捕まっている者は彼女の盾にされ、仲間によって傷を負っていく。
「どう?仲間に刺される気分」
どんどん深手を負っていく。落ちた刺客は捨てた。持っていた刺客の影になっていたところから脇腹を深く刺された。呼吸が浅くなる感覚があった。息をするたびに鋭い痛みが気道の奥深くでする感覚。
「あぁ。すごい」
自分の体からあふれる血。触るとヌメッとしているがすぐにべたつく。攻撃を避けながら血を舐める。
アールネたちも襲う。アールネの怪力が刺客の骨を打ち砕き、トリスタンの的確な絞め技が落としていく。セルゲイは相手の腕を切りつけ武器を振るえなくしていき、三人を襲おうとする敵をクロウが銃で射抜いていく。
アッシュは剣を捨て、ダガーに持ち替えた。獣が得物を狙うように体勢を低くする。そして、地を力強く蹴った。床を舐めるように動き、敵の周りを動き回り翻弄し、何度も何度も切りつけていく。疲弊している刺客はダガーを深く突き刺した。
ざわつき始める招待客たち。その間からカーライルが現れた。
「あちゃー。ありゃイッちまってるな」
そう呟くと、当たりの警備の戦士たちに手際よく指示を始めた。招待客を避難させる役、他の刺客の警戒役、王族の非難は近衛に。
「さてと、どうすっかなぁ」
うなじの辺りをぼりぼりと掻きながら、階段の上で立ち上がれない刺客の太ももを突き刺しているアッシュを眺める。そして、とりあえずという感じでセルゲイが支えている給仕の首根っこを引っ掴んだ。
「お前、何しようとしたかはわかってるな?いいか?嘘はつくなよ。もし嘘ついたらああなるぞ?」
そういってアッシュの方を見させる。突き刺すのに飽きたアッシュは、傷口を思いっきり踏みつけていた。ヒール部分が孔の開いた肉に食い込んでいく。刺客からは呻きのような低いうなり声が漏れていた。
「アッシュは何をしているのです!」
「またいっちまってんのか?」
「ん」
王族の避難の手伝いから戻ってきた三将軍。アッシュの振る舞いにも驚いたが、この顔触れにも驚いたセルゲイ。未だに状況が読み込めない。
「つまんない」
アッシュが空を見つめ呟いた。瞳には光が宿っていない。まだ生きている足元の刺客は痛みに悶えながらも服の下から笛を取り出し噴いた。甲高い音が響き渡る。すると、開きっぱなしのベランダから数人の刺客が現れた。
「なんだ?標的は国王じゃねぇってか?あぁ?」
カーライルに凄まれて、給仕はぽつりと言った。
自分は脅され、家族を人質にとられている。言われたとおりにすれば家族に危害が加えられないだけでなく、報酬もたんまりと貰えるといわれた、と。
それを聞き、カーライルは給仕を思い切り殴りつけた。殴られた彼の顔は見る間に腫れ上がり、口元からは血が流れていた。近くには彼のものと思われtる歯が転がっていた。
「ちょっと、何をしてるんですか」
クロウが横目に鋭くにらんだ。
「ちょっとイラついただけだよ」
「分かりますがそれではいけないでしょう」
「でも、そうなりゃ狙いはアッシュか?」
刺客達は一直線にアッシュに向かっていく。それを止めるテルミドネ団の団員達。
「止めるな」
決して大きな声ではない。しかし、それは確実に彼らの耳に届いていた。
階段からまるで重力を感じさせないように軽やかにふわりふわりと駆け下りてくる。その速さは加速する。
アールネらはアッシュを止めようとした。しかし、それをいとも簡単にかわしてしまう。まるで踊っているかのようだった。
「セルゲイさん、あなたも手伝いなさい!」
声をかけられようやく我に返ったセルゲイも参戦する。刺客からの攻撃をかわしながらアッシュを捕えようとする。だが、すぐ目の前にいたはずの彼女が突然消えたり。かと思えば隣に立っている。まるで陽炎を捕まえようとしているような気分になる。
「カーライル、てめぇも何とかしろ!」
苛立ちが隠せないトリスタンにどやされるが、彼は手伝わない。ただ、行方を見ているだけだった。
ついに誰の手にもつかまらないまま、刺客に囲まれた。俯いている彼女の方は小刻みに震えている。
「ふふ……ふふふふ……。あはははは!」
高らかに笑うと、きれいな顔を卑しくゆがめ彼女は宣言した。
「さぁ!僕と殺しあおう!」
刺客は四方八方から連携して攻撃をした。幾重にも彼女に切りかかっていく。ひらりひらりと躱し、剣で受け流し、舞う。それでもたくし上げているドレスの裾は切れていく。
一人の刺客の頭をつかんだ。首元を腕で締め上げる。絞められた刺客は持っていあナイフで彼女を突き刺す。だが、わずかに避け自ら急所を外していく。
「もっともっと!もっとちょうだい!」
動きが制限される中、刺客たちは容赦なく襲いかかる。捕まっている者は彼女の盾にされ、仲間によって傷を負っていく。
「どう?仲間に刺される気分」
どんどん深手を負っていく。落ちた刺客は捨てた。持っていた刺客の影になっていたところから脇腹を深く刺された。呼吸が浅くなる感覚があった。息をするたびに鋭い痛みが気道の奥深くでする感覚。
「あぁ。すごい」
自分の体からあふれる血。触るとヌメッとしているがすぐにべたつく。攻撃を避けながら血を舐める。
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