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1.プロローグ
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雨の音がする。
きれいな音。
私の心の中を、すべて洗い流してくれているみたい。
ーーもういいかなーー
ーー私には大切な物も、何も残ってないからーー
ーーもし生まれ変わることができたらーー
ーー笑ったり、怒ったりし合える友達とかーー
ーー出来たらーーーいいなーー
彼女の瞳から涙が溢れ、身体から赤い紋様が広がっていく。
意識が薄れていく中、雨の音がより大きく感じた。
いずれ何も聞こえなくなり、永遠とも思える程の時間が過ぎていった。
◇
「……………!!」
「……!!!」
うるさいなぁ・・
「………!!」
なんなのもう・・・人の気も知らないで!
「うるさーーーーーーい!」
…………………………。
…………あれ?
「ノアーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
いきなり知らない男の人に抱き着かれた!
「心配したぞ!死んでしまったと思ったではないか!」
「きゃーーーーーーーーーーーーー!!」
とっさに右手で突き飛ばす。
誰?誰なの?
見ると、私が驚いた以上にその男性は驚いた様子だった。
「いやいやいやいや……きゃーーなんて、お前の口からそんな普通の女の子みたいなセリフが出るとは」
なんと失礼な。
周りを見渡すと数名人がいて、その各々が西洋貴族の様な恰好をしている。その全員が目を見開いてびっくりしているようだ。そして私の左手は、傍に座っている優しそうな女性に握られていた。
「えっと……すみません。どちら様でしょうか?」
何が何だか分からないが、何故か申し訳ない気持ちを感じつつ聞いてみた。
「な、何を言っているのだ?」
さっき私に抱き着いてきた男性の言葉を無視した形で続けて聞く。
「と言いますか………ここどこですか?」
「えええええええええええええええええええええ!!!」
全員の声がシンクロした。
◇
暫くして先程の男性と、手を握ってくれていた女性だけがこの場に残っていた。
困惑していた私への配慮もあるのだろう、そう思うと少し気持ちが落ち着く。
部屋はとても広く、豪華すぎないお洒落な家具が置かれていて、私が今座っているベッドもとっても可愛いらしい天蓋付きのお姫様ベッドだった。
男性は見た目の漢字だと五十歳ぐらいだろうか、上品な髭を蓄えている。女性の方はもう少し若そうでとっても綺麗、さっきまでは不安そうな顔をしていたけど、今は優しい表情を向けてくれていて、少し恥ずかしい。
「ふむ………それではノアよ、自分の名前以外は何も覚えていない。という訳だな?」
「はい」
今はそういう事にしておこう。
私自身も状況が全く分かってないし、今正直に話してもどうなるか怖い………。
「うーむ、髪も瞳の色も変わってしまって分からない事だらけだ、だけど生きていてくれて本当によかった。今日はゆっくり休みなさい」
男性は笑顔でそう言った。
「本当に良かった………心配したんですよ」
そう言った女性に私は抱きしめられ、優しい匂いに包まれた。
ーーあれ?
頬に涙が伝う。
この人がこの人が誰なのか、ここが何処なのか、一体自分に何が起こっているのか分からない。
でも、ただただ涙が止まらなかった。
この人達の温かさに、今まで感じた事のない安心感に、私は子供の様に泣きじゃくっていた。
それから二人は、私が泣き疲れて眠るまで、ずっと傍にいてくれた。
きれいな音。
私の心の中を、すべて洗い流してくれているみたい。
ーーもういいかなーー
ーー私には大切な物も、何も残ってないからーー
ーーもし生まれ変わることができたらーー
ーー笑ったり、怒ったりし合える友達とかーー
ーー出来たらーーーいいなーー
彼女の瞳から涙が溢れ、身体から赤い紋様が広がっていく。
意識が薄れていく中、雨の音がより大きく感じた。
いずれ何も聞こえなくなり、永遠とも思える程の時間が過ぎていった。
◇
「……………!!」
「……!!!」
うるさいなぁ・・
「………!!」
なんなのもう・・・人の気も知らないで!
「うるさーーーーーーい!」
…………………………。
…………あれ?
「ノアーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
いきなり知らない男の人に抱き着かれた!
「心配したぞ!死んでしまったと思ったではないか!」
「きゃーーーーーーーーーーーーー!!」
とっさに右手で突き飛ばす。
誰?誰なの?
見ると、私が驚いた以上にその男性は驚いた様子だった。
「いやいやいやいや……きゃーーなんて、お前の口からそんな普通の女の子みたいなセリフが出るとは」
なんと失礼な。
周りを見渡すと数名人がいて、その各々が西洋貴族の様な恰好をしている。その全員が目を見開いてびっくりしているようだ。そして私の左手は、傍に座っている優しそうな女性に握られていた。
「えっと……すみません。どちら様でしょうか?」
何が何だか分からないが、何故か申し訳ない気持ちを感じつつ聞いてみた。
「な、何を言っているのだ?」
さっき私に抱き着いてきた男性の言葉を無視した形で続けて聞く。
「と言いますか………ここどこですか?」
「えええええええええええええええええええええ!!!」
全員の声がシンクロした。
◇
暫くして先程の男性と、手を握ってくれていた女性だけがこの場に残っていた。
困惑していた私への配慮もあるのだろう、そう思うと少し気持ちが落ち着く。
部屋はとても広く、豪華すぎないお洒落な家具が置かれていて、私が今座っているベッドもとっても可愛いらしい天蓋付きのお姫様ベッドだった。
男性は見た目の漢字だと五十歳ぐらいだろうか、上品な髭を蓄えている。女性の方はもう少し若そうでとっても綺麗、さっきまでは不安そうな顔をしていたけど、今は優しい表情を向けてくれていて、少し恥ずかしい。
「ふむ………それではノアよ、自分の名前以外は何も覚えていない。という訳だな?」
「はい」
今はそういう事にしておこう。
私自身も状況が全く分かってないし、今正直に話してもどうなるか怖い………。
「うーむ、髪も瞳の色も変わってしまって分からない事だらけだ、だけど生きていてくれて本当によかった。今日はゆっくり休みなさい」
男性は笑顔でそう言った。
「本当に良かった………心配したんですよ」
そう言った女性に私は抱きしめられ、優しい匂いに包まれた。
ーーあれ?
頬に涙が伝う。
この人がこの人が誰なのか、ここが何処なのか、一体自分に何が起こっているのか分からない。
でも、ただただ涙が止まらなかった。
この人達の温かさに、今まで感じた事のない安心感に、私は子供の様に泣きじゃくっていた。
それから二人は、私が泣き疲れて眠るまで、ずっと傍にいてくれた。
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