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2. 橘 乃亜
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私の名前は【橘 乃亜】
県立咲月ヶ丘高校の一年生
両親は幼い頃に他界していて、今は父方の叔母夫婦に引き取られて暮らしている。
この夫婦にとって私は空気の様な存在らしく、まったく興味をもっていないよう。
夫婦には私と同い年の双子の姉弟がいて、今まで学校ではこの二人が率先して嫌がらせをして来るので
、仲のいい友達などできた事がなかった。でも最近は私の反応がイマイチなのか、少し大人しくなっている。
入学から二か月経ち、学校生活にも慣れた頃だった。靴箱の前で上履きに履き替えていると。
「橘さん、おはよう」
彼は私に話しかけてくれる珍しいクラスメイト【白井 徹】君、温厚で真面目な男の子。
クラスでも中々の人気者だ。
「おはよう、白井君」
そのまま二人で教室に向かって歩いていく。
ちょっと心地が良かった。
「はあ?ちょっと邪魔なんですけど、ブスが前歩かないでくれる?」
「……ごめんなさい……」
彼女は【橘 沙希】私の従妹だ。
傲慢で自信家、頭も容姿もいいので取り巻きも多い。沙希から侮辱を受けているのは、最近沙希達のターゲットになっている【藤森 真弓】いつも一人でいる、眼鏡をかけた地味な子だ。
って人の事言えないけど。
「藤森さん、大丈夫?」
「あ……うん、ありがとう、橘さん」
「何それ乃亜、それじゃアタシが苛めてるみたいじゃない」
そんな沙希の言葉は無視して教室に入った。
「ちっ、調子に乗りやがって」
これがきっかけで、私は真弓と一緒にいることが多くなった。お互い本を読むのが好きだったので、好きな本の話を飽きるまでしたり、帰りに寄り道したりして、今まで友達がいなかった私は学校生活が楽しくなっていた。
そんな毎日が当たり前になった頃。
「乃亜ちゃん、帰る前に先生にお願い事されたんだけど、付き合ってもらってもいい?」
「うん、いいよ」
真弓に付いて行くと、そこは体育倉庫だった。
「体育で何か使うの?」
「う、うん。そうみたいなんだ」
こっちを振り返らずにそう言う。
扉を開けて中に入ってみると。
「藤森~、合格だよ~」
そこには取り巻きを連れた沙希がいた。
「えっ?真弓?」
「ごめんね、乃亜ちゃん……」
真弓は私から目を背ける。
取り巻きが扉を閉め、私の腕を拘束する。
「はい、じゃあ藤森ちゃん、いってみよ~」
真弓は下を向いたまま私の前に立ち、右手を振り上げ、私の頬をひっぱたいた。痛みよりショックの方が勝り過ぎて、何も感じなかった。
「はいはい、続けて続けて、頑張ったらアタシの友達になれるぞ~」
パシン!パシン!パシン!パシン!パシン!パシン!
何度たたく音が聞こえただろう。最初はうつむきながら叩いていた真弓の顔が、徐々にこっちを
向いている様に感じた。
そして私は見た………。
真弓が…………
…………………笑っているのを………。
◇
次の日から私は学校に行かなくなった。
ただの悪夢じゃないかって、何度も思おうとした。でも頬のいたみは現実で、家でも沙希の勝ち誇った顔は忘れられない……。
一体私が何をしたっていうんだろうっ……
学校に行かなくなっても、叔母夫婦は何も言わなかった。そっとしといてくれているんじゃない。本当に興味がないんだ。
家にも居づらくなり外へ出た。日が傾いている、黄昏時というやつだ。
暫くするとポツポツと雨が降ってきた。行く当てもなく駅前近くを歩いていると、道路を挟んだ向こう側に懐かしいと感じる顔を見た。
白井くんだ。今でも白井君の顔を見ると、ほっとする。傘をさして待ち合わせをしてしている様だった。
そして小走りで嬉しそうに、その傘に入ってきたのは……
……【真弓】だった……
頭が真っ白になった。
「あ………………あ……」
私は私の現実が受け入れられない。
受け入れたくない。
なんでこうなったの?
どうすればよかったの?
なんかもう……
疲れた………。
フラフラと交差点を渡っていく。
信号は赤だったかもしれない。
いつの間にか激しくなっていた雨の中、車のクラクションの音が聞こえた気がした。
覚えているのはここまでだった。
県立咲月ヶ丘高校の一年生
両親は幼い頃に他界していて、今は父方の叔母夫婦に引き取られて暮らしている。
この夫婦にとって私は空気の様な存在らしく、まったく興味をもっていないよう。
夫婦には私と同い年の双子の姉弟がいて、今まで学校ではこの二人が率先して嫌がらせをして来るので
、仲のいい友達などできた事がなかった。でも最近は私の反応がイマイチなのか、少し大人しくなっている。
入学から二か月経ち、学校生活にも慣れた頃だった。靴箱の前で上履きに履き替えていると。
「橘さん、おはよう」
彼は私に話しかけてくれる珍しいクラスメイト【白井 徹】君、温厚で真面目な男の子。
クラスでも中々の人気者だ。
「おはよう、白井君」
そのまま二人で教室に向かって歩いていく。
ちょっと心地が良かった。
「はあ?ちょっと邪魔なんですけど、ブスが前歩かないでくれる?」
「……ごめんなさい……」
彼女は【橘 沙希】私の従妹だ。
傲慢で自信家、頭も容姿もいいので取り巻きも多い。沙希から侮辱を受けているのは、最近沙希達のターゲットになっている【藤森 真弓】いつも一人でいる、眼鏡をかけた地味な子だ。
って人の事言えないけど。
「藤森さん、大丈夫?」
「あ……うん、ありがとう、橘さん」
「何それ乃亜、それじゃアタシが苛めてるみたいじゃない」
そんな沙希の言葉は無視して教室に入った。
「ちっ、調子に乗りやがって」
これがきっかけで、私は真弓と一緒にいることが多くなった。お互い本を読むのが好きだったので、好きな本の話を飽きるまでしたり、帰りに寄り道したりして、今まで友達がいなかった私は学校生活が楽しくなっていた。
そんな毎日が当たり前になった頃。
「乃亜ちゃん、帰る前に先生にお願い事されたんだけど、付き合ってもらってもいい?」
「うん、いいよ」
真弓に付いて行くと、そこは体育倉庫だった。
「体育で何か使うの?」
「う、うん。そうみたいなんだ」
こっちを振り返らずにそう言う。
扉を開けて中に入ってみると。
「藤森~、合格だよ~」
そこには取り巻きを連れた沙希がいた。
「えっ?真弓?」
「ごめんね、乃亜ちゃん……」
真弓は私から目を背ける。
取り巻きが扉を閉め、私の腕を拘束する。
「はい、じゃあ藤森ちゃん、いってみよ~」
真弓は下を向いたまま私の前に立ち、右手を振り上げ、私の頬をひっぱたいた。痛みよりショックの方が勝り過ぎて、何も感じなかった。
「はいはい、続けて続けて、頑張ったらアタシの友達になれるぞ~」
パシン!パシン!パシン!パシン!パシン!パシン!
何度たたく音が聞こえただろう。最初はうつむきながら叩いていた真弓の顔が、徐々にこっちを
向いている様に感じた。
そして私は見た………。
真弓が…………
…………………笑っているのを………。
◇
次の日から私は学校に行かなくなった。
ただの悪夢じゃないかって、何度も思おうとした。でも頬のいたみは現実で、家でも沙希の勝ち誇った顔は忘れられない……。
一体私が何をしたっていうんだろうっ……
学校に行かなくなっても、叔母夫婦は何も言わなかった。そっとしといてくれているんじゃない。本当に興味がないんだ。
家にも居づらくなり外へ出た。日が傾いている、黄昏時というやつだ。
暫くするとポツポツと雨が降ってきた。行く当てもなく駅前近くを歩いていると、道路を挟んだ向こう側に懐かしいと感じる顔を見た。
白井くんだ。今でも白井君の顔を見ると、ほっとする。傘をさして待ち合わせをしてしている様だった。
そして小走りで嬉しそうに、その傘に入ってきたのは……
……【真弓】だった……
頭が真っ白になった。
「あ………………あ……」
私は私の現実が受け入れられない。
受け入れたくない。
なんでこうなったの?
どうすればよかったの?
なんかもう……
疲れた………。
フラフラと交差点を渡っていく。
信号は赤だったかもしれない。
いつの間にか激しくなっていた雨の中、車のクラクションの音が聞こえた気がした。
覚えているのはここまでだった。
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