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第一部 魔法少女は、ふたつの世界を天翔る
第37話 そらの声 その二
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高速で通り過ぎるエネルギーの奔流によって内側へと押す圧力が発生し、京香はビームの中心に固定されてしまっていた。
「む」
このビームは、そうやってターゲットを動けなくするためのものだったと京香は気づいた。
莉美自身も、巨大なエネルギーを放出する反動に耐えている足が徐々に地面にめり込んでいく。
しかし一恵がその足下を干渉不可空間にすり替えて支えてくれる。
そらの声に指示された時、莉美にはそんなこと本当にできるのかどうか分からなかった。
ベルヌーイがどうとか軽く理屈も説明されているが、まあ意味が分からない。
だがそらはいつも正しく、現にあの京香を自分のキャノン一発で動けなくしてしまっている。
あとでそらにキスしよう、と莉美は思った。
「主体行くよっ!!」
莫大なエネルギーのビームを照射したままもう一発撃とうという莉美にも驚くが、京香はそれも受ける気満々のようだった。
「それを受け切れば、もうお前にできることはなくなるんだろっ?!」
京香は本命と名付けられたそれがどれ程強大なものなのかと、むしろ期待していた。
しかし莉美から放たれたビームは、やや拍子抜けするような繊細なビームだった。
「いや………」
京香は気合いを入れ直した。
この『一発目』とやらのビームの中をなんの影響も受けずに真っ直ぐに進んでくる。
か細いのではなく、一発目よりもまだ強大なエネルギーを、その中に高密度で圧縮しているのだ。
「ぐおおぉぉぉっ!!」
それでも京香は、両手に魔力を集中させてその高密度エネルギーを受け止めてしまった。
手の平に太陽が出現したかのような輝きを発している。
もはや憎き敵とはいえ賞賛に値する。莉美としても、こんなもの耐えられる人間がいるとは思っていなかった。
だがその時、莉美の肩に一恵の手が添えられた。
一恵が痛々しく歪んだ顔で頷いてくれる。
「空間歪曲!!」
一恵の魔法によってさらにビームが収束し、やがて焦点を結んでいく。
針のような細さになった恐るべき高エネルギービームは、とうとう京香の手を貫いた。
狙いは正確に胸の星石に向けられている。
「うおおおおぉぉぉぉ!! させるかあぁぁっ!!」
呼吸すらできないような高圧の密閉空間で、それでもわずかに身をよじらせて星石への直撃を避ける。
けれどビームは、代わりにすぐ傍にあったもうひとつの星石を貫いた。
まるで京香が、星石で星石を庇ったように見えた。
ひとつの星石を砕いて、ビームが体を突き抜ける。
「京香っ!!」
彩子が初めて素の顔を見せた気がする。
直方体型の落とし穴から這い出し、狼狽えて巨大ビームに隙がないかと探し、見つからなければ術者である莉美を亡き者にせんと見据える。
「おっと、初めからの約束でさ。あんたの相手は……」
佳奈が彩子に前に立ちふさがる。
「うるさい、どけっ!!」
彩子がありったけ、コントロールできる限りの切断髪を振り回して佳奈に襲いかかる。
しかし佳奈は避けもせず、彩子の胸を蹴った。
佳奈も魔力の防御に身を固めているとはいえ、切断髪に体を刻まれた。
しかしまったく構わずに思いっきり蹴り飛ばす。
「あんたの相手は白音って約束してんだわ」
蹴られてごろごろと地面を転がされた先に、白音が待っていた。
光剣を正眼に構えている。
「お前に構ってる暇はないんだよっ!!」
彩子は白音を相手にはせず、無視して京香を助けに戻ろうとした。
しかし白音は、彩子の振り乱された髪を踏んでそれを引き留めた。
切断髪はもはや髪とは関係なく蠢いているので、彩子の髪はただ長いだけの戦闘には不向きなヘアスタイルだ。
「あ゛あ゛??」
振り返った彩子の目がギラついた。
「やっと冷静になった」
冷静とは違うのだが、いつもの彩子だとは言えるだろう。
「さんざん他人の命は弄ぶくせに、妹が追い詰められてるくらいで情けないのよ。あなたの相手はわたし。どこへも行かせない」
「そうかい」
ざあっと津波のように数え切れないほどの切断髪が頭上にもたげられた。
これから白音を殺す、という宣言のように見える。
白音は以前地下空洞で串刺しにされた時の記憶が蘇り、恐怖を感じた。
やはりトラウマのようになっているんだわと再確認する。
だからそのためにこうして対決を望んだのだ。
「ちょっと多いわね」
左手にも光剣を出現させて二刀流にする。
彩子はもはやなりふり構わず、持てる力のすべてで切断髪を滾らせて白音に襲いかかった。
数で攻める彩子の鞭に対して白音はたった二本の光剣ですべて弾き飛ばしていく。
目にもとまらない速さ――比喩ではなく本当に目に見えない速度で剣を振るっている。
魔力と魔力のぶつかり合いは、基本的に質や密度のより高いものが打ち勝って相手を消滅させる。
彩子の切断髪はどんどん消し飛ばされているのだが、彩子も次々に新しい鞭を作り出して対抗している。
「異世界で、ゾアヴァイルの再来って呼ばれたあたシの恐ろシさ、思い知らせてやるよ」
「え? …………しまっ……」
あまりに意外な言葉が出たので思わず気を逸らしてしまった。
ズクズクと何本か捌ききれなかった切断髪に体を貫かれる。
「うくっ…………」
それ以上体の中で暴れられないように刺さった切断髪を切り落とす。
「おやおや、そんなにびびったのかい? ゾアヴァイルを知ってたようだネ」
いやいや、そうではないのだが。
しかし確かに切断髪をつるバラに見立てれば、その姿はゾアヴァイルと呼ぶに相応しい。
というかこっちが本家でいいのでは? と白音は思う。
「あなたこそ、異世界の言葉なんかどうして知ってるの?」
「あたシたちは異世界帰りなんだよ」
先ほど京香が弟の星石を食べたと言っていた話と、関係があるように白音には感じられた。
「あんたやっぱり星石を外すの上手いネ。何度やってもどこにあるんだか分かりゃシない」
舌なめずりをしながら、血がどくどくと流れ出ている白音の体を見ている。
ようやく本来の彩子になってきたようだ。
そうでなくては困る。
それでこそ叩き潰す甲斐がある。
星石さえ無事ならば、魔法少女はこの程度では死なない。
現に敵味方問わず皆ずたぼろだが、まだ戦い続けている。
しかし当然痛みは感じる。
痛みに怯めば、相手につけいる隙を与えて畳みかけられる。
ただ、前世職業軍人でもあった白音は、戦場で傷を負うことには慣れっこだった。
痛みの耐え方を知っている。
「ねえあなた、本当はそらちゃん、殺したんでしょう?」
マインドリンクでずっとそらは戦闘指揮を執ってくれている。
その読みは完璧で、もはや未来で見てきた事を語っているようにすら思える。
しかしその声は無機質で、いつものそらではなかった。
どんな魔法なのか分からなかったが、そらが命を使ってこの戦いに活路を見い出してくれたのだと白音は直感していた。
「本当はって、さっきからお前たち意味が分からないネ。だから殺シたって何度も言ってるだろ? 向こうで首を切り落とシてやったさ」
そしてそらにやったのと同じ偽計、地面に潜り込ませた切断髪で白音を背後から襲う。
星石が狙えないなら首を刎ね飛ばせばいいと考えていた。
「死ネ!!」
しかしあっさりと、三本目の光剣でその切り札は振り払われてしまった。
白音は魔族の証したる白銀の尻尾を出し、その先で光剣を掴んで振ったのだ。
「なっ……! それは一体何だ? お前一体何者なんだっ?!」
魔法で作った物ではなさそうなその尻尾を見せつけられて、彩子は白音の正体を量りかねているようだった。
「そんなことどうだっていいのよ…………、よくも、よくもそらちゃんを…………」
復讐心を向けるのはお門違いだと分かっている。
これは初めから殺し合いなのだ。
だが、白音はどうしても湧き上がる気持ちを抑え切れない。
自分でも驚くほどの激しい怒りの感情を、彩子に向けて放った。
「!?」
彩子はその怒りにあてられて、自分の死を予感してしまった。
「む」
このビームは、そうやってターゲットを動けなくするためのものだったと京香は気づいた。
莉美自身も、巨大なエネルギーを放出する反動に耐えている足が徐々に地面にめり込んでいく。
しかし一恵がその足下を干渉不可空間にすり替えて支えてくれる。
そらの声に指示された時、莉美にはそんなこと本当にできるのかどうか分からなかった。
ベルヌーイがどうとか軽く理屈も説明されているが、まあ意味が分からない。
だがそらはいつも正しく、現にあの京香を自分のキャノン一発で動けなくしてしまっている。
あとでそらにキスしよう、と莉美は思った。
「主体行くよっ!!」
莫大なエネルギーのビームを照射したままもう一発撃とうという莉美にも驚くが、京香はそれも受ける気満々のようだった。
「それを受け切れば、もうお前にできることはなくなるんだろっ?!」
京香は本命と名付けられたそれがどれ程強大なものなのかと、むしろ期待していた。
しかし莉美から放たれたビームは、やや拍子抜けするような繊細なビームだった。
「いや………」
京香は気合いを入れ直した。
この『一発目』とやらのビームの中をなんの影響も受けずに真っ直ぐに進んでくる。
か細いのではなく、一発目よりもまだ強大なエネルギーを、その中に高密度で圧縮しているのだ。
「ぐおおぉぉぉっ!!」
それでも京香は、両手に魔力を集中させてその高密度エネルギーを受け止めてしまった。
手の平に太陽が出現したかのような輝きを発している。
もはや憎き敵とはいえ賞賛に値する。莉美としても、こんなもの耐えられる人間がいるとは思っていなかった。
だがその時、莉美の肩に一恵の手が添えられた。
一恵が痛々しく歪んだ顔で頷いてくれる。
「空間歪曲!!」
一恵の魔法によってさらにビームが収束し、やがて焦点を結んでいく。
針のような細さになった恐るべき高エネルギービームは、とうとう京香の手を貫いた。
狙いは正確に胸の星石に向けられている。
「うおおおおぉぉぉぉ!! させるかあぁぁっ!!」
呼吸すらできないような高圧の密閉空間で、それでもわずかに身をよじらせて星石への直撃を避ける。
けれどビームは、代わりにすぐ傍にあったもうひとつの星石を貫いた。
まるで京香が、星石で星石を庇ったように見えた。
ひとつの星石を砕いて、ビームが体を突き抜ける。
「京香っ!!」
彩子が初めて素の顔を見せた気がする。
直方体型の落とし穴から這い出し、狼狽えて巨大ビームに隙がないかと探し、見つからなければ術者である莉美を亡き者にせんと見据える。
「おっと、初めからの約束でさ。あんたの相手は……」
佳奈が彩子に前に立ちふさがる。
「うるさい、どけっ!!」
彩子がありったけ、コントロールできる限りの切断髪を振り回して佳奈に襲いかかる。
しかし佳奈は避けもせず、彩子の胸を蹴った。
佳奈も魔力の防御に身を固めているとはいえ、切断髪に体を刻まれた。
しかしまったく構わずに思いっきり蹴り飛ばす。
「あんたの相手は白音って約束してんだわ」
蹴られてごろごろと地面を転がされた先に、白音が待っていた。
光剣を正眼に構えている。
「お前に構ってる暇はないんだよっ!!」
彩子は白音を相手にはせず、無視して京香を助けに戻ろうとした。
しかし白音は、彩子の振り乱された髪を踏んでそれを引き留めた。
切断髪はもはや髪とは関係なく蠢いているので、彩子の髪はただ長いだけの戦闘には不向きなヘアスタイルだ。
「あ゛あ゛??」
振り返った彩子の目がギラついた。
「やっと冷静になった」
冷静とは違うのだが、いつもの彩子だとは言えるだろう。
「さんざん他人の命は弄ぶくせに、妹が追い詰められてるくらいで情けないのよ。あなたの相手はわたし。どこへも行かせない」
「そうかい」
ざあっと津波のように数え切れないほどの切断髪が頭上にもたげられた。
これから白音を殺す、という宣言のように見える。
白音は以前地下空洞で串刺しにされた時の記憶が蘇り、恐怖を感じた。
やはりトラウマのようになっているんだわと再確認する。
だからそのためにこうして対決を望んだのだ。
「ちょっと多いわね」
左手にも光剣を出現させて二刀流にする。
彩子はもはやなりふり構わず、持てる力のすべてで切断髪を滾らせて白音に襲いかかった。
数で攻める彩子の鞭に対して白音はたった二本の光剣ですべて弾き飛ばしていく。
目にもとまらない速さ――比喩ではなく本当に目に見えない速度で剣を振るっている。
魔力と魔力のぶつかり合いは、基本的に質や密度のより高いものが打ち勝って相手を消滅させる。
彩子の切断髪はどんどん消し飛ばされているのだが、彩子も次々に新しい鞭を作り出して対抗している。
「異世界で、ゾアヴァイルの再来って呼ばれたあたシの恐ろシさ、思い知らせてやるよ」
「え? …………しまっ……」
あまりに意外な言葉が出たので思わず気を逸らしてしまった。
ズクズクと何本か捌ききれなかった切断髪に体を貫かれる。
「うくっ…………」
それ以上体の中で暴れられないように刺さった切断髪を切り落とす。
「おやおや、そんなにびびったのかい? ゾアヴァイルを知ってたようだネ」
いやいや、そうではないのだが。
しかし確かに切断髪をつるバラに見立てれば、その姿はゾアヴァイルと呼ぶに相応しい。
というかこっちが本家でいいのでは? と白音は思う。
「あなたこそ、異世界の言葉なんかどうして知ってるの?」
「あたシたちは異世界帰りなんだよ」
先ほど京香が弟の星石を食べたと言っていた話と、関係があるように白音には感じられた。
「あんたやっぱり星石を外すの上手いネ。何度やってもどこにあるんだか分かりゃシない」
舌なめずりをしながら、血がどくどくと流れ出ている白音の体を見ている。
ようやく本来の彩子になってきたようだ。
そうでなくては困る。
それでこそ叩き潰す甲斐がある。
星石さえ無事ならば、魔法少女はこの程度では死なない。
現に敵味方問わず皆ずたぼろだが、まだ戦い続けている。
しかし当然痛みは感じる。
痛みに怯めば、相手につけいる隙を与えて畳みかけられる。
ただ、前世職業軍人でもあった白音は、戦場で傷を負うことには慣れっこだった。
痛みの耐え方を知っている。
「ねえあなた、本当はそらちゃん、殺したんでしょう?」
マインドリンクでずっとそらは戦闘指揮を執ってくれている。
その読みは完璧で、もはや未来で見てきた事を語っているようにすら思える。
しかしその声は無機質で、いつものそらではなかった。
どんな魔法なのか分からなかったが、そらが命を使ってこの戦いに活路を見い出してくれたのだと白音は直感していた。
「本当はって、さっきからお前たち意味が分からないネ。だから殺シたって何度も言ってるだろ? 向こうで首を切り落とシてやったさ」
そしてそらにやったのと同じ偽計、地面に潜り込ませた切断髪で白音を背後から襲う。
星石が狙えないなら首を刎ね飛ばせばいいと考えていた。
「死ネ!!」
しかしあっさりと、三本目の光剣でその切り札は振り払われてしまった。
白音は魔族の証したる白銀の尻尾を出し、その先で光剣を掴んで振ったのだ。
「なっ……! それは一体何だ? お前一体何者なんだっ?!」
魔法で作った物ではなさそうなその尻尾を見せつけられて、彩子は白音の正体を量りかねているようだった。
「そんなことどうだっていいのよ…………、よくも、よくもそらちゃんを…………」
復讐心を向けるのはお門違いだと分かっている。
これは初めから殺し合いなのだ。
だが、白音はどうしても湧き上がる気持ちを抑え切れない。
自分でも驚くほどの激しい怒りの感情を、彩子に向けて放った。
「!?」
彩子はその怒りにあてられて、自分の死を予感してしまった。
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